カニ日記

息子の成長と日々の記録

われらは愉快なサーカス団

6月10日(月)
昼から大雨。今日は傘をちゃんと持ってきたぞ!と自信満々でいたら次第に雨は強くなり、折り畳み傘では太刀打ちできない降水量だった。一回帰宅して自転車を置いて歩いてお迎えに行くか迷ったが強行突破でそのまま迎えに行く。自転車を漕ぐようになってから適当に買ったポンチョは機能面でやや問題があり、なぜかいつも中に雨が入ってくる。そしてずぶ濡れになる。サイにもレインコートを着せてから自転車に載せる。

買い物できなかったのでサイは冷蔵庫にあった焼くだけのピザトースト、私は冷奴とアボガド。日曜日にSAで買った「よし子のにんにく味噌」という味噌を冷奴に載せたらめちゃくちゃ美味しかった。アボガドにつけてみても美味しかった。これは使えそう。よし子が誰かわからないが、ラベルを見る限り農家のおばあちゃんらしい。よし子、いいぞ、ありがとう。


6月11日(火)
お迎えに行きながら今日は外で食べよう、と思っていたらお迎えのタイミングがYくんと一緒になった。今日は外で食べるよと言ったらサイがYくんに「ラーメンやいこう!」と誘ってしまったため、Yくん親子といつもの中華屋で食べて帰ることになった。二人がはしゃいで騒ぎすぎて店のお姉さんに「お静かに願います」と言われる。サイは私と二人の時はそこそこ大人しいが、好きな友達といる時は嬉しいのかふざけて大はしゃぎする。「店で大きい声出したらだめだよ」と何度言ってもあまり効果がない。Yくんのお母さんは基本的にYくんを叱らないのでどうしたらいいかわからなくなる。子どもがもっと自由にごはんが食べられる場所があったらいいけれど、自宅と公園以外考えられない。噂に聞く子ども食堂、今度行ってみようか。

帰宅したら明日食べるカレーを作るつもりがサイをけん制するのに疲れて気力がなくなる。サイを暗闇で寝かしつけながら「なんであっちのへやでんきついてるの?」「え、これからママはまた起きてカレーつくるんだよ」「え、いまから?(できるの?という疑念)」「う…うん」数分後。しーん。「あれ、カレーは?」「え、いや、もうちょっと休んでからにする」という会話をしているうちに案の定サイと寝てしまい、夜中に起きても台所に行く気がせず諦める。雨で洗濯物もどんどん溜まっている。


6月12日(水)
その方が余計なものも買わされないし効率的だと気づき、先にスーパーに寄り超特急で買い物してからお迎えに行く。お迎えが遅れるといつもサイに怒られるが、好きなMちゃんKちゃんが一緒だったのでご機嫌だった。三人でけらけら笑いながら坂をくだっていく。親たちはそれを自転車で追いかける。いつものように神社に寄る。MちゃんとKちゃんのお母さんは習い事の話をしていた。Mちゃんはスイミング、Kちゃんは体操をしているらしい。二人の会話になんとなく入れなくて、少し離れて聞いていた。サイは何がしたいだろうか。

私は幼少期、絵画、スイミング、新体操、英語を習っていた。そして科学と学習という学研の雑誌も購読していた。今考えるとまあまあ英才教育だが、当時はただそういうものだと思って特に何の疑念も抱かなかった。楽しかったのもあるし、あまり楽しくなかったものもある。でも今色々なことに興味があるのはこれらの習い事がきっかけになっているのかもしれない。そう考えるとお金を代償にしてでもサイにはサイが好きなことを、もっと経験させてあげたい。

やっと明日晴れそうなので、帰宅して溜まっていた大量の洗濯。多すぎて全部入らない。その間にカレーを作る。野菜を刻んでいたら「なにしてるの?」とサイに聞かれたので「カレー作ってるんだよ、昨日できなかったから」と言い訳のようにぼやくと「ああ」とわかったような返事をされる。私たちは親子なのに時々対等な夫婦みたいだし友達みたいでもある。不思議な関係だ。サーカス団の団員同士、が一番適切な表現だと私は思っている。

サーカスといえばこの夏、木下大サーカスが埼玉にやってくるらしく気になっている。小さい頃、母親に妹と連れられて木下大サーカスを観に行った記憶が未だに残っている。保育園にあったチラシを見せてサーカスを知らないサイに教えたら「ぞうさんがいるの!?」と少し興味を示していた。手品や奇術、サーカスが私は昔からとにかく大好きだ。観る人を楽しませたいために、生きていくのに別に必要でない、言わば無駄なことに時に命を危険にさらして取り組んでいるところにロマンを感じる。

マエケンラジオを聴きながら大量の洗濯を干し終えたところで、力尽きて寝た。前野さんが好きだと言っていた有楽町にあるジャポネというお店(前から気になっていた…!なんでいつも前野さんは私の好みをピンポイントでついてくるのか…)のジャリコというスパゲッティが食べたい。きっとあの店はパスタじゃなくてスパゲッティ。相変わらず面白かった。


6月13日(木)
久々の快晴。朝からまた洗濯。

サイは今日もお迎えが一緒になった子たちと列になって帰り、いつものように神社にお参りする。サイとYくんが騒いでいたら女子に「じゅんばんぬかししないで」「いいかげんにして!」と怒られていた。それでも二人はへらへらしていた。男はつくづく阿呆な生き物だなと彼らを見ているといつも感じる。阿呆でい続けると生きる上で損することがあるかもしれないが、誰も傷つけない。阿呆でいること、これは案外大事だ。

サイが寝てから好きな人と電話した。9時半から深夜2時までなんと4時間半も話してしまった。ずっと楽しくてずっと笑っていて、なぜこんなに話すことがあるのか自分でも不思議だった。2時を過ぎいよいよ明日に差し障るから大変だ、となり電話を切ったが延々と話していられそうだった。


6月14日(金)
夜更かしのせいで眠く、視界がぼんやりしていた。目覚ましが鳴る前に「ねえ?おきないの?」とサイに起こされる。サイはぱちっと目を開けて起きると同時にいつも何か私に語りかけてくる。今日は仮面ライダーの夢を見た話をしてくれた。寝ぼけた発言をしたり「うーん」とか絶対言わない。「あのさ…」と目を開けた瞬間に始まるので笑ってしまう。脳が若いのかもしれない。昼頃までよく晴れていて、雲が大きくもくもくと美味しそうだった。

お昼は好きな先輩二人とハンバーガー屋さんへ行った。ゴミの仕分けの話、家賃の話、会社の話などなど。会社に対して抱いていた違和感や疑念が先輩たちと同じで安心した。状況に耐えられない時は自分が変わるしかないのだと改めて感じた。

朝観たEテレの「デザインあ」でたこ焼きが分解される映像に触発されたらしく、サイがたこ焼きが食べたいと言うので夜に買いに行く約束をしていた。帰りには私はすっかり忘れていたが、家に帰る途中で「たこ焼きたべたい」とまた言われ、「あーそうだったね」と一度買ったことがある駅の近くのたこ焼き屋まで自転車を走らせる。少し丸顔の愛想のいいお姉さんが一人でやっていて、カウンター席のある小さな店内でたこ焼きとおつまみで飲めるようになっている。おじさんが何人か飲んでいた。うわ、いいなぁと思いつつ、持ち帰り用の窓からたこ焼き10個お願いする。「3分ほどかかります」と言い、お姉さんは店内のおじさんたちにイカの塩辛を提供する傍ら、窓側のたこ焼き機で私たちのたこ焼きを焼いてくれた。サイはそれを見たがったが背が届かなかったので抱きあげた。二人でじーっと観察していたらお姉さんがふふふと微笑んでくれた。私もたこ焼きやたい焼きが焼けていく様子を眺めるのが昔から好きだった。「おうちでも作るのですか?」と聞かれたがうちには機械がない。焼きあがった大きなたこ焼きがぼすぼすと白いトレーに入られて、たっぷりのソースと青のり、かつおぶしがかけられるところまで二人で見届けた。お姉さんがなんでたこ焼き屋をやっているか、いつか聞いてみたいなと思った。私も将来こういう感じの、ちょっと飲めて持ち帰れるたこ焼き屋さんがやりたいなと妄想した。
熱々のたこ焼きを受け取ったサイは「いいにおいがする~」と満足そうだった。

ドラえもんとしんちゃんを観てげらげら笑いながら晩御飯。ドラえもんジャイアン誕生日記念の特別編で、ドラえもんの道具で歌が上手くなってしまったジャイアンが生放送の歌番組出演にスカウトされてしまい、道具の効果切れで恐ろしい顛末を想像したドラえもんのび太は全力で阻止しに行くという話だった。ジャイアンの歌声がテレビ放映で広がったら「ニッポンのピンチだ!」とドラえもんが深刻な顔で叫ぶところで爆笑した。どんなに地盤が揺れて耳を塞がれても自分の歌がみんなに愛されていると信じて疑わずリサイタルを遂行する愛すべきジャイアン

今日はいいことがあった。Aちゃんの予定日が6月だったことをお迎えに行く前「あ、そろそろかも」と唐突に思い出し、最後に会ってから二か月ぶりに「赤ちゃんもしかしてもう生まれた?」とラインしてみた。そうしたらなんと、今日の昼に生まれたとのこと!今日の今日だったから驚いたし嬉しかった。単なる偶然かもしれないし、この世界にやってきた赤ちゃんの生命力が病院から私の元まで空気を伝達してやってきたのかもしれない、と一人で都合良く考え、感極まって自転車を漕ぎながら泣いた。Aちゃんが赤ちゃんの写真を送ってくれた。生まれたての赤ちゃんのかわいさよ。非情なのか、人の子どもが生まれても特に何も感じないことが多いが、Aちゃんの子どもは自分の子どものようにとにかく嬉しい。赤ちゃんに早く会いたいな乾杯、と思ってビールを飲んだ。Aちゃん本当におめでとう。


6月15日(土)
朝から雨。いかにも梅雨ですよ、という天気。それならそうと洗濯を諦め、室内の掃除に専念する。カレーの残りでお昼ごはんを食べた後、サイがお絵描きしたいというので絵具と筆を出して二人で好きなものを描く。私はアクリル絵の具で保育園の着替えバックに仮面ライダーフォーゼを描いた。絵描いてるときは何にも考えなくていいからただ楽しい。それからサイが見つけ出した「あまちゃん」のDVDを観て(このドラマはやっぱり面白い)、さすがにずっと室内に居れなくなってきたので小雨になったのを確認してカッパを着て図書館まで歩いて行く。子どもコーナーで絵本や紙芝居を読んだあと、本を借りて図書館を出た。図書館の近くの入ったことないが気になっていた手芸屋さんが開いていたので入ってみる。やや古いかわいいボタンやアップリケが大量に売っていた。サイのTシャツにつけようと、恐竜と新幹線のアップリケを買う。また行こう。

それから唐揚げ屋で出来立ての唐揚げを買ってからスーパーに寄って帰宅。サイがテレビを観ている間に缶ビールを開け、まだ温かい唐揚げをこっそりひとつ食べた。こういうことが私の幸せを構成している。晩御飯はサイは希望の冷麺、私は豆腐とアボガドとレタスのサラダ。よし子のにんにく味噌でドレッシングを作ったらめちゃくちゃ美味しかった。あまりにも万能なので二個くらい買えばよかった。

夜サイが寝てから、また好きな人と電話した。なんと5時間半も話してしまったのが自分でも信じられない。相手にとって多分どうでもいい話(私がサンリオをいかに好きかという話とか、お菓子の話とか、よし子の味噌の万能さとか)をしてもうんうんと興味深そうに聞いてくれて、ありがとうと思った。「非常に」とか「とても」とか、最近書き言葉でしか遣われないようなきれいな言葉を会話の中でも自然に遣うところがこの人の魅力のひとつだなと話しながら思っていた。


6月16日(日)
夜更かししてなかなか起きられないでいたら8時頃サイに起こされる。あ、プリキュア観なきゃと思って急いでテレビをつけたらゴルフ大会の模様が映し出され、プリキュア仮面ライダーもレンジャーもないと知る。がーん。久々に静かな日曜日。すっかり晴れて風が吹いて気持ちの良い天気。たくさん洗濯する。

昼頃、駅前でうどんを食べてから新宿。伊勢丹でAちゃんのお祝いを買いたかった。が、サイがカードゲームをやりたいと言うのを優先してビックロに寄り、ゲームが済んだらその上のGUでサイの洋服や私の部屋着を買い、そこで時間切れ。急いで表参道まで移動し、二人並んで順番に髪を切ってもらう。移動で疲れたのと睡眠不足で待っている間本気で寝てしまって恥ずかしかった。

そのあと、暑くて嫌がるサイを励ましながら岡本太郎記念館まで歩いて行き、さいあくななちゃんの公開制作を見学した。巨大なキャンバスに向き合うななちゃんの姿が目に入った瞬間、つい話しかけそうになったが、ななちゃんはこちらに背を向け集中して制作していた。「お声かけはご遠慮ください」と書いてあることに気づく。

他にも見学している人がいたが、誰も話すことなく、静寂の中大人も子どももじっとななちゃんがキャンバスに向かう様子を見つめたり撮影していた。さいあくななちゃんが描く様子を見るのは先日渋谷のヴィレヴァンで観て以来二回目だったが、あの時よりずっと大きい壁一面のキャンバスだったし、あの時は1時間くらいだったけど今回は企画中(一週間くらい?)毎日書き続けているようだった。行ったのは夕方だったので、もう今の時間は描いてないかもしれないと少し思ったがそんなことはなかった。ということはななちゃんは朝から閉館まで毎日ずっと描いているのだろうか、などと目の前の現在進行形で変化する生き物のような作品を眺めながら考えた。

さいあくななちゃんの作品には多くの色や筆跡が重ねられているため、一見無秩序に塗られたり描き殴られているように見えるかもしれないが実ははっとするほど繊細で美しい均衡が存在すると私は思っているのだが、それは頭で考えた結果、というよりななちゃんのその瞬間瞬間の感覚からダイレクトに生まれている気がする。と言葉にするとつまらないが、ななちゃんがピンクのヘッドフォンをして筆を持って広いキャンバスの前を動いて色んな態勢で塗り重ねていく様子はとても美しくその光景自体が作品みたいだった。人が生きているとはこういうことだなと胸が熱くなった。サイと私は岡本太郎の作品である穴が空いた椅子に座って眺めていた。サイは前にワークショップをやってもらった時とは違うななちゃんの様子に少し戸惑っているようだったが騒ぐことはなくななちゃんを見つめていた。永遠にキャンバスの前にいたいと思ったが、大人しくしておかないといけない空気にやがて耐えられなくなったサイが移動したがり、常設展をさっと観たあと外に出た。

帰る前にひと息、と思い敷地内のカフェに立ち寄る。太郎の彫刻作品や並んだ緑溢れる庭が眺められる窓側の席にサイと並んで腰かける。私はハイボール、サイはリンゴジュース。サイが何か食べたいというのでチーズケーキも頼んだ。甘さ控え目のお酒によく合う味のチーズケーキだったがサイは美味しい美味しいとよく食べていた。夕方の風が吹いて気持ち良く、ここが都心の街中だと忘れてしまうくらい静かで、とても居心地の良い時間だった。サイと並んでお酒を飲んだりケーキを分け合ったりデートみたいなことができるようになったんだなとしみじみした。記念館を出たら近くのバス停から渋谷駅までバスに乗り、電車に乗って帰宅。少し疲れたけど楽しい一日だった。

こうやって私とサイの思い出が少しずつ積み重なっていくことが嬉しい。片親だとできないこともあるからサイがかわいそう、みたいに母親に言われたのがどうも理解できない。かわいそうなんて思いたくない。二人だけではできないこともあるかもしれないが、私たちは私たちなりに、好きなことを全うしたり笑い合ったりして楽しく生活している。これから夏がやってくる。花火もしたいし海も見たい。楽しみだ。

高校生ごっこ

しばらく日記をつける気にならなかったが再開できた。いつの間にか、春が終わり夏が始まっていた。

 

6月5日(水)
貧血と夏バテ(早くも?)で視界がぼんやりしたままフラフラでお迎えに行く。冷蔵庫に水とビール、冷凍庫に冷凍ごはんがなかったことを思い出し、スーパーまで自転車を走らせる。スーパーの隣の活気のない寿司屋で巻き寿司を買ったあと、スーパーで水や明日の分の食糧を買ってずっしり重い。家に着いた時には疲れ切っていた。私が元気ないとサイは敏感に感じ取って機嫌を損ねる。
重い荷物を抱えて「ママね、具合悪いんだ」と言うと「え、なんで?なんとかしてよ!」と一層イライラされる。サイがいつも優しいことはわかっている。でも私が弱っていると不安になるらしく大抵不機嫌になる。あーだれか助けてくれーと思いながら、エレベーターのない小さなマンションの最上階までのぼる。慣れたけどやはりきつい。身体が汗でべたべたする。サイも暑そう。

二人とも最低のテンションで家に着き、サイはお腹が空いているようだったので海苔巻きを食べさせる。私は一刻も早く汗を流したかったので「ママお風呂はいってるね」と言って食べているサイを残して風呂場に行く。すると途中で機嫌を直したサイがやってきて、結局一緒に入る。「もうたべちゃったよ」と嬉しそうにしていた。ほっ。私は風呂上りにサイの残りのごはんの用意をしながらビールを一気に飲んだ。やっと疲れが少し取れた。だし巻きがうまくできたのでサイに「きれいにできたね」と褒められる。

食後の片づけをして、乾いた大量の洗濯物を畳んで引き出しにしまう。サイはその間リュウソウジャーのワークブックのシールを貼るページだけ喜んでやり、そのうち眠くなったらしく寝た。今日の洗濯物をベランダに干し終えたところで体力の限界。サイと二人暮らしするときに適当に買った中古の安い洗濯機で雨の日以外毎日洗濯している。洗濯なんて本当は大嫌い。フルタイム労働のワンオペ育児は過酷だが、助けてくれる人がいるわけではないので自分でやるしかない。寝る前に妹の誕生日を祝うのを忘れていたことを思い出し、適当な祝い方でごめん、と思いながらラインする。


6月6日(木)
6月6日に雨ざあざあ降ってきて~という絵描き歌があるがよく晴れていて日差しがきつい。梅雨はいつくるのだろうか。

サイは最近保育園から帰る時、自転車に乗らずに歩いて帰りたがる。それはお迎えの時間が重なった同じクラスの他の子達と一緒に歩きたいからで、彼ら彼女らは横一列に手をつないだり縦に並んだりして、坂道をけらけら笑いながら嬉しそうに下って行く。そして坂の途中にある小さな鳥居に必ず立ち寄って一人一人参拝する。意味をわかっているのかいないのか、順番に鐘を鳴らし手を叩いてお辞儀をする。それが楽しくて仕方ないという風に。親たちはそんな光景を今日もまた…と眺めつつ横に自転車を停めて無言で待っている。以前「なかにはなにがはいってるの?」サイに聞かれたので「かみさまがいるんだよ」と答えたら「え、この中に?」と不思議そうにしていた。

子ども達は使命のように今日も鳥居に寄った。その後ろで日が沈んでいくのが見える。こんなに毎日欠かさずお参りしていても、いつか彼らはすっかり忘れてしまうだろう。この光景がとても美しくて、写真に収めたいと思うがそれも違う気がして私は目によく焼きつける。けらけら楽しそうな彼らの姿を私は何十年後か年老いたときに思い出すのだろうか。

夕食はカジキのソテー、キャベツ、豆腐、だし巻き卵、それに私はビール、サイはバナナ(ごはん切れ)。
ネットで買った漫画がたくさん届いて嬉しかった。


6月7日(金)
いつくるのかななんて思っていたら雨が降り出し、ついに梅雨入りしたらしい。ドラえもんとしんちゃんを観つつ昨日届いた漫画を読む。翌日のことを何も考えなくていいから金曜日の夜が一番ほっとする。


6月8日(土)
朝からどんよりしていたが雨は降っていない。Sちゃんに会いたいなと思っていたら「今日どうかな?」と連絡が来て嬉しくなる。SちゃんIちゃんと池袋で待ち合わせしてミルキーウェイでお昼ごはんを食べる。Iちゃんは入口から「おほしさま~」と喜んでいた。対するサイは「オレはかわいいものにいちいち反応なんてしないぜ」という風にクールを装っていたが、食べたがって頼んだミルクレープが運ばれてくるとにやにやしてがっついていた。Iちゃんが頼んだイチゴパフェをちょっともらう。甘くて直球の、小さい頃デパートの大食堂で食べたパフェあるいは学生の時に挑戦した巨大パフェと同じ味がした。

ミルキーウェイはガラス張りになっているので席から外の様子がよく見える。たくさんの人が横断歩道を行き交っていた。サイがトミカを持っているのと同じバスが何台も通り過ぎる。カラスが信号に止まっている。食べ終えて暇そうだったサイは窓の外を眺めていた。「カラスが信号の上にいるでしょ」「え、どこ?」「ほらほらあそこ」「あー」と会話をしてもたせるも、Iちゃんとともに次第に落ち着いていられなくなったので店を出た。Sちゃんも私も次はゆっくり来たいなと思ったに違いない。サイはいつかここに女の子を連れて来ることがあるのだろうか。いやサイが大きくなるまでこの店は存続しているのだろうか。などとぼんやり考えていた。

すぐ横のサンリオショップに寄ったのち、サイが仮面ライダーのゲームがしたいと言うので向かいのゲームセンターに入る。ここにはないとわかっていたが納得させるために入った。サイとIちゃんはお金を入れてない状態のマリオカートの運転席に並んで座りひとしきり遊んだあと、太鼓の達人を6回くらいした。サイの好きな仮面ライダーの曲があったので喜んでいた。一年ほど前にやった時は全然できてなかったが、意外に上手に叩けていた。
プリクラの機械が目に入ったので「プリクラ撮りたいかも…」とおずおずSちゃんに言うと「撮ろうよ」と静かに乗ってくれる。サイも「しゃしんとる!」と意外に乗り気だった。プリクラ機の部屋がどうなっているのか、興味深そうにのぞいていた。若い子ばかりいるプリクラ機コーナーで気後れしながら空いている機械にお金を入れて中に入る。記念写真的な簡易的なのをのぞけば、ラクガキできるプリクラなんて十年以上ぶりだ。連写されていくカメラに向かってみなでキャーキャー言いながらそれらしいポーズで撮った。今のプリクラは目が大きくなると知っていたが実際に自分やサイの顔がそうなっているのを見ると大笑いしてしまった。かわいいのか何なのかよくわからない。サイは意気揚々とスタンプでクマ耳など飾り付けしていた。出来上がったプリクラをSちゃんが切り分けてくれた。それを受け取った時、うまく言えないが何とも言えない嬉しさがこみ上げた。このプリクラを誰に見せるわけでもないが、嬉しくてお守りみたいにずっと持ち歩いている。

その後いつもの屋上で子ども達を遊ばせつつSちゃんと並んでお酒を飲んだ。たくさん歩いた後のビールは美味しい。私は今好きな人がいることをSちゃんに話した。いつも異性関係がうまくいかないからどうせまたうまくいかなんじゃないかと不安に思ってることとか。Sちゃんの過去の話も聞いた。高校生みたいにこうやって話せる友達が私にいてよかったなとしみじみした。お酒飲んでるし子どもいるし三十もとっくに過ぎて輝かしい高校生からは程遠いけど、高校生になりたい瞬間が私にもある。ミルキーウェイに行ってプリクラも撮って、楽しい一日だった。

幸福感が後押ししたのか、夜サイが寝たあと、好きな人に初めて電話してみた。かける前は死ぬほど緊張したけど、話し始めたらなんてことはなく、会話のすべてがただただ楽しくて気が付いたら3時間も話していた。


6月9日(日)
好きな人とサイと三人で我が愛するマエケンが出演するステージを観るために長野の富士見高原に行った。と書くと自分でも混乱するほど唐突すぎて意味不明なのだが、事実として朝から長野へ行き、夜に帰って来た。起こった出来事が大きすぎて今はまだ文字にできないのでそれはまたいつか。

少なくとも土曜の夜に勇気を出して電話した時点ではまさか翌日会うとは全く思ってなかったし、長野に行くなんて微塵にも思っていなかった。電話口で行こうかと言われた時は冗談かと思った。夜中に慌てて準備しながら、まだ信じられなかった。朝起きたらホットケーキを焼いて、洗濯して掃除してサイと公園に行ってカレーを作るいつもの日曜日をするつもりだった。人生何が起こるかわからない。私も楽しかったが、私以上にサイが楽しそうだったのが何より嬉しかった。

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翌朝起きて布団の中でぼんやり起こった出来事を振り返ると、もうこれで死ぬのではないかというくらい幸せな経験をしたという実感がじわりじわりと湧いてきて、死ぬかどうかはさておき、とにかく今日からがんばって生きようと強く思った。何もかも夢の中の出来事だったのではないかとさえ思うが、帰りに買ったお土産はちゃんと冷蔵庫にあるし、好きな人のことをもっと好きになった。

しまった、これは育児日記だった。いや育児日記と決まっているわけではないので、別に何を書いてもいいのだが、こんな歳にもなって好きな人が…などとつらつら書いている自分がやや恥ずかしい。公開されている以上、一体何人がこの日記を読んでくれているのか知らないが誰かが読んでくれているかもしれず、もしサイの日々の成長を楽しみに読んでくれている人がいるとしたら、こいつは何を色惚けたことを書いて、と思われるかもしれない。でも、誰かを好きだと思う感情に久々に、いや初めて、真正面から向き合えて(今のところ)肯定できている。私は今、女子高生なのかもしれない。何を言っているのだろうか。いつ死ぬかわからない三十代の会社員で母親だ。

自分みたいな人間が幸せになるのは大罪、という幼少期からべったりついて離れない呪いをいい加減剥がしてしまいたい。べりべり剥がして海に流してしまいたい。幸せがいつから怖くなったのだろうか。

新緑のきせつ、到来

4月15日(月)
眠れなかったせいで朝から眠い。でも先週ひどかった貧血や眩暈は落ち着いた。

お迎え後、薬局に寄って買い物して帰ろうとするとサイが突然トイレに行きたいと言い、思い当たる場所がなかったので薬局の向かいの中華屋に急いで駆け込む。無事トイレを借り、入店してしまったため何か持ち帰りで買って帰ろうと思うもサイがここで食べたいと言い、結局食べて帰る。月曜から外食してしまった。まあ、いいか。仕方ない。レモンサワー、モヤシ炒め、餃子。サイはラーメン。モヤシ炒めが油でベタベタであまりおいしくなくて悲しかった。帰宅して仮面ライダー。鎧武とフォーゼ。


4月16日(火)
気温が高かった。晩ごはんは照り焼きチキン、新玉ねぎと人参の味噌汁、トマト。照り焼きチキンのたれを配合をあまり考えず適当にしたら美味しくできた。酢を入れた方がいい。あと外側の皮を最初にパリパリに焼いた方が肉が柔らかくなる。サイもよく食べてくれた。食後、パルムのバナナ味(おいしい!)を半分個して食べて仮面ライダー。フォーゼとダブル。ダブルかっこいい。ダブルは二人で一人のライダーなので、身体の右側と左側で半分ずつ違う色をしている。どっちが何色なのかとサイに何回も聞かれるがよく分からない。サイが寝た後、コジコジを少し読んでから寝る。仙人のような人がコジコジに怒って「罰としてお前の好きなものを消してやろう」と言った時、コジコジが「ぜんぶだよ」と言ったら仙人も含めて世界が全部消えかかっていったのが印象的だった。


4月19日(水)
晩ごはんは冷蔵庫にあるもので済まそうと思い、ソーセージ、新じゃが、新玉ねぎを甘辛く煮たものを卵とチーズでとじた適当丼。サイはまあまあ食べてくれた。私はごはんの代わりにビール。最近毎日飲んでいる気がする。ダメだ。食後、サイがいらない発砲スチロールと段ボールで工作を始めたがガムテープがなくマスキングテープで留めたため、うまくいかず癇癪を起こす。「明日ガムテープ買いに行こう」となんとか宥める。布団に入った瞬間眠気に襲われてすーっと眠る。


4月18日(木)
今日も朝から暑い。サイは半袖。「ママは半袖じゃないんだね」と言われる。スーパーで買い物してから帰宅して郵便受けを開けると、白い封筒に大きく”Rock’n Roll Forever‼”という文字とギターの絵。あっと声が出た。予約していたさいあくななちゃんの画集が届いた。字を見る限り、封筒に書かれた住所や宛名、絵はななちゃんが書いてくれたらしかった。嬉しくてそのまま本棚に飾る。本はずっしりとしていて、紙の質も良く、文字もたっぷりでものすごい読みごたえがありそうだった。少しだけ見て、時間をかけてゆっくり見ようと思いまた封筒に戻した。こういう本を作ってくれる人がいてよかったなと嬉しさを噛み締める。スーパーで買ったメンチカツの油が悪かったのか、横になってもずっとお腹が変な感じだった。


4月19日(金)
やっときたドラえもんとしんちゃんの日。食後、サイは筆ペンで何枚も絵を描いた。スーパーでもらってきた「お母さんの似顔絵を描こう」と書かれた紙にも私も顔を描いてくれた。どんどんうまくなる。ペン先が潰れてしまうほど筆圧が強い。子どもらしい。色んな画材で描いてサイが好きな画材を見つけられたらいいなと思う。


4月20日(土)
サイと会社のMJ部の人たちと一緒に科学未来館に行った。お昼は新橋のポンヌフで食べようと予定していたら臨時休業だったため、ニュー新橋ビルのFujiという喫茶店に入った。Fujiは奥に富士山の大きな写真が飾ってあり、お店の人はサイにも親切でとても居心地がよかった。結果オーライ。科学未来館では重機展がやっていて、サイはまあまあ喜んでいた。それから常設展をぼんやりと見てまわり、アイスを食べ、ASIMOのショーを見てから未来館を出た。それからお台場まで行ってガンダムを見た。サイはかっこいい~と重機展のときより興奮していた。やはり働く車より巨大ロボが好きなのかもしれない。月島まで移動し、みんなでもんじゃを食べて帰った。もんじゃの具を自由に5種類選べるスペシャルメニューがあったので、組み合わせをみんなで悩んで考えて具を変えて三回頼んで、大いに盛り上がった。歩き回って疲れたけど楽しかった。


4月21日(日)
いつもの日曜日。ジオウは未来編を経て過去ライダー登場編に最近また戻り、面白くなってきた。ツクヨミ回だった。アギトのことはあまり知らなかったがかっこいい。次回予告で響鬼が登場し、響鬼が好きなサイは喜んでいた。たしかに音楽のライダーってかっこいい。あと主人公がおじさん(細川茂樹)なのもいい。

片付けをしていたら遅くなったので簡単にお昼ごはんを食べてから選挙に行き、公園をはしごした。最初の公園を出てからマクドナルドとコンビニに寄り、ハッピーセットと缶ビール。それから別の普段あまり行かない公園に行き休憩。満開だった桜はすっかり新緑に変わり、青々とした葉が気持ち良かった。サイはすべり台を面白がり、何度も繰り返し滑っていた。すべり台というのは登って滑る、というただそれだけに楽しさがありそれだけのために存在するところがいいなとサイが生まれてから感じている。たかが遊具とはいえ、良いすべり台、悪いすべり台がある。良いすべり台は傾きが絶妙ですーっと降りていくが悪いすべり台は摩擦が生じて滑りにくい。プラスチックより、石やアルミ(金属?)の方がよい気がする。すべり台評論家になったところでどうしようもないわけだが、サイといるとこんな、どうしようもない知識が増えていく。楽しい。
スーパーで買い物して帰宅。さすがに疲れた。晩御飯は焼きそば。サイはおやつを色々食べていたのであまり進んでいなかった。


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Fさんとは物理的な距離からだんだん心まですれ違うようになり、結局別れてしまった。ただ、一緒に過ごした時間が極端に少なかったため悲観していない。Fさんと私の間にあったのは最初から最後まで友情ですらなかったのかも、と後々考えたがもうよく分からない。別れてから一度も連絡を取っていないが、登録したままになっていたSNSに近況報告のようなことが書いてあった。元気ならそれでよい。人が人とうまく噛み合わなかった、ただそれだけのこと。それにしても、異性を好きになる感覚がいよいよ麻痺してきている気がする。今のサイとの二人の生活が楽しいので問題ではないが、この人と一生添い遂げたいと思える人にもし出会えたら、それはそれで幸せなことなんだろうなと想像する。

小学生くらいの時、夢で見たのだったかそれは定かでないが自分の脳内だけに幻想のような男性がいて、その人にいつか会えると想い焦がれていた。顔は発光してよく見えないが、優しくて穏やかで横にいるだけで幸せな気持ちになる。私と彼は教室の一番後ろの席で隣り合わせに座っている。その顔の見えない人は大人になったら実体として目の前に彗星のごとく現れ、彼と結婚して幸せな人生を送るのだろう、と恋を経験したことのない私は根拠もなく思い込んでいた。それから今まで色んな男性に出会ったが、あの夢の人とは決定的に違う。当たり前だ、あれは幻想だ。それでも、彼がいまだに私の知らない世界のどこかにいるのではないかと期待している自分に時々気づいてぞっとする。あの教室の光景が頭の片隅に残像として染みついている。来るはずのない人を待ちながら死を迎えるのだろう、と最近よく思う。この話は誰にもしたことがない。馬鹿みたいだし、こう文字にすると気持ち悪いから。そんな風だから今まで真っ当な恋愛ができなかったし人を心から愛せないのかなとは薄々感じている。

育児日記のはずなのに、全然関係ないことを書いてしまった。いけない、いけない。

放課後ミルキーウェイで待ち合わせをする人生があったならば

4月5日(金)
有休。もう残っていないと思っていたら意外にまだ残っていてよかった。ないと信じていたものがあった時はだいたい嬉しい。Fさんとひと月ぶりに会った。大阪に前泊して朝イチの新幹線に乗って来てくれたらしい。池袋で待ち合わせして、西武線に乗ってパーラー江古田へ行った。ずっと行ってみたかったパン屋さん。入口にたくさんのパンが並んだショーケースがあって店内は薄暗く古い民家のよう。資材やストーブが雑然と置かれ、何もない無機質な空間よりむしろ落ち着く気がした。店の人も親切だった。チキンと舞茸のオーブン焼きのサンドイッチがとてもおいしかった。朝からワインを飲んだ。Fさんは「草の味がします」と言われた癖のあるワイン、私は「爽やか」と言われたやつにした。平日なのにお客さんがひっきりなしにパンを買いに来ていて、早い時間なのに喫茶も埋まっていた。会計時、迷いに迷ってショーケースから持ち帰る用のパンを選んだ。店を出た瞬間、春の陽気が心地良かった。人がいなくて静かだった。小さな神社に咲いていた桜がきれいだった。ずっと地元にいて桜を見ていなかったFさんは喜んでいた。夕方別れてサイを迎えに行き、三人でファミレスで食べて帰った。いい日だった。

4月6日(土)
サイとFさんとまた代々木公園。お花見。簡単なお弁当を作り、あとはFさんにお惣菜とワインを買ってきてもらった。思いつきでオイルサーディンと紫蘇とチーズでおにぎりを作ってみたら美味しかった。唐揚げは味付けをやや失敗した。甘くなりすぎた。フライパンでやるとカラッと揚がらない。花見シーズンなので原宿駅も公園内も大混雑だった。大学生らしき人や家族連れ、たくさんの人がシートの上で飲食したり談笑していた。Fさんはサイとよく遊んでくれて、サイが買った雑誌の付録も組み立ててくれた。暗くなるまでずっと公園にいた。最後は少し寂しかった。途中駅でラーメンを食べてまた地元へ帰るFさんと別れた。駅で電車に乗る前、Fさんの姿が突然見えなくなったので別れの寂しい空気が嫌でぱっと消えてしまったのかと本気で思っていたらチャージしていただけだった。「帰ったのかと思った…」と言うと「そんなことするわけないよ」と言われた。


4月7日(日)
余韻に浸りつつ、ちょっと寂しいいつもの日曜日。


4月11日(木)
約一年ぶりに打ち合わせをしに本社へ行って、大したことをしていないのにどっと疲れた。知らない間に新しい高層ビルや橋が建設中だった。街はどんどん変わっていく。


4月13日(土)
マクドナルドでお昼を食べて(おまけがトミカでサイ喜ぶ)から、サイの希望でビックカメラに行き仮面ライダーのガンバライジングカードとブットバソウルメダル。ゲームが苦手な私も慣れてきた。なんでもやれば慣れる。今度は失くさないように気を付けた。それから屋上で二人でひとつアイスを食べてユニクロニトリと無印をはしごして生活用品やサイの洋服を買った。いつもニトリの入り口にいたペッパーくんがいなくなっていた。あの独特の大きな瞳を見開いて通る人を観察していたペッパーくんが跡形もなく消えてしまい、行く度に話しかけていたサイは悲しんでいた。歩き回って疲れたので地下の蕎麦屋で食べてから帰宅。ザ・生活という感じの一日。


4月14日(日)
サイが面会している間に池袋でAちゃんに会った。お腹は先月会った時よりもさらに大きくなっていて、当たり前だが中に人がいるのだなとしみじみした。Aちゃんとこうやってゆっくり話せるのもあと少しかもしれないと思うと一緒に歩いているだけで感慨深かった。西口のロサ会館にある洋食屋でオムライスとエビフライを半分ずつ食べて(私だけビールを飲んで)、その後なんとなく東口方面に歩いて行ったものの特に目的地もなく、通りがかったミルキーウェイで星座のパフェを半分こした。ずっと行きたかったけど入る機会を逃していたミルキーウェイ、メニューも敷かれた紙も全部かわいかった。紅茶のポットが星形だった。星のクッキーがのったパフェは甘くて若い味がした。色んな話をしてたくさん笑った。店内の騒がしさがかえって心地良かった。今度はサイも連れてきてあげたいな。

Aちゃんと別れて駅までサイを迎えに行くとサイは何か買ってもらったらしく興奮状態だった。スーパーで買い物して夕方帰宅。晩御飯を作ろうとしたら買ってもらったリュウソウジャーのミニプラを今すぐ組み立てるよう命令され、集中して作っていたら時間がなくなり晩御飯は簡単に済ます。ルパパトのミニプラは途中で部品を失くした上に壊れやすく再築不可能になってしまったので説明書をちゃんと見て慎重に組み立てた。プラモデルなんてやったことなかったから最初は苦労したが、繰り返し作るうちにコツが掴めてきたし完成したら嬉しい。サイがいなければ触れることのなかった世界。サイは完成した合体ロボットをえらく気に入ってパーツを何度も付け替えていた。

サイが寝てからrajikoで毎週楽しみにしている「前野健太のラジオ100年後」。実際のオンエアは9時だがその時間はサイが起きていて聴けないのでいつも寝る前に聴く。それがまたいい。日曜の夜の、さあ明日からまた一週間という少し憂鬱で寂しい時間。目が疲れて映像や活字を取り込む余力がない時もラジオならすっと入る。冒頭で、先月私が初めて番組に送ったメッセージを全文読んでくれて感激した。自分の書いた拙い文が一字一句読まれている恥ずかしさと長すぎることに対する申し訳なさがありつつやっぱり嬉しくてドキドキが止まらなかった。「こうやって言っていただけてありがたいですね」「歌うのは趣味なのでこれからも歌いますよ」と言ってくれて嬉しかった。ラジオネームを何回も呼んでくれた。興奮したのでその後の内容があまり頭に入ってこなかった。前野さんの声でいつも安眠できるのに今日に限っては眠れなくなってしまった。

それにしても、好きな人が自分の書いた文を声に出して読み上げるというのは相当興奮するということがわかった。これも性癖なのだろうか。頷いたり返答してくれると会話しているような気にさえなる。ずっと遠く離れた場所にいるのに秘密の交換日記を交わしている関係のような、不思議な感覚から生まれるドキドキを誰に言うでもなく一人毛布の中で噛み締めていた。また出そう。今度はハガキで。

描くことは生きること

3月25日(月)
帰宅してごはんを食べようとしたら、サイが棚に置いてあるZくんのプレゼントを開けたいと言い出した。プレゼントだからダメだよ、と言うとわっと泣きだして、それからわんわん大声で泣き叫ぶ。あれはZくんのだから開けられないよと言い聞かせたり、今度の休みに同じものを買いに行こうと宥めても一向に聞いてくれない。「サイくんいまおんなじのがほしいの!!」「あれをあけたいの!!」と顔をゆがめて鼓膜が破れそうなほど大きな声で叫びながら涙を流し続ける。抱きしめても、何をしてもダメで途方に暮れる。怒らないように気をつけて真剣に話しても理解してもらえず、どうしたらよいのかわからなかった。結局どうしようもなく、最後は放っておいてサイが泣き叫ぶ中、私だけ黙々と晩御飯を食べた。途中でヤマトからAmazonで頼んだサイの靴と読書灯が届き、読書灯のスイッチに興味を示してようやく泣き止んだ。それからはもう泣かなかった。こんなに泣き続けたのは久しぶりだったのでさすがに困ってしまった。

仮面ライダーフォーゼを観てお風呂に入って、サイと二人で倒れるように眠る。


3月26日(火)
お気に入りの春のコートを職場に着て行きたくなくて、まだ冬のコートを着ている。が、さすがに暑い。今日はアボガド・ハム・オムレツのサンドイッチ。

退社後、肌寒いが確かに春の空気を感じて、一体自分はいつまで冬のコートを着ているのかとさすがに思った。駅を出たところの広場のような公園のような場所の桜は日光がよく当たるのか他の場所より早く咲く。もう7分咲きくらい。スーツを着たおじさんがコンビニの揚げ物を片手に、もう片方の手に缶ビールを持ってちょっと疲れた表情で宵の空に浮かぶ桜を見つめていた。お花見の形は色々あると思うが、毎年一人で立ったままぼんやり桜を見上げている人を見かけるとぐっと胸にこみあげるものがある。花と向き合う時の静寂や孤独に愛おしさを感じる。私も缶ビールを飲みつつゆっくり花を眺めたいところだったが、お迎えに行かねばならないので、自転車でさっと通り過ぎた。

冷蔵庫にあったのは、豚肉の残り、キャベツ、たまねぎ。サイが嫌がらないようにキャベツとレンジで柔らかくした玉ねぎ、その上に焼肉のたれに漬けた肉を載せ蓋をして弱火で蒸し焼きにしたら思いの他美味しくできた。肉も直接焼かないと柔らかかった。新玉ねぎだともっとおいしいかもしれない。いつも嫌がって玉ねぎを一切食べてくれないサイがよく食べてくれたので嬉しかった。食べてくれると料理する意欲も湧く。サイがなぜか最近関心があるらしいニンニンジャーを観ている間に食器洗い、洗濯。

ひと段落してAmazonで買ったマエケンのCDをパソコンに取り込もうとしたら「サイくんやる!」とCDを入れたがる。変身ベルトのように、何かを別の何かにセットしたり、はめる動作がサイは大好き。「ここに音楽が入ってるから、裏側は触っちゃいけないよ」とディスクの裏側を見せて言うと「ここにはいってるの?」と不思議そうにしていた。それから一緒に聴いた。『ファックミー』の最後に入っている、「牛」という牛の声だけ収録した歌のない曲をサイは面白がってげらげら笑っていた。

お風呂に入って就寝。昨日届いた読書灯で本を読もうと思っていたが、布団に入った瞬間眠っていた。サイにもいつそれ使うの?もう使った?いやまだ…とやたらと気にされた読書灯、いつ出番がくるだろうか。


3月27日(水)快晴、絶好の散歩日和
いよいよ春の気候なので、観念してスプリングコートをまとう。家の前の桜の花びらが歩道に落ちていて、帰りに拾おうとサイと約束する。昼はハムアボガドオムレツのサンドイッチ。帰りは料理する気がおきず、ついでにお酒も飲みたかったので、いつもの中華屋で食べて帰ることにした。サイは「チャーハンもたべれるからこっちのセットにして」といつもはラーメンだけなのに、ラーメンにチャーハンがついたお子様セットを頼むように言う。私はハイボールと適当なつまみ数品。運ばれてきて、「ねぎだってたべられるよ」とパクパク食べていてすごいねー!と私が驚いていたら数口食べて「やっぱりむり…」と手が止まり、結局残りは私が食べた。最近野菜もよく食べるし、ひどかった偏食が少しおさまってきた気がして嬉しい。家に入る前に歩道を見たら花びらはすっかりきれいになくなっていて、「だれがおそうじしたのかな」とサイは落ち込んでいた。洗い物がないので、アイスを食べながらフォーゼと鎧武を観た。お風呂に入ってから大森さんのラインライブを途中まで観た。サイが聞き取って気になった歌詞の意味を聞かれて、成長を感じた。

深夜、Fさんと電話。なんとなく流れで、過去の恋愛の思い出をお互いに発表した。詩みたいに美しい話を聞いた。嫌だとか全然思わない。むしろ、聞いているうちにFさんのことが好きだった女の子に対して自分が同情なのか恋愛感情なのかよくわからない淡い想いさえ抱いているような気がした。私は話せるきれいな思い出なんて少ないなと思いつつ、高校生の時片想いしていた人と数年後同窓会で再会した話をした。「〇〇さん、すてきな人だよね」と自分のことを急に言われたので、「すごい性格悪いよ」と返したらそれでもいいよと言われた。Fさんは映画の台詞みたいな言葉をときどき真面目に言う。そういうところが私は好きだ。「過去は過去だから追及しようと思わない。それより今が大事かな。」と言っていた。そのとおりだ。


3月28日(木)晴れ時々曇り
掃除されてしまう前に拾おうと、朝家を出て保育園に行く前に落ちている桜を拾った。花びらが揃っていて汚れのないきれいな花弁。「それ、女の子にあげるといいよ」と私が言うと「え、なんで?」と不思議そうにしていた。結局自転車に乗っているうちに花びらが吹き飛んでしまい、悲しんだサイは残った花を私のかばんに突っ込んだ。

お迎え。サイが0歳児の時に担任だったO先生が新年度から別の保育園に行くので、挨拶をした。サイの担任をしてもらっていた時はO先生は保育士になって初めての年で、よくベテランの先生に叱られていたのを目にした。「0歳の時からずっとありがとうございました」と言うと、「あの時は小っちゃかったサイくんが…」とか「あの時は私もまだ保育士になったばかりで…」などとお互いに感傷に浸っていた。あれから4年、あの時寝がえりもできなかったサイはこんなに大きくなった。いつも怯えたような表情をしていた0先生も今では自信に満ちた顔で子ども達を見ている。目が大きくてアイドルみたいな先生。次の場所でもきっとうまくいきますように、と親なのか友達なのかよくわからない目線で先生のことを想った。

Yくんがリュウソウジャーのリュウソウル(おそらく変身の時に使う騎士から恐竜に変形する手のひらサイズのアイテム)を持っていて、サイは羨ましそうに眺めていた。Yくんはうちと同じように一人っ子で、何でも買ってもらえるのか毎日違う玩具を手に通園している。欲しいものはあまり我慢させず買い与えているようだ。人の子育てのことをとやかく言いたくないが、うちは同じようにはできない。でもサイはYくんが持っていると「Yくんがもってたからサイくんもほしい!」といつも言う。困る。あれもほしがるだろうなと先回りして読んで、Yくんのお母さんにどこに売っているか聞いたらコンビニで買えるという。それほど高くなさそうだったので、「サイくんもあれほしい?」と聞くと目を輝かせていた。話に聞いたとおりコンビニに売っていた。サイは嬉しかったらしく、家に帰っても寝る前もずっとそれで遊んでいた。大事にしてほしい。晩ごはんは豚バラと大根の甘辛煮。大根を酸っぱいと言ってあまり食べてくれなかった。

なかなか眠れず、rajikoでマエケンのラジオを聴いたら、ここ最近自分に寄り添ってくれていた『3月のブルース』を歌ってくれて嬉しかった。前野さん自ら「ボソ語り」と呼ぶ、耳元で囁くように歌う弾き語りを深夜、布団にくるまりながら聴くのはとても心地よい。子守歌みたい。静まりかえった部屋でたった一人(正確にはサイが横で寝ているがお互い寝ている時は一人になれる)でこれを聴いていると歌声がじわじわと身体の先端まで染み渡り、毒素がふーっと抜けていく。やっぱりラジオっていいな。歌詞が気になり、CDを引っ張り出して歌詞カードをぱらぱらめくっていたら睡魔が訪れてそのまま寝てしまっていた。


3月29日(金)どんより曇り空 寒い
家を出て自転車に乗る前、サイが桜を拾いたそうにしていたので今日もきれいなやつを二つ拾った。サイは私のコートのポケットに入れようとしたが潰れるといけないので、マンションの一階の他人の家の窓枠にそっと置いた。「帰りまでここにいてもらおうね」と私が言うとサイは桜に「まっててね」と語りかけた。

お迎え。保育園のクラスが終わる日。新しいクラスでも今の三人の担任の先生のうち二人がそのまま持ち上がるので特に不安はない。それでも同じクラスの子が何人か転園する。昨日挨拶した0先生にもう一度挨拶した。サイは挨拶の途中でぴゅーっとどこかへ行ってしまった。こういう時、わりと照れるタイプなのかもしれない。金曜日だからか、一年の最後の日だからか、園庭はいつも以上に騒がしかった。家に入る前に朝桜を置いた窓枠を見たら二つともどこかへ飛んでなくなっていた。二人でもう一度拾う。

今日もドラえもんとしんちゃんはやってない。ビールを飲みながらしんちゃんを見てげらげら笑わないと週末がやってくる感じがどうもしない。


3月30日(土)
昼からZくんの家で誕生日会。行く前、プレゼントに添えるカードを作ろうと誘うと最初は乗り気でなかったが、Zくんの似顔絵を描いてくれたのでそれを飛び出すカード風にした。「Zくんだいすき、またあそうぼうね」と書けと指示されたので、言われるまま書いた。サイはもうプレゼントに執着していなかった。これは贈るものだと理解したらしい。えらい。

花屋に寄って花束を買ってからZくんの家へ。とても広くておしゃれでセンスが良く、入った瞬間驚いた。古いマンションの最上階を改装したらしい。高そうな最新のおもちゃがたくさんあり、Zくんの一人部屋もあった。私たちの他には、同じクラスのサイとも仲が良いHくんとお父さん、Zくんのおじいちゃん(外国人)・おばあちゃん、お父さんの仕事の同僚らしき人がいた。どうやらごく身内の誕生日会に呼んでもらったらしい。おじいちゃんが持ってきた外国の伝統的な甘いお菓子をおいしいと言ったらどうぞもっと食べてくださいと勧められてしまい私はそればかり食べていた。特に会話が盛り上がるわけではないので、私は子どもと遊んだりZくんのお母さんと話していた。サイはきれいな空間に目新しい玩具が山のようにあるという夢のような状況に興奮状態だった。Zくんのお父さんがサイとHくんにもプレゼントを用意してくれていて、それがサイからのプレゼントと被っていた。種類違いでシンカリオンのまったく同じ玩具だった。こういうことはたまにあるのだが、好みや選択が同じだったということは喜ばしいことなのかもしれない。サイは欲しいとあれだけ泣いていたものが手に入り満足そうだった。

話を聞いていたらZくんのお父さんがどこの国の人かようやくわかった。どこだろうがイケメンだし気が利く。自分はアルコールを飲まないのに常に私たちのビールのおかわりを気にしてくれていた。父親としてもすばらしい。Zくんが何か言っていてもすぐに察する。サイにも優しくしてくれて、サイはよく懐いていた。もう少し話してみたかったが自分のたどたどしい英語が流暢に英語を話す日本人の同僚にバレるのが恥ずかしく、なんだかあまり話せなかった。Zくんのお母さんも大らかで優しく、嫌味なところが一切ない。私はこの人が好きだなと話しながら思っていた。また遊んでください、今度はうちに泊まりに来てください、と言われて嬉しかった。

サイの夕飯まで御馳走になってすっかり暗くなってから帰る。私は帰ってビールを飲みつつ帰りに買った総菜を食べながら、生活にはある程度の余裕が必要だ…この家はあの家に比べてなんて汚くて狭いんだろう…と考えていた。自分が選んだとわかってはいても少し心が重くなった。今より良いところに住みたい、少なくともサイに部屋を作ってあげたい、それにはもっと稼がないと、ああどうすれば…頭の中がぐるぐるしていた。


3月31日(土)
サイは面会。その間に私は用事を済ませてから、渋谷のヴィレジヴァンガードでさいあくななちゃんのライブペインティングを観た。ななちゃんはこちらに背を向け、ディスプレイの狭い空間に立ってキャンバスに向かっていた。小さな細い身体で、絵具やパステル、水、ガムテープ、、色々な画材を使って筆だけでなく手もつかい全身で描いていた。完成かと思ったら大きな女の子の顔の上に切り離した白いスケッチブックを何枚も張り付けてまったく別の絵を描いたり、予想がつかなかった。「ライブペインティング」という名のとおり、まさに音楽のライブのようだった。何か音楽を聴いているのか、ななちゃんの身体は描きながらリズムを取って上下したり、走る前のマラソン選手のように助走運動しているようにも見えて、「描く」とは芸術であると同時に人が動いて初めて成立する身体運動なのだということを気づかされた。「生きることはそれ自体が芸術である」という大学時代の教授の言葉を思い出した。どんな芸術作品でも人の手がつくっている。それは呼吸したり食事したり、生活の延長にある、と確か教授は言っていた。最後にななちゃんは「生きる」という文字を大きく描いてライブは終了し、振り向いて少しはにかんで、オーディエンスに手をふったりお辞儀をして立ち去った。それからオーディエンス側に来てくれて、端にいた私がななちゃんと目が合うと一番最初に話しかけてくれたが胸がいっぱいでうまく言葉にならなかった。「今日はあの子、連れてきてないんだね」と悲しそうに言われ、放心状態だった私はすぐ何のことか理解できなかったが、あとで考えたらサイがいないことを気にしてくれていたのだと思う。サイにもいつか見せてあげたいな。

狭い居間のどこからもよく見える場所に額に入れたさいあくななちゃんの絵を飾っている。サイと行った個展でサイがこれがいいと言って買った緑色の髪をした女の子の絵。いつも生活を見守ってもらっている。サイと私の生活。私たちの時に楽しく時に怠惰な積み重ねの毎日がななちゃんの絵につながっているようで、生活が芸術とつながっているようで、いつも力強い気持ちになる。

春がきたから踊ってみようか

3月13日(水)
午後から東京芸術劇場にて舞台『世界は一人』観劇。上京したての頃、池袋の西口に行くのが怖かったが、今は何とも思わない。パンでも食べようかと思っていた西口公園は工事中で塀に取り囲まれていた。何やら立派な公園ができるらしい。よく晴れていて、暖かかった。バス停の横で下に座って将棋を打っているホームレスのおじいちゃんたちがいた。

チケット代が今の生活を考えると安くないから迷っていた。でも前野さんのラジオを聴いているとどうしても行きたくなり、数日前にチケットを取って休みを取って行くことを決めた。大人になってから劇を観るのは初めてだった。左右に突き出したバルコニー席だったので二階席でも俳優さんの表情がよく見えた。ミュージカルとはまた違い、会話と歌の境目が曖昧で、自由に行ったり来たりする心地良さに酔った。俳優さん達の言葉や歌、マエケンの歌声やバンド演奏が混じり合って新しい生き物が生まれ、大きくなったり小さくなったり呼吸しているのが目に見えるようだった。挿入歌がとてもよかった。マエケンが歌ったり語る姿を初めて生で観た。時にさざ波のように、時に嵐のように心臓の奥深くに迫ってきた。きっと私服であろう赤いチェックのロングシャツがとても似合っていた。松たか子はなぜあんなに歌が上手いのだろうか、濁っていた空間に声が溶け込んで透明になっていくようだった。瑛太は演技であることを忘れるほど台詞や動きが自然だった。歌もとてもうまい。松尾スズキは小学生を演じている時は本当に小学生に見えたし、お父さんの時はそう見えたし、ものすごい。三人とも彼らが演じる人物がそれぞれの人生で捨てられず古い毛布のように引きずってきた何かが見えた。過去は過去としてずっと側に横たわり、誰と関わろうと何に変わろうと引きずってきた何かは誰とも共有できない。人は孤独だということに対する諦めや肯定、僅かな抵抗と怒り。頭の中をさまざまな想いが駆け巡った。

長時間集中して、視覚聴覚をフル稼働しぎゅうぎゅうに詰め込んだせいか、終わってから眩暈と頭痛がした。休日は賑わっているが平日なのでほとんど誰もいない屋上でココアを飲んだり雀にパンをあげたりしながら観た劇のことを考えていた。夕方、お迎え。帰宅。頭痛がおさまらない。


3月14日(木)
相変わらず頭が痛いのでロキソニン。劇のことをまだずっと考えていた。後で読もうと思って買ったパンフレットが美しい。


3月15日(金)
頭痛おさまった。ドラえもんとしんちゃんの時間がやってくるとほっとする。


3月16日(土)
Sちゃんと娘のIちゃんとサイと私の四人で銀座に行った。最近毎週末遊んでもらっている。待ち合わせ前に本屋で仮面ライダーのガンバライジングカードの攻略雑誌を買わされる。マクドナルドでお昼を食べて行きたかった和菓子屋さんに寄ってから松屋シルバニア展へ。

想像以上に盛況で会場内は息苦しくなるほど大混雑だった。サイはギリギリ展示ケースに目が届く身長だったがIちゃんは届かないのでSちゃんがずっと抱っこしてあげなければならず、辛そうだった。サイと展示や美術館に行くとどうしても展示の仕方ばかりが気になってしまうから明らかに難しそうな場所には連れて行かないことにしている。藤子ミュージアムジブリは子ども目線で見られる展示が多かった。シルバニア展は子どもが多く来場するだろうから子どもの身長でも見やすい高さに設定してはどうだろうと少し思ったが、大人もたくさん来るだろうしそれはそれで難しいのかもしれない。シルバニアの世界は自分が思っていたよりも精巧かつリアルに作られていて、ドールハウスやミニチュアが好きな私は楽しかった。サイもかわいいねと喜んでいた。人が多すぎたのでじっくり観ることは諦めて30分程度で出た。

シルバニアの世界はファミリーというぐらいだから、両親が揃っていて子どもも二人以上いる「理想の家族」だ。ショコラうさぎさん一家、くまさん一家、動物ファミリーごとに違う職業を営んでいる。その欠けのない家族構成・就業状態に幼少期は疑問を持つことはなかったが、大人になった今なんとなく苦手に感じる。家族のいない独り身の無職の動物なんてこの世界にはいない。入ることを許されないのかもしれない。それって少し怖くないか。

そんなひねくれた感情で展示を見ていたら、妖精シリーズがあまりにもかわいくてときめいた。妖精は一人で家族がいないようだった。しかも他の動物のように職に就いていないようだった。ただそこにいるだけ。妖精、なんてかわいいんだ。廃盤らしく物販には売ってなかったのでメルカリで探してみたら高額だった。復刻してほしい。

人混みで疲れたのでその上の屋上でしばらく休憩。和菓子屋さんで買った揚げ饅頭がおいしかったがサイもIちゃんも食べなかった。おやつを食べてから二人は花壇の間をけらけら笑って走り回ったり、神社の水に興味深く近づいていた。そのうち、1歳くらいのよちよち歩きの外国人の赤ちゃんがいて、いつの間にか二人は三人になっていた。サイはお兄さんスイッチが入ったのか、腰を屈めて赤ちゃんの顔に自分の顔を近づけて「ミルクのみたいの?」としきりに聞いたり、しまいには自分のおっぱいを出していた。そんなサイの姿を見たのは初めてだったので驚いた。赤ちゃんがいなくなっても二人は他の知らない子どもとも遊んでいた。子ども同士の世界はすごい。空がどんより暗くなってきたので慌てて屋上から降りて駅に向かう。案の定、夕立があった。夕立がけっこう好きだ。明るい空から降り注ぐシャワーみたいな雨。最寄り駅に着いたらすっかり晴れていた。夕食は肉じゃが、じゃが芋抜き。

やっぱりいた方がいいんだろうな、と兄弟がいないことについて帰ってからもやもやと考えた。仕方ないけれど私といつも二人というのはサイにとってはよくないかもしれない。今日みたいに遊んでくれる友達がいることがサイも私も嬉しい。


3月17日(日)
日曜の朝はプリキュアが始まる30分前に起きるとちょうど良い。その前に朝食準備、洗濯機のスイッチを入れ、朝ごはんを食べながら三本(プリキュア仮面ライダー・戦隊)観て、終わってから洗濯物を干す。ということを毎週やっていたら身体で覚えた。仮面ライダーはますます面白い。戦隊は今日からリュウソウジャー。私はまだルパパトロスであまり入っていけなかったがサイは集中して観ていた。どうやらレンジャー達は人間ではない設定のようで、ゲーム的というか神話的だった。師弟関係や伝説の恐竜に頭がまだついていけない。

お昼ごはんは昨日のじゃがなし肉じゃがの残りを卵でとじて丼。サイはうどんにその具。それからサイの希望で池袋に出てガンバライジングカードとブットバソウルメダル。慣れないゲーム機械の画面を長時間見ていたら疲れた。いいメダルが出たのに、家に帰ったらないことに気づいた。機械に忘れてきたらしく、店に電話したが見当たらないと言われた。「またかえばいいよ」とサイはそれほど落ち込んでいないようだった。物を大事にしてないような気がして、悲しくなった。なんでも買い与えすぎだろうか。その分自分は我慢しているのにな。最近服だって一枚も買っていない。難しい。

晩ごはんはサイの希望でまたか…と思いつつカレー。私が野菜を切るのを興味深そうに横で見ていた。夕食後、サイはお絵描き。前よりずいぶんうまくなった。


3月18日(月)
早く目が覚めても月曜が始まると思うと布団から出られない。とはいえ休むわけにもいかないので布団から出てサンドイッチを作って出社した。今日はハムとアボガドとオムレツ。マスタードを塗るだけでサンドイッチらしくなる、ということを最近知った。

夕方、お迎え。サイは今日から3階の新しい部屋。一番上の学年が卒園したので部屋が空いたらしい。サイは新しい部屋で今まで見たことない玩具で遊んでいた。私がぼんやりしている間にもサイは成長していく。そういうことをふと考えた。晩ごはんは二日目のカレー。サイが寝た後、図書館で借りた桐野夏生の『アイムソーリー・ママ』読了。桐野さんが描く悪女が私は好きだ。寝る前に読むような本じゃない気がしたが普通に眠れた。読書灯が欲しい。


3月19日(火)
春を通り越して夏みたいに暖かい日だった。半袖の人も見かけた。昼はサンドイッチ。昨日と同じ具。オムレツに残ったカレーを入れてみた。

夜サイが寝たあと、Fさんと電話。2時間半も話してしまった。Fさんの髭について質問した。あと夏にどんな格好をするのが好きかとか、壊れた眼鏡の話とか、私がこないだつけていたイヤリングの話(あんなのつけてる人見たことないよと言われた)とか、いろいろ。Fさんは夏でもシャツを着るらしい。それってすごくいいと思う。季節に関わらずシャツを着る男性が好きだ。Tシャツよりも色気がある気がするから。マエケンのシャツ姿も好き。


3月20日(水)
今日も暖かい。ぽかぽか陽気で春だ。

お昼は先輩と週一ランチの日。今日はどこへ行こうかとあてもなくふらふら歩いていたら新しく海鮮居酒屋のようなお店ができていて、ランチもやっていたのでそこへ入ってみた。店名がついた海鮮丼を頼む。しらすが食べたかったので嬉しかった。醤油をかけようとしたら醤油入れを落として味噌汁に衝突し、お椀ごとひっくり返して大洪水。手提げもスカートも肩からかけていたストールも全部味噌汁まみれ。慌てて拭いていたら何も言ってないのにすぐ店のおじさんがたくさん布巾を持ってきてくれて、その後ささっとお盆も味噌汁も副菜も丼以外全部新しいものに取り換えてくれた。その気遣いに感動した。ちょっと怖そうな人だなと思ったがとてもいい人だった。店を出る時に礼を言うと「いえいえ」と言われた。海鮮も美味しかったし、また行こう。それにしてもぼんやりしすぎ。「洗わないとね」と先輩に言われ、味噌汁の匂いを放ちながら会社へ戻った。

晩ごはんは持ち帰りの巻き寿司とその横の精肉店で焼き鳥を数本。サイは最近焼き鳥が好きらしい。平日はどうも晩ごはんを作る気力がない。手作りじゃないと愛情がないという意見を見かけたことがあるが、結局作る時はできたものからお腹を空かせたサイに食べさせるため、私はまだ台所にいて途中までサイ一人で食べることが多い(とか、最初少し一緒に食べてから私はまた台所へ戻ったり)。買ったものだとすぐに一緒に食べられるし食後もゆっくりサイの相手ができる。慣れたが、世間で子育てはこうであるべきとされる形は両親が揃っていてのことな気がする。完全に大人一人でやる時は色々と妥協も必要だ。


3月21日(木)
昼過ぎ、SちゃんIちゃん親子と目黒で待ち合わせして、駅前でお昼を食べてお花を買ってから青柳カヲルさんの個展へ。Sちゃんと最近頻繁に会っている。サイと二人では諦めてしまう場所にSちゃんがいてくれることで行けている気がして、とてもありがたい。個展も、行きたいけど連れて行くのは道中大変そうだし、一人になる時間もないから難しいという話になって、それなら一緒に行かないかと私から誘った。二人きりよりも、親子が何組かいた方がたとえ子どもの人数が増えても大人にとっても子どもにとっても行動しやすい、ということを最近学んだ。一人が何かしたい時にもう一人の大人が子ども達を見ておける状況はすごく重要だ。トイレとか、何かちょっとしたものを買いたいときとか。Sちゃんはいわゆるママ友だけど私はママ友だと思っていない。子どもがいなくても繋がれる人だと思っているし話す時は子ども以外の話をすることが多い。

ギャラリーまでの道のりは風が強かった。買ったお花が折れてしまわないか心配だった。展示は色んな感情に包まれてすばらしかったし、青柳さんはとても優しかった。サイは作品に勝手に触ろうとしたり、大声を出したり、他のお客さんに失礼なことを言ったり一刻も早くここを退出しなければと恥ずかしくなったが青柳さんは嫌な顔ひとつせず(といってもお面を被られていたので顔は見えていないわけだけど、わかる)、サイに話しかけてくださった。のでサイは全く怖がることもなく、お面の下はどうなっているのか、靴はどこに置いてあるのか、あの扉の奥には何があるのか、私ではなく青柳さんに直接問いかけていた。地図が好きなサイはギャラリーの配置と解説が書かれた紙を見せて「ここはどこ?」と確認していた。
帰りに目黒川にかかる橋からお城みたいなラブホテルが川沿いに建っているのが見た。童話に出てくるお城みたいで、一瞬、自分がいるのが現実なのか夢なのかわからない感覚なった。桜が咲いていた。サイは拾った葉っぱを川の下に落として遊んでいた。それを私はぼんやり眺めていた。びゅーんと風が通りすぎた。春だ。

Sちゃんと別れてから、帰りにサイとの約束通りユニクロに行って仮面ライダーのTシャツを買い、屋上で少し遊んでから帰った。


3月22日(金)
朝起きて月曜日のような気分になりぞっとしたが、明日からまた休みだと思うと幾分元気になった。二日休んで五日働いてのリズムができているので、身体のリズムが崩れて混乱する。夜、いつものようにピザを食べながらドラえもんを観ようとしたらドラえもんではなく警察24時間みたいなのがやっていて、二人で落ち込む。番組の入れ替え、年度末だなぁ。


3月23日(土)
朝から区が企画したひとり親の集いに初めて参加。話している間サイを預かってくれるのがありがたい。ここでのことはSNSなどで口外しないように、と始まる前に念押しされたからどんな話が飛び出すのだろうと構えてしまったが割と普通の話だった。ほとんど子育ての話。子育てにおいては他人にこうするのが良いと意見されるのが私はあまり好きでないし、子育て本も漫画以外は読まないので、聞いてもふーんという感じでぼんやりしていた。状況も違うわけだし一概にこれが良いというのはなんか違う気がする。でも知らなかった制度など教えてもらえたりした。参加していた親子と一緒にお昼を食べてしばらく公園で遊んでから別れた。刺激になったが家に帰ると知らない人と話したことで、どっと疲れが押し寄せた。複数の人と話すのはやはり私には向いていないようだ。

公園にはバルーンアートをする大道芸がいて、サイは風船のねずみをもらってご機嫌だったが、いじくっていたら割れてしまい大泣き。お金も払ってないのに大道芸人のところまで行ってもうひとつ作ってほしいと頼むのもなんだか気が引けるなと躊躇していたら、行動しない私に対してサイは怒って泣き叫び、結局別のお母さんが頼んでくれて新しいねずみをもらった。いろいろ疲れたなーと帰路に就いていたら、トップスが目に入ったのでチーズケーキを買って帰って二人で食べた。私はチョコレートケーキがよかったがサイがチーズがいいと言い張った。

晩ごはんは照り焼きチキン、大根とキャベツのお味噌汁、サイが作ったチーズ入りだし巻き卵。卵焼きがサイの担当になっていて、さあ卵焼くよーというと「サイくんやるから!」と台所に椅子を持ってくる。卵を割るのもすっかりうまくなった。


3月24日(日)
午前中、テレビを観ながら洗濯、掃除。ジオウ面白かった。サイはリュウソウジャーのエンディングの踊りがお気に入り。家で昼ごはんを食べてから電車に乗って東京駅へ。プラレールショップに行き、Zくんの誕生日プレゼントを買った。地下の人混みで疲れたので、資生堂パーラーでソフトクリームをテイクアウトして地上にのぼり、駅のすぐ横のベンチで食べた。それからサイが屋上に行きたいと言ったが大丸に屋上はないので丸の内側まで歩いてKITTEの屋上。初めて来たが新幹線が眺められてなかなか面白かった。取り囲む高層ビル、駅に吸い込まれていく米粒みたいな人々や停車するはとバスが、自分は今東京駅にいるぞ、という気持ちにさせた。
歩き回って疲れて帰宅。晩御飯はそばめし。サイはよく食べてくれた。食後に昨日のケーキの残り。ろうそくを刺したらサイは大喜び。誰の誕生日でもないがハッピーバースデーを歌った。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇

ソメイヨシノの木々の隙間が日に日にピンク色で埋まっていくのが家のベランダからも見える。桜が取り立てて好きだというわけではないのに、咲いているのを見ると毎年嬉しくなる。単純に、春の訪れに気分が高揚するのかもしれない。暖かくなると散歩したり動きたくなってそわそわする。今は無性に絵が描きたい。水彩画。描きたい絵も頭の中にある。それから本がたくさん読みたい。好きな人に早く会いたい。そういう衝動は本能的というか、春になったら動き始める虫や動物と何も変わらないんだろうなと思う。

息をしているだけで季節は巡るし食べていれば体重は増える

3月2日(土)快晴
サイとFさんと三人で代々木公園でピクニックをした。前日にある程度準備しておいたお弁当(肉巻きおにぎり、コールスロー、キャロットラペ、チーズ入りだし巻き、ジャーマンポテト)とシートとテーブルを持って大荷物でバタバタ出発。代々木公園でフードフェスみたいなのがやっているらしかったのでメインとなるおかずはそこで買おうと考えていたが、会場の様子を上からのぞくとバーゲン会場のように大勢の人が密集していた。すぐ近くに広い公園があるのに人々は小さなテントの中でひしめき合うように麺をすすったり何かを口にしていた。その光景を見て、今ここへ行くのはよそうとFさんも私も感じて、公園の方へ引き返した。サイはフードフェスの会場の端に佇む、空気で膨らんだ巨大なペンギンを見て、「あのペンギンにはいりたい~」と切望していたが「あとでいこう」と何とか気を逸らす。

ピクニックは楽しかった。Fさんが買ってきてくれたアップルシードルがおいしかった。Fさんが凧揚げをする様子を座ったままぼんやり眺めたりみんなでシャボン玉をした。Fさんが持ってきた折り畳みコンロ(びっくりするほどコンパクト!)でお湯を沸かしてサイがアンパンマンうどん(数日前テイクアウトの寿司屋でねだられて買わされたやつ)を食べたり、コーヒーを淹れてもらったりした。やっと渡せたチョコレートをFさんはスナック感覚で次々口に入れていき、それ高いチョコだから大事に食べてくださいよなんてまさか言えずチョコはあっという間になくなった。

撤収してゴミを捨てる時、ゴミ箱を漁っているおじさんに遭遇した。良い悪いではなく、ああ今の季節だと拾う食べ物が腐らなくていいんだなとふと考えた。Fさんはおじさんを見て、嫌がるでも笑うでもなく「将来の自分かもしれない…」とポツリと言い、確かにそうだなと思った。残飯を真剣な表情で拾うおじさんが自分と全く別の次元にいる人とは思えなかった。

帰りに再びフードフェス会場に寄るとまだ人が多かった。ちょっと何か食べようかと思ったが、チケット制で面倒になり辞めた。約束通りサイは空気で膨らんだペンギンの中に入った。一回300円。誰も他にいなくて貸し切り状態でサイは中で飛び跳ねたり走ったりしていた。それから横にあった空気で膨らんだすべり台もやりたいというのでまたチケットを買う。えらく急な勾配の滑り台だったためやりたいと言ったわりにサイは少し怖がっていた。落ちるように滑ってきた後、びびったのか登らずその場に留まっていたが係のお姉さんに促されまた滑りに行った。お尻から転がるようにストンと落ちてきた。

途中の駅で降りて、適当なお店でからあげ定食を食べて帰った。席がゆったりしていたのでサイは食事の途中で眠ってしまった。駅で別れるまでずっとFさんが荷物を持ってくれていた。Fさんは東京をしばらく離れるので当分会えなくなるから楽しい一日になってよかった。


3月3日(日)雨
昨日とは打って変わって朝から雨。いつもより少し早く起きたのでサイとホットケーキを作る。サイは生地を混ぜるのや、フルーツを切って盛り付ける役を買って出る。包丁遣いがうまくなってきた。サイはハサミや包丁が好きだ。幼少期の私よりずっと器用。卵も潰さず上手に割れる。ホットケーキ食べながらプリキュア仮面ライダー、戦隊。プリキュアはキュアセレーネが登場して嬉しかった。キュアミルキーもかわいいから推しを決めかねているがセレーネの圧倒的な美しさに胸打たれた。まどかがプリキュアになった後、厳格な父親に嘘をつくというシーンもよかった。

お昼は外食しようと思っていたらサイがおにぎりでいいと言うので鮭おにぎりとサイが作った卵焼き。それからだらだら準備して近所の図書館に初めて行ってみた。サイはダウンの内側にお気に入りのぬいぐるみ、あーちゃを忍ばせて行った。恥ずかしいらしくあーちゃを保育園には連れて行かないが、こうやって休みの日に時々連れ出している。胸がふくらんでゴリラみたいになっていたからか、「ゆきやまのおうさま、おうおうおうー!」と絶叫していた。よくわからないが、歯医者で観たトムとジェリーに出て来たらしい。私が面白がっていると道の上で何回も繰り返し叫んでいた。家から図書館までは短い距離だったが、サイが傘をさすのを途中でやめたり、雨の中歩くのは少し大変だった。図書館は子ども用のスペースがあり、快適だった。サイはアンパンマンの紙芝居を取り出すと私に読んでくれ(とはいえ文字が読めないので絵を見て適当にストーリーを話す感じ)、その次は私が読んだ。サイはあーちゃと図書館にいた、ぐるんぱとはらぺこあおむしのぬいぐるみをテーブルに並べて聴衆に見立てていた。少し経ってサイが飽き始めたので、近くのマクドナルドでお茶。また雨の中歩いて、スーパーで買い物して帰宅。

晩ごはんは冷蔵庫の野菜もりもりカレー。全部角切りにしたら煮えるのが早かった。食後、二人で仮面ライダードライブとフォーゼを観た。入浴後、就寝。私はその後、録画していた「漂流家族」を少し観てFさんと電話してから寝た。そういえばひなまつりらしいことは何一つしなかった。


3月4日(月)雨
昼は以前お肉を食べに行った人たちとパン美人と四人でチベット料理。豚肉とじゃが芋のスープと蒸しパンみたいなのを食べた。あれやこれや話す。食べすぎて午後、眠くなる。

晩ごはんは二日目のカレー。おいしい。酢、ごま油、醤油で適当に漬けておいた大根も美味しかった。カレーだと温めるだけですぐ食べられるし洗い物も少ないので労力がかなり減る。それにサイもよく食べてくれる。サイはデザートに昨日食べなかった雪見だいふくを食べたが、餅が嫌だったのか中身のアイスだけ食べて皮を私にくれた。


3月5日(火)快晴
仕事で、先週行った性格の悪い窓口の女のところにもう一度行かないといけなくて憂鬱だった。待っている人がいなかったので取った番号札をカウンターに置くと、受け取るのに少し遠かったのか「これ、とっていいの?」(なぜかため口)と鼻で笑うように聞かれた。標準で怒っている。私にだけかもしれない。わざとかと思うくらい嫌味っぽい態度を取って来る人、大人になってからあまり出会わなくなったが、昔学校の先生でこういう人いたなと思い出す。「人に優しく」という考えがおよそないのかもしれない。もはやドラマの役どころかと思えてくるくらい、徹底的に嫌な感じだ。こういう相手には感情を無にして接することにして、必要以上の表情と発言を表さないように努めた。申請していた書類を問題なく受け取り帰社。電車を乗り間違えたりして疲れる。もう二度と行きたくない。移動中、文學界に載っている川上未映子さんの新作『夏物語』を読む。これは…面白い…!!描写が丁寧で引き込まれる。

晩ごはんは三日目のカレー。サイは今日もよく食べてくれた。「たまねぎががりがりじゃないからいい」と褒められた。全部小さな角切りにしたらよく煮えて嫌がらなかった。メモ。野菜は小さくすること。食後、サイの好きな実験番組、「すイエんサー」を観た。内容も面白いが、ダイスケお兄さんとアサコさんのコンビが好きだ。


3月6日(水)曇り
お昼は近所のハンバーガー屋さんでハンバーガー。今日はパイナップルが入っていた。先輩と仕事の話。

お迎え後、歯医者。久しぶりに麻酔をしたら気持ち悪くなった。オリジン弁当で買って帰る。手持ちが少なくおかずが十分に買えなかったのでチーズ入りだし巻きだけ作る。サイはおにぎりの中の鯖の切り身だけ丁寧にとってお皿の端にのせ、最後に食べていた。いつもより時間が遅かったため、「ガールズクラフト」というサイの好きな、身近なものでアクセサリーや雑貨を作るEテレの番組が終わっていて悲しんでいた。「ママ、はいしゃのにおいしてる」と嫌がられた。自分でも気分が悪くなった。歯医者に行くとあの匂いで全ての気力が失われる。どっと疲れて入浴後、死にそうになりながら大量の洗濯物を部屋の中に干し、布団の中で大森さんが出ていた依存症イベントのアーカイブ映像を観ながら気絶するように眠る。


3月7日(木)
雨が降って寒かった。晩御飯は煮込みうどん。


3月8日(金)
ドラえもんとしんちゃんの日がまたやってきて、ほっとする。この時間が一番安らぐ。いつもどおりピザ。サイは番組最後に流れるドラがおじゃんけんの歌が好きでよく歌っている。


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最近、世間のスピードから自分がどんどん遠ざかっている気がする。新しい情報や知識が身体にすっと入らなくなってきて、でも溢れる速度は緩まないから、まったく知らない世界で迷子になっているような心地がする。老化への第一歩なのか。それでも時間はどんどん進む。季節は巡る。