カニ日記

息子のことを中心とした

卒論は2万文字、一週間は8747文字

6月12日(月)曇り
朝。目覚めた瞬間、気温や外の明るさで「あ、寝坊したかも」と何となく感じた。リビングに行き時計を見るとやはり寝坊していた。慌てて朝ごはんの準備をし、サイが食べている間に着替えたりサイの洋服を準備した。いつもは側で食べる様子を見守っているが放置したばかりに戻ると牛乳をテーブルのマットにこぼし、それを手で広げて遊んでいた。こぼれた牛乳の染みを見て「ミッキーみたい~」とへらへらしていた。私が一緒に笑ってくれると思っていたらしく、叱ったら不意打ちを受けた顔をした。もうやらないようにと低い声で言ったら「うん」と反省していた。私がサイが生まれる前に買ったジンジャーブレッドのぬいぐるみ(通称ジンジャーちゃん)を抱いて登園。


帰りの自転車に乗りながらぶつぶつジンジャーちゃんに話しかけていた。夜はK不在。夕食は冷凍してあったチキンライスに焼いた卵を載せてオムライス風。人参とケチャップでアンパンマンの顔にしたらサイは喜んで、顔を壊すのが嫌なのかもったいぶって食べていた。暴食を止めるには何でもアンパンマンの顔をつけるのがいいかもしれない。夕食後、甘えてきかと思うとわんわん泣き続けてぐずっていた。体が熱かったが体温を計ると平熱だったので眠かったらしい。保育園での昼寝が短かったのかもしれない。ベッドに連れていくと案の定いつもよりすーっと入眠した。


6月13日(火)小雨 寒い
明け方喉が痛くて起きた。空気清浄器を付け忘れていた。布団に入りながらラジオを聴いて会社の美人にもらったパンを2個食べた。サイはいつも起きる時間を過ぎてもまだ寝ていた。やはり昨日の昼寝が短かったのだろう。キウイを切って全部サイのお皿に入れたら一切れだけ私に分けてくれた。「たべてね」と大人みたいな顔で言われた。今まで全部独占していたのが最近少しずつ自分の分を「分け与える」ということを覚えてきたらしい。ぬいぐるみ二三人(体?)に見えない「エアお菓子」を分け与える姿も時々見られる。今日もジンジャーちゃんと登園。教室に入ると「ジンジャーブレッドだ」と先生が言い、それを聞いて他の子も物珍しそうに集まってきた。他の子に奪われると思ったのか素直に私に預けた。

夜。サイは昨日と同様機嫌が悪い。コンロに立って焼きそばを作っていたらくっついてきて危なかったのでKに代わってもらった。先週の懇談会でどの子も家でイヤイヤが酷いのに保育園で泣くことはなかったり、家で何も食べない子が保育園では好き嫌いなく食べるという話が多く、聞いたお母さんは皆驚いていた。「園では我慢しているのですが家では甘えたくてぐずることがあると思います」と言われてからあまのじゃくに納得し少し可哀相に思っている。甘やかしてはいけないけど家がサイにとって自然でいられる場所でありたい。食後もぐずっていたのでKはテレビをつけたらいいと言ったが何となくテレビに頼りたくなく、ソファから滑り落ちるふりをしてサイに助けてもらう遊びをしたり、空き箱をテレビに見立ててぬいぐるみを動かしたりしたら泣き止んで嬉しかった。あとは「大きなかぶ」の蕪役になってサイに引っ張ってもらって床をずるずる這っていた。Kは失笑していた。書くと阿呆みたいだが必死。親は子に受けてなんぼだと思っているし子どもの前で恥なんて一切存在しないので新人芸人並にいつも体当たりで何でもやりますの精神でいる。途中から失笑していたKに代わってもらい、テレビ禁止を条件にしたら箱でテレビごっこをして結構頑張っていた。サイの機嫌もよかった。


6月14日(水)
朝。Kがいたのでわりと余裕があった。Kがいつ休みなのかよく把握していないが時間になっても起きなければそうなのだと理解している。私が嫌いなさくらんぼを二人分器に入れたらサイが全部食べた。器用に種も取って食べていた。今日もジンジャーちゃんを抱いて登園。

夜。K不在。冷蔵庫に茹でたとうもろこしとブロッコリーが入っていたので助かった。あとハムエッグと納豆。朝ごはんみたいな夕食。夕食後、サイと二人で大森靖子さんやビートルズの曲をかけてひたすら全力で踊るという遊びをした。サイは大森さんの「ピンクメトセラ」を気に入ったようで私がティッシュの空き箱を切って子どもの日の帽子に張り付けたなんちゃって猫耳帽を被り、ペンライトを振りながら踊り狂っていた。私が踊りながら移動するとサイも着いてきて、二人で笑いながら色んな場所で足を踏み鳴らしたり手を振ったりして楽しかった。サイは勢い余りすぎて時々よろめいていた。いい運動になった。お風呂に入れて布団に寝かせると「おとうさんは?おとうさんは?」と言って泣き出し30分以上寝付かなかった。普段はこんなことないので驚いた。


6月15日(木)
朝。サイが寝ている間にラジオを聴こうと思ったものの、タイムフリーで聴き始めてすぐにサイが起きてしまい仕方なくそのまま流していた。「ピンクメトセラ」が流れて、サイはイントロですぐに「きのうのやつ!」と言った。そして踊ろうと思ったのか、猫耳を探し回って見つからないと機嫌が悪くなった。え、今!?と思ったけど落ちていた帽子を拾って渡すとペンライトを持って再び踊っていた。朝は時間がないから勘弁してほしいけど可愛かった。

夜。サイは帰宅すると空腹を我慢できなくてグミなど小さなお菓子を一つ食べる。今週は日曜日に買ったアンパンマンチーズがそれになっている。「おかあさんもたべる?」と言って私の分も出し、いらないと言っても口の中に入れてくる。半年ぐらい前にチーズを買った時も同じように夕食の前に欲しがり、椅子に座って食べるように促していたのだが、それを今も覚えているようでチーズを一個食べるために椅子に座りに行く。先週コンビニで買ったプリンも食べたがったが、「お父さん帰って来てからみんなで食べようね」と言うと大人しく従った。整骨院帰りのKが帰宅したら「肩いたいの?」「ぷりんたべよう」と大人みたいな口調で言っていた。夕食はささみに冷蔵庫にあったキャベツを千切りにしたものとチーズを入れたら不思議な味がした。Kは一口食べて「面白いね」と言った。面白い夕食。夕食後、三人で奪う合うようにサイが振り回してぐちゃぐちゃに混ざったプリンを食べた。空になってもサイはKと交互にもうないプリンを急いで食べるふりをして可笑しそうに笑っていた。


6月16日(金)曇り
朝。サイがいつもより早く起きて私が起きられないでいるとアンパンマンチーズを食べたいと言われダメだと分かっていたが残り2個しか入っていなかったので袋ごと渡しまた布団に入った。サイは2個とも食べていた。それでもぐずっていたので「今日サイくんとお母さんが着る服見てきてよ」と言ったら部屋を出てしばらくして戻ってきて、サイは引き出しから自分のTシャツを出し低い位置にかけてあった私のブラウスと一緒に持ってきてくれた。感心している場合でないが偉いなぁ。サイが選んでもってきてくれたブラウスを着て出勤した。

昼。虐待で娘を殺した母親に懲役13年の判決が下ったとニュースで見た。サイが生まれてから虐待のニュースがどうしても気になる。母親はどんな人なのか、Facebookの写真や子どもと写っているプリクラなどが公開されていると食い入るように見つめてしまう。皆育児に疲れたというより、私より綺麗で化粧をちゃんとしているし活発そうな感じがする。それでも子どもは殺された。記事を読むと虐待内容は信じられないぐらい惨いものだった。亡くなる直前の衰弱した娘を見て夫とLINEで笑いあっていたらしい。いつもそうとは限らないが虐待する母親は父親と共犯関係にあるというか我が子より夫を愛している感じがする。私にはそれが信じられない。こんなこと言ったら怒られるが、もしサイとKが同時に崖から落ちそうになって一人しか助けられないとすると迷わずサイを助けるだろう。など言っている場合ではなく、判決を受けた母親は今何を考えているのだろう。考えたところで亡くなった女の子は戻って来ない。

午後、仕事関連でセミナーというか勉強会に参加していつもより少し早めに直帰した。話が難しくてついていけなかったけど勉強になった。まだ明るいのが嬉しいと思っていたら空模様が怪しくてベランダの洗濯物が一瞬頭によぎったが、行く所があったので家に一度帰る選択肢は捨てた。セミナーで頭が疲れたので電車に乗る前に駅前のスタバに行った。「チョコレートブラウニーなんたら抹茶ショット」というのが看板に描かれていて、テイクアウトしてお店から出て一口食べた(飲んだ?)大学生らしき女の子達が「超おいしー♡」と声を上げていた。女の子達が手に持っているカップを見たらチョコレートケーキがどかんと丸ごと乗っていて何これ最高と思って迷わずそれを頼んだ。前の人も前の前の人も同じものを頼んでいた。店員の女の子は三回続けて慣れた手つきでケーキをフラッペに載せたり生クリームを絞っていた。一口食べたらブラウニー、生クリーム、抹茶の相性が最高でこれぞ幸せの極みと思った。食べ進めるとブラウニーが崩れフラッペと混ざってしっとりするのがまた美味しかった。1/3ほど食べたところで突然この味がキツく感じて胃が重くなってきた。美味しいのに苦しかった。え、そんなはずないと焦って周りを見渡したら若い子は嬉しそうに皆完食して一緒に別のケーキまで食べている人もいた。その瞬間、自分がこの子達とひとまわりくらい離れていてもう若くないという事実に気が付いた。自分がおばさんなのは分かっているはずなのに時々それを忘れてしまう。キラキラした大学生と同じ感覚に浸れるなんてとんだ勘違いだった。何とか食べ終わると急いで店を出て電車に飛び乗り原宿に向かった。

原宿へ行ったのは「さいあくななちゃん」の展示を観るためだ。時々ネットで見かけて気になっていたけれどネット上の画像ではよく分からず、実際見てもないのに好きか嫌いか判断したくなかった。自分の目で作品を観てみたかった。土日は予定が詰まっていたので、「どうしてもみたい絵がある」と言ってKにお迎えを代わってもらい行かせてもらった。駅に着いてギャラリーまでの道のりをグーグルマップで見ると竹下通りを抜けた方が早そうだったのでそうした。平日夕刻なのに竹下通りは人でごった返していて通り抜けるのが大変だったから後悔した。お台場かどこかで購入したのかタカ&トシのトシがいつも着てるライオンがプリントされた赤いTシャツを着ているアジア人観光客のおばさんがいた。おばさんは堂々としていてそれを昔から着ていたみたいによく似合っていた。パステルカラーの巨大な綿あめを持った外国人、自分の時代からは信じられないくらい大人びて見える高校生、よく分からない人、色んな人がいた。小学生の時、家族旅行で初めて東京に来て竹下通りを怯えながら歩いたことを思い出した。

ギャラリーに着くと展示室には先客がいてななちゃんと思わしき方に大きな声で一方的に話していた。「売れている草間彌生奈良美智でも必ずバックにサポーターがついていて何ちゃら」と言っていた。広くはないスペースだったので入口で待機し、その男性が話し終えて出るとようやく入ることができた。初めて作品と対面した。どう感じたかなどの感想は別途記述するとして(というか感想なんて野暮な気がする)辞めておく。誰も来ないのを良いことに長い時間展示室にいた。ななちゃんともたくさんお話しできた。人が来たので後ずさりしながらお礼を行って出た。ギャラリーを出ると外は真っ暗だった。本当に観てよかったなと思いながら、うっかり忘れていた父の日に父と義父に色サイズデザイン全てお揃いのTシャツを買って急いで帰宅した。サイはチラシをみて「なにこれー、おおもりさん?」と言っていた。髪型が似ているからそう思ったのかもしれない。ななちゃんの作品、サイにもいつか見せてあげたいな。


6月17日(土)晴れ
朝ごはん、洗濯。私が洗濯を干している土曜日の朝、サイはいつも前日放送分のアンパンマンを観る。やきそばパンマンが美味しそうだった。美味しそうだねぇと言ったらサイも「やきそばあんパンマン(ちょっと間違っている)かいにいきたい~」と言った。なので二人で自転車に乗ってここならあった気がするという美味しいパン屋さんに買いに行った。
期待してるんるんで入店したらやきそばパンは売ってなかった。サイと二人で気が狂ったみたいに「やきそばパンやきそばやきそば」とぶつぶつ言って店内をきょろきょろした。店員さんに聞いたら「そういうのはないです」と言われた。「え、今日だけないんですか?それともいつも作ってないんですか?」とやきそばパンがないと生きられない人みたいな感じで聞いたら若い店員さんはもうちょっと上の人に確認して戻ってきた。「そうですね、お作りしていないですね」と言われた。残念だったが仕方がないのでコロッケサンドとカツサンドと可愛い犬とうさぎのパンを買った。飲み物の冷蔵庫に行くと「サイくんこれね」と飲んだこともない豆乳を選んだ。私には「おかあさんこれね」とよく分からないオーガニックな珈琲牛乳を選んでくれた。豆乳大丈夫かなと思ったけどそれがいいと言うので買った。パッケージを眺めて「きのこのジュース」と勘違いしていた。

父の日の荷物をコンビニで送った後、いつもの公園へ行った。適当な日陰にピクニックシートを広げてサイと買ったパンを食べていると、目の端に保育園でサイが好きな◎ちゃんと◎ちゃんのお母さんが友達親子といるのが見えてげっと思った。いい人だけど◎ちゃんのお母さんが実はちょっと苦手。その友達のお母さんはもっと苦手。もしこちらに気付かれたら嫌だなと思って知らぬふりをしてサイと食べ続けて、そろりと後ろを振り返って見たら◎ちゃんのお母さんと思った人は全くの別人で友達親子も全然知らない人だった。先週もそうだったけど、私は保育園のお母さんに会うことを極度に恐れすぎている。食べ終わった後しばらくそのまま公園でサイと遊んでいた。1時間ぐらい遊んでいたら暑さで私が気持ち悪くなってきたので家に帰って二人でシャワーを浴びて昼寝。昼寝後、楽しい宴へ向けて出発。

以前みんなで築地に行った時にまぐろ料理の店の前を通りがかり、一同気になって改めてそのお店で会を開こうということになっていた。ここよさそう、となっても結局行かないで終わることが大半なのでちゃんと実現して嬉しい。きめ細やかで仕事のできる幹事様と優しい方々のおかげだ。Kは夜不在だったのでサイも連れて行った。最初は固まっていたサイも優しくて可愛いお姉さん方やぬいぐるみ、ある方がiphoneで流してくれた童謡やアンパンマンの歌のおかげで徐々に打ち解け、途中から飛び跳ねたり私のiphoneでめちゃくちゃな写真を撮ったり、「サイくんとってよ」と壁の前に立ち撮影の指示までしてきてテンションマックスだった。ぬいぐるみも童謡もあり可愛いお姉さん達にチヤホヤされながら美味しい料理に舌鼓を打つなんて幼児向け超高級ラウンジみたい。盛り上がる中、あまり遅いとよくないと思い先に失礼した。それまで笑って奇声を上げていたくせに、別れ際「サイくんバイバイ♡」とお姉さん達に言われてもズボンの両ポケットに手を突っこんでそっけない態度を取る塩対応には笑ってしまった。どこでそんなスマートなモテる男の技みたいなのを身に付けたんだろう。
せっかく機嫌が良かったのに出際に挨拶をした店主にいきなり抱きかかえられたのと飼っている犬が大きな声で吠えてきて、嫌がってるのに店主が無理矢理犬をサイに近づけようとしたのでサイは怖い嫌だと言ってわんわん大泣きした。好意のつもりだろうが、こう距離感なく寄ってくる人は勘弁してほしい。おかげで帰りは大変だった。帰宅後、超特急でお風呂に入れて就寝準備をした。いつもより一時間遅くなってしまった。布団の上で「おさかなおいしかったね。おなかとおしり、どっちがおいしいんだろうね。おもしろいね」と言ってからパタンと寝た。

私は何だか眠れず楽しかった思い出を反芻したり、この人のここが好きだなと考えたりしていた。


6月18日(日)曇り時々雨
眠れず遅くまで起きていたせいで寝坊した。今日はアンパンマンの握手会なのに。Kはこのために丸一日休みを取った。なぜ早起きの必要があるかというと、握手会に参加するには早朝から配る整理券(一グループにつき代表者一名がもらえばOK)が必要だからだ。知り合い家族と行く予定だったが、電話すると知り合いも寝坊したらしい。本気が足りない私達。父親達はそれぞれ急いで朝ごはんを食べて整理券配布場所に向かったが、着いた時には整理券は終わっていたらしい。それでもショー観覧の整理券はもらえた。みんな日曜なのに早起きしてすごい。子どもの夢の後ろには親の必死さが不可欠なのかもしれない。
11時すぎに知り合い家族と合流して一緒にお昼を食べた。空間を重視してバイキングにしたら落ち着かなかった。サイは黒いジュース飲みたいと紅茶をほしがって騒いだ。おまけにジュースのコップをひっくり返すし散々だった。知り合いの子はサイと生まれた日が半月違いで予定日は4日違いだった。何度か仲良く遊んだのにサイは忘れたのか固まっていた。実はKとは知り合い夫婦の結婚式二次会で出会った。そういう縁もありずっと仲良くしてくれている。家族ぐるみで付き合いがある人は稀なので大事にしなきゃなと思う。奥さんは二人目を妊娠中で来月予定日。もうすぐ生まれる赤ちゃんを大きなお腹越しに撫でさせてもらった。食後それぞれ別行動をして、整理券に書いてある時間に合わせてショーが開催される場所に向かった。

握手会の整理券を勝ち取った家族はステージに近い優先エリアにいた。子どもにアンパンマンのコスプレをさせたりしていて我々とは本気度合いが違った。間もなくお姉さんが登場して説明があった後アンパンマンバイキンマンの着ぐるみが子ども達の掛け声と共に飛び出してきて始まった。今出るぞという瞬間、サイはそわそわしていた。大森さんを待つ私と一緒だ。私より年上であろうお姉さんの甲高い声と語尾をやたらと伸ばした話し方が気になってショーに集中できなかった。Kはどう思っているかなと思って横を見たら寝ていた。サイがどんな顔をしていたかよく見えなかったが、一緒に踊ろうよのコーナーになってもサイは固まったままステージを見つめていた。ショーはあっという間に終わり、握手会の前にアンパンマン達はさっさと捌けてしまった。
会場を離れ「握手会、残念でしたね」などと言いながらエレベーターを待っていたらいきなり係のお姉さんが来て道を空けて下さいと言った。えっと思って顔をあげたら目の前の業務用扉が少し開いていた。ああ、これチャンスやんと思ったら予想通りアンパンマンバイキンマンが二度目の会場の掛け声でどわっと飛び出してきて、扉の真ん前にいたサイと知り合いの子をちらっと見て手を振ってから去っていた。思わぬ形で出待ちになりラッキーだった。

みんな疲れてその後すぐ解散した。サイは帰りの電車で相当機嫌が悪く、途中で欲しがったセブンティーンアイスを与えたが食べ終えるとまた機嫌が悪くなった。何してもぐずって車内でわぁわぁ騒ぐので何かないかなとiphoneを出しメモ帳のお絵かき機能を触らせたらようやく落ち着いた。サイの向かいに座っている男の人を描けと命令されたので描いた。なのでメモ帳には知らない人が難しい顔で俯いて音楽を聴いている謎のスケッチが残っている。何とか家に辿り着いたらどっと疲れがきて私もKも放心していた。あんなにぐずっていたサイは家に入った途端、急に機嫌が良くなりショーの再現をしたりアンパンマンの台詞を絶叫したりテンションが高かった。顔を交換する時の効果音を歌わされてタイミングが遅れると怒られた。

ふと父の日なのにKに何も用意していないことに気が付いた。自分の父親でいっぱいいっぱいだった。どうしようもないので正直に謝って晩御飯好きなもの作るから言ってよとリクエストを促した。「からあげ」と返ってきたが揚げ物なんて勘弁と思ったので「お好み焼きとかどう?好きでしょ」と冷蔵庫にあったキャベツを使うために強制的にお好み焼きになった。じゃあ聞くなよという感じ。まあまあ美味しくできたお好み焼きとKが買ってきた刺身を食べた。食後、サイがショーの内容を記憶していて話し出したので、ショーのお姉さんの台詞をモノマネしたらげらげら笑って大受けした。調子に乗って2回目をしたら更にツボにはまったようで、終わる度に「もういっかい!」と言われ計50回ぐらいやらされた。お風呂でもやらされてまだ笑っていた。
サイが寝た後、何だか眠れず「父の日やし私が洗濯とか掃除するから寝ていいよ」とKに提案すると「なにそれ怖い」と言われた。家事をやると言って怖いと言われる妻って一体と思った。日中たくさんの人といたので一人になりたかったのもある。のそのそ家事をしながらお礼をしたり返事をしたりしていた。

芸術から始まる濃くて甘美な週末だった。
父のTシャツは母の方が「変なTシャツ(オタT)しかなかったから助かる」と喜んでいた。

それにしてもこの日記長すぎる。8747文字。論文か。

何でも分かってるような顔しないでよ

6月5日(月)
お迎えに行くと空は暗く今にも雨が降り出しそうだったので、どの親御さん達も蜘蛛の子を散らすように大慌てで帰って行き、私も世界が破滅するぞという気持ちで自転車を全力で漕いで帰宅した。「雷さん来ちゃうとおへそ取られるからね、急いで帰るよ」と帰りながら話していたからか、家に着いてから空がゴロゴロ鳴り始めるとサイは雷をものすごく怖がって怯えた表情で私にぴったりくっついて離れなかった。私が夕食を作るためにサイから離れると同じ表情でネコの巨大ぬいぐるみをずっと抱きしめていた。まもなく雷は落ち着いた。

夕食後、妹におめでとうを伝えるために実家にテレビ電話をした。妹が帰宅する前は練習で母相手にハッピバースデーの歌を自信あり気に歌っていたのだが、妹本人が帰宅していざ歌うとなると恥ずかしがって声は小さいし私の膝に顔を埋めて最後まで歌いきらなかった。人見知りとも違う、「恥ずかしい、照れ臭い」という感情が芽生えたようで微笑ましい。
保育園で誕生日の子がいる日は偽のケーキ(知り合いの子が通っている資金がある園ではちゃんと本物が出てくるらしい)を囲んで歌を歌い、偽のろうそくを吹き消して毎回お祝いしているものだから、誕生日=ケーキという図式が頭の中にあるらしく、「サイくんもケーキたべたいー!」と騒いでいた。「サイくんの誕生日はまだだよ」と言っても誕生日が生まれた日であることすら知らない彼に誕生日が一年に一回しかないのを理解させるのは難しく、不服そうだった。いっそのこと『不思議の国のアリス』に出てくる「何でもない日おめでとう」の歌でも歌おうか。英国BBCミュージカル版のアリスが大好きで小さい頃VHSが擦り切れるほど観た。DVDに変換したくて実家から持って来てはいる。最高に面白いのでサイに観せてみよう。

6月6日(火)
朝。少し肌寒い。アンパンマンのTシャツを着たいと騒いだが半袖だったので、長袖を着るよう説得するのが大変だった。キャラものの洋服には手を出さないと決めていたが、やなせ先生の絵ならいいかと思って買ったらサイは予想以上に気に入っている。あとは父がめちゃくちゃ趣味の悪いアンパンマンの派手なTシャツを送ってきて「げっ」と思ったがサイは相当気に入っている。そうやって着せるものはだんだんどうでもよくなる。

夜。町田康さんの新著サイン会。サイと同じくらいの子どもを連れた人もいた。優しさとこちらの内面を見通すような力強さを併せ持つ眼差しにいつも卒倒しそうになる。男の人に対して「この人カッコいい!きゃー」などと思うことはあまりないのだが、この方だけは例外で兎に角格好良い。ベテランになってもずっと変わらない態度。町田さんの書く字が好きなので見惚れるように筆の運びを眺めていた。新刊の『ホサナ』は分厚くてまだ読み始めたところなので感想が言えなかった。(子育てと関係ない話をつい長々書いてしまった)

帰宅するとサイはちょうどお風呂から上がったところで、機嫌がよかった。髪を乾かしていつものようにベッドで一緒に歌いながら寝た。「さくらんぼパイ」の歌が最近お気に入りらしい。

6月7日(水)
朝。久々に休みのKがいたので助かった。サイを任せていつもより10分ぐらい長く寝てから起きて台所へ行くとKは私のお弁当を作ってくれていた。家が汚なすぎると言われた。蕎麦屋の出前のように「今日片付けるからさ」と言い訳した。私が昨日買った可愛い兵隊の形をしたパンを箱から出すとサイは大喜びだった。口がなかったので「おくちがないねぇ」と覗き込んで言っていた。私が目を離した隙に人形の頭は鮫に喰いちぎられたようになっていた。サイはそれからお土産の鮎焼きもKと半分ずつ食べた。「お魚だよ~」と言っても形に興味を示さず食らいついていた。中に入った求肥餅を勘違いして、「チーズがはいっているねぇ」と嬉しそうにしていた。Kがいるとサイは出かける前もぐずることなく機嫌がいい。アンパンマンを歌いながら踊っていた。最近はお気に入りのメロンパンナのぬいぐるみを必ず連れて登園する。いつもクラスの入り口で別れ際に私とハイタッチをするが、今日は(私が動かした)メロンパンナともしていた。
夜。帰ったら余りの汚さを見兼ねてKが掃除してくれたらしく部屋がきれいになっていた。サイはいつも以上の食欲であっという間に自分の分を食べ終えるとKの皿から素手で鷲掴みにしていた。私の皿からはしなかった。炒め物にサイの大好物のソーセージが入っていて、それをもっと欲しがるのを分かっていたので私は危機を感じ、自分の皿のソーセージだけ先に急いで食べたから私の皿はサイの関心対象から外れていたのだと思う。サイはソーセージをなぜか「ポッテト」と呼ぶ。「ポテットほしいーー!」と絶叫していた。ポテトのことも「ポテット」と呼ぶ。

6月8日(木)
午後から保育園の懇談会だったが半休では開始時間に間に合あわないので一日休みを取った。朝いつもの時間にサイを保育園に送ってから急いで電車に飛び乗り映画館に向かった。数時間一人になる時間ができたら映画や美術館に行くことが多い。そんな時しか行けないから。BABEL展と迷って、BEAMSでチラシをもらって気になっていたマイク・ミルズの「20センチュリー・ウーマン」という映画を観た。マイク・ミルズだし(偏見)、BEAMSが映画とコラボしてTシャツやバッグを販売していたので絵になるおしゃれ系映画かなと最初は感じていたのだが、チラシを読んだら俄然興味が湧き、調べたら朝の上映があるのを知ってこれは行くしかないと思った。
平日朝イチの映画館はほとんど人がおらず貸切状態だった。14歳の少年と母親含む彼を取り巻く三人の女性を中心としたひと夏の物語。確かに映像は綺麗で光の取り入れ方とかうっとりするぐらい美しかったが、何より出てくる俳優が全員魅力的で素晴らしかった。特に主人公ドロシアが息子に「何でも分かってるような顔しないでよ」と言われた時の顔が好きだ。母子が互いに距離感を計ろうとする姿に無意識のうちにサイと自分を重ね合せて観ていた。アメリカの時代背景もきちんと描かれていて音楽の使われ方もよかった。はっきりとした結論や分かり易い主張があるわけではないのに観終わった後、自分の中に蟠っていたどろどろした感情がすぅーと溶けていき、胸がストンとした。今何かに対してモヤモヤしている人は何も考えずこの映画を観てほしい、そんな映画だった。後から見たレビューで「ドラマ性に乏しい、退屈」と低く評価している人がいたがドラマ性がないのがいいところなのになと思った。あと、エル・ファニングが何から何まで可愛すぎて惚れた。好きなシーンや台詞がいっぱいあったのでDVDが出たら何度も観てみたい。「この世界の片隅に」と全然話は違うのに、あの映画を観た時と似たような感情が湧いた。自分が今まで生きてきたことについて、これから死ぬまでの人生について考えてしまった。
映画の世界にひきずられながらラーメンを食べて保育園に向かった。

懇談会では、冒頭に子ども不在の中、親だけで「きゃべつのなかから青虫でったよ~」を振りつけ付で繰り返し歌わされた(最初はうっと思ったけど途中からどうでもよくなり同調した)後、園での普段の様子をスライドショーで見せてもらった。数々の遊びや運動に勤しむサイの姿を観て、家にいる時よりも充実している感じがした。サイくんは男子用トイレで立ったままトイレができると先生から褒められ、知らなかったので驚いた。保育園ってすごい。自己紹介を経てそれぞれ自分の子の悩みを発表し先生や他のお母さんがそれにコメントした。トイレトレーニングとイヤイヤ期の話が多かった。他のお母さんの話を聞いているとサイはまだ大人しい方なのかもしれないと思った。終了後、サイが仲の良い男の子Uくんと一緒に近所の公園に行き、ビスコを食べたり(その前に保育園でもおやつを食べていた)鳩を追いかけて走り回ったり落ち葉でお店屋さんごっこをした。二人は生後半年頃から同じクラスで玩具を奪い合ったりしていたのでそれを思い出すとしみじみした。保育園のお母さん達は皆忙しそうなので今まで遊びやお出かけに誘ったことがなく、Uくんとも初めて遊んだけどサイが本当に楽しそうだったのでまた遊んでくれたらいいなと思った。帰りにスーパーに行くと二人が試食を勝手に食べたり走り回ったりして大変だった。
Uくんに会って触発されたのか、夜は久々にあまのじゃく先生登場。

6月9日(金)
朝。サイはヨーグルトを容器のまま食べたがるが1個だと多いので、半分私のお皿に移してから渡すと減らされたことに怒って「もうたべない!」と言い始めた。あー、またかと思って「じゃ、お母さん先に食べるね」と一人で食べていたら「ちょっとだけたべるよ」とやって来て、座らせると普通に食べ始めた。前にもこんなことがあったけど可笑しい。

夜。K不在。支払があったのでコンビニに寄ったらいつも買うアンパンマングミが売っておらず、ゼリーを欲しがって、でもやっぱりプリンにするとゴタゴタして帰りが遅くなった。冷凍していたパスタがあったので助かった。実家にテレビ電話。サイが実家の家族と話している間に洗い物・お風呂の準備など。いつものように歌を歌いながら入眠。数日前から「あんまり冷たくしないでね、サイダ~」という謎の歌を振りつけ歌をよく歌っている。親バカだがそれを歌う時のサイはめちゃくちゃ可愛い。

6月10日(土)
朝。すてきな人と一緒に出掛けた。私の周りには子どものいない知り合いしかほとんどいないので、気が付くと子ども連れでも嫌な顔をしない人とばかり遊んでいる。この人、あまり子ども好きそうじゃないなと思うと悪いような気がして疎遠になってしまう。かくいう私も自分や友人の子はもちろん可愛いと思うが元々子ども自体あまり好きではなかった。
友人がいて興奮状態だったらしく、レストランで椅子を蹴ったり大声を出して落ち着きがなかった。こういう時の叱り方がまだ分からない。怒ると余計に泣いて絶叫する。サイの大好物である海老が入ったメニューを頼んだら案の定海老ばかり欲しがった。いつもこのレストランでは出際に籠を持ったお姉さんが来て籠から好きな玩具を一つくれるのでサイはそれを覚えていて出口に向かいながら大声で「おもちゃもらえる」などと言って恥ずかしかった。声を聴いたのかお姉さんが出口で籠を持って待っていた。サイはいつも欲しい玩具を即決するのに欲しいものがなかったのか迷いに迷っておもちゃのカメラを選んだ。それを予想以上に気に入り、その後行ったデパートの屋上で「はいちーず!かしゃ!」とカメラの音声まで自分で言いながらずっと私と友人を撮影していた。どこかでカメラをなくしてから眠気も伴い機嫌が悪くなった。サイが昼寝している間にアイスを食べようと思ったら店に着いた途端タイミングよく起きたのでサイと争うようにアイスを食べた。サイはアイスが大好きで見ると目の色が変わる。私もサイと同じくらいの頃、アイスが大好物だったと母親から聞いた。帰宅後、カメラは私のカバンから見つかった。一緒に探してくれた友人に申し訳ないことをしたと思っている。
夜はバジルが大量にあったのでガパオライス。サイはバジル抜き薄味。まあまあ美味しくできた。


6月11日(日)
朝。Kにサイを外に連れて行ってもらい、その間に私は掃除洗濯等済ませて後から公園で合流して皆でピクニックする予定だった。ピクニックに持って行く弁当が暑さで傷むと困るからと途中で一回Kとサイが帰宅した。サイは新しいホームセンターに連れて行ってもらったらしく、風船をもらって機嫌がよかった。再び二人は公園へ出かけて行った。Kから「公園に◎◎ちゃんとお母さんがいたよ」とLINEが来た。◎◎ちゃんは同じクラスの女の子ですごくしっかりして可愛らしい。保育園で会う度に「あ、サイくんのおかあさんだ!」と言ってくれる。お母さんも美人で服装もきっちりした方で◎◎ちゃんに教育や躾がきちんと行き届いている感じがする。優しくて感じの良い方なのに私はいつも無意識のうちにこの親子と距離を置こうとしてしまう。この親子がいると聞いただけでろくに化粧もせずに外出しようとしていた私は会うのが億劫になり出かける準備ができなくなってしまった。ピクニック辞めて家で食べないかと提案するとサイがこんなに楽しみにしているのに、とKに怒られたので最低限の化粧をして弁当とシートを持って出かけた。Kは私に気を遣ったのか人がいつもと違うほとんどいない場所にシートを敷いた。周りに人が少なかったので鳩が集まってきた。私はKが買ってきた弁当を食べる気がせず公園の売店で買ったたこ焼きをつまんだら後でお腹を壊した。◎◎ちゃん親子には会わなかった。帰宅後昼寝。Kは仕事。

昼寝後、サイと二人でスーパーに行った。アンパンマングミが欲しいというので持たせたら「いらない(別のお菓子がいい)」と泣き喚いた。別のお菓子はサイにはまだ早いお菓子だったのでこれはダメと言うとわんわん泣いた。冷凍コーナーのアンパンマンポテトの前を素通りしたら更に火がついたように泣き喚いた。店内の人が皆こちらを見ていたが、こういう時はどうしようもないので何もせずとにかくレジを済ませて出ようと思っていたらおばあさんが寄ってきてサイに向かって「どうしたの?なんで泣いてるの?お店の中では泣いちゃダメなんだよ」とやや怒りながら言った。サイは一瞬静かになり怯えた顔でおばあさんを見て更に泣いた。おばあさんは煩い子を親が放置している、私が何とかせねばと思ったのだろう。私の方は一切見ていなかった。それが私はすごい嫌だった。悪いのは分かっているし申し訳ないと思っている、でもこちらにも理由があるから直接サイに言うのは辞めて欲しい。これ以上騒がれては困るとすがるような思いで陳列棚を見るとアンパンマンのチーズがあり、買いたくなかったがこれで泣き止むならと咄嗟に掴んで持たせたらあんなに何をしても泣き続けていたサイは嘘のようにぴたっと泣き止んだ。笑ってさえいた。子どもの感情は単純で複雑だ。おばあさんの一言で自分の子育てが全否定された気がして減った鬱がまた一気に元に戻った。
帰りに暗くなるまでサイと走り回って遊んだ後帰宅して夕飯を作り始めたら、Kに最近夕食が遅いと文句を言われた。お腹の調子はまだ悪い。

ずっと一緒にいよう

5月29日(月)晴れ
朝。月曜日の朝はとにかく持ち物が多すぎる。着替え、オムツ、コップ、エプロン、連絡帳という毎日の持ち物に加え週末に持ち帰ったシーツ、防水マット、タオルケット、帽子・靴が加わりそれらを準備するのも保育園に着いてから各所配置するのも一苦労である。(と言いつつ靴と帽子を洗い忘れて持ち帰ったものをそのまま持って行った。)保育園に着いてからは障害物競争やゲームのように一つ一つクリアしていかなければならない。最後の難関が布団にシーツをつけるステージで、他の親御さんも皆殺気立った表情で黙々と我が子のシーツを取りつけている(ように見える)。これは私だけかもしれないが、次のステージに移る時は廊下を走るし一瞬たりとも手を休めたり「○○先生今日も可愛いな」などと余計な事を考えてはならない。邪念が入ると電車に間に合わず会社に遅刻する。後から来た親御さんが私より早くシーツをつけ終わり去って行くと負けた!とか勝手に悔しがる。そんなにギリギリなら早く家を出ればよいのだが、最近トイレトレーニングをしていることもありなぜか何時に起きても余裕を持って家を出ることができない。いっそのこと家の時計を実際よりも10分くらい進めておくのが一番いい解決策かもしれない。

夜。日曜日に買っておいた材料でKが焼きそばを作った。私はその間にサイと遊びながら洗濯物を畳んだ。「てをつないでおどろうよ!」とサイはおもちゃでアンパンマンの音楽を鳴らして提案してきたが、私が生返事で畳むのを辞めなかったので、「てをつないでよ!おどろうよ!」と怒られた。なので洗濯物を畳みながらもう片方の手をサイとつないで踊った。大道芸みたい。食後も窓ガラスに映った姿を見ながら二人で前後に並びサイの考案した「きらきらおどり(きっら!きっら!と言いながら狂ったように顔と両手両足を動かしながら踊る踊り)」を踊った。どうやら自分の姿を見ながら踊るのが好きらしい。

5月30日(火)
朝。休日に買った三色のきれいな食パンを食べた。冷凍庫から冷凍したパンを取り出してラップをはがしトースターに入れダイヤルをまわすその一連の作業が最近サイの仕事となっている。この日も「サイくんやるよ!」と張り切ってやっていた。あとはパンを冷凍する時に冷凍庫に入れるのもやってくれる。何か使命を与えられるのが生きがいのようだ。食器を運んだり最近手伝いもしてくれるようになったし、その調子だワトソン君。夜は大事な日。珍しく何の連絡もなかった。帰宅したら二人はすやすや寝ていた。

5月31日(水)
朝。バタバタして家を出るのがいつもより遅れる。自分で着替えられるようになってきたものの、やる気がない時が多く急いでる時ほどやってくれない。「くつしたはいてね」と靴下を渡して「うん」と答えるが次に見た時もまだ裸足で渡した靴下はどこかへ消えてテレビを観てへらへらしている。完璧ではないが自分で履くことはできるし保育園でもしているらしいが、テレビに気を取られてなかなか家では難しい。それでいつも私が履かせてしまうので益々やらなくなる。かと言って朝サイがテレビを観ている間にするべきことがたくさんあり、テレビを消すこともできない。他の家庭はどうしているのだろか。

夜。傷がないのに手にアンパンマンの絆創膏を貼りたがった。日曜日に転んだ時、肘を擦りむいたのでアンパンマンミュージアムで買った絆創膏をつけたら喜んでいた。その傷はもう瘡蓋になっているし、「ちがでてる」と差し出した指も何も問題なかった。このような事は初めてではなく、去年あたりから保育園のクラスで絆創膏が一種のファッションアイテムとして流行していたらしく、一時期どこも怪我していないのに張ってくれとせがまれたのを覚えている。特にサイが好きだった(?)女の子がそれをしていたので真似したかったらしい。その女の子に熱を上げていた頃、ストーカーのように執着し姿が見えないと名前を叫びながら探し回り、まだ物の名前もよく覚えてない頃、駐輪スペースにとめてある自転車を見て「○○ちゃんの!」と特定していた。女の子の方が精神年齢が高いというが○○ちゃんはそんなサイをうまくあしらっている感じだった。別れた(?)のか最近は○○ちゃんのことも絆創膏のこともあまり言わなくなった。と思っていたが久しぶりに買い与えた可愛い絆創膏に再び興奮を覚えたらしい。とは言え、何もないところに貼っても肌に良くないのでとっさに「なんかいいの作ってあげるからそれはやめとこう」と言うと大人しく納得した。代わりに手芸用に100均で買ったビーズ(前Tシャツを装飾した時の余り)を繋げてブレスレットを作り始めたら思いの他食いついて「サイくんやるよ!」と専用の紐にビーズを通すのをやりたがった。うまくできると満足そうだった。ビーズの間にアンパンマンの紙(絆創膏の箱を切り抜いたもの)を入れてくれと言われ、穴をあけて通した。出来上がると満足そうに腕につけてくれた。


6月1日(木)
ほとんど記憶がない。何を食べたかも覚えていない。サイがぬいぐるみにたくさん絆創膏を貼っていた。もったいないけれど叱る気力が湧かなかった。


6月2日(金)
夜。仙台に行きたいなぁ牛タンを食べたいなぁと思いながらその念でおりゃーと野菜をざくざく刻んでパスタを作った。セロリを入れたら美味しかった。サイはセロリが嫌いなので避けていた。セロリは癖があるし私も最近まで食べられなかったので別に食べなくていいかなと思う。食後、また「きらきら踊り」をした。部屋が全然片付かない。片付けないから散らかっていく一方で恐ろしい。Kは家事を何でもやってくれるが物を所定の場所にしまったりするのだけは一切やらない(というかできない)ので私がやらない限り部屋は荒廃していく。床にサイの玩具、いつか使ったかばん、チラシ、サイが嫌がって履かなかった靴下、ハンガー等多く転がっている。私はそこまで嫌いではないが、スイッチが入らないとできない。今週は体がしんどくてなかなかやる気スイッチが入らない。


6月3日(土)
早朝から明日の夜までKは出張で不在。土曜の夜、日曜の朝しか家族でゆっくり過ごせないので土曜はなるべく出張を入れないようにと言っているが仕事上避けられないらしい。起きてから体がしんどかったので、一日辛いだろうなと思うと朝から憂鬱になった。数少ない知り合い何人かに連絡をしたが断られ続け、最後の一人が優しくOKしてくれて午後一緒に遊んでくれることになった。神様。それだけで活力になる。大量の洗濯物を干していたらお昼の時間が近づき、サイはテレビにも飽きて退屈そうにしていたのでおにぎりとフルーツを用意して近くの公園でピクニックした。おにぎりが足りなかったため、私はお湯を持って行ってカップラーメンを食べた。他のお母さんがチラチラと見ていたが構わず麺を啜った。先日シャボン玉を使い切ったので売店に売っていたクマがついたスティック状のシャボン玉を買ったら喜んでやっていた。私が吹いたシャボン玉を声をあげて笑いながら追いかけていた。
家に戻り昼寝。その間に出かける準備。起きて出発。デパートの屋上で遊ばせる。初めて行ったところだが直射日光も当たらず自然がいっぱいでいい所だった。そのまま同じ階で夕飯を食べた。デパートは遊ぶところも食べるところもオムツを替えるところもあって本当に便利だ。サイが生まれてからデパートばかり行っている。せっかくの機会なので奮発して高いメニューを頼んだ。肉を食べたら元気になった。サイはいつものようにお子様ランチをあっという間に食べ終えて物足りなさそうにしていた。帰りに駅構内で可愛いと思った洋服を試着せずに買い、サイが寝た後に着てみたらイメージと全然違って悲しい気持ちになった。まあまあの値段だったので割り切って着るのもなぁと暗くなった。


6月4日(日)
朝。昨日のデジャブのように洗濯をして干した。昨日の夜元気になったが朝起きたらまたしんどかった。公園へ行こうかなと思ったところでKがいきなり帰って来た。私がしんどいしんどいと言っていたので出張先から会社に戻る前に荷物を置きに一度家へ寄ったらしい。サイと遊んでいないことを悪いと思ったのか、少しも休まずにそのままサイを公園へ連れて行ってくれたので私は少し休まった。準備して私も後を追い、三人でまた公園でお昼を食べた。帰宅してサイを寝かしつけている間にKはもういなくなっていた。サイが寝たので二回目の洗濯を待ちながら昨日買った美味しそうなパンにアイスを挟んで食べた。とにかく部屋を片付けなきゃなぁとパンを食べながら思っていたらサイが起きた。いつもより大分短い昼寝だった。洗濯物はまだ干していない。鼻水を治す抗生物質の影響でサイが何度も下痢をしてトイレと風呂場を何度も往復した。その合間に洗濯を干したりしていたので公園に連れて行ってあげられなかった。サイの機嫌が悪くなった。妹の誕生日が近かったので、気分転換も兼ねてサイに絵を描いてもらった。人間の顔らしいのが描けるようになっていて驚いた。「これはじいじ、これはばあば、これはAちゃん(妹)」と実家のメンバーを順番に描いていた。絵にも途中から飽きて再びぐずり出した。機嫌の悪さがピークになった頃Kが帰宅した。二人が薬局に行っている間に何とか気力を起こして晩御飯を作った。フライパンを使いたくなくて、ごはんも鶏肉も野菜も炊飯器にぶち込んで一気に炊いた。サイの分はそれを更に煮て雑炊にした。


今週は精神的に嫌なことがあったり身体の調子もよくなく、コンディション最悪だったのでサイにも満足いくように接してあげられなかった。家も片付かなかった。相変わらず荒れ果てている。何をするにせよ健康でいなければならないなと改めて思った。

何曜日だったか忘れたが、サイが私を抱きしめて「ずっとはなれないよ」と男前なことを言ってくれたのが嬉しかった。サイが成人して本当に離れない分けはないと思うし実際そうだったら気持ち悪いがただただ嬉しかった。先の事は置いておいて「ありがとう、ずっと一緒にいようね」と返した。

猫もきっとぶどうが好き

5月22日(月)晴れ
朝。今日もまたサイが房からぶどうを外してくれた。皮も全部飲み込んでいるようで、お腹に悪いかなと思ったので皮を剥いたら所々きれいに剥ききれていないところがあり、それは嫌がるだろうなと思って私のお皿に入れた。すると自分のぶどうを食べ終えたサイが「ここ、くろいからサイくんたべてあげるね」と私の分も食べたがった。私がパンが焦げた時にサイに言う台詞とそっくりで真似しているのが面白かった。しかも実はぶどうを食べたいがためにそう言っているのがまた面白かった。

昼。高校生が線路に飛び込んで跳ねられたニュースを見た。亡くなった高校生の親の立場になって考えた。もしもこれがサイだったら。自分が高校生の親だったら。もしこの子が人でも音楽でも何でもいい、最後に飛び込むのを引き止められる存在に出会えていたらと思うと胸が苦しくなった。サイには将来、生きがいとなるような何かを持っていてほしい。

夜。大学時代のゼミの恩師と数年ぶりに会った。サイの写真を見せたら「旦那さん似だね」と言われた。私は「相変わらず君はおかしいね」と言われた。長年の付き合いだしそういう人なので特に嫌な気はしなかったが何度も繰り返し言われたので私は本当におかしいのかなと思った。最近、サイといる時や話している時が一番心地いい。意味のない言葉を突然発したり、何も面白いことがないのに突然笑い出す遊びが好きでサイと二人でよくやる。そういうのばかり毎日やっているから傍目から見たらおかしいのかもしれない。
途中、「サイがおしりを掻きすぎておしりから血が出た」とKからLINEと電話があった。

5月23日(火)晴れ
朝。暑くて目が覚めた。夜中は涼しいので窓を閉めているが朝になると暑い。でも窓を開けて外の音でまだ寝ているサイが起きたらそれも大変なので開けたいのを我慢した。寝ている時のサイはセイウチの赤ちゃんみたいだなと最近よく思う。よく食べるのでどっしりしていて、おまけに毎日外で遊んでいるからか日焼けして肌が黒い。
暑い暑いと思っていたらサイが起き、寝起きでいきなり「おとうさん、ぶたにくかいにいったね」と言った。そういえば数日前に晩御飯前にKに頼んで豚肉を買って来てもらった。その時のことかもしれない。過去の記憶が唐突に言語化したり、サイの頭の中は一体どうなっているのだろう。サイといると本当に飽きない。
スイカを食べた。今年もスイカの季節がやってきた。サイの大好物スイカ。サイの分は種を取って小さく切って、自分は皮ごと持って食べていたら「ついてるよ、とってね」と私のスイカの種を指さして心配した。
おしりの傷を確認するのをすっかり忘れていた。

夜。K不在。赤ちゃんの頃は一人だととにかく大変だったけど、2歳すぎたあたりからサイと二人に慣れてきて、夜は二人の方が楽だなと思ってきた。Kは大食漢で普通に作ると足りないと言われるのでいつもかなりの量を作らないといけないし、翌日分や弁当分が余らない。サイと二人だと私もサイとほとんど同じ量(ビール飲むとちょうどいい)しか食べないので作るのも楽。二人の時は洗い物を減らしたくてチャーハンというか、焼き飯が多い。冷蔵庫の中から適当に選んだ具をごはんと一緒に薄味で炒めるワンプレート飯。サイの分を取った後に自分の分にだけ塩胡椒やごま油、茗荷など薬味を追加する。今日はほうれん草と卵とマッシュルーム。肉がなかったのでチーズを入れた。後片付けも簡単でサイとの時間が増えるから機嫌もいい。三人の時の方がぐずるかもと最近気づき始めた。

5月24日(水)曇り
朝。目が覚めた時、サイはまだ寝ていたので一人でこっそりお気に入りのパン屋で買ったピスタチオのクロワッサンを食べようと企んでいたら、サイもすぐ起きた。がーん。私が先に起きると空気で感じ取るのか何なのかわりとすぐにばれる。サイに朝ごはんを食べさせるのは時間が早い(早く食べさせすぎると後でお腹が空く)と思ったので、いつもの時間までしばらく一緒にままごとをした。玩具の箱をテーブルにして、水を入れたコップだけ本物であとは偽物。お皿に果物や野菜を入れてくれた。「にんじんもたべてよ」とまた私の口調を真似て言われた。美味しい美味しいと言って二人で食べた(ふりをした)。その後、本当の朝食を食べた。スイカを切っていたら一切れ皮つきのまま盗んで去って行ったので椅子に座らせたら上手に種を取って食べていた。サイは予想通りピスタチオのクロワッサンを欲しがったが、子どもにはやや高カロリーだったので「これピーマンのってるよ、苦いよ」と嘘をついた。ごめんね。それでも「しろいところをたべるよ」と言ってきたのでスイカの種取りに夢中になっている間に急いで食べた。

今日であの子が殺されてからちょうど20年が経ったことをニュースで知った。一生忘れられないあの恐ろしい事件。記事で読んだ「『生きていれば何歳』とか、そういう考えは浮かばない」という遺族の言葉が忘れられない。ある子どもが殺された事件から今日で何年が経ちましたというニュースを見る度に「生きていれば成人か」などと考えてしまうけれど、遺族にとって「生きていれば」なんてなく、ただ、ある日突然我が子の命が奪われて目の前からいなくなったという事実だけが永久に残り続けるのだなと考えて心苦しくなった。当時中学生だった元犯人は我々と同じように年齢を重ねどこかで暮らしている。美味しい物を食べてテレビを見て笑っているかもしれない。サイが生まれてから、サイがもし誰かに殺されたら、逆に誰かを殺めたら、とよく考える。その時、親である私は何をするのだろうか。生き続けられるだろうか。

夜。みんなまあまあ機嫌がよかった。朝のままごとが楽しかったのか、夜も箱を小さなテーブルに見立てて遊んだ。前から思っていたが、サイは食べる真似が本当に上手い。ままごとの野菜や卵を美味しそうな表情でもぐもぐと咀嚼する(ふりをする)。もしそれだけが求められる仕事があれば即採用されるであろう。口の中に食べ物が入っている感じとかリアリティがあり、本当に食べているように見える。これだけは親の過大評価ではない。あまりにも面白いのでビデオカメラで撮影したらちょっと照れて演技力が落ちた。
寝る前の歌が定番となりつつある。最近はサイが作ったオリジナルの歌を即興で歌ってくれる。毎日の記憶や感情が歌になっているのだろうけど、「おとうさん、スーパーへいったよー」など突拍子もない歌詞だったりするので面白い。でも本来歌ってこういう、日常の延長で生まれたのかもしれないと思った。


5月25日(木)曇り
朝。スイカの種を器用に自分で取って食べていた。2切れも食べた。私が探し物をしていたら時間がなくなりバタバタした。
昼。嫌なことが色々あった。サイは迎えに行くといつも保育園に迎えに行くといつも楽しそうにしているがもう帰りたいと思うぐらい嫌な日もあるのだろうか。

夜。こういう日は肉を食べるに限ると思ってKに提案すると三人で近所の焼肉屋に行くことになった。サイは人生三度目の焼肉だが、二回目までほとんど食べられるものはなかったし忘れているだろうから実質初めてである。肉が運ばれて来る前、サイは燃える炭を見て喜んでいた。網の上で焼かれていく肉をみて「おさかなたべたいーおさかなたべたいー」とずっと言っていた。焼けた肉を冷まし小さくしてお皿に入れると手品みたいにあっという間に食べてしまい、きりなく欲しがった。いつもの外食よりやや高くついたけど肉をお腹いっぱい食べたら満足した。心持ちか心身ともに元気になった気がする。


5月26日(金)雨
朝。寝起き直後、サイはベッドの上で電車ごっこをして遊んでいた。ぬいぐるみを乗客に、布団を車体に見立て「ドアがしまりまーす、ごちゅういくださいー」と言っていた。この台詞は多分、駅でよくエレベーターに乗る時に聞いて覚えたのだろう。朝ごはんの用意をしていたら、時間がないのにパンにアンパンマンを描いてと要求され、「今日はできない、ごめんね。でも明日可愛いの描くからね」と言った。泣いてぐずるかと思いきや納得したようだった。少しずつこちらの気持ちを汲み取れるようになってきたのかもしれない。雨だったので二人ともフル装備で家を出た。送迎タイムの雨は本当に勘弁してほしい。

夜。K不在。サイは適当につくったごはんでも「おいしいね」と言って食べてくれた。救われる。

サイは最近、毎日保育園の校庭に落ちている謎の実(サイはぶどうと呼んでいる)をせっせと拾い集め、近所の「にゃーにゃー」と呼んでいるネコ(おそらく放し飼い)にあげるために手に握りしめたまま持って帰る。もちろんネコは食べないが翌日通ると(多分風で飛ばされて置いた実がなくなっているので)ネコが食べてくれたと思っている。いつも同じ草陰で丸くなっているネコに「にゃーにゃー、ごはんたべたの?」「だいじょうぶ?」などと話しかけているがネコは煩い子どもだなぁという顔で無言でこちらを見ている。一時期犬を見て怖いと逃げていたので、動物に愛着を持つのはいいことだと思う。鳩は好きらしくよく追いかけている。虫を異様に怖がって体に止まろうものなら全身に力を入れて棒立ちになり悲鳴を上げる。正に都会っ子。

5月27日(土)晴れ
朝ごはん食べてサイが録画のアンパンマンを観ている間に洗濯物を畳んだり干したりして、終わったら耳鼻科へ連れて行ってといういつもの土曜日の過ごし方。本当は八丈島へ行きたかったが予算の問題で断念した。とても悔しかったけれど、サイも私も連休からずっと出かけっぱなしの週末だったので体を休ませるという意味ではよかったのかもしれない。耳鼻科に行っていたらお昼の時間が近づいてどうしようかな冷蔵庫に何があったかな、と帰りながら考えていたらサイが「こうえんでたべたい」と言ったので、パン屋とカフェをはしごして美味しそうなパンやサンドイッチを買って帰り道にある公園のベンチで食べた。嬉しそうにしていたが、寄ってきた鳩に怖がって「わるいぴっぴ!」「サイくんのぎゅうにゅうとられるー」と言っていた。牛乳はとらないと思うが確かに寄ってきた鳩は太っていて邪悪な目をしていた。遠くにいてこちらに寄ってこない鳩は痩せていて可愛らしかった。だから私もこの貪欲な鳩にはあげたくないと思って急いで食べた。
美味しかったけど落ち着かないピクニックだった。サイはパン屋で買いたいと言ったミニアンドーナツを嬉しそうに何個も食べ、食べ過ぎるといけないから「あとはお父さんのお土産にする?」と聞くとそうすると大人しく従った。食べた後に公園で走り回って帰宅。

帰宅後、昼寝。外の工事がうるさくていつもより短い昼寝だった。昼寝後、おやつを食べスーパーへ行き帰りに公園へ寄った。サイが生まれる前は公園なんて見向きもしなかったが、何も予定がなく晴れた休みの日は有り余る体力を消耗させるために一日中公園ばかり行っている。なので最近はどこへ行っても公園が気になり、「ここはいい滑り台があるが車道が近くて危ない40点」などと無意識に評価している。公園では最近サイが好きなシャボン玉をした。飽きずにずっとやっていて、上手にできると満足そうだった。シャボン玉の液がなくなると二人で走り回ったり全力でアンパンマンたいそうを踊った(踊らされた)。
晩御飯は春巻きリベンジ。前よりまあまあ美味しくできた。

5月28日(日)晴れ
家族写真を撮りに横浜に出かけた。写真を撮った時、サイはお腹が空いていたのかあまり機嫌がよくなかった。食後の方がよかったかもしれない。
お昼を食べてからアンパンマンミュージアムへ行った。あまり時間がなかったが約束してしまったためチケットは買わず屋外の無料エリアでショーを観覧した。それでも「あんぱんまーん!」と他の子どもと一緒に叫んだり、歌ったり踊ったりして満足したようだった。前も思ったがアンパンマンショーは子どもにとって大人が好きなアーティストのライブに行くようなものなのかもしれない。歓声やどよめき、盛り上がりがライブと変わらない。サイはショーの間ずっと機嫌よくステージを見つめていた。アンパンマンのお店(=物販)で前より欲しがらなくなったのでグッズよりライブ派なのかもしれない。

Kが仕事に行ったので帰りはサイと二人だったがお向かいに座ったマダムと笑い合ったりして機嫌がよかった。最寄駅から家までの道のりも歩いてくれて助かった。「にゃーにゃー」に挨拶して帰宅した。日光に当たり過ぎたからか、家に着くとどっと疲れが押し寄せたのでしばらくサイと一緒に「Mr. BEAN」を観た。サイは「Mr. BEAN」が気に入ったようでものすごい集中して観ていた。台詞がないので子どもにも面白いらしい。色んなものが置いてある部屋が魅力的だったのか「おじさんのおへやにいきたい!」と騒いでいた。ごめん、それは叶えられない。
晩御飯はスーパーで買ってきた焼き鳥と冷蔵庫の野菜で済ませた。アスパラに載せた温泉卵だけ欲しがって目を離した隙に素手で掴んで食べていた。ふざけてフォークとスプーンでビーンの真似をし始めたので悪影響だったかもしれない。

逃げたら悪いか

子どもがいながらにして何のために働いているのか。育休後復帰してからずっと考えている。

第一は金銭のためである。それが7割ぐらい。金銭というのは子どもにかかるお金、家族の生活費、自分が楽しむお金、全部含まれる。サイにかかるお金と生活費、これは夫の給料だけでやりくりすることもできなくもないが、正直ぎりぎりで貯金はほとんどできなくなる。そうすると近い将来サイが「こうしたい、これをやりたい」と言ってそれがお金が原因で我慢させることになるのが辛い。できるだけ生きる選択肢を多く残してあげたい。それにぎりぎりの生活で、毎日もやしを食べて電卓を睨んで切り詰める事が私にはできない。一人暮らしの時はしていたが家族を持ってできなくなってしまった。我儘かもしれないが、ぎりぎりであらゆることを我慢すると精神的にきつくなり家庭全体が暗くなるのが目に見えている。また、私は好きなことや欲しいものが他人と比べて多いと自覚していて、自分で働いていないのに好きなものにお金を費やすのが嫌なので好きなものがこの世からなくならない限り働き続けなければいけない。残念ながらなくならない。美味しいパンやお菓子を食べたいし、好きな人のライブに行きたいし、可愛い服がほしいし、サイに絵本を買いたい。もちろんこれには様々な意見がある。いわゆる専業主婦の方も家事・子育てというそれより大変なことがないくらいの労働をしているのだから好きに遣えるお金を持って当然だと思う。ただ私自身、それを家族ではあるが他人である夫に与えられるのが耐えられず、自分で働いて得たお金を費やしたいというだけの問題。あくまで個人的な問題。

残り3割は何かというと、自分の居場所や属性の問題。お金に十分な余裕があれば仕事をすぐに辞めるかと問われると難しい。母親になってから、それだけが自分の名刺・居場所になるのが耐えられない(あくまで個人的な感情)。じゃあ子どもを持つなと言われそうだが、母親たるもの働くなという人に会う度、なぜ母親は母親と会社員という二つの名刺を持ってはいけないのか。父親はよいのに、といつも思う。サイがもちろん好きだけど四六時中サイといるのが辛い。それに反対する男性は今すぐ仕事を辞めて専業主夫になればよい。サイ自体の問題でなく、子どもと二人だけの閉じられた世界に居続けることで周囲から取り残されたような、母親である以外のお前はもういらないと言われているような気持ちになる。子どもとずっといるのが好きな人も苦痛でない人もいるだろうからあくまで私の気持ち。我儘というとそうかもしれないが私は何に対しても容量がすぐいっぱいになり溢れると対処しきれなくなるので、逃げ場がないと生きていけない。家庭からの逃げ場は仕事であり、仕事からの逃げ場が家庭になる。大森靖子さんもそのようなことを言われていた気がする。

だから私はサイが重い病にかかるなど避けられない要因や強制的に辞めさせられることがない限り、定年まで働き続けたいと思っている。今の仕事がベストかどうかはまた別の問題だが逃げられる場所がほしい。


以上、主張や意見などではなくあくまで個人的な気持ち。他の人は何を考えているのだろう。

陣痛週間

5月15日(月)曇り
夜。Kはおらずサイと二人。最近、食欲旺盛なわりに野菜など嫌なものを残すようになってきた。今日もメカジキだけ勢いよく食べて(確かに脂がのっていて美味しかった)野菜は皿に残っていた。私はビールを我慢したのとサイと同じ量だったので食べ足りずポテトサラダをおかわりしたら「サイくんもポテトサラダ」と野菜そっちのけになった。ポテトサラダなんて言葉いつの間に覚えたのだろう。「それ全部たべたらあげるよ」と言うと残っていたブロッコリーを勢いよく口に詰め込みだした。やや乱暴な食べ方ながらも全部きれいに食べた。「わ!すごいね!偉いね!」と言うと「ぱちぱちは?」と拍手を要求された。嫌なものを頑張って食べた時に大げさに褒めて拍手していたらそれが我が家の定番となった。つい忘れるとこうやってリクエストされる。すごいすごいと言い手を叩いた。食後、朝も食べたぶどうをまた食べたがったけど晩御飯がやや多かったので、「ぶどうさん、今冷蔵庫で寝てるからそっとしといてあげて。明日の朝食べようね。」と言うと「うん」と大人しく引き下がった。

続トイレトレーニング。成功したら一枚ずつあげているシールが普通すぎて効果が薄れてきたので可愛いアンパンマンのシールを買った。効果抜群。シール欲しさにトイレに前より行ってくれるようになった。アンパンマンカレーパンマンが揃ったから次はしょくぱんまんをゲットしたい、などと男の(?)収集癖を刺激するらしい。ただ、魅力的過ぎてサイはシールの塊がどこにあるのか目を光らせて探している。隠し持っていることを追及され、トイレが成功したらどこからともなく現れると必死に説明するも疑いは消えず。


5月16日(火)曇り
朝。ぶどうのことをちゃんと覚えていて「ぶどうさんねてる?」と食べたそうに聞いてきた。ぶどうのパックを冷蔵庫から出して房から外していると「サイくんもやりたいー」と言ったのでやらせた。外したぶどうを持ってどこかへ行ったので「それ洗わないといけないからね」と言うと「こっちであらうよ」と洗面所から声がした。最近色々なことを自分でやりたがり得意気にしている。前ピクニックへ行った時も果物を入れた容器を「サイくんもっていくからね」とやはり得意顔で率先して運び出し、その時の自分がやらなきゃという使命感で満ちた顔があまりにも可笑しくて吹き出してしまう。

夜。あまのじゃくが出てきて(食事の時は久しぶり?)、「サイくんたべないー!」と騒いでいたがとりあえず着席させた。お皿を出してもまだ食べないとぐずっていた。「そうか、じゃあ食べなくていいよ」「お父さんたち先に食べてるね」と私とKは言い黙々と食べ始めると「サイくんたべないから!」と強く言った後「ちょっとだけたべるよ」と言い好物のポテトサラダから食べ始めた。言葉と行動が乖離しすぎてて本当に可笑しくて笑ってしまった。その後も食べないと言いながらフォークを持ってどんどん食べ進めていた。でもやっぱり機嫌はあまりよくなく、ブロッコリーが皿に残った段階で「もうごちさま(ご馳走様)なの!」とお皿を押しやった。保育園で出る野菜も少ないし野菜だけは食べてほしいなと思ったので、食べてほしいと宥めたがサイは耳を貸さず、最終手段で「あ、じゃあこれ食べたら後でみんなでこのおやつ食べようよ」と提案すると顔色を変え、昨日と同じようにブロッコリーを口に詰め込み始めてあっという間に完食した。すごいねと二人で拍手したら遮るように早口で「おやつたべる」とテーブルの上のもみじ饅頭を見つめて言いった。みんなで分けて食べようねと袋を開けようとするとまた得意顔で「サイくんあけるよ、みんなにわけてあげるよ」と言ったので渡すとなかなか開封できず苦戦していた。結局私が開けてサイに饅頭を渡し、サイがみんなに分けてくれた(私とKの分が気持ち程度というかあまりにも少なくて自分だけたくさん食べようとしていたのが面白かった)。少量かつ食後ならおやつ作戦もありかもしれない。


5月17日(水)曇り
サイと私はいつもどちらかが先に起きるのだが同時に起きた。同時と言っても私が目が覚めて時計を見たらサイがごそごそ動き始めてぱちっと目が開いて目が合った。いつも寝起き直後でいきなり話すのに驚くのだが今日も「おかあさん・・」と突然話かけられた。「どうしたの?」「こんどおはなかいにいこうよ」「うん、買いに行こうね」「おとうさんにおはなかいにいこうよ」「うん、お父さんにお花あげようね」という会話をした。私が前の日の夜もお花もらって嬉しいありがとう、と飾ったお花を見ながらサイに何度も言ってたので頭の中に「お花をあげることは人を喜ばせること」とインプットされたらしい。そうでない人もいるかもしれないが私はお花をもらうのが好きだし人にあげるのも好きだ。サイも将来、人に花を贈るような男になってほしい。

昼。久しぶりに保育園から「熱が出ました」の呼び出し電話。インフルエンザとノロを除けば最近風邪らしいものはひかず元気だったのでここへ来て、という感じ。連休の帰省や祖父母と過ごした疲れがどっと出たのかもしれない。半休をもらいお迎えに行くと昼寝時間の終わり頃で教室の外から覗くと子どもたちが布団を並べて寝ていてサイは一人眠れず辛そうにしていた。私に気付いて窓ガラス隔てて目が合うと助けを求めるような表情をしていた。泣いているようだった。(お昼なんか食べずに早く迎えに行ってあげればよかったと後悔。)電話の時は38度代の発熱と聞いていたが担任の先生から「39度まで上がりました」と言われる。一旦家に保険証を取りに帰り、そのまま病院へ行った。いつも行っている小児科が時間外だったので初めて行く病院へ行った。方向音痴のため少し迷いながらようやく病院を見つけた。病院に着くまで何度も「大丈夫?」と声をかけると小さな声で「うん」と答えるだけで、騒ぐことなく大人しかった。高熱で辛かったのだろう。人気のある病院のようで平日だというのに30分以上待たされた。受診中も大人しかった。お腹がごろごろしているので胃腸炎かもしれないとのこと。薬を出してもらう。サイと私が診察室から出る瞬間、診てくれた男の先生が「夜までの間に何かあれば電話してくださいね」と優しく声をかけてくれた。私が週末に控えている予定がダメになることなど考えてやけに暗い表情をしていたからかもしれない。診療中も子どもに向き合って声をかけてくださったし、いい先生だ。またここへ来よう。いい医者がいる病院は混んでいるのだな、と以前行っていた空いているけどものすごくいい加減で態度の悪い医者の事を考えた。

帰って一緒におやつを食べ(おやつは食べた)、辛そうではあったけどサイは夜まで寝ていた。私まで一緒に寝てしまった。晩御飯食べさせなきゃと思い起きたらサイも起きた。冷蔵庫にあった野菜、ツナ缶、卵で簡単な雑炊を作った。ぐつぐつ煮える鍋をみていると離乳食時代に戻ったような不思議な感覚だった。その間サイは横浜アンパンマンミュージアム10周年の豪華ステージ(前にKと揉めて連れて行ってあげられなかったやつ)の動画(誰かが撮った高画質なものがYou tubeに上がっていた)を観ていた。フルメンバーの着ぐるみが次々と出てきてステージで踊っているのでサイは一緒に歌ったり、出てきたキャラクターにコメントしていた。ライブの動画でもそうだけど、現場に行けない者にとってこういう動画が本当にありがたい。
「ご飯できたよー」と声をかけてもお腹が空いてないのかあまり気が乗らないようだったので膝に座らせた。再び赤ちゃん時代を思い出した。トマトを食べた後雑炊には手を付けず、ツナだけ一生懸命探して手で食べた。あとはスプーンで口に運ぶとと少し食べたがあまり食欲がないようだった。私も並行して同じ雑炊に塩コショウとオリーブオイルをかけて食べた。こうするとちょっとワインでも飲もうかなというおしゃれな味になり薄味の雑炊もけっこういける。(さすがに飲まなかったけど。)

食後、また熱が上がってきたようだったので解熱剤を飲ませてお風呂は入れず布団に寝かせる。泣きはしないものの、寝付けず苦しそうに呼吸し、暗闇で何度も目を開いて私がいるか確認していたのでなかなか立ち去ることができなかった。寝たかなと思って部屋を出ようと私が起き上がる度にサイが目を開いて行かないでという顔をするのでまた横になり、を繰り返していたらやがて薬が効いてきたのか眠りに入った。私は変な夢を見て寝たり起きたりを繰り返していた。
深夜、Kが帰ってきて目が覚めた。(いつも物音や歩く音がうるさいので目が覚める。)Kは日帰り出張で帰ってくるはずだったのが、ちょうど晩御飯を作っていた時に電話があり明らかに酔った声で「あ、今日、泊りになったから」とLINEで知らせていたサイの様態を少しも心配することなく軽々しく告げられたので殺意を覚えて電話をぶち切った。夫婦ともなればどれくらい酔っているか声ですぐに分かる(と思っている)。さすがに私がキレたのを察したのか泊まりを辞めて帰って来た。サイが起きている時が大変だったので夜中に帰って来られてもあまり意味がない。とはいえようやくシャワーを浴びることができた。寝室に戻ったらサイは解熱剤が切れている頃なのに生まれる前のエコー写真と同じ顔ですやすや眠っていた。

5月18日(木)曇り
ぱっとしない天気が続く。サイは朝起きて顔色もよく元気そうだった。私のメガネを奪ったりぬいぐるみに話しかけたり平常運転に戻ったようだった。お腹が空いていたのかごはん(Kのお土産の笹寿司)とパンを両方食べた。落ちていたビニール袋におもちゃを袋いっぱい詰め込んで満足そうにしていた。目を離した隙に隠していたアンパンマンシールを発見し勝手に貼っていた。全てが平常通りというか、むしろ反動で前より元気になった気もする。あとは熱さえ上がらなければ。保育園へ行く途中、いつもあったブルドーザーがなくなったと教えてくれた。本当によく観察している。それで「ブルドーザーがやってきたー」と働く車の歌を歌い始めたら「やめて!うたわないで!」と制止された。仕事中、どきどきしていたが保育園から呼び出されることはなかった。

夜。すっかり快復したのか帰宅後、朝より更にテンションが高く、歌を歌ったり話したり絶好調のサイ。表情も生き生きしていた。保育園の連絡帳にも「昨日のサイくんとはまるで別人」と書かれていた。大人だと39度の熱が出たらその後数日はしんどいのに苦しんだかと思うとぱっと元気になる、それが子どもの風邪なのか。それとも知恵熱だったのだろうか。分からないが無理はさせない方がいい気がする。食後もサイは異様にテンションが高く私にくっついてまわったり変な感じだった。食後、私が疲れたなと思って巨大な猫のぬいぐるみを抱いて放心していたら「サイくんのおかあさんなんだから!」とぬいぐるみに嫉妬して床に叩きつけた。


5月19日(金)晴れ
ようやくぱっと晴れたかと思うと暑い。昨晩サイと一緒に寝て夜中に起きて洗濯しなきゃと思ったが重い腰が上がらず結局空が白みだす頃にしたので、朝なかなか起きられなかった。サイが先に起きて「おかあさんおきてよー!ねちゃだめー!」と言われたが寝たまま応じなかったので怒ってぎゃーぎゃー泣き出した。それでも私は起きられなかった。横でサイが泣き叫んでいる。眠い。近所に朝から虐待していると思われたらどうしよう。いつも起きる時間になってようやく「ごめんごめん」と起きたらすぐに機嫌は直り一緒にぬいぐるみで遊んだ。起きてというのは「起きて一緒に遊ぼう」という意味だと思う。
「おとうさんは会社だね」という話をしていたら「サイくんもかいしゃいくよ」と言った。「え、何の会社?」と聞くと「でんしゃのかいしゃ!」「電車の会社で何するの?」「おしごと」ときっぱり言った。会社は何かよく分からないけど「おしごと」をする場所だと分かっているらしい。私もそれくらいしか分からない。それにしても電車の会社ってどこから発想したのだろう。
夜。明日大森靖子さんに会えるということで寝る前にかばんにギターやお気に入りの玩具をせっせと詰めて準備していた。寝る前に「おかあさん、あしたおーもりさんにあえるね」とぽつりと言ったのが忘れられない。


5月20日(土)快晴
サイと一緒に寝てしまい、明け方起きてサイが着て行くTシャツにフェルトでアップリケをした。嫌いだと思っていたけど刺繍は案外楽しい。ミシンの類は本当に苦手。もう少しで完成というところでサイが起きたので危ないけど寝室に針と糸を持って行き、サイが布団でごろごろしている横で最後の仕上 げをした。百均で買った色とりどりのビーズを興味津々で眺めて容器から出し入れして最後は布団の上にぶちまけていた。寝室にビーズなんか転がっていたらKが絶対怒りそうと思って注意して片付けた。完成したTシャツを気に入ったようで早速着てくれた。うまくできず既に取れそうな感じだったが縫い付けたビーズが特に気に入ったらしい。これはナナちゃんって言うんだよ、と教えるとアップリケに何か話しかけていた。ど根性ガエルみたい。

朝ごはん、洗濯の後バタバタと用意して湯会の会場である「東京天然温泉古代の湯」に向けて出発した。
湯会とは温泉でライブが行われるイベントだと認識していたのだが、会場である大宴会場に着くと予想以上の爆音でサイの耳が心配になった。一つ下の階に食堂がありそこは静かだったので他のお子さん連れの方と一緒に早めのお昼を食べた。肉巻おにぎりをすごい勢いで食べていた。食堂の奥にゲームコーナーがあり、アンパンマンの動く乗り物があったので執着していた。その後キッズルームへ行ったら、昔のアンパンマンのぬいぐるみがたくさん置いてあり、それがものすごく可笑しくて奇妙な顔をしていたのでサイは怖い怖いと言って泣いた。一度怖いと思ったものにはずっと怯えて近づかない性格なので、その後もキッズルームへ行くのは気が進まないようだった。いつもお昼直後に2-3時間は昼寝するのだが、絶えず大きな音で音楽が鳴っている上にたくさんの人がいるので全く寝る気配がなかった。大人に構ってもらっても人見知りして私の後ろに隠れたりしていたが、次第に慣れてきたのか音に合わせて飛び跳ねたり踊ったりしていた。そんな調子だったので肝心の大森さんのライブが始まって、しばらくは元気にペンライトを振ったり大人しくライブを観ていたがやがて眠ってしまった。隣のお子さんも寝ていたのでギターの音が心地よかったのかもしれない。

ライブ後、大森さんとの撮影会があった。それまでに起きなかったら仕方ないなと思っていたらちょうどよいタイミングで起きた。順番が近づいてきた時、サイに大森さんあそこにいるよと耳元で囁くと、サイはきょろきょろと探して大森さんを見つけ、前にディズニーランドでミッキーに会った時と同じ表情をしていた。何度も写真や動画で見ていたからか他の大人には人見知りするのに大森さんには全くせずちゃっかり膝の上にまで座らせていただいた。聖母のように優しい大森さんの対応にただただ恐縮した。その後も終わりまでテンションが高く走り回ったりお茶を入れる機械に執着していた(サイはボタンを押すと出るとかそういうのが大好き)。お茶の飲み過ぎでオムツを何度も替えた。

帰りのバスでもテンションが高く「きゃべつのなかにあおむしがいたよ~」という謎の歌を大きな声で歌っていた。疲れたので最寄駅の回転寿司で晩御飯を済ませた。寿司を食べていると突然私の方を向き、「おかあさん、おーもりさんにあえたね」と嬉しそうに言った。
家に帰っても三人で撮ったチェキを愛おしそうに眺めていた。耳は大丈夫だったようで安心した。

5月21日(日)快晴
疲れているであろうサイに申し訳ないと思ったがKも私も別の予定があり、私がサイを連れて出かけた。天気がよかったのでデパートの屋上で昼食を食べた。屋上はうるさくしても怒られないし走り回れるのでデパートに屋上があれば嬉しい。私が食べている途中で席から降りたがったので、食べ終わった友人に付き添いをお願いした。食べ終えて二人を探したら熱帯魚コーナーにいて、サイは釣堀コーナーの前にしがみつき、なぜか友人の手をぐいぐい引いて離さなかった。多分魚釣りやりたい、という意思表示だったらしい。有料で自分の力ではどうにもならないから何とかしてよ大人、お金出してよという意味のような気もする。知恵をつけてきて恐ろしい。ベビーカーに乗せるとぐずったのでデパートのおもちゃ売り場で欲しがったままごとの卵を買った。しかしすぐに飽きてしまい、買わなきゃよかったと後悔した。欲しいと言われるとつい色々買ってしまうが、物を与えすぎてそれが当たり前になるのもよくない。ぐずり続けた後、外出時にしてはいつもより長く昼寝をした。昨日ほとんどしなかったので、その分も寝ているようだった。昼寝から起き、おやつにプリンを頼むと機嫌がよかった。サイはレストランのショーケースにある食品サンプルが大好きでいつもにやにや眺めてサイくんはこれにしよう、などとあれこれ言って楽しそうにしている。この日もショーケースの海老を見てなんだこれ~と興奮していた。

夜。嫌いなアスパラを一度口にたくさん入れて飲み込まずに吐き出したので叱ったらわんわん泣いた。でも説得の末、吐き出したものをもう一度食べた。まあまあ根性があるのかもしれない。

熱が出たり憧れの人にあったり出産前の陣痛のような一週間だった。

たまには傘持って踊りたい

5月8日(月)晴れ
命にしても何にしても永遠に続くものなどこの世になく、長い休暇も多分に漏れず終わりが来る。
確か穂村弘さんが、ブルーマンデーについて最初は日曜日のサザエさんが始まる頃から不安になっていたのがだんだん前倒され、今や木曜日ぐらいから不安になる、というようなことをエッセイに書かれていて正にそれと同じ気持ち。GWが始まる時からもう不安だった。
仕事に行きたくない私と同じようにサイも朝、「こうえんいく」「ほいくえんいきたくない」「○○せんせいこわい」と発言していた。私が会社に行くのは生活のためだが、サイは保育園に行かされているだけでありそこに必要性は全くない。だから行きたくないと言われるといつも心苦しい。

4月からずっとさぼり続けてようやく作った(といっても支給された厚紙にボンドで貼っただけの)連絡帳カバーを見て喜んでくれ、保育園バッグに入れないで自分で持っていく、先生に見せると言ってくれた。サイはいつも大したことのない些細なことでも大喜びしてくれるのでこんなことでごめんねといつも思う。もし私がインスタでよく見かけるような手作りお菓子や料理、手芸の達人だったらサイはどんな反応をしていただろうか。絵や工作は好きだが手芸や料理は苦手で苦痛でしかない。でもサイのためならフェルトでままごとセットを作ってあげたり、Tシャツに好きなキャラクターを刺繍してあげたり、可愛いちぎりパンを作ってあげたい。あげたいけれどそれはいつも想像上で終わる。例の山菜の天ぷらを出してくれた奥さんの家に、紙でできたアンパンマンや食べ物など明らかに手作りと分かる凝った作品が山ほど置いてあり、私は「これ作ったんですか」と目に入る度にしつこく尋ねた。全部支援センターで作ってもらったんですよと聞くと妙に安心した。
お菓子作りこそしなかったが手芸好きな母は私が小さい頃洋服や色々なものを作ってくれた。キティちゃんの絵が編みこまれたセーターを着た自分の写真を見ると、一体どうやって人間の手でこんなものを作り出せるのか不思議な気持ちになる。母と同じようにはなれないが絵を描いたり私は私のできることするしかない。

夜、サイはお医者さんセットの聴診器を私のお腹やお尻にあててはしゃいでいた。へそに注射してくれた。ままごとの食べ物でお弁当を作ってくれた。最初は機嫌よくやっていたが弁当箱にきっちりはまらないと嫌になって全部投げつけていた。


5月9日(火)曇り
朝。サイは2歳になった頃からトイレトレーニングを始めたが、なかなかうまく進まない。トイレにサイが好きなポスターや絵を貼っってイメージから改善しようとするも、気が乗らないとトイレにすら行ってくれない。なので汚い話だが大便に関しては今にも出そうな顔をしている時に急いで便座に座らせる。あまり強制的だと嫌がられるので「キラキラのすごいシールあげるから行こう」と誘拐犯のように誘った。今日は間に合って便座でできた。よかったねぇー偉いねぇと言っていたら遮るように真顔で「きらきらのしーるは?」と聞かれた。実は口から出まかせだったので慌ててシールを探した。たまたまそういう感じのものが見つかってよかった。サイは光る宝石のようなシールに喜んで大事そうにしていた。
その後私がトイレに入っていたら覗いてきて大人みたいな顔で「きらきらのしーる、もってこようか?」と聞いた。最近サイは私がトイレに行く度にかけつけてシールが欲しいか尋ねてくれる。「うん、ありがとう」と言うといつものように「まってて!」とやけに自信満々にドアを閉めどこかへ行った。

仕事で夕方、自分の関わったものでは入社以来最も大きな案件が舞い込み動揺する。決まればすごいことなのだが、私も上司も極度のマイナス思考のため「こんなうまい話あり得ない、最後に何か起こってダメになるかも」と暗くなっていた。そんな我々と相反して部長をはじめ、周りは喜び騒いでいた。そんな最中、先方にろくに返事もせず(翌朝確認したら上司がやってくれていた)、私は退社しサイのお迎えに向かった。夫は出張で不在なので私が行かなければサイは保育園に取り残される。こんなこと口が裂けても会社では言えないが、どんなに大きな案件があってもサイのお迎えが最優先である。

迎えに行くとサイはいつも通り主人が迎えに来た犬のようにすっ飛んで来て、園庭で走り回ったり砂に絵を描いてから帰路についた。先生にサイくん連絡帳カバーに大喜びで見せてくれましたよ、と言われる。通園途中いつも通りかかる和菓子屋さんがあり、「あそこのおやつ」と私が最初に呼んで以降、サイも店名のように呼んで前を通る度に「あそこのおやつかいたい」と騒ぐ。金曜日や給料日後に寄ることもあるが今家には帰省先で買ったお土産がいっぱいあるので「あれ?やってないね、今日はもう売ってないねぇ」と適当に言って通りすぎたら「やってるー!あるー!」と激怒しぐずった。だんだんと適当さが通じなくなってきたが応じていても大変なので断り方を考えないといけない。
帰宅後、機嫌直しに家にあった饅頭をサイと半分ずつ食べたら満足したようだった。


5月10日(水)雨
雨の日は嫌だ。自転車にカバーをつけたり、ダサすぎて最新ファッションかと思う雨具をフル装備したり、かばんが濡れないようにしたり、通園するだけで朝からたくさんの気を遣いEPが一気に減る。今日は小雨だったのでまだいい方。大雨の時は本気で仕事を休みたくなる。最近サイが濡れないようにするカバーをなくして、ベビーカーのカバーで無理矢理代用している。やはり無理があり走っている途中でめくれ上がった。誰に似たのかサイは下げているかばんの持ち手が捻じれたり、ままごとの野菜がうまく箱には入らなかったり、均等や美を保っているものが崩れるのを一番嫌がるので案の定機嫌が悪くなった。でもそのまま走り続けた。雨は嫌だ。

夜。夫の仕事に余裕があった日だからか先日のことを悪いと思っていたのか、自由時間をもらえ、素敵な人達と夢のような時間を過ごし絡まっていた紐が少し解けた気がした。(日記の中で夫って書くのは何だか嫌なので今度からアルファベットでKとすることにしよう。)ストレスを溜めて鬱々としてるのは家族に悪く当たってしまう可能性がある上に翌朝以降の生活にも悪影響しかない。たった一晩出かけるだけで明日から頑張ろうと思えるのだから全国の夫達は一晩だけ家事や育児を頑張ってたまには妻に一人だけの、妻でも母でもない時間を与えるべきだ。いや、母親たるもの子どもからひと時も離れてはいけないという人や、山菜天ぷらの奥さんみたいに別に出かけたいと思わない人もいるだろうから、これはただの持論だけど。

5月11日(木)快晴
朝から夏のように暑い。ドクターイエローがプリントされた半袖Tシャツを着せようと出したら思い違いで長袖だった。暑いから辞めようかと言うとサイは見てしまったためにドクターイエローがいいと主張した。サイはドクターイエローのことを舌足らずのせいで「ドクターエロ」と言う。それではただのエロいおっさんで医者かどうかも怪しい。仕方ないのでそれを着せて行き保育園で半袖に着替えさせてもらうよう先生に伝えた。大森靖子さんが息子に危険さえなければ自由にさせてあげたい、とラジオでおっしゃていたがその通りだと思う。命の危険と周囲への迷惑さえなければできる限りサイの「おこだわり」に応じたいと日々思っている。晴れの日に長靴を履いたっていいし、オムツをデコりたいと言われれば応じる。と言いつつ壁に落書きすると叱るし、夕飯前にお菓子食べたいと言われると断る。躾とこだわりは違うのでその辺りは弁える必要がある。


夜。退社後昼休みに美味しいパン屋さんで買った週末分のパンと同僚にもらったパンを会社に置き忘れてきたことに気が付き、一端お迎えに行った後駅でKと交代し再び会社へ戻る。退社する時はいつもサイの顔を浮かべてうきうきなのに、夜に会社に戻るのって例えそれが仕事でなくてもなんと暗い気持ちになることか。
帰ったらサイとKはKが作ったパスタを食べていて私も食べる。美味しいのだけど何味かよく分からない。


5月12日(金)晴れ
夜、明日から両親が来るのに備えテレビ電話など。

5月13日(土)雨
サイと一緒に寝てしまい、明け方起きて部屋の片づけをしていたらKが起きてきて二人でがたがたうるさくしていたので、日が昇らないうちにサイは起きてしまった。Kは会社に行き、私はひと眠りしたかったので起きたいというサイを宥めて8時頃まで寝る。おそらくサイは途中寝たり起きたり。最近寝ていて足で蹴られたりするのが本気で痛い。負傷するレベル。起きてから「今からじいじばあば(私の両親)来るから会いに行こうね」と言うとサイは飛び跳ねてうきうきしていた。


天気はよくなかったが早く着いたのでみんなで築地へ行った。団子屋さんで雑煮と団子を食べる。知らない外国人観光客がライカでサイを撮ってくれる。父とKとはそこで別れそのあと三人で銀座へぶらぶら。ぶらぶらと言っても天気は一層悪くなり休み休みで辿り着いた。自分では普段買わないちょっと高い店でサイの洋服を買ってもらう。その後電車を待っている時、これからもらう年金の額がものすごく少ないという話を聞き申し訳ない気持ちになる。それでもサイのために何か買うのが母の愉しみらしい。
好きな洋食屋さんで三人でお昼を食べ(雨だから空いていた)、デパートの子どもの階で絵本を読み、天気が悪いのでKにサイをピックアップしてもらいそこから2時間ほど母と二人になった。いつもそうだが、それまで一緒にいたサイが突然いなくなるといなくなった感がすごくある。サイのことは大好きだしずっと一緒にいたいけれど離れた瞬間自由だ!とミュージカルの主役みたい踊りたくなる。母と二人で絶対幼児が入店できない店で普段なら食べない高いパフェを発注し美味しい美味しいと堪能する。

夜はみんなで家の近くの和食屋さんで晩御飯。初めて行ったけど本当に美味くて両親もサイも満足していた。買い物して美味しいもの食べてサイをみてくれる人がたくさんいるってなんという余裕。たまにはいいよね、傘持って踊りたいよねと思いながら寝た。

 

5月14日(日)

午前中はゆっくりして(うちの両親は朝からそんなに食べない派なのにKに叩き起こされてちゃんとした朝ごはん作るよう命令されたのがちょっと嫌だった)、みんなで薔薇の綺麗な場所へ出かける。ここで薔薇を見るのが毎年の楽しみなのだけどとにかくものすごい人でみんな薔薇好きなんだな、と思う。一昨年はまだ歩けず、昨年はよちよち歩きだったサイは今では走り回る。お花が最近好きなので喜ぶかと思いきや砂利を拾って遊んだり「いちごわすれた」などといつか苺を持ってきて食べた記憶など思い返し薔薇はどうでも良さそうだった。動き回ってじっとしていないので写真も撮れなかった。

昼食を食べて両親はまた地元へ帰って行った。

 

帰宅後、なぜか疲れていたので母の日ということもあり晩御飯を作ってほしいとKに頼んだら快諾してもらえた。自分でも作り方がよく分からないビーフストロガノフをリクエストしたらちゃんと完成していた。お風呂もKに代わってもらい深夜に一人でゆっくり入った。

 

日記を書き初めてから思うけどたった一週間って色々あるもんだな。

 

金曜日の夜、サイとKはいつもより少し帰りの時間が遅かった。「ただいまー」と帰ってきたサイの手には花束らしきものがあったけれど私は何にもピンとこなかった。普段ならこういうのにすぐ勘付く方だけど、ああ、お花買ったのか、と普通に思った。Kがサイの後ろから何か言い、サイがもじもじしながら小声で「おかあさんありがとう」と言って持っていた花束をくれた。私の一番好きなマトリカリア。リボンも何もついてない茶色い紙に包まれた小さな花束。言葉にならないほどの嬉しさとよく言うが本当にそんな感じだった。玄関でサイをぎゅーっと抱きしめてありがとうと言ったららちょっと照れたような満足そうな顔をしていた。その後Kからも自分では絶対買わない色のハンカチと靴下をもらった。もちろん嬉しかったけどサイにもらった時の気持ちとは比べものにならなかった。どっちも代金を支払ったのはKなのに申し訳ないほど。
そういえばサイに何かもらったのは初めてだ。食べかけのパンや床に落ちていた糸くずは日常でもくれるが、贈り物をもらったのは初めてだ。赤い顔して永遠に泣き続けていた子が今や照れながらお花をくれるなんて、嗚呼。


嬉しくて嬉しくてずっと棚に飾った花を眺めている。