カニ日記

息子の成長と日々の記録

新緑の眩しさがクラウチングスタート

4月9日(月)

朝。パンとバナナ。月曜日のバタバタ登園。おたまじゃくしは更に成長していた。口をぱくぱくし動かしているのもはっきり見える。ここまでくると両生類なんだなと感じる。ソメイヨシノはほとんど散ってしまい新緑がどんどん伸びている。この屈託のない瑞々しい緑色よ。私が何を考えていてもいなくても新緑の季節はやってくる。あっという間に夏が来るだろう。

 

夜。しらすと新たまねぎのチャーハンと冷奴。大量のしらす消費メニュー。ポン酢で味付けして隠し味に少しバターを入れてみたら驚くほど美味しくて自画自賛。しらすはバターやチーズと合うらしい。旬のうちにしらすメニューの研究を続けたい。味付きご飯が嫌いなサイは食べず冷奴だけ食べた。SBのチューブ入り刻み青シソがとても使える。入浴後、就寝。サイが寝た後、布団で音楽を聴いていたら心地よくていつの間にか寝てしまっていた。音楽で入眠すると安眠できる気がする。特にアコースティックギターの音が良い。

 

 

4月10日(火)

朝。クロワッサンとバナナ。サイのバナナブーム再興か。傷んで変色した部分は食べない方がいいと言ったら「だいじょうぶよ」と平野レミのような言い方で言われる。「黒く傷んだ部分」=「腐敗している」とサイは分かっておらず何度言っても他と違う色をしているから特別で良いものだと思い込んでいる。真っ黒だとさすがに止めるが許容範囲かなと思いそのまま食べさせる。

 

昼。せっかく作ったお弁当を家に忘れてきたので久しぶりにフレッシュネスバーガーで食べた。フレッシュネスのポテトは美味しい。行く途中に数か月前に開店した激安定食屋があり、そこに行列ができていた。たまに外に立っている店主は何やら主張したそうなおじさんで、トタンでできた店の外壁の至るところに派手な色の紙に太字で書いたメニューと価格が貼られている。この感じなんだろう、意識高い系、いや意識溢れ出ている系というのだろうか。どうだ良いだろうと強く主張してくるものが私はやや苦手なのでいつもおじさんと目が合う度に「絶対入らんぞ」という顔をして前を通り過ぎる。繁盛しているから無意味な抵抗。

 

夜。サイが食べたいと言い回転寿司へ。サイがいなり寿司の皮だけ食べているのを見て、浜崎あゆみが寿司のネタ部分しか食べないといつかMステで話していたのを急に思い出す。サイは店の壁にかかった数字が寿司になっている時計を見つけて喜ぶ。会計時に寿司の形をした飴をもらい喜ぶサイ。飴は困ると思ったが店の好意を無碍にできない。家に帰る途中、公園で大学生の集団が花見(?)をしていた。なぜ大学生と分かるかと言うとこの時間に私服で酒を飲んでいるからきっとそうだと思った。あと見た目が若くて醸し出される空気が学生だった。集団が少人数グループに分かれ男女で話している姿が眩しかった。自分の学生時代にこういう経験が皆無だったので絵に描いたような光景を見ると嬉しいような苦しいような気持ちになる。帰宅後、サイは寿司の飴をがしがし齧っていた。虫歯が心配だったが止められなかった。入浴後、缶チューハイをごくごくと水のように飲んだ。就寝。サイが寝た後またビール。

 

立候補した覚えがないのにいつの間にかなっていた保育園クラス委員に関するメールが数件来ていて、とりあえず見なかったことにする。

 

 

4月11日(水)

朝。怠い身体。昨晩飲み過ぎたかもしれない。サイが寝起きで「かわいいおかあちゃん」と言ってくれる。なんと。バタートーストとキウイ。キウイの皮を剥くのが面倒で半分に切ってスプーンで食べてみるか聞くとそうしたいと言うので渡すがやはりうまく食べられず結局皮を剥いた。剥いて渡すと「すごいね」と魔法を見たように喜んでくれた。

 

出社前にコンビニに寄った際、財布を家に忘れて来たことに気付く。サザエさん。スイカのチャージが少しあったのと持参したおにぎりがあったので助かった。財布がないということはお金を遣わないということなので究極の節約方法かもしれない、と前向きに捉える。

 

夜。夕食は鶏胸肉とブロッコリーオーロラソース和え、トマト。サイは珍しくよく食べてくれた。オーロラソースに牛乳を入れて予め温めるとまろやかになって美味しい。一度しかやってないが海老でやっても美味しかった。海老は高い。あと火を通すと悲しいほど縮む。ああ大きな海老が食べたい。入浴後、就寝。いくつか嫌なことがあった。外からは見えない脂肪のように蓄積していく。二人一組でやるクラス委員の相方のお母さんから何件もラインが届いていたのに全然返せなかった。

 

 

4月12日(木)

早朝に起きたがクラス委員の案件に取り掛かれず。でもやるべきことは分かった。いつもこうやって事態を飲み込むまでに時間がかかる。興味がないことに対しては特に。入社して初めて配属された部署から次の部署へ異動になった際、厳しかった部長が新しい部長に「この子は何かに適応するまでに人一倍時間がかかります。でも慣れたら能力を発揮してくれると思います。」と私を紹介していたのがずっと忘れられない。本当にその通りで、自分でも信じられないほど適応までに時間がかかる。でも慣れると面白いように自分の中に嵌って楽しくなる。学生時代のバイトも慣れて楽しいと思うまでに相当時間がかかり、それで先輩や店長をイラつかせることが度々あった。やるべきことに手をつけないままぼんやりしていたら昨日の色々がじわじわと押し寄せてきて、朝から自己嫌悪になる。天気のせいにしたくても、できない時がある。サイが起きてくれたので一瞬忘れて朝ごはんや支度。することがあれば余計なことを考えずに済む。

 

夜。新玉ねぎと人参と挽肉のオムレツとトマトと冷奴。卵が多すぎるのかフライパンが寿命なのかうまく巻けなかった。悲しい。サイは冷奴ばかり食べてオムレツを食べてくれなかった(一丁くらい食べた)。オムレツの具にもSBのチューブ青じそを入れたらガパオ風になり美味しかった。使える!夕食後、お風呂を洗っていたらサイがスイッチを押したいと来る。その後、風呂場の鏡を画面に見立てて自撮りごっこをして遊ぶ。サイはうさちゃんピースもできる。げらげら笑って楽しかった。

 

入浴後、布団の上で二人で大森さんの新作アルバムレコーディング風景の生配信を観た。「おーもりさんはどうしてひとりなの?」としきりに聞かれる。レコーディングの様子は初めて見たので興味深かった。一度録った音にキーの異なる歌声を何度も重ねて録音したりサビのギター演奏を試行錯誤するなど、地道な作業を経て音源は完成する。大森さんは以前、盤の制作をお墓に埋めるような感覚とおっしゃっていたが、音源には生のライブとは違う美学や面白さがあるなと考えさせられた。画面の向こうの大森さんはキャンバスに絵の具を塗り重ねていくように歌声を重ねていた。魔法みたいだった。最後数分のところでサイの眠気が限界に来たため中断。

 

サイは「おんがくはまほーではない」と何度も繰り返し歌ってから寝た。サイが『音楽を捨てよ、そして音楽へ』を歌うところを初めて聴いた。「音楽」と「魔法」という言葉を発しているのを聞いたのも初めて。サイは私が教えなくとも好きなものや関心あるものは勝手に覚えていく。意味を分かっていなくとも、二つの単語を初めて覚えたのが大森靖子さんの歌だったなんて嬉しい。

 

 

4月13日(金)

寝坊。サイも夜更かしさせたせいでなかなか起きられず今日は休みかと聞かれる。ごめん。私は朝食パス。サイは勝手に冷蔵庫から出して蒸しパンを食べた後、もっと何か食べたいと言われたのでパン美人にもらった一本堂のレーズン食パン。苦手なレーズンを器用に取り除いてお皿の隅に寄せていた。その後、冷蔵庫の加熱用チーズとバターを取り出し「これ食べたい」と言う。夜にこれで何か作るから今は勘弁して欲しいと訴えるも不服そう。バターの美味しさに目覚めてしまったらしい。しかしサイの食欲はすごい。留まるところを知らない。

 

昨日聴いた新曲が脳内でリピートされつつ出勤。アルバムが本当に楽しみ。勤務中、窓の外に気配を感じていよいよ気がおかしくなったかと思ったら窓清掃の人だった。近々大規模な引っ越しがあるので清掃業者が入っているようだ。窓の内側から窓を拭く人の足元を眺めつつどうか落ちませんようにと願う。昨日失くしたと思ったイヤホンは給湯室にあった。

 

夜。昨日のオムレツの具の残りをごはんにかけ目玉焼きをのせてガパオライス風に。本物のガパオライスがよく分からない。入浴後、就寝。

 

 

4月14日(土)曇り

昼前に待ち合わせし、友達親子とフルーツパーラーへ。フルーツサンド、ハムと卵のサンド、苺パフェ、プリン・ア・ラ・モードと食べたいものを全部頼んで食べる。サイが店内で大声を出していたので注意される。絵本や子ども用食器を貸してくれたり気を遣ってくれたが、長居していた分けでもないのに1分おきくらいに空いた食器がないか確認しに来られて何だか落ち着かなかった。それでもサイと友達の娘Yちゃんが満足そうに食べていたのでよかった(サイの食べるスピードの速いこと!)。子ども達は特にプリン・ア・ラ・モードが気に入ったようだった。一方で私はあまり味わった気がしなかったので、改めてサイ抜きでゆっくり来たいなとも思った。その後、近くのアンパンマンショップやおもちゃ博物館へ行った。サイはYちゃんとおもちゃ博物館の庭園にある水の抜かれたプール(?)で走り回っていた。Yちゃんがくじらちゃんを可愛がってくれて嬉しかった。夕方、電車に乗って帰宅。サイは家に着くまでぐずらなかった。偉い。疲れたので夕食は買ったものや適当に調理したもので簡単に済ます。入浴後、楽しかったねと言い合って就寝。

 

私はサイが寝た後、何にも怯える心配がなく久々に朝まで一人時間を満喫できた。ビールを飲みながらアンパンマンショップで買った幻の漫画『アンパンマン初期作品集』(アンパンマンが子どもに嫌われている描写とかめちゃくちゃ面白い)を読んだり、録り貯めたドキュメンタリー番組を視た。『ラストアイドル』という大森さんが審査員を務めているアイドルのオーディション番組も初めて観た。ずっと観たかったのにタイミングを失ってここまで観ずにきてしまっていた。ちょうど第3期が始まったばかりだった。オーデション番組が好きすぎて、昔は食いつくように色んな番組を観ていたのだが(特に留学中に見た『Xファクター』が面白かった、優勝したレオナ・ルイスの歌が上手すぎて震えた…)、なぜか観ていると少し苦しくなり、若い頃に比べて一人の人間が優劣をつけられる姿を直視できなくなったのかもしれない。出演者が自分より歳下だということも関係している気がする。昔観た番組(番組名失念)で、足の脛に錘を落とされてどういう反応をするかという審査があったが、ライバル二人が一人はわざと大げさに痛がる、一人は黙って表情すら変えず堪えるという真逆の反応をしていて、それがずっと忘れられない。

 

明け方布団に入った。最初は裸だったアンパンマンがテレビのヒーローに憧れてあの衣装をジャムおじさんに作ってもらったなんて知らなかったな。

 

 

4月15日(日)雨時々曇り

朝ごはん。私はパン美人にもらったレーズンパン。サイはチーズトーストとキウイ。半分に切ったままスプーンで上手に食べていた。学習能力がすごい。朝食後サイがアンパンマンを観ている間に掃除、断捨離。迷いなくどさどさと捨てたら気持ちが良い。大事なものだけ残る。昼、地獄のように恐ろしいことがあった。絶望の淵。

 

気分転換に午後からサイと二人で出かける。公園を経由してTSUTAYAに行き、サイはアンパンマンの映画(選ぶ基準がロールパンナちゃんがパッケージにいるかどうからしい)、私はケン・ローチの『わたしはダニエル・ブレイク』を借りた。ケン・ローチは好きな映画監督の一人。イギリス映画が好きだ。それからスタバに行き、サイはお子さまミルク(レシートにそう書いてあるのが可愛い)、私は「アーモンドトフィートリプルチョコレートフラペチーノ」という名前だけで胸やけしそうなやつを発注する。年齢を弁えず未だにスタバの新作に果敢にも挑戦している。そしてたまに失敗する。気分が沈んでいたのでこういう過剰に甘そうなものを摂取したかった。会計時に「席の確保はお済でしょうか」と店員さんがわざわざ聞いてくれて「大丈夫です」と豪語したのに、座ろうと思っていた席は別の人に座われていた。トレーを持って右往左往していたら知らないおじいちゃんが「席ないのか?」と聞いてきて「ないです」と答えると、鞄で席取りされている空席を見て「このかばんは野郎だな」とか「こっちはどうだ」とかなぜか必死になって店内を歩き回って探してくれた。結局買ったものを紙袋に入れてもらい広場のベンチで食べた。サイは私のフラペチーノの上にのった生クリームを欲しがったのでストローですくって口に入れると幸せそうな顔をしていた。二人で食べようと思って買ったチョコレートワッフルをサイがぽろっと食べこぼしたらどこからか鳩がやって来て器用に咥えて去って行った。それを二人で見逃さなかった。サイはTSUTAYAでやったルパンレンジャー(多分一回しか観たことがないのにやりたがった)のガチャガチャで出た黄色い乗り物を果たしてそれが何かはっきり分からないまま鳩(敵?)に向けて追いかけていた。たくさん走って疲れたので帰宅して晩御飯まで二人で昼寝。夕食後、就寝。

 

 

嬉しいことも嫌なこともあり週末の天気のような週だった。あぁ大きな海老フライが食べたいな。たっぷりのタルタルソースに沈めて齧り付きたい。高校生の時、授業中お腹が空くと、よくノートの端にシャーペンで食べたい物の絵を描いていた。できるだけ本物みたいに。かつ丼とかオムライスとか。だから海老フライの絵を描こう。

湯会の後みたいな気分で最期を迎えたい

4月2日(月)快晴 葉桜

明け方起きてサイが寝ているのと反対側に頭をもたげて日記を書いたりしていた。だんだん気温が高くなり、素足で布団に触れるのが気持ち良い季節になってきた。布団からシンクロの選手みたいにぴんと足を出して布団の外側の冷たい部分を探るのが小さい頃から好きだった。あっここいいぞと見つけたらそこも次第にぬるくなるのでまた新たな冷たい場所を探す。それを繰り返す。素足の遊牧民

 

夜中に鼻詰まりで起きてぐずったこともあり、サイがなかなか起きないので先に着替えて朝ごはんも食べてから起こす。クジラちゃんが「すー」という効果音と共にサイのところに泳いでいく様子を見せたら喜んでくれたが眠いと言いなかなか布団から出てくれない。出発十分前にようやく起きてくれて朝ごはんを食べさせつつ同時に着替えさせるという荒業で急ぐ。今日から自転車は後ろ乗せ。後ろに重心がいくのでいつもの感覚と違ってフラフラする。後ろにいるサイは楽しそうだった。「大丈夫?え、大丈夫?」と誰に言っているのか分からない私の声だけが響いていた。トゥクトゥクを運転したことも乗ったこともないがきっとこういう感じだろうと勝手に想像した。保育園に着くと新しい園長先生が出迎えてくれて私もサイも少々戸惑いつつ挨拶。どんな人かまだ分からないが明るい人という印象だ。前の園長先生は明るい反面どこか物憂げな印象があったところが個人的に好きだった。

 

昼。最近行っていなかったお気に入りのパン屋に行く。職場から少し歩くので寒い時は億劫になる。パン屋の近くに怖そうなおばさんがやっている強気(穴が空いた汚いズボンが1800円もするなど値付けが堂々としている)なリサイクルショップがあって、店の奥にいる巨大なホワイトタイガーのぬいぐるみ(通称・虎夫、パン美人命名)がいるかどうか私は前を通る度にさりげなく店内をのぞいて確認している。一時見かけなくなって売れたかと思ったが、虎夫(とらお)は今日も同じ場所にいた。少し前は売り物のパナマハットを被らされるなどおばさんに弄ばれていて心配したものだが今日は何も被っていなかった。虎夫がいつか誰かに買われて欲しいのか欲しくないのか自分でもよく分からない。ビルとビルの隙間にある公園で買ったパンを食べた。スーツを着た男性の先客が二人いた。この公園は実は夢で見た幻ではないかと思うくらい喧噪の中にひっそりと存在しているがちゃんと実在する。

 

夕食は冷凍餃子、ベーコンとブロッコリーのオムレツ、トマト。帰宅して夕食準備しながらビール一缶飲み終えてしまった。これを毎日続けていると知らぬ間に太るので要注意。夕食後、サイと「パンツまてまてゲーム」(サイ命名)をする。「パンツまてまて~」と歌いながら(ちゃんとやらないと叱られる)交代で逃げたり追いかけたりして先にお互いのパンツに触った方が勝ちという意味不明の遊び。入浴後、就寝。

 

 

4月3日(火)曇り

日の出が早くなってきたのに従い、サイの起床時間も早くなってきた。サイは先に起きて居間に行ってしまった。私はすぐ布団から出られずしばらくしてから行くとサイは自分が食べるバナナを剥いて輪切りにし皿に載せていた。すごい。私が珈琲を飲むと思って珈琲ポットまで用意していた。すごい。早起きしたので余裕があった。サイはカーズのレゴをしていた。レゴを持っているが『カーズ』の映画を観たことがなく「みたい」と言うので先日観せたらそこまで興味を示していなかった。車にそれほど興味がないらしい。ピクサー作品が好きな私もあまり面白さが分からなかった。幼少期(今でもだが)激しく車酔いした記憶が蘇るので車を見ると少し気分が悪くなる。サイは基本的に私が嫌いなものは好きではないのだろうか。そういうの良くないと思うが車に乗る機会もない。

 

夜、お迎え。玄関にはうーぱーちゃんに代わっておたまじゃくしの水槽が置かれていた。十数匹のおたまじゃくしがひらひらと元気に泳いでいた。小学生の時に性教育のビデオで観た無数の泳ぐ精子を思い出した。そんなことを思い出すのはおかしいかもしれないが思い出してしまうから仕方がない。

 

サイと私は帰宅直後にそれぞれヨーグルトとビール。夕食はレトルトのハンバーグとブロッコリーの卵炒め。夕食後アンパンマン。今からこういうシーンになるよと事細かに解説してくれる。サイはこの週末、お花見でよくしてもらったCちゃんに会えるのを毎日楽しみにしている。「Cちゃんいるかな」と今日も聞かれた。入浴後、就寝。Amazonで届いたサイの無地Tシャツにアップリケをしたかったが眠気に負ける。

 

 

4月4日(水)晴れ 暑い

サイは今日もいつもより1時間くらい早く起きた。私はもっと寝ていたかったが「きてよ~」と言われたため自分が持って行くお弁当を作る。朝から弁当作りなんて偉いなと思ったがやっている人は毎日やっている。かりかりベーコンのチャーハン。サイが味付きご飯を嫌がるので最近食べていなかったが、そうだ私はチャーハンが好きだった。

 

夜。夕食。暑くてフライパンを使いたくなくて簡単に済ます。数年前に買ったが旅先で一度来ただけでなぜそれを買ったのか自分でも全然分からない無数のバレリーナが全面プリントされた派手なTシャツを着ていたらサイが「このひとはほかのひととちがうね」とバレリーナの柄を指さして分析していた。目新しいものに敏感に反応するしいつもよく観察している。入浴後、アンパンマンを観て就寝。ホラーマン可愛いなと改めて思った。今日は財布を家に忘れて来たがお弁当があったので助かった。こういう時のために折った千円札をどこか(定期入れなど)に入れているという人を聞いたことがあるがそうした方がいいかもしれない。

 

 

4月5日(木)曇り 肌寒い

今日もサイは早起き。私が眠くて起きられずサイは先に一人で台所に行って何かしているなと思ったら「わーん」と泣き声。様子を見に行くと食パンを袋から出そうとしたが袋がうまく開けられず無理矢理出そうとした食パンが千切れたことで泣いていた。「おかあちゃんがこれ食べるから大丈夫。サイくんはきれいなやつ食べたらいいよ。」と言うと落ち着いた。自ら朝食を準備していたなんて偉すぎる。余裕があったのでベーコンと目玉焼きも焼いたがサイはベーコンだけ食べたので私が目玉焼きを2枚食べた。

 

夜。今日も手抜きごはん。20時からEテレハートネットtv』に大森さんが生出演されるのでいつもより早めにお風呂に入る。私がテレビを観てサイをあまり構わなかったことでサイは機嫌が悪くなりわざと他のチャンネルに替えたり泣いたりした。オリンピックのフィギアを観ていた時もそうだった。普段サイが起きている時間はサイが好きな番組やDVD以外観る習慣がないので受け入れられないのかもしれない。しかも大森さんが出ていないVTRの時など「おーもりさんどこ?」とイラつき「また出てくるから」と宥めるのが大変だった。サイにとって大森さんはテレビの向こう側にいる遠い人というより会って触れ合える人という感覚が強いためテレビの向こう側にいるのが不思議だったようだ。ぐずり続けて15キロの幼児を赤子のように抱いたまま観た。重かった。

 

集中して観れなかったが昨年8月31日に放送された内容に似た構成だった。主に明日から新学期を迎える十代向けの番組だったが、私が十代の頃はこういう番組はなかったように思うし、何よりインターネットが当たり前でない時代だった。その時とは確実に変わった現在、私の想像を超える恐ろしい闇がきっと存在するはずだ。そんな闇に苦しむ十代の誰かがたった30分間のテレビ番組で救われるかどうかそれは私にも分からないが、生きることを明日からも続ける可能性がひとつでも残るといいなと願った。この手の番組はサイが生まれてからどうしても親目線で観てしまう。サイが将来「学校に行きたくない」とか「死にたい」と訴えた場合あるいは訴えなくてもそんな気がすると悟った場合に私は何が言えるのか、また誰かが学校に行くことや生きることを辞めたくなる要因を作る側の人間になったら私はどうすべきか、そういうあらゆる状況を想定してしまう。被害者になるばかりとは限らない。殺人だって起こす可能性だってある。親子とはいえ別の人間なのだから絶対なんてない。親としてどこまで何ができるのか、サイが生まれた時いや妊娠した時からずっと考えている。

 

番組終了後、就寝。十代なんて遠い昔に終わったはずなのに番組を観たら当時のトラウマがじわじわとぶり返してきて苦しくなり、後でもう一度観ようと思って撮っておいた録画を観るのを何となく辞めた。番組の最後に新曲(番組のために今朝書き下ろしたばかりと後で知った)をカメラの向こう側の一人一人に訴えかけるよう歌われいていた大森さんはとても美しく目が合う度にドキドキした。

 

 

4月6日(金)晴れ 暖かい

サイはまた今日も私より早く起きて台所へ行き、何かしているなと思って様子を見に行ったらサイと私のお皿にそれぞれ焼く前の食パンとその上に冷蔵庫から出した生のベーコンを一枚ずつのせていた。生のベーコン…。正しく朝食の準備ができたぞというサイの達成感に満ちた表情と生のベーコンが食パンにのっている様子があまりにも愛おしく、ありがとうと言ってぎゅっと抱き締めた。それから「これはちょっと焼いとこうか」とプライドを傷つけないようベーコンをさっとフライパンで焼いてトーストしたパンにのせた。それをサイがテーブルまで運んでくれた。一緒に暮らしている感がすごい!育てているという感覚がどんどんなくなる。サイは自分で用意したトーストは食べずバナナを食べた。だから私が食パンを2枚食べた。また太る。確か10年くらい前、何かのダイエット番組で子育て中のお母さんが「いつもこういう感じなんです」と子どもが残した分も合わせて山盛りのパスタを食べている映像がダメな事例として紹介されていて、その時はお母さんって大変だなとぼんやり観ていたが、サイが残したものを食べる度にその映像を思い出す。

 

登園。玄関のおたまじゃくしは数日のうちにも日に日に大きくなっている。私はカエルが苦手なので、この子達はもうすぐカエルになるのかと思うとちょっとぞっとした。サイは私が「おたまじゃくしはカエルになるんだよ」と教えたのを覚えていて見る度に聞いてくる。

 

お昼。久々にパン美人と食べる。可愛いお菓子をくれた。真面目にお金の話。化粧品に月々これくらいかかっているのだけどどうかと聞くとやはり同じくらいで倹約しなくてはいけないが年齢の問題もあるし特に基礎化粧品にかかる分はどうしようもないという話になる。歳をとるとお金がかかる。前会った時(二週間くらい前)より凛として見える!言われて単純に嬉しかった。

 

夜。お迎えを代わってもらい、町田康さんの新著『湖畔の愛』サイン会へ。新宿紀伊国屋町田康さんは生きている中では一番好きな作家。初めて読んだのは大学生の時で、片想いしていた人が読書マラソンで感想を書いていたのを購買で見つけて気になって読んでみたのがきっかけ。その後好きな人とは何も起こらず、でもその人はどうでもよくなるくらい町田さんの小説が面白くて没頭し作品を片っ端から読んだ。サイン会は行けたら毎回行くようにしている。今や大御所と言われる作家であろう町田さんは今でも新刊が出ればほぼ毎回サイン会を開いてくださる。そんな作家は他にいない。だから私も死ぬまで永久に行こうと思う。いつも物凄く緊張するため挨拶だけで何も話せない。でも今日は話したいと思い、震えながら小声で「先日ライブに初めて行きました、とてもよかったです」と伝えると署名を書いていた神妙な顔つきが急に緩み「ほんまに?6月にあるからまた来てな」と笑顔で言われる。ひいいいい。3月に町田さんが近年されている音楽活動「汝、我が民に非ズ」のライブに初めて行った。歌う姿をちゃんと観たのは初めてだったが小説に通じるような美しさがあった。また聴きたい。6月頃待望のアルバムも出るらしく楽しみだ。いつか大森さんと対バンして欲しい。夢。かっこよかったなというぼんやりした頭で下に降り、『フィルカル』最新号を買い店を出る。と、紀伊国屋地下でビールセット千円という幟を見つけ、もうそれを見たら吸い込まれるように入店してしまい一杯だけ飲んで帰宅。

 

サイを寝かしつけて、それからお風呂に入ろうとするが自分一人だとだらけてしまってなかなか入れない。気合を入れてようやく入浴し、サイが明日着て行くTシャツにアップリケをする。無音で数時間集中。器用ではないがこういう作業は嫌いではない。途中で眠くなりうとうとしながら縫っていたら朝が来た。

 

 

4月7日(土)雨時々曇り 寒いが中は暑くて熱い

最後の仕上げをしているとサイが起きたので布団の上で作業(去年と同じ…デジャヴ…)。サイは玉止めした糸をはさみで切るのをやりたいと言い張りきって切る。やっと完成。朝食後準備して湯会へ出発。友達との待ち合わせに30分ほど遅れるが友達も遅れてちょうど同じ時間になる。よかった。新小岩駅からのバスの中でサイはずっと「ちんちん!」と絶叫し乗客に失笑されていた。私はビールを飲むことしか頭になかった。

 

会場である東京天然温泉古代の湯に到着。受付に並んでいる間、テンションの上がったサイは落ち着かず走り回ったり展示物に触れ気が気でなかった。ようやく中に入り食べ物を調達し他のお子さん連れの方と合流して3階の食堂で乾杯。盛り上がっているライブ会場のある4階と違い、食堂フロアはおじいさんおばあさんが多くいてこれぞ温泉施設というまったりした空気が流れていた。昼間から湯に入って一杯なんて平和そのものではないか。人見知りしてゲームコーナーに逃げてなかなか着席しなかったサイはアイスを買うとようやく落ち着いた。最後はアイスでも何でも落ち着いてくれるなら何でもいいやの気持ち。たことイカのから揚げが美味しかった。嬉しくてみんなでたくさん頼んでいたら偶然会った大森さんファンの知り合いに「あ、宴会してる」と言われる。そうだ、これは宴会だ。楽しい以外の感情がなかった。親としてちゃんとしておかないといけないからと飲むか迷うけどやっぱり飲もう!と飲んでいた方がいて、何も考えずに真っ先に飲んでいた私は少し恥ずかしくなった。普段からそういうことを考えたことがなかった。サイはあんなに会いたいと毎日言っていたCちゃんにかまってもらえたのに照れて顔を背けていたが途中から抑えていたものを解放するようにCちゃんにべったりだった。

 

それからサイと二人で大宴会場に行った。出店が目当てだった。出店者一覧で見てから気になっていた、にどみさんがいらっしゃったのでサイと私の似顔絵を描いていただく。とても優しくて可愛らしい方だったし描いてもらった絵も本当に可愛かった。それから、大橋裕之さんのお客さんが空くのを待って、大橋さんにも似顔絵を描いていただいた。漫画が好きで憧れていたのでお会いできて嬉しかったがとても緊張した。似顔絵を描いてもらう間、あの漫画のような目でじっと見つめられたのでつい目を逸らしてしまった。大橋さんの作品はこの目力と観察力で作られているのかとしみじみ考えた。爆音の中、漫画が好きだということを伝えた。Tシャツを買ってサインをお願いしたら、Tシャツのイラストに合わせてマジックで小さな絵を描き加えてくださり感激。「僕の名前書いていいですか?」となぜか聞かれ、サインだから当然なのに謙虚な方だなと思った。舞い上がってTシャツを受け取った後、代金を払うのをすっかり忘れたまま去ったことに途中で気づいて戻る。写真は嫌だけど好きな人に描いてもらう似顔絵は好きだ。お二人に描いていただいた絵は一生大事にしたい。

 

3階に戻ると宴会は終わったようで他の方が綺麗に片付けをしてくださっていた。勝手な行動をして申し訳なかったなと感じた。それから皆で4階に上がり、大森さんのランチェキ(初めてのランダムチェキ!)を買ったり知り合いに会って話したりして相変わらず楽しかった。会った人は皆漏れなく楽しそうで、それが私には一番嬉しかった。ランチェキを子どものようにお互い見せ合ったりして、子どもの頃妹とお互いが当たったセーラームーンのカードダスを見せ合いっこした記憶が蘇った。

 

まもなくライブが始まり、大森さんが去年と同じように旗を持って登場される。大森さんはチェキと同じミニスカート、ビスチェ風トップス、くるぶし靴下という最強可愛いコーディネートだった。靴下可愛すぎる。大森さんの靴下だけで卒論が書けそうだ。あぁ楽しい、いいなぁと思って聴いていたらあっという間にライブが終わった。日記に書けない嬉しいこともあったし途中涙も流した。久しぶりにライブを聴いた!という実感があった。誰かと感想を言い合うのも違う気がして、サイと二人だけでライブ会場向かいの軽食スペースに行き、サイはアイス(本日二本目)、私は冷えた缶ビールを飲みながらお互い無言で先ほどの余韻に浸っていた。

 

印象的だったのは、大森さんが宴会場の中央で歌われていた時、私はステージから全体を俯瞰するように観ていたのだが、さっきまで出店ブースに座られていたはずの大橋裕之さんが輪になっている観客の後ろの方に立って大森さんが歌う様子をじっと見られているのに気付いた。似顔絵を描いてくれた時と同じ吸い込まれそうな目で瞬きせずに。私はその姿に見入ってしまい大森さんを観るのを一瞬忘れるほどだった。そして大橋さんの漫画と大森さんの歌は通じるものがあるなと考えた。二人ともこの世界で真ん中に立てない人のことをそっと掬ってくれる。

 

全ての出演者が終わった後はDJの音楽でみな楽しそうに踊っていた。私はクラブとかそういう場所には行かない(初めて行ったのは海外留学していた二十歳の時でそれはもうすごい体験だった。別記したいくらい面白い。)のでどうしたらよいか分からず後方に座って踊る人達を眺めながらビールを飲んでいた。でもそれがすごく楽しかった。私は自分が入れなくても人が楽しそうにしているところを見るのが好きだということに気付いた。楽しそうだったら何でも言いという訳ではなく、多分自分がそこに入りたいなと潜在的に思っている時にそう思うのだろう。サイも踊りはしないが楽しそうに観ていた。私達はそういうところが似ている。

 

終了後、3階のゲームコーナーでサイは大人達に太鼓の達人や他のゲームで遊んでもらっていた。古代の湯のこのゲームコーナーが私はとても好きだ。最近の機械はないが、懐かしいゲームがたくさんある。今やネットや家庭でゲームができる時代だからゲームセンターに行く人は少ないかもしれないが、古いゲーム機のデザインや安っぽい音楽、機械に百円玉を投入してあっけなく終る感じとかもう全て愛おしい。中でもエアホッケー(というのか)が小さい時とにかく好きで、ダイエーなどで見かける度に親にねだっていたが毎回はさせてもらえずたまに百円もらえると妹と大興奮してやった記憶がある。あるのを見つけて誰かやってくれないかなと可愛い女の子を誘ってみたら一緒にやってくれて嬉しかった。サイにやらせたら守備ができず、すとーんと盤(?)が一直線にゴールに入っていき、その様子を見て私はげらげら笑っていた。

 

ひとしきり遊んだ後、湯に入る皆と別れて会計を済ませて二人でバスに乗って帰った。出口付近で再びにどみさんに会い、ご挨拶して下さる。サイがにどみさんのバッジをTシャツにつけていたので喜んで下さり、「これは暗闇で光るんだよ」と教えてくれた。バスがなかなか来なかったために駅に着くといい時間になり、サイが空腹でぐずり出したので駅前のガストで私はラーメン、サイはお子様ランチを食べた。ファミレスで二人で向かい合って食事できるようになるなんてね、としみじみした。電車に乗って帰宅。サイはずっと機嫌がよく元気だった。帰宅後、サイが見たいと言うので、部屋を真っ暗にしてにどみさんのバッジが光る様子を見て二人で笑った。お風呂で突然わんわん泣き出したと思ったら風呂からあがった途端に裸のままぱたんと眠った。疲れたよね、でも楽しかったね。

会いたいなと思っていた人にも会えたしとてもいい日だった。最期死ぬ時はこういう楽しい気分のまま死にたいなと思った。また来年。

 

 

4月8日(日)晴れ

楽しい余韻が続く休日。朝起きて片付け(荒れていた)、洗濯。Kくんのお母さんから「遊びませんか?」と連絡が来た。普段人から誘われることがほとんどないので、自分ではなくサイが誘われたとしてもただただ嬉しい。サイと自転車で出発。途中でおにぎりとから揚げを調達して待ち合わせ場所の図書館の横にある公園へ。雨の日に図書館に何度か行ったことはあるが、この公園は初めて。芝生が広くて木がたくさんありとてもいい公園だった。Kくんはサイが保育園に入った数か月の時からずっと一緒だ。先に着くとサイはKくんがいつ来るかいつ来るかとそわそわしていた。

 

Kくんが来てサイがここがいいと言った場所で買ったものを食べる。Kくんのお母さんは近所のスーパーで色々買ってきてくれた。サイとKくんが喧嘩しないようおやつや飲み物は同じものを二つずつ。サイ達が途中で遊具のところまで行ってしまったので近くのテーブルに移動し仕切り直す。サイとKくんははしゃいで鳩を追いかけたり枝やどこかに落ちていた手袋を振り回していた。私はKくんのお母さんと初めてゆっくり話した。色々な話をした。何かの話の続きだと思っていたら急に「初めて会った時(3年前)からずっとサイくんのお母さんと仲良くなりたいと思ってて」と照れながら言われる。三年越しでそんなこと言ってくれるなんてそれ自体がもう可愛すぎて泣きそうだ。誰かに好きだとか仲良くなりたかったとか言うことはあっても言われることなんて滅多にないのでドキドキした。私でよいのでしょうか、という気持ちにもなった。Kくんのお母さんは豪快でまだ離乳食を食べたことがないKくんに焼肉を食べさせたエピソードを私は気に入っている(過去日記参照)。豪快で何でもいいよという感じだけどとても気が利く方で他のお母さんと群れずにいつも一人でいて何となく陰がある。よく笑って話が面白い。私の好きなタイプでないか。そしてKくんも実は私のことが好きでずっと話しているとお母さんは教えてくれてまた嬉しくなる。人に好かれることがないので嬉しくて戸惑ってしまった。Kくんのお母さんは二人目を妊娠してもうすぐ生まれる。性別は聞いていないそうだ。お酒が好きなのでノンアルコールを毎日飲んでいると教えてくれた。また飲めるようになったら一緒に飲みましょうと約束して別れた。声をあげて走るKくんの背中を見て、サイとKくんが成人したら乾杯したいなと一人妄想していた。その時私はかなりの歳だ。それを考えたら一瞬ぞっとしたが長生きしなければ。

 

スーパーで買い物をしてから帰宅しサイは昼寝、私はアイスを食べた。パルムの香るベリーショコラが美味しすぎるのでスーパーで見つけて複数買いした。夕方、サイ起床。テレビでYoutubeを観る。誰かが撮ったアンパンマン着ぐるみショーの動画。それから夕食。鯵の蒲焼と出し巻卵。鯵を焼いていると美味しそうで休肝日にするはずが発泡酒を開けてしまう。夕食後、サイとアンパンマンショーの動画を観ながら踊り狂う。湯会の影響で現場ロスになっている。ライブはもちろん、アンパンマンミュージアムでさえ行きたくなってきた。現場にいる臨場感や気分の高揚は何にも替えがたい。入浴後、就寝。私達は暗闇でにーっと顔を見合わせるのが好きだ。楽しい週末を終え、さあ明日からまた。

春に翻弄されるのも悪くない

3月25日(日)快晴 8分咲き
好きな人に一月ぶりに会うことに緊張し明け方3時に目が覚めそのまま眠れないで起きていたら朝になった。朝になって眠くなったがサイが起きて寝ることもできない。朝食洗濯掃除のち近所の公園にサイと出かける。桜の木の下でコンビニや売店で買ったたこ焼きや焼きそばを食べた後、二人でシャボン玉をした。サイは飽きもせず手元と洋服をシャボン玉液でべとべとにしながら3本分くらいシャボン玉を吹き続けた。私が吹くとシャボン玉ができる前に邪魔をして壊そうとしてくる。サイは自分の小さなシャボン玉に不服そうだったので、私がゆっくり息を吐くとこんな風に大きくなるよと見せるとサイも真似をしてふぅーっとゆっくり吹く。大きなシャボン玉ができると嬉しそうだった。それにしても吹くのが随分うまくなった。最初は吹くか吸うのかさえ分からなかったのに。それから噴水が抜かれている岩場で探検隊ごっこをした。その後滑り台。私は日光に当たり続けてだんだんバテてきたがサイは遊びを辞める気配が全くなかったので「ねぇ、アイス食べない?」とサイの大好物で釣る作戦に出た。それまで何を言っても聞かなかったサイは「アイス」というキーワードで目を輝かせ滑り台を即離れた。大成功。セブンティーンアイスの機械には行列ができていた。ほとんどのアイスが売り切れで前にいた兄弟と思わしき子ども達が「あれこれもない」「あれ?」と×印がついていることにも気付かず押し続けていた。幸運にもサイの好きなバニラは残っていた。日陰に二人で並んで腰掛け二人でひとつのアイスを食べた。あっと言う間になくなった。アイスで満足したサイはすんなり帰宅に応じてくれた。
 
くたくただったので少しだけ昼寝しようと思いサイと一緒に布団に入ったら、次に起きた時には出発時間だった。外で流れる帰りましょうの音楽で起きた。あーやってしまった。サイはまだ気持ちよさそうに寝ている。慌てて準備していたらKが帰宅したので交代で出発。出際に「おかあちゃん、出かけて来るね」と言うとサイは家着から着替えた私をじっと見つめて悟り、怒った顔をして黙り込んでしまった。置いていかれると思って拗ねたようだった。こんな寂しそうな顔は初めてなので戸惑った。「ごめんね、帰ってくるからね」と抱き締めて後ろ髪引かれる思いで家を出た。本当は休みの日の夜は出かけたくない。もうサイのこんな顔は見たくない。
 
大森靖子さんのファンクラブイベント続・実験室へ。大森さんがとにかく可愛かった。チェキ会でうまく話せなかった。いつものことだけど今日は特に酷かった。言うことを考えて何度も頭の中で繰り返していたのにいざ対面すると真っ白になって。帰りの電車で嬉しい幸せな気持ちと自己嫌悪がぶつかり合っていた。好きな人と話すのになぜみんなあんなに冷静でいられるのだろう。好きな人に会えるってそれだけで一大事件だ。今日も可愛かった。遠くから目が合うとにーっと笑ってくれた。帰宅してぼんやりした後お風呂に入って寝た。
 
 
3月26日(月)
サイは私が食べようとした桃のヨーグルトを「ダメ!サイくんの!」と奪って食べる。物は何でも好きに手に入るわけではないと教えたいが、兄弟がおらずこういう時に競り合う相手もいないのでどう教育すべきか悩ましいところではある。私が競り合ってもなんだか違う気がするし。そこは保育園や学校で気づいてもらうしかないのか。月曜日なのでバタバタ登園。新年度に備え、新しい部屋に移動し今度は出入り口に近いので廊下を歩く手間が減る。それだけで時間短縮になっている気がする。
昼、同じ年頃の子どもを持つお母さん社員さん達とランチ。もうすぐみんな違う支店に行ってしまう。誰も同じ境遇の人がいなくのは少しだけ不安だ。明日休むのでお迎えを代わってもらい少し残業して帰宅。サイは先にごはんを食べていた。夕食後、サイとお互いのお尻を先にタッチした方が勝ちという謎の遊びをゲラゲラ笑いながらやった。お尻とおっぱいがサイの最近の一番の興味対象らしく毎日触ってくる。私が逃げるとひーひー笑って追いかけて来る。サイが逃げて私が仰々しく追いかける。ドタバタとトムとジェリーみたいだった。入浴後、就寝。
 
 
3月27日(火)快晴 9分咲き
朝。やや寝坊。みかん味のヨーグルトがイマイチだったのか半分食べたところで「よるにおいとく」と言う。私が残った食べ物を次に回す時にサイに言うのをよく聞いて覚えていたようだ。一日有休を取っていたのでまあいいかという意識でいたら出発がいつもより1時間遅れる。サイが「こっしーやってない」と言ってたが時間がずれているので終わっていた。「おかあさんといっしょ」を観ていた。9時すぎに保育園に着くとほとんどの子が既に登園していて教室内は動物園状態だった。え、こんなに煩かったけと驚くほどぎゃーぎゃーしていた。まあ一人でも相当煩いので納得したが先生はすごいなとしみじみ思った。「おうちが~」「あれが~」と次々に子ども達が話しかけていてもちゃんと優しく対応していた。今年のクラスの先生は皆とてもいい先生だが、来年は先生一人当たりの園児数も増大する上に新しい先生になるから少し不安もある。
 
サイと別れて午前中、某所で某相談。このために休みを取った。具体的なアドバイスをもらえて前向きになれた。これを頑張ろうという強い意思も芽生えた。何にもやらないことには何にも始まらない。相談を終え外に出るとほぼ満開に咲き誇る桜が美しかった。外国人が写真を撮っていた。私も撮ろうと背後に接近して撮っていたら気付かなかったらしく振り返って驚かれる。桜を撮るのは難しい。カメラに収めると何か色褪せてしまい、眼で見たような光景が撮れたためしがない。
 
午後、さいあくななちゃんの展示を見に新宿から小田急に乗り岡本太郎美術館へ。感想や気持ちを綴っていたら長くなったので別途。
夜、お迎え。野菜の甘辛卵とじ、しらすごはんという質素な夕食。サイは私が見ていない一瞬にシラスをパックごとひっくり返し中身を全部自分のお茶碗に山盛り入れていて、「わぁ!かけすぎだよ」と驚くと怒れらていると感じ取ってわんわん泣いた。別に怒っているわけではないのになぁ。難しい。入浴後、就寝。布団に入って『おおかみと七ひきのこやぎ』を読んだ。おかあさんヤギはおおかみが寝ている間にお腹を切り裂いて食べられた子ども達を救出し代わりに重い石を詰め、そのせいでおおかみは井戸に落ちて死ぬ。知っているはずだったけど改めて読むとおおかみが可哀相に思えてきた。サイも「なんでおおかみさんいしいれられちゃったの?」とおおかみに同情していた。私はその気持ちが大切だと思ったので「おおかみは子ヤギを食べちゃったけどおかあさんヤギがおおかみのお腹に石を入れたのはよくないね」と思ったことを返したら納得していたようだった。
 
 
3月28日(水)快晴 満開
これぞ春という陽気。サイは起きる直前、突然「あははははー」と起きている時と変わらず大きな声で笑った後またすーっと眠った。寝言だったらしい。何の夢を見ていたのだろう。パンとバナナと牛乳。バタバタと出発。新しい教室になりサイがコップやタオルを自分で設置してくれるようになったのでとても助かる。保育園ではほとんど漏らすことがなくなったのでオムツも持っていかなくなって楽になった。それは赤ちゃんの時から思っていたけれど成長するにつれて荷物が減る。もちろん嬉しいのだけど私が数年前と変わらずぼんやりしている間に着実にサイは大きくなっていて驚かされるし僅かに寂しい。
 
出社して午前中外出。気持ちが良い天気。打ち合わせなのに眠くなってしまった。退社後、会社の近くを歩いて満開の桜を見る。夜空に浮かぶ白い桜はこの世のものでなく、いつか見た夢のような光景だった。地面から自ら根を引き抜いて今にもずずずずと歩き出しそうだった。怖くて美しい。当たり前だが生き物なのだなと思った。遠くに月が見えた。写真に撮ったが眼で見たようには撮れず後で見たら夜空にポップコーンがはじけているようだった。この光景を切り取ろうとすること自体間違っているのかもしれない。駅の雑貨屋で一目惚れしたクジラのぬいぐるみを買った。眼が半開きでなぜかもしゃもしゃのヒゲがあり絶対におじいちゃんだと思ったら「赤ちゃんクジラ」とタグに書いてあった。でもどう見てもおじいちゃんだ。
 
 
3月29日(木)快晴 満開 
春だ。サイが気持ち良さそうに寝てなかなか起きないので「新しく来たクジラちゃんいるよ!見てみる?」と言うと飛び起きた。ちょっと奇妙な顔つきだったので気に入るか不安だったがとても気に入ったようでひゃーと言って抱き締めた後一緒に朝ごはんを食べていた。「クジラちゃんパン食べるのかな」と聞くと「くじらちゃんパンきらいなんだって。バナナとぎゅうにゅうがすきなんだって」と自分のコップに入った牛乳を飲ませてあげていた。それから机の上に置いていたキャラメルコーンの小袋を勝手に開けて食べ、「くじらちゃんこれもすきなんだって」と言う。「え、キャラメルコーンも好きなんだ!というかそれ全部食べたらダメだよ」「うん、ばななとぎゅうにゅうときゃあめるこーん」それって本当はサイが好きな物じゃないだろうか。バナナと牛乳とキャラメルコーンが好きなクジラ。サイはメロンパンナとクジラちゃんを両手に抱いて登園。自転車に乗っているとクジラちゃんはヒゲが風でなびくのを嫌がっているとサイは教えてくれた。
 
夜、お迎え。サイの入園以来ずっといた園長先生が3月末をもって退職される。園長先生はとても優しく可愛らしくサイにも他の生徒にもいつも名前を覚えて話しかけてくれた。入口には季節折々の綺麗なお花や飾りがいつも飾ってあった。そういうのが好きな人なんだろうなと思っていた。サイは美しく飾られた花を見る度に「おかあちゃんのすきなおはなだね」と教えてくれた。保育園の雰囲気はこの園長先生によるものが大きいと思っているからいなくなるのはとても寂しい。別の保育園に変わってしまうくらいの動揺と不安がある。お母さん達からの信頼も厚いので、皆次々に挨拶していた。私も話したいと思ったが人がたくさんいたので遠目から見ていた。こういう時に気後れしてしまいいつもうまく入れない。昔からずっとそうだった。サイと自転車に乗って帰宅。コンビニでサイはお菓子を我慢できた。偉い。
 
帰宅即ビール。飲みながら料理するのが好きだ。夕食はしらすとチーズのオムレツ(サイが卵を割ってかき混ぜてフライパンに入れた、しらすとチーズめちゃくちゃ美味しい!)、トマト、ミートボール。夕食後、サイは「くだものやさんごっこ」をしたいと言い、いつか私がしたようにダイニング椅子を一つ運んできて空洞になっている背もたれに自分でハンカチをかけた。それからもう一枚ハンカチを持ってきて頭に巻いてくれと言われた。果たしてそれが果物屋さんの正しい姿なのか分からないが赤ずきんというか真知子巻にしたら喜んでいた。それでハンカチの奥からいらっしゃいませーと声をかけてくれたので「桃下さい~」と言うと私が以前作った紙でできた桃をくれた。顔がついているのとないものがあったので、ないものには描くように言われる。入浴後、就寝。シャーリー・モーガン作/エドワード・アーディゾーニ絵『あめあめ ふれふれ もっとふれ』を読む。読む本はいつもサイが選んで保育園から借りて帰る。わりと絵本には詳しいと思っているがまだまだ知らない絵本がある。『あめあめ ふれふれ もっとふれ』も初めて知ったが挿絵も言葉もとても好きな感じだった。なかがわちひろさんの訳がよかったのかもしれない。手前味噌だが、読み聞かせが随分上手くなってきた気がする。登場人物ごとに声色や抑揚を変えると楽しい。あと台詞には感情を込めること。とにかく役になりきりその場面に身を投じる。雨で外に出られない子ども達が窓の外を眺めながら色々と妄想する話だった。やや話が長かったので私の方が先に眠くなり読みながら全然関係ない言葉を口走ったりして何度もサイに「ちゃんとよんで!」と注意される。サイも眠そう。なんとか最後まで読み終えて絵本を閉じたらサイは即寝。とうに終わったのに未だ観れていない三回分の『anone』を観たかったが私も眠気に負ける。
 
 
3月30日(金)快晴 肌寒い
昨日までと打って変わって寒い。花冷えというやつだ。朝ごはんのあんぱんを割って「くりーむがよかったなぁ」とつぶやく。え、餡子好きじゃなかったっけと思いつつ子どものブームはすぐ去ることを改めて実感する。昨日コンビニで買ったブルガリアヨーグルトを二つの器に分けて入れてくれる。全然こぼさなくて上手に入れられるようになったなぁと感心。やりたがっているし料理もどんどん手伝ってもらおう。
 
お昼休み、そうだ園長先生に花を贈ろうと急に思い立ち、持参したおむすびを3分くらいで食べて会社から少し歩いた場所にあるお気に入りの花屋さんに行った。今日は予約なしでは難しいと最初言われとても忙しそうだったが諦めきれずお願いすると特別に作っていただけることに。好きな人には好きな花屋で買いたい。サイが好きなピンク色で小さな花束を作ってもらう。自分のものでなくても花屋で色んなお花を見たり花束を持って歩いているだけで嬉しい。ありえないくらい大きな花束をいつか誰かにあげてみたいしもらってみたい。時代が変わり技術が発達してどんどん色んなことが簡素化されても、花を贈る文化だけはずっと残り続けて欲しいなと考えていた。それから、普段あまり行けないミニストップで「完熟あまおう苺ソフト」を買い、公園のベンチに座って食べた。空気は冷たく肌寒いけれど日差しがぽかぽかと気持ち良かった。桜の花びらが空を舞っていた。右隣の男子高校生は塩むすびを食べていた。左隣のおばあちゃんは何もせずただ桜や空を眺めていた。私は綺麗なピンク色をしたアイスを食べながら色々なことを考えていた。静かだった。外に公園で過ごすのは気持ち良いので昼休みにまた来ようと思う。
 
夜、お迎え。園長先生に挨拶する。昨日と同じように園長先生に挨拶している数組の親子がいた。話している親子の後ろで話が終わるのを待ちつつサイに「園長先生に花束渡してね」と言うとサイは使命感に燃え、親子に割って入って渡そうとしたので「まだだよ、順番ね」と制止した。こういうところがいかにも子どもらしくて良い。前の親子が去るとサイは少し恥ずかしそうに花束を渡した。私は園長先生がいてくれたことでサイというより自分がどれほど救われたか安心していられたか、思いの丈を伝えた。クラス最後の日なので、保育園の廊下は挨拶する親や先生でざわついていた。私が数日前に出た貼紙通知をちゃんと見てなかったせいで見落としていたが、担任のK先生(MJ似の一番歳上の先生)が別の園に転勤で今日で最後だと知る。お花も手紙もない。しまった。とにかく挨拶はしようとサイと先生にお礼を言う。サイは照れて話の途中でどこかに消える。状況を呑み込めていないようだったので「K先生と今日でもうお別れなんだよ」と教えると「なんで?」「別の保育園に行くんだよ」「……Kせんせいにえをあげたい」紙がない。仕方なく私の鞄に入っていた画用紙の切れ端と保育園にあったマジックを渡すとサイは廊下の床に座ってアンパンマンのような顔を描いた。それを持ってまた教室に入り奥で書き物をしていたK先生に渡す。K先生は驚いたような顔をして喜んでくれた。涙目だった。本当はもっとちゃんと用意できればよかったのだけど。改めてお礼を言い先生がサイに向き合おうとするとサイは教室の扉まで逃げ背中を向けチラチラこちらを見てスカしたような顔をしていた。完全に照れ隠し。それで先生はまた涙目になった。サイらしいなと私も思った。いつもより遅めに園を出て帰ろうとしたらサイは誰もいない暗い園庭から明かりがついた教室の窓の側まで一人歩いて行き、中にいるK先生をじっと見ていた。私はあえて一緒に行かず離れて見ていた。しばらくして中にいる先生が気づき泣きそうな顔でサイに手を振った。サイは最後の別れが済むと満足そうに私のところに来た。サイなりのやり方。春は出会いと別れだなとしみじみ感じながら自転車を漕ぐ。月が綺麗だった。

帰宅して夕食。豚肉と小松菜の卵炒め、トマト、ごはん。食後、『ぐるんぱのようちえん』。私も好きな絵本なので張り切って読む。入浴後、就寝。


3月31日(土)快晴 散り始め
春の陽気。朝ごはん、掃除洗濯。サイと歩いて公園へ。桜がはらはら舞っていて美しかった。そういえば春らしい写真を撮っていなかったと気付きサイに桜の前に立ってもらいiPhoneを向けるも歯を剥き出して変顔ばかりされる。公園は花見客で大混雑。この同じ場所で人が誰もいない真夏の炎天下、たった二人でピクニックしたなと急に思い出す。売店で適当に買ったものを誰かのシートとシートの間のスペースで食べる。大きなシートを広げて無人で場所取りされている部分がけっこうあり、昼間いないのなら昼間は他の人に譲ればいいのになぁと少し思う。でも見えていないだけで実は透明な人達が今そこで宴会していたらと想像して面白くなった。幽霊のお花見。

それからサイとTSUTAYAに行ってマクドナルドでアイスとポテトを食べた。食べ終わってサイはこんなアイス食べたくなかった、バニラアイス(公園のセブンティーンアイス)がよかったと急に騒ぎ出す。収集つかずそのまま手を引いて歩き始める。サイは歩きながらわんわん泣き叫んでいだ。あー仕方ないなと思っていたらいつも通る川が流れている橋に差し掛かり、二人で「あっ」となった。川がピンク色だった。よく見ると桜の花びらが水面にびっしり浮かんでいた。絵本みたいになんとも不思議な光景でサイと私はしばし無言でその光景に見惚れた。サイは泣き止んだ。「ピンクだね〜」と言い、また歩み出した。春がサイを泣き止ませた。

再び公園で遊んだ後帰宅してサイは昼寝。私はまともに食べなかったので急にお腹が空き、いただいたおやつを食べた。サイはまもなく起きた。夕食は買ったもので手抜き。入浴後、就寝。


4月1日(日)快晴 桜吹雪
お花見シーズンもいよいよ終わりか。朝からサイと電車に乗り、去年も行ったお花見に出かける。もうベビーカーなしでどこにでも行けるようになった。駅で友達と待ち合わせしてスーパーで買い物してバスに乗って向かう。スーパーで食品を触ったり走り回ることもなくなった。成長したなぁ。バス停や着いてからも迷い辿り着くまでに相当時間がかかったので知っている人の顔が見えた時はほっとした。主催のSさんが着いて荷物も置かないうちからビールはここにあるよと教えてくれて、私が今ビールを飲みたくて仕方ないことをよく分かっている人だなと思った。陸に上がると死んでしまう魚のような顔をしていたのかもしれない。

大勢の大人達に圧倒されて最初は靴を脱いでシートに座ることさえしなかったサイだが、サイに優しく接してくれた人達のおかげで次第に打ち解けて笑い声を上げていた。全く去年と同じだ。サイはギターを弾かせてもらったり、食べ過ぎて膨らんだお腹をふざけて見せびらかしたり大人達に混ざって楽しそうにしていた。私の方が多分うまく混ざれておらず、シートの端の方で飲んだり食べたりしていた。それでも好きな人達とゆっくり会話して楽しかった。サイは人見知りが激しいが慣れると愛嬌を振りまくのて世渡り上手というか私よりずっとうまくやっていけそうだ。ギターを弾いて好きな歌を歌う人がいたり辺りを散歩したり眠る子がいたり自由な空気が流れていた。花びらがブルーシートの上の食べ物や人の頭に舞い落ちていた。サイは花びらを「はる」と呼び必死に集めていた。

暗くなり解散してまたバスに乗って帰宅。サイは帰りの電車で寝てしまい抱えたまま家まで歩いた。夕食後、入浴。布団の上でかるたをした後パタンと就寝。楽しかったね。

 

去年のお花見以来一年ぶりに会えた人や久しぶりに会えた人がいて嬉しかった。こうやって季節が巡り春に桜が咲き、花見という大義名分のもと何となく同じ場所に集まって同じ景色を見ながら話したり笑ったりしてそれぞれまた元の生活に戻っていくって何だかいいなと思った。冬が終わり春が来ると植物が芽生え生き物が動き始めて私も毎年少し浮き足立ってそわそわする。外に出かけたくなるしその時にしかない美しい時間を好きな人と共に過ごしたくもなる。訪れる春はあと何回だろうか。また来年。

なぜしずかちゃんはお風呂が好きか将来君とビールを飲みながら語り合いたい

日記がちゃんと書けなかった週。いつも習慣として朝、前日の日記を書くが今週は何となく手がつかなかった。そもそも日記を書くのは義務でないし誰かに求められているわけではない。サイの成長とそれに関わる私の生活があまりにも面白いので記録しておきたいと思って始めただけだ。最初の日記にも書いたが理想は武田百合子さんの『富士日記』。作家である夫・武田泰淳との富士山での暮らしを綴ったものだが、初めて読んだ時、毎日休むことなくこんなに細かく記録された日記があるのかと驚いた。何を食べたとか、どこへ行ってどんな人に会って何を感じたとか生々しいほど仔細に記されていて自分がそこで一緒に生活しているような気さえして、日記の世界に引き込まれるように熱心に読んだ。『犬が星見た』というロシア旅行記や他の随筆も入手できるものはほぼ全て読んだが文体や瑞々しい表現は一貫している。いつだったか、武田百合子の文章が好きだとある本好きな人に話した時、「あの人の文章はちょっと怖いよね、読んでいると怖くなる」と言われたことがある。それも分かるなと思った。感情表現が繊細すぎて時に怖くて震えるが、呼吸するように継続された記録は雪の結晶のように美しい。だからそういう記録をしてみたいと思った。私の日記を読んでくれている(いた)友達に「事細かすぎて滅入る」と言われた時やったーと思った。

あと、町田康さんの日記(http://www.machidakou.com/diary/ )も好きだ。百合子さんのように細かくないが、繰り返し同じ表現方法で毎日休むことなく淡々と記されている。続けて読んでいると暗号のような町田さんの造語が何を指しているか理解できて面白い。小説の時とは違い、続けて読んでいる人にだけ分かる造語や言葉の遊びが町田さんらしくてわくわくする。百合子さんや町田さんのように毎日休みなく、がどうしてもできずに途絶えてしまうこともあるが日記は可能であれば死ぬまで永久に続けたいと思っている。やれと言われると途端に無理になるが、誰にも求められていないことを続けるのが私は好きだ。


前置きが長くなったが、以下、今週したことや考えたことの記録。2月に行った汝、我が民に非ズのライブのMCで町田さんが「印象的だったり良かった思い出はわざわざ記録しなくてもちゃんと頭の中に残り続ける」と言われていてそれもそうだなと思っている。書いていることが全てではないし、逆に記録することがどうでもいいことという訳でもない。

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サイはドラえもんの漫画に興味津々。コンビニで買った週刊誌のようなドラえもんの漫画雑誌(映画の原作を集めたもの)を放置していたら、ドラえもんを最近分かってきたサイが勝手にめくって読んでいた。漫画にはまだ興味を示さないと思っていたので意外だった。藤子・F・不二雄先生の画力ゆえか。台詞を読むよう指示される。漫画の読み聞かせは今がどのコマか指ささないといけないので絵本よりずっと難しい。しずかちゃん(なぜかいつもドラミちゃんと呼ぶ)のシャワーシーンを気にして、「なんではだかなの?」と聞かれた。「お風呂に入っているからだよ」「なんで?」「しずかちゃんはお風呂が好きなんだよ」「なんで?」「え、なんでだろう…気持ちいいからかな」しずかちゃんがなぜ入浴が好きかとは、ドラえもんにおいて極めて重要かつ難しい論題だ。サイは毎日このコマばかり見て、同じ問いを一日十回は繰り返す。気に入りすぎて、白い紙を持って来てこれに模写しろと指示された。描くと切り抜くよう言われハサミで切って渡すと愛おしそうに裸のしずかちゃんを手に持っていた。私が最近、未読の藤子作品を読みたいと思って買った『エスパー麻美』を開いても裸のシーンを探し、冒頭の、麻美のお父さんが裸の麻美をモデルに描いた絵を見つけて大喜びしていた。裸とかおっぱいとか相当好きらしい。しずかちゃんと麻美の胸や裸の違いについて分析までしていたので笑ってしまった。もしお父さんが描いた絵のとおりだとすると、麻美ちゃんは年齢の割に豊満な体つきだ。エロを全面に押し出した漫画は少し苦手(浅野いにお『うみべの女の子』は話が好きなのに性描写が生々しすぎて挫折した)だが、手塚作品や藤子作品のエロ要素は私も好きだ。小学校くらいの時家にあった『クレヨンしんちゃん』や公共図書館で読んだ『火の鳥』で裸を見つけては興奮していた記憶が蘇る。それにしてもサイはまだ3歳なのにすごいなと思う。


サイとまたTSUTAYAに行き『それゆけ!アンパンマン シャボン玉のプルン』(2007年公開)を借りて観た。シャボン玉がモチーフなのとプルン(声は水野真紀)が可愛かった。プルンはとにかく自己評価が低いヒロインで早くアンパンマンを助けてやれよという苛立ちも含め私自身と重ねて観てしまっていたので最後は少し感動した。サイも気に入って、この場面でこれがこの色になるとか細かく記憶して後で教えてくれた。ヒロインに感情移入できなかった『妖精リンリンのひみつ』(2008年)より面白かったが、映画版アンパンマンは脚本が「ヒロイン登場、性格的な理由でヒロイン孤立、バイキンマンアンパンマンを倒すために最強メカを発明、街や自然を破壊、アンパンマン立ち向かうが倒れる、仲間もやられる、メカが故障してバイキンマンの手に負えなくなり暴走(責任ない悪として描かれるのでここはもしかしたら重要、)、意を決したヒロインが力を発揮する、メカで何か(花や玩具など)に変えられたキャラクター達が力を合わせてバレーボールのトスのようにアンパンマンの顔を運ぶ、アンパンマン復活、バイキンマンはメカと共にやられる、再び訪れる平和、ヒロインとの別れ」のパターンばかりで、それから脱却してもいいのではとおせっかいながら思う。『いのちの星のドーリィ』はパターンを踏襲しつつも「生きることとは何か」という投げかけがあり描写もヒロインも異質で面白かった。どうせ子ども向けと高を括らず、制作側は手を抜かずドーリィみたいな新作を本気で作って欲しい。


サイがお風呂のお湯でカプチーノを作ってくれた。アンパンマンに出てきたカッパチーノちゃんの影響。アンパンマンには笹の葉寿司や土瓶蒸しなど古典的な食べ物からマカロンシナモンロールなど新しい(?)スイーツまで幅広いキャラクターが登場する。河童に似たカッパチーノちゃんは「~ノ」を語尾につけた話し方をするので、サイも真似して「ありがとーのー」とたまに言う。保育園でもブロック遊びやままごとが好きらしいし最近料理も手伝いたがる(卵を割るのが特に好き、見ていて冷や冷やするがやりたいと言うのでやらせる)ので、何か創作したり組み立てるのが好きらしい。対して絵はあまり好きでないよう。私が絵を描くのを眺めるのが好きで「◯◯かいて」とよく言われる。私も小さい頃友達のお母さんが絵がとても上手で、線を描く手の動きや絵が出来上がる光景を眺めるのが好きだったなとふと思い出す。


最近服を買ってくれる(買ったあげた)とサイはよく言う。ある時「おかあちゃんにおようふくかってあげたよ」と急に小声で耳打ちしてきて、「え、どんな服?」「ピンクだよ」と買い物完了した妄想までしていた。何もなくてもその気持ちと言葉だけで嬉しい。ピンクの洋服はサイの中で憧れの服なのかもしれない。幼児雑誌にプリキュアのコスチュームが載っていて欲しがっていた。どの色(プリキュア)の衣装がいいのか聞いたらピンクだった。推しは黄色だが身に纏いたいのはピンクらしい。その感覚、何となく分かる気がする。


サイのバナナブームは終焉した模様。食べるか聞いてもあまり食べたがらなくなった。子どもの執着(特に食べ物)は一時のブームだとある時から気が付いたので、そればかり食べたいとせがまれると以前は戸惑っていたが最近はどうせいつか飽きるだろうと予想し、健康に影響ない範囲で自由に好きなだけ食べさせている。友人の子が同じようにレーズンパンにはまっているけどそればかり食べさせていいものか悩むと言っていたが、いいのではないかと私は思う。好き嫌いも同様で、嫌いなものを食べるよう促しはするが泣かせて嗚咽させながら強引に食べさせるのではなく、どうしても嫌なら少し食べたところで残してもいいことにして、そうするといつの間にか食べられるようになっていることもある。私は幼少期、食事を残すのが許されなかったので絶対食べねばという強迫観念から嫌いな物への嫌悪感が増大し、大人になった今も嫌いなままでいる。保育園の保健師さんが、「私なんて小さい時は卵しか食べなかったんです。本当に。それでもこんな風に育ったので好き嫌いなんて矯正しなくていいです」と言っていた。極端だが正論かもしれない。ちなみに今は鮭フレークブームだが、塩分がちょっと心配。


まだ漏らすこともあるがトイレがうまくなってきた。自分からトイレに行きたいと言ってくれるようになった。ゆるいアンパンマンブリーフしか持ってなかったので、ちょっとボクサーパンツ風のかっこいいブリーフを買ってあげたら急に男になった気がした。似合っていたがもう子供でないのだなと少し寂しくもなった。


珍しく人と食事する機会が多い週だった。普段何かするのに一人で平気だし、むしろ映画や買い物は一人で行動したい派なのだが、食事、特に外食に関しては一人だととても寂しい。一人で外食できないこともないが、チェーンの珈琲ショップで一気に食べて店を退出するので味わった気がしない。カウンター席でお酒があるとまだ大丈夫だが、例えば空間にゆとりのあるおしゃれなカフェとか、なんだか落ち着かずすぐに出てしまう。でも一緒に食べる人がいると嬉しいし楽しい。そして飲み込むように食べなくていいので美味しい。会社のランチも普段は席で急いで食べるが、人と食べると話もできて全然違う。業務中は話せない会社に対する違和感や意見交換もできる。でも飲み会はやや苦手。人数の問題かもしれない。多くて四人までがいい。食べログで行きたい店をリスト管理(そんな機能があるとは!)している友人にわぁすごいと驚いたほど最近食や飲食店への興味が薄れていた(空腹を満たせれば何でもOKの意識だった)が、好きな人と食べるごはんって美味しいのだなと改めて実感した。サイと食べるごはんも嬉しい。美味しいねってお互いに笑いながら食べるが調子に乗ってサイに話しかけていると「たべてるときはおはなししちゃいけません!」と保育園の先生を真似て注意される。


観たい映画がたくさんある。が、残念ながら観に行く時間がない。『素敵なダイナマイトスキャンダル』『シェイプ・オブ・ウォーター』『15時17分、パリ行き』『彼の見つめる先に』。良い作品や好きな監督の作品はDVDでなくちゃんと映画館で観るべきだと誰か言っていたが実現できないのがもどかしい。最近『シングストリート』をTSUTAYAで借りた。公開当時観れなくて悲しかった。ネット配信に未だに慣れないので結局TSUTAYAみたいな実店舗でパッケージを見て選ぶ方が私に合っている。映画ならまだいいが、絵画の展覧会などは見逃したら終わりだから悲しい。ルドン展、観たいのに一体いつ行けるだろう。5月までだからと悠長にしていたら終わってしまう。絵は後で図録を見ても生で見た時の感動は得られない。小学校2年生の時、展覧会で本物の「ピアノを弾く二人の少女」を観て衝撃を受けてからずっとルノワールの絵が好きだ。学校の宿題として提出するキャンパスノートにその感動を綴ったのを覚えている。だからサイにも年齢でまだ早いと制限せず色んな絵や芸術を見せてあげたい。生で観るって何よりもすごいことだと思うから。老後は絶対映画館&美術館に通い詰める婆になるぞ、足腰鍛えなくては、の気持ち。


例の事件(土地の名前がついた事件名を書いているだけで気分が悪くなったので辞めた)に対し、「殺人が犯人にとって疑似的な生きがいになっていた」とコメントしていた専門家がいた(犯人はヒモになりたかったと言っていたが全く信じられない)が、もしその通りだとしたら他人の生を繰り返し奪うことで生き伸ばすとはこれ以上ないほど自己中心的で悲しい思考だ。殺人という行為が、自己中心的快楽を満たす日常の延長か何かのように解釈されていたのかもしれない。理解の範囲を超えている。生きがい、とは。


生きがいも負に打ち勝つための何かも、それを求める時、絶対に人への依存であってはいけないと改めて考えた。そうなるのを自分が一番恐れている。例の事件のように殺人まで結びつかなくとも、対象が人である時点で本当の救済は得られない。あるどうしようもない鬱憤や手に負えない感情があったとして、その救済を人(サイも含めて)に求めるのではなく、生産性の有無に関わらず自分が満足いく形で創造や行動に変換するのがベストなのかなと思う。例えば絵を描いたり楽器を演奏して手や身体を動かすとか。例えばどこかに意思を持って出かけるとか。例えば仕事頑張るとか。変換させる何か。それを必死に遂行すること。「あの死にたみを 朝に変えたり 金に変えたり 髪を染めたり」という大森さんの好きな歌詞(『地球最後のふたりfeat. DAOKO』より)を度々思い出す。絶対勝つから待ってろよ、といつも自分自身に言い聞かせている。

つかれちゃったうーぱーちゃんはメキシコの湖に帰りたかっただろうか

3月12日(月)
朝。寝坊。完全に夜更かしのせい。日曜日は明日から仕事か嫌だなという気持ちの反動か最後の自由を楽しもうとつい夜更かししてしまう。自省。遅刻も嫌なので午前休にし、体調も悪かったのでついでに病院へ行った。鼻炎と風邪らしい。この病院は受付も先生も恐ろしく愛想が悪いがほとんど混まないし腕がいい。6種類も薬を出されてすぐに飲んだら次第に楽になってきた。月曜朝の病院は空いていて、前はなかったモニターが至るところに増えていた。そのモニターから海や森林のいわゆる「患者を癒しますよ」という映像が無音でエンドレス再生されていて、それを眺めてこれはどこだろうなと考えていた。こういう映像は何となくぼんやり見てしまうが、必ずどこかの場所でありちゃんと世界に実在すると考えたら不思議な心地になった。また、こんな癒し映像を流しているのに全員愛想が悪いとは実に可笑しいなと一人でにやにやした。

病院が終わると午後の出社まで時間が空いたので新宿に行った。こんな時は伊勢丹に行くしかない。他のデパートに比べ、伊勢丹で洋服や雑貨やお菓子を見た時のアドレナリンの放出量は半端ないので行くだけでエネルギーが満ち溢れる。だからちょっと落ち込んだ時とか今から頑張りたい時とか用事がなくても行く。DJみそしるとごはんさんが以前伊勢丹のイベントの時に作った「This is ISETAN Underground」を脳内で流しつつ。CDも持っているしとても好きな曲。デパ地下はホワイトデーのお返しを求める男性で混雑していた。母がバレンタインにチョコレートを送ってくれたことを思い出し美味しそうなパウンドケーキを実家に発送した。

それから上の階で洋服を見る。春夏シーズンの服がちょうど出揃っている時期ということもあり、アドレナリン絶賛大量放出。あぁーかわいい、あぁーすてきーと胸をときめかせ、そっと触れたり鏡の前で合わせたりした。良いと思った服も自分の顔に合わせるとあれ何か違うなとなる場合もありその瞬間はアドレナリンがやや減る。そんな感じで見ていたら我がオアシス3階解放区で、ある洋服に一目惚れした。ずっと憧れていたが自分には美しすぎると思って一度も買ったことがないブランド。伊勢丹は神接客なので、そわそわしている初期段階ではまだ店員さんは寄って来ない。絶妙な距離から放置して私が洋服と向き合う時間をくれる。万引きする不審者のように何度も触っているとようやく静かに近づいて来て「よろしければ合わせてみて下さいね」と一言だけ優しく放つ。どこかの店員みたいに「ここが可愛いですよねっ」などと価値を決めつけるような発言はしない。いやでもな、私がこのブランド着るとは、と一旦引き下がって他の服を見たりしたが、やはり忘れられず戻って試着させてもらう。

着てみると断裁や縫製にデザイナーさんが隅々までこだわっているのが着る前よりよく分かった。ギャザーの寄せ方や計算された丈、肌に纏わりつく布の感覚そのひとつひとつに感動した。「この服を考えたデザイナーさんはすごいですね、すごい」と思ったことをそのまま口走ってしまうと「そ、そうですね」と少し困ったように笑いながら頷いてくれた。でもやはり自分には美しすぎる気がした。迷っていたら試着室に「色でお悩みの方はパーソナルカラー診断をさせていただきますのでお声かけ下さい」という貼紙を見つけて、聞いてみたら無料でやってもらえることになった。大森さんが前にやったと言っていてちょっと気になっていたので嬉しい。密室で専門の人が顔に色々な布を順にあててくれた。あてる布で顔色が全然違って見えた。診断の結果、私は秋だった。今まで似合わないと思っていた色が似合う色だと知ったり新しい発見があって面白かった。それでさっき試着した服は秋に当てはまる色だったので、いよいよ決心がついた。伊勢丹は商売上手である。それも分かって伊勢丹が好きだ。さすがに大きな紙袋を抱えて会社に行けないので夜まで取り置きしてもらった。

夜。お迎えを代わってもらい、また伊勢丹に行って洋服を引き取った。朝よりは冷静になっていたので果たして本当に私がこの服を買っていいのかなという気持ちで迎えに行った。昼間の店員さんにお礼を言おうと思ったが見当たらずまぁいいかと思って解放区を出たら背後から「○○様」と呼ばれてその店員さんが私を追って来てくれた。こういうところが伊勢丹はすごい。マニュアルにあるのかないのか分からないが接客が人間レベルだ。自分がこの美しい服を買ったこととパーソナルカラー診断で似合うとされた色に今後縛られそうで不安になっていたので、心理相談かというくらいどういう小物が合うかしつこく聞いたら丁寧に教えてくれた。いい店員さんだった。タイミングが合った友達と合流し、一緒に色んなブランドの服をあれこれ話しながら見た。自分がいつも見ないブランドも見ることができ新鮮で楽しかった。それから日記にかかない幸せ。美味しくて穏やかな夜だった。帰宅すると「私はこれを着れるかな、高い服買ってしまったな」とまた不安になりなかなか紙袋から取り出せず、でも皺になるのも嫌だったので寝る前にお気に入りのハンガーにかけてあまり見ないようにして急いでクローゼットの一番奥にしまった。


3月13日(火)
朝。バナナとヨーグルト。サイは最近ハサミで色々なものを刻むのが好きだ。ハサミ遣いがかなり上級になって小さな細かいものも上手に切れるので側で見ていなくてもまあ大丈夫。しかし私が準備している時に今日も何か切ってるなと遠目で思っていたら床にたくさんの黒い髪が落ちていてびっくりした。どうやら自分で切ったらしい。驚いたが叱ってはいけないと思い訳を聞くと「あたまちっさくしたかったの~」と可愛いことを言う。小さくって…。さすがに危ないので髪は自分で切るより美容師さんに切ってもらった方がいいよ今度行こうよと説得してはさみを取り上げると不満そうだった。伸びすぎて野生の子みたいになってきているので、早く美容院を予約しなければ。そんなことがありつつバタバタと出発。

夜。お迎え。玄関に行くとサイは水槽のコーナーに駆け寄って「るーぱーちゃんがいないの」と教えてくれた。その言葉通り、「うーぱーちゃん(サイはるーぱーちゃん、まあどっちでもよい)」と勝手に呼んで愛でていたウーパールーパーの水槽があった場所には何もなくなっていた。毎日帰りに二人で水槽をのぞいて声掛けしていたうーぱーちゃん。私は何となく悟って、側にいたやや高齢の先生に聞いたら「死んじゃったんだって」と教えてくれる。「うーぱーちゃん、しんじゃったんだって」と私がサイに言うと「おじいちゃんになったんだって」と何か知っているようだった。先生が知らせたのかもしれない。お迎えしているお母さんも子どもも先生も、誰もうーぱーちゃんが死んだことを気にしてない様子だった。私はショックで一人茫然としていた。気が付いたら涙を流していた。私があまりに茫然としているから、さっきの先生が「園庭にお墓があるから今度場所教えてあげるね、今は暗くて見えないけど」と言ってくれた。暖かかったので、サイは園から出ると庭園で先生にもう帰りなさいよと言われるまで他の子達と走り回ったり遊んでいた。私は子ども達から離れて立ち話をするお母さん達から更に離れた所に一人で立ってうーぱーちゃんの死について考えていた。少しピンクがかった白い体をした可愛いうーぱーちゃん。ほとんどじっとしていたが時々思いついたようにゆらゆら泳いでいたうーぱーちゃん。トンネルに隠れていたうーぱーちゃん。毎日会うウーパールーパーに特別な思い入れがあったというより、まあそれもあるけれど、最近亡くなった人やいつか死ぬ人や自分について、ばーっと連鎖反応みたいに色々考えて辛くなった。

帰り道でサイに「なんでるーぱーちゃんはしんじゃったの?」と聞かれ「病気かな」と答えると「つかれちゃったのかな」とサイは言った。「そうかもしれないね」と自分に言い聞かせながら答えた。自転車に乗りながら今日保育園で何をしたか聞いた。「ままごとしたよ」「へぇ何作ったの?」「からあげ、おかあちゃんにからあげつくった」「えー唐揚げ大好き!嬉しい!ありがとう!」「でしょーこんどからあげかってあげるよ、サイくんおかねあるから」「えっお金あるの?すごい」「うん、からあげは280えんだよ」「へぇ~」「こんどおはいふ(お財布)かって」「いいよ、どんなのがいいかな~」こんな風に私達はいつも会話している。

夕食後、入浴。サイはお風呂にままごとのコップや使わなくなった御猪口を持ち込んでジュース屋さんごっこをした。「いらっしゃいませ~なんのジュースがいいですかー?」「えーとじゃあビール下さい」「ここはジュースやさんです!ビールはありません!」とか、「えーとじゃあ、みっくしゅじゅーちゅ下さい~」「みっくしゅじゅーちゅはふゆなのでありません、あたたかくなってからです」とか最もなことばかり言われて笑った。いちごジュースを発注したら仕入の苺が高すぎて販売中止になったとのこと。いい経営者になりそうだ。入浴後、就寝。めずらしくテレビを観ない日だった。


3月14日(水)快晴
暖かい。春だ。夜中や明け方に何度も目覚めたが10時からずっと布団で寝ていたので普段に比べてよく眠った気がした。夢を見たはずだが覚えていない。あまりいい夢でなかったと思う。サイは朝起きるなり「もっとこっちにおいでよ~」とにっと笑って私を抱き寄せる。ハーレークインのロマンス文庫か。機嫌が良くてよかったと思ったら朝からウィンナーを食べたい、それもカニさんウィンナーが食べたいと騒ぐ。時間がなかったのでげっと思い「夜に作ってあげるね」と断ったら今食べたいと言って聞かず、機嫌が悪くなったので仕方なく急いでウィンナーに切り込みを入れ(慌てすぎて足が少しちぎれる)果物を切っている間にフライパンで焼く。母親をしていて自分が偉いとあまり思うことはないのだが、今日は思った。こういう臨機応変さは仕事にだって活かせているはずだ。人によって子育て方針は違うと思うが、私は怪我するとか命に係わるとかもう本当に無理なこと以外は何でも一緒にやろう、やってあげようのスタンス。母親というのは売出し中の芸人と同じだ。ゴミ出しして昨日作ったお弁当をかばんに放り込み何とか出発して保育園に行き通勤電車に滑り込む。いつもその瞬間ほっとする。うーぱーちゃんがいなくて寂しい。

夜。退勤してフロアに置いてある共有コート掛けから何も考えず自分のコートを取って纏い、そのまま会社を出て文房具屋に寄り駅まで着いて電車に乗ろうとしたときにいつも定期を入れてる右ポケットに定期がなかった。あれ、と思い左ポケットを探ると手に覚えのない感触。何だったけこれと取り出してみると自分のものではない手袋。その時初めて他人のコートを着て来てしまったことに気付いた。慌てて会社に戻り何食わぬ顔で間違えたコートを戻して自分のコートを捕獲した。家まで帰らなくてよかった。持ち主はサイズ的に男性だと思われるが誰か分からなかった。自分のコートがなくて仕方なく何も着ずに帰ったのかもしれない。そりゃそうか。傘なら残ったものを差して帰るがさすがにコートは着ないか。それにしても他人の服を間違えてある程度の時間を過ごしたのは初めての経験だ。我ながら自分のした失態が面白いなと思って歩きながらにやにやした。

夕食は買った惣菜など。我慢できなくて夕食を並べる前にビールを飲んだ。食後にサイとくっついてアンパンマン映画『いのちの星のドーリィ』(途中から、サイはロボットが暴れるクライマックスのシーンが好き)。入浴後、就寝。


3月15日(木)快晴
いよいよ春だ。嬉しい。が、気温が急に上がったので頭痛がする。保育園に着いて玄関でサイは一瞬何か考えてから「るーぱーちゃんなんでしんじゃったの?」と小さな声で放った。サイはうーぱーちゃんが死んだことを気にしていないようで気にしている。サイの答えを真似て「つかれちゃったのかな」と言うと「なんで?」と聞かれたので「本当は広い海が好きだから、この保育園の狭い水槽の中にいるのが疲れちゃったんじゃないかな」と自分なりに推測した答えを返したら、納得したようなしてないような表情をしていた。ウーパールーパーの生態に詳しくないしそもそも海に生息しているか分からないが、少なくとも水槽よりは広いだろうと思って。(後で調べたらメキシコサラマンダーというサンショウウオの原種を人工的に品種改良したのがウーパールーパーで、原種はメキシコのソチミルコ湖とその周辺に生息していたが湖は現在、土地開発や埋め立てで湖と呼べないほどの状態になっており個体数も減っているとのことだった。うーぱーちゃんは突然変異で生まれた黒目の白個体リューシスティックで日本で最もよく知られたウーパールーパーらしい。)

昼。パン美人と食べる。いつも楽しい。コートを取り違えた話をすると笑ってくれた。「間違えられた人が私のコート着て帰るかと思ったんですが、そうでもなかったです」と言うと「そりゃそうでしょ、自分のがないからって他人のコート着て帰らないでしょ」と真っ当なことを言われまた笑う。それからお互いが最近買った洋服(私は月曜に買った服)や欲しい物の話をした。パン美人は何を言っても興味を示してくれるので嬉しくなる。

夜。お迎え。保育園バッグと一緒に大きな黄色い袋が掛けてあった。数日前から教室で並んでいるのを見かけた。その中にはサイが一年間に作った絵や工作作品がたくさん入っていた。布の表にはそれぞれ好きなように描いた絵で彩られている。サイの袋には大きな顔が三つ並んで描かれていて、聞くと三人の担任の先生の顔だと言うこと。人数が多いので担任が三人いる。サイがみうらじゅんを見て似ていると言ったK先生、T先生、A先生。K先生が一番年上ベテランで、T先生は私と同じくらい。A先生はおそらく専門を出たばかりでとても若くて可愛い。私はA先生の顔が好きなので親子会で子どもを撮るふりをしてA先生を盗撮したことがある。T先生は背が高く控え目で優しい。一番仲良くなれそう。K先生はちょっと怖いなと最初思っていたが実はいい先生だと後々分かった。若い先生ばかりだと子ども達にも舐められるのでK先生みたいな先生がいた方がいい。サイが描いた三人の顔はK先生とT先生が大きくてA先生はその1/3程と小さかった。A先生がK先生に意見されている姿をよく見るのでその力関係をよく表していて面白いなと思った。サイはよく見ている。K先生に「これは三人の先生の顔だそうです」と言うと「あらそう?」と大きさの違いにまで気付いていないようだったのでまた一人で可笑しくなった。

帰宅後、とりあえずビールが飲みたかったので三歳児に「ビール飲んでいいですか?」と聞くと「いいよ!」と許可が下りる。交換条件としてコアラのマーチいちご味を食べることを許可した。サイが私にもくれたが全くビールに合わなかった。疲れていたので簡単に夕食を済ます。それからサイが一年間に作った作品を一つずつ眺める。先生が全部に日付を書いてくれているので、だんだん上手くなっていて最初春夏は抽象的だったのが年末頃の作品は何の絵か分かるようになっていて面白いなと思った。褒めたらサイは得意気になり「どこにかざろうかな~」と飾る場所を一人で考え始めていた。疲れていたので週末にしようと思いお風呂に入る。なんだか身体がだるい。就寝。倒れるように横になる。熱っぽくてしんどい。お腹も痛くて変な汗をかくし気持ち悪かった。サイは何ともなさそうだった。


3月16日(金)曇り
明け方起きてから眠れず朝まで起きた。会社を休もうと思って熱を測ってみるも熱はなく有休を無駄遣いしてはいけないと思い行くことにした。朝になっても空がどんより曇っていて嫌な天気。体調不良は自律神経の乱れかもしれない。サイが起きて「曇ってるよ」というとカーテンを開けて外を覗き「これいけそう?」と不安そうに聞く。「うん大丈夫だよ、サイくんは保育園、ママはお仕事、今日一日頑張ったら帰ってアンパンマン観れるよ」と希望を提示すると「ぃやったーー!!」と分かり易く喜んだ。それから再びだらだらと寝転がっている私の側に来てサイも寝そべって「おかあちゃんのことすきだからちかくにきたよ」と状況を教えてくれた。可愛いな。金曜日はアンパンマンの放送日だし一週間の終りなので私もサイも嬉しい日。貧血でクラクラしつつ出社。精神は元気なのに参ったなぁ。

出社しても仕事に集中できず、というより眩暈で視界が悪くなりデスクトップが見辛くなってきたのでこれは無理だと思い午後休みを取って早退した。月曜日は午前休だったし社会人としてダメだなと自省しつつも月曜は午後から金曜は午前までという制度だったらいいのにな、と悪いもう一人の自分が思っていた。帰宅後、薬を飲んで音楽を聴きながら布団で横たわっていたらいつの間にか寝ていた。次に起きた時にはお迎えの時刻だった。このままずっと寝ていたいと思ったが、そういう分けにもいなかいのでとりあえずマスクをしていかにも仕事帰りという顔で慌ててお迎えに行った。雨が降っていて寒い。サイは元気そうだった。

再び帰宅後、一瞬床に倒れて蹲っていたらサイが駆け寄って来て「だいじょうぶ?」と心配そうに背中をトントン叩いてくれた。優しいな君は。倒れているとか、あんまりこういう姿はサイに見せたくないのだがどうしてもしんどい時は仕方がない。子育てにおいては何でも一人でやれると強く自負していたのに自分の体調が悪いとどうしてもうまくいないと実感し情けない気持ちになった。健康第一だとしみじみ実感した。夕食はうどんがあったので適当に焼うどん。私はブロッコリー入ポタージュ(市販のスープに茹でて入れただけ)。サイは夕食前にパンを食べていたこともあり、スープしか食べなかった。なので誰も食べない焼うどんは冷蔵庫へ移管された。
ドラえもんクレヨンしんちゃんでも観よう(観ていてもらおう)と思ったら別の番組が拡大していてやっていたなかった。なのでアンパンマンを観た。他のアニメと違い家族愛をやたら強調することもないので、アンパンマンを観ると心安らぐ。アンパンマンの世界の住人達はそれぞれ孤立している。今日はオクラちゃん。野菜を人に配る度にいちいち野菜たちにドラマチックな別れ言葉を贈るオクラちゃんが面白かったのでサイと笑った。入浴後、就寝。私は身体がしんどくて寝付けず夜中何度も起きては寝るを繰り返した。


3月17日(土)快晴
私は寝過ぎたので早朝起きた。サイも休みの割には早く起きた。二人でゆっくり朝ごはん。時間があるのが一番良い。ゴミ出し。洗濯。サイはアンパンマン。昼前、おにぎりと出し巻卵を作りお弁当箱に詰め出発。ローソンに寄りシールを貯めた台紙とキティちゃん&マイメロの小皿を交換してもらう。こういうポイント貯めてもらえる物は最後まで達成したためしがないのだが、サイがいつだったか「サイくんキティとマイメロのおさらほしいんだ」とローソンのポスターを見て言ったのに対し「あれはシール貯めたらもらえるんだよ、じゃあもらおうよ」と口約束したばかりに初めて必死に頑張った。自分で決めたことや気の進まないことはすぐに諦めがちだが、大事な人との約束は守るタイプなのかもしれない。しかし当分コンビニのパンとスイーツは見たくない、という感じ。それからTSUTAYAで先週借りたDVDを返却し(自分用に借りたものは案の定観る時間がなかったためまた借りた)、違うアンパンマンの映画と『パディントン』を借りた。

公園に行きシートを広げてサイとお弁当を食べた。サイはTSUTAYAでやったガチャガチャで出た玩具(小さながちゃがちゃマシーンの玩具)に夢中で最初全然食べなかったが、私が食べ始めると取られまいと勢いよく食べ始めた。食後、サイはシャボン玉。ひとつしかないので私はシートの上でサイを眺めていた。日光に当たっていると体調が回復してきた気がした。私の服に偶然シャボン玉がくっついたのが面白かったらしく、またつけようと私をめがけて吹いてくる。それからシートを畳んで公園で走り回る。と見せかけてサイはセブンティーンアイスの自販機コーナーに直行した。そういう時だけ早い。サイのお気に入りの「バナナ」(正確にはバニラ)を買い、二人でベンチで食べる。

食べていると溶けかけたソーダアイスを持った男の子が近寄って来た。サイより少し年上な気がした。「きみだれ?」「なにたべてるの?」と接近して一方的に話しかけてきたり顔を寄せたり距離が近く、人見知りのサイは戸惑っているようだった。親の姿は見当たらない。男の子がベンチのテーブルに座って足を乗せていたので「そういうことはしちゃだめだよ」と静かに注意した。私は他人の子にはけっこう厳しいのだなと思った。ほどなくして祖母と思わしき人が現れて何やら男の子に話しかけていた。男の子はまだテーブルに座っていたので「それだめだよ」とおばあちゃんにも聞こえるようちょっと強めに注意した。そうするとおばあちゃんは「○○くんダメよ」と言ったが男の子は聞いていないようだった。おばあちゃんは私に「男ですか?女ですか?」と聞いた。私はキャップを被っていたから自分のことかと思って「母親です」と答えたがサイのことだった。そう言われると髪が伸びて最近一見どっちだか分からなくなっていた。サイは男の子があまり好きでなかったようでアイスを食べ終えるとベンチを離れた。すると男の子も着いて行った。どうやら男の子はサイのことが好きらしかった。男の子はなぜか前歯が全部なかった。おばあちゃんは眉を全剃りして細く描き青いアイシャドウをしてちょっと怖い顔だった。サイがどこに行っても男の子は着いて来てなぜかサイのことを「おにいちゃん」と呼んだ。そのうちにサイもまあいいかと心を許し始めたようで二人で声を上げて走り回ったり遊具で遊んでいた。サイ達が走ると私とおばあちゃんも着いて行かねばいけないのでその時になってようやくおばあちゃんと会話した。聞くと、男の子は4歳で上に二人高校生と大学生のお兄ちゃんがいるということだった。「てめぇ」とか「うっせー」とか普段サイが言わない言葉遣いをしていたのでなるほどなと思った。親の影響ってこともあるけど。両親は今日も仕事でおばあちゃんが相手をしているらしい。両親はどうしても女の子が欲しくて歳の離れた三番目の子に懸けたが結局男の子だった、でも生まれればいいよねと愛おしそうに言った。男の子はおばあちゃんが度々注意しても反発していた。でも心細さから来る反発に見えた。同年代の子や親と遊ぶ機会が少なくて寂しくて寄って来たのかなと思うとこの子なりに色々あるのだろうなと考えてしまった。なぜ前歯がないかそこは聞けなかった。おばあちゃんは体力的に遊具の上までは追いつけず、だから私がずっと二人の相手して、普段こういうことはないのでなかなかに疲れた。

15時すぎに男の子と別れ(また遊びましょうねとおばあちゃんに言われた)、くたくたで帰宅し昼寝。私はまた体調が悪くなってきた。夕方、サイと借りてきた『それゆけ!アンパンマン 妖精リンリンのひみつ』を観た。ヒロインがヤンキーっぽいなと思ったら声優が土屋アンナだった。先週観たのに比べストーリーが陳腐で面白くなかった。夜になりK帰宅。外に食べに行きたいと言われたが私は食欲がなかったし何より着替えたくなかったのでそれを言うと不服そうにされる。じゃあサイと二人で食べてきていいよと言うと本当に二人で出かけていなくなった。私は急に小腹が空いてきたので柿ピーの小袋を食べた。片付けでもしようかと思ったらタイミングよく大森さんのLINEライブが始まったのでそれを観た。終わったタイミングで二人が帰宅した。入浴後、就寝。


3月18日(日)晴れ
朝から家族で美容院へ。切るのは私とサイだけ。サイが切り終わると二人で先に帰ってもらう。今の美容師さんに切ってもらうのが今日で最後なので一人でゆっくり話したかった。上京して東京のことをまだ何も知らない時にネットで見つけた美容院へドキドキしながら初めて行ったのが約10年前。それからずっと同じ人に切ってもらっている。人生で一番長い。あまりこうしたいと具体的に言わなくても感じ取ってくれるのが楽だし何より切る技術が優れている美容師さんだ。とても残念だが、美容師を辞めて新しい道へ行くと言うのでこればかりは仕方がない。最後ということで過去を色々振り返りつつ、つい本音で話してしまったら「ん?ちょっと分からない」と言われて本音を言い過ぎたかなとも後で後悔した。3月末で辞められるので、もう一回挨拶だけでも来れたら来たいですが来れるか確約できませんとお別れかどうか明確にしないまま店を出た。

それから一人で塩ラーメンを食べて(カウンター両脇のお客さんの方が早く食べ始めたのに私の方が早く食べ終わった)、NextやH&Mなど海外ファストファッションをハシゴし、サイの保育園用の服を大量に買って帰宅。前は無印とユニクロばっかり着せていたが、あまりにも地味で可愛そうになってきたので色鮮やかな海外ブランドも取り入れようという試み(?)。サイズアウトしていたが今まで買いに行く時間がなかった。Kは入れ替わりで仕事へ。じっくり選ぶ時間がなかったので変なデザインの服を買わなかったか後で点検してみた。ちょっと変なのもあった。サイは昼寝していた。私は居間の床に横たわっていたらいつの間にか寝てしまっていた。サイが起きて寝室に行くと、サイは私の髪を見て「あれっ?かみのけかわいいね」と新しい発見をしたみたいに言った。その言い方が可愛いなと思ったので、私も知っているけどわざと「あれっ?サイくんも髪可愛いね!」と驚いた風に言ったらサイもまた同じように真似した。二人でおやつにビスケットを食べた後(サイが用意してくれた)、『パディントン』を観る。私はぬいぐるみをコマ撮りした『パディントン』の信者なのでこのCG実写版はどうにも受け入れられなかった。でも妹が面白いと言うので観てみた。冒頭から心の中で「えぇ野生かよ!」と変な突っ込みをしてしまった。パディントンは可愛いぬいぐるみなのに…。とはいえ原作ではクマとしか書かれていないから実際はどうか分からないが。これはパディントンではないと思って観ると楽しめそうだった。が、サイもコマ撮りのぬいぐるみを見慣れているため、「このパディントンなんかちがうね」と拒否反応を示していた。結局冒頭でもう観たくないと言われ、ロンドンが出てくる前に再生中止した。吹き替えだったので字幕で夜中にまた観ようと思う。イギリスが舞台の映画は好きだ。

夕食を作って煮込んでいる間にサイと丸い缶をボールみたいに転がしたりぬいぐるみを動かしてゲラゲラ笑って遊んだ。疲れたのでテレビ。ちょうどEテレで『レイチェルのキッチンノート』という私の大好きなBBCの番組が吹き替えでやっていたのでサイと観る。レイチェルというロンドン在住の女の子が彼女のアパートメントの可愛いキッチンで料理するだけのドキュメンタリー(?)番組なのだが、レイチェルが材料をざくざく包丁で切るところとか、こちらが冷や冷やするほど目分量で鍋に投入するところとか、あと料理するのになぜか色鮮やかな可愛い服を着て真っ赤な口紅してるところとか、失敗してもえへっと笑って驚くほどポジティブなところとか、ロンドンの街に繰り出して友達と陽気に会話するところ(吹き替えなので英語ではない)とか全部好きだ。ロンドンは廃れた街の再開発がどんどん進んでいるらしく、新しくできた屋上ビアガーデンの様子が映っていて「あぁ―!ビールおいしそー!」と思わず声を上げてたらサイは呆れた顔をした。夕食は野菜カレー目玉焼きつき。サイはあまり食べなかった。夕食後、二人で電子ピアノに入っているフュージョン系の音楽をかけてそれぞれ好きな踊りをした。悲しいことにこれしか電子ピアノを使っていない。お互いに世界一流の前衛ダンサーだと思い込んで踊るのがコツ。入浴後、就寝。布団の上でまた「あれっ?かわいいね」という遊びをした。「あれっ」の時に驚いた表情をどれだけできるかで面白さが変わってくる。いつだって新しい発見をした人のような気持ちでいたい。サイが寝た後、私は悪夢を見ては起きるを繰り返した。変な汗をたくさんかいた。


桜が咲いた。サイは桜や梅が咲いているのを観る度に「さいている」ではなく「あ、はるだ!」と言う。その表現がなんかいいなと思った。ソメイヨシノではない、開花宣言もされない種類の桜が私は好きだ。ソメイヨシノも日曜日に咲いているのを見つけた。いよいよ春か、春なのか。桜の色をしたうーぱーちゃんは春が来るのを待たずに去ってしまった。今は土の中に埋まっている。その上には桜が咲いている。去年と同じ光景。さあ春。

海に消えた人々は神話では星になれるけれど

3月5日(月)晴れ
朝。パンとヨーグルト。月曜日なのでシーツなど大荷物。朝は天気がよかったのに昼から次第に下り坂となった。勘に頼って傘を持って家を出なかったため、帰り用にお昼休みにコンビニに傘を買いに行くも既に雨は降っていて買いに行くために雨風に晒されるという本末転倒だった。

夜、日記にかかない幸せ。昼より激しい雨。昼にコンビニで買った70センチの傘はパッケージに「裏返っても丈夫!」とイラスト付で書いてあった通り裏返ってもまた元に戻り丈夫だった。ただ、それを使用者に実証するためにわざとかと思うほど簡単に裏返る作りになっていて風に吹かれる度にギャグ漫画のように裏返った。これを作った人は傘が裏返る様子が狂おしいほど好きでそういう商品を作ったのかもしれない。否、真面目に考えると元に戻り易いということは変形し易いということか。何でもいいけれど裏返る度に滑稽で恥ずかしいので普通の壊れやすい傘の方がいいなと思った。

3月6日(火)晴れ
朝。私はパン、サイはバナナ。慌ただしく出発。化粧をしているとサイくんもしたい~と言われたが時間がなく応じられなかった。

夜、お迎え。サイは着替えが足りなかったらしく、保育園で借りた寒そうなズボンを履いていた。ごめんよ。ソーセージとほうれん草の炒め物を作ったらソーセージだけ食べてほうれん草を全然食べなかったので、「これ食べたらおやつ食べようよ」と苦肉の策で提案すると頑張って食べてくれた。しかしあんなに頑張って食べていたのに食べ終わったらサイはおやつのことを忘れていた。可愛いな。お風呂に入る前に思い出して言われたので、明日にしようと言うと納得してくれた。大人になった。最近「明日」という概念が分かってきたようだ。「来週」はまだ一週間という時間が掴めていないため難しいよう。

お風呂から出た時、二人で歌いながら下着を投げる遊びをした。実家に帰った時に両親が買っていた幼児雑誌の付録DVDのトイレトレーニングのアニメで流れる、ドラえもんと幼い子どもがトイレの王国でフラメンコ風に歌いながらトイレが成功したら「オレィッ!」と手を上げて叫ぶというシュールな歌をサイは気に入っていて、トイレに関係なくてもことあるごとにその歌を歌って「オレィッ!」と叫ぶ。「オレィッ!」のタイミングで下着を投げてはげらげら笑って遊んだ。私は大人なので10回ほどやったところで寒さで正気に戻り止めたがサイは無限に続けたそうだった。寝ようと電気を消したらサイが鼻血を出して本人もびっくりしたが血は止まった。多分鼻のほじり過ぎ。いつも思うが子どもの血の色は綺麗。鮮やか。

3月7日(水)曇り
朝。私はパン、サイはバナナ。昨日約束したおやつ。サイは皮を剥くのが本当に上手になってきた。剥いた皮を食べ終えた後で私が捨てるのをよく見ていたらしく、食べる前にゴミ箱のところへ行きそこで剥いて皮を捨てていた。ゴミ箱に向かって真剣に皮を剥いたりバナナの繊維を取っているサイの後ろ姿の可愛さといったら!剥いたバナナをいつも使っているアンパンマンのお皿ではなく私が普段使っているパン屋でもらった白い皿に載せたがったので渡す。ナイフもくれというので食事用ナイフを渡す。席に着いてバナナを器用に輪切りにしたらそれをフォークでゆっくり食べていた。なんだか貴族のようだったので「バナナ王子~」と呼んだら喜んでいた。「バナナ王子、美味しいですか?」「うん」「バナナ王子、今日は何して遊ぶ予定ですか?」「ブロック」などと優雅な(?)会話を楽しんだ。

昼。一年に一度来社する台湾の人と食事。作ったおにぎりを家に忘れてきたが、私も食事メンバーに入っていると知らなかったのでよかった。仕事以外の共通の話題が、天気・子ども・食べ物くらいしかなかった。あと羽生結弦羽生善治と名字の読み方が混乱する、どちらがどちらかと聞かれる。あと、どちらかがどちらかの熱烈なファンで新聞のテレビ欄に「羽生」という見出しを見つけると喜ぶが放送を観て「羽生」が自分のことだったと知るとがっかりするらしい、という面白い話を教えてもらった。私よりずっと詳しい。

夜。スーパーに寄って帰る。期待したが、愛しのNクリスピーフライドポテトは売ってなかった。これまで別れてきたお気に入り商品達のように、もう二度と私の元に現れなかったらどうしようと不安になった。サイはお惣菜のアジフライを紫蘇が入っているからと嫌がった。私が朝作って持って行くのを忘れたおにぎりを食べたがったので二人で食べた。食べかけのおにぎりを再び小さくまるめて喜んでいたので、甲高い声で「おにぎりの赤ちゃんだよ~」と動かして話したら喜んでいた。いつもこんなことばかりしている。食後、アンパンマンメロンパンナ(サイの一番のお気に入りのぬいぐるみ)がアニメに出て来たらサイは持っているぬいぐるみを動かして高い声で喜び絶叫する。完全に私の影響。「メロンパンナちゃん、よかったねぇ」となでると「ひゃあぁぁ~」(サイの声)とまた喜ぶ。この別人格の声は保育園でもやっているらしい。入浴。お風呂で泣いた。就寝。

3月8日(木)雨
深夜に起きてから朝まで寝られなかった。ちょっとしたきっかけでトラウマが押し寄せてきて苦しく、でもどうすることもできずただ涙を流した。泣くなんてダサいなぁと思いながらそれしかできずずっと腹の奥に石の塊が詰まったような感覚が消えないまま泣いた。もっと他の形に変換できればいいのに。この腹にある黒いものを出産するように外に出してしまいたい。

朝が来てサイが目覚めてほっとした。サイといる時だけ余計なことを考えなくて済む。純粋に愛おしくて楽しい。サイは今日もバナナ王子となり、輪切りにして食べた。渡した食事用ナイフが昨日使ったものと違っていると「ちがうね」と気が付いた。あとはパンとヨーグルトを食べた。咳をしている。私は深夜からずっと起きていたくせにいつものように出発がぎりぎりになり、慌ててサイを自転車に乗せて傘やらなんやら大荷物で雨カバーもして出ようとすると、サイが吐いた。「げぼしちゃった」と泣きそうな声で教えてくれた。吐いた原因は咳によるものだと安心したが、朝ごはんのバナナやヨーグルトが洋服や自転車についてしまったため一旦家の中に戻る。サイは怒られると思ったのか申し訳なさそうな泣きそうな顔になっていたので「大丈夫だよ」と何度も宥める。サイを拭いて着替えさせ上司に遅刻の旨連絡し、再出発。遅れると決まったら変に穏やかな気持ちになった。保育園に着いて教室で着替えやコップなど配置しサイと別れる時、一端教室の奥に入ったサイは出入り口まで来て手を合わせてくれた。最近してくれなかったので嬉しかった。

電車の中でよろめいたら一見いい人そうに見えたおじいさんがイラついたように二度も怖い顔で小突いてきて悲しくなった。保育園に傘を置き忘れたので仕方なく自転車用の超絶変なデザインのポンチョ(300円)を被って駅から会社まで歩いた。サイとも満員の通勤電車とも別れて一人になった途端また涙が出てきて、何で朝から歩きながら泣いているのか自分でもよく分からなかった。

昼。パン美人にすずめやのどら焼きをもらう。美味しい嬉しい。パン美人と話すと心が晴れる。保育園から電話。サイが熱を出したとのこと。食欲もあまりなくおやつさえあまり進んでいたなかったとのこと。サイがおやつを食べないのは異常事態なので、熱より食欲がないことが心配だ。Kが仕事がもう終わるということで迎えに行ってもらう。
午後、サイが気になりつつ、昨日提出した報告書をイチから書き直すよう上司に言われる。自分が思っていたのと上司が想定していたのが全く違って、それなら最初からそう書くよう言って欲しかったというように遠回しに伝えたら謝られたが書き直しにうんざりした。仕事で何か理不尽だと思ったらすぐ態度に出してしまうため、周囲に怖い奴だと思われている(らしい)。別にいいけど。

書き直しが進まず少し遅くなり退社。久しぶりに夜一人で自転車に乗った。雨が降る中ださいポンチョを被り爆音(って言っても大したことないが)で大森靖子さんの『洗脳』を聴きながら自転車を漕ぐ。サイは元気そうだったが、食欲はあまりなさそうでバナナ2本食べた。それからまた二人でアンパンマンを観た。入浴後、サイは大森さんのCDの歌詞カードを広げて観ながらそこに載っていない大森さんの歌を歌っていて面白かった。

サイが寝たらまた不安が押し寄せてきて、布団に入ったものの悪夢を見てはすぐ目覚めるを繰り返した。吐き出すようにワードに打ち込んだ文章を読み返してみても余計苦しく何か手を動かしたいと思ったが何もせずネットでスイーツの画像を眺めていた。私は画像検索結果が好きだ。時々全く関係ない画像が混ざっていたりすると気になって開いてしまったり。魚とゴミが漂う海のようだ。それにも飽きたが音楽を聴く気になれず、外で激しく降る雨音をぼーっと聴いていた。

ふと、以前ナナちゃんを鉛筆で描いたものを放置していたことを思い出しそれに色を塗ってみようと思った。絵は上手くないが、筆で何か描いたり塗ったりする作業が小さい頃から好きだ。鉛筆や色鉛筆も好きだが筆の方がより好きだ。いそいそポスターカラー(水彩絵の具が家にない)を準備し暗い部屋で最低限の明かりをつけて描き始める。相変わらず雨音がする。ナナちゃんを落書き程度に描いたことはあるが真剣に描いたのは今回が初めてだった(正確には大森さんへのプレゼントを入れる袋に一度だけ描いたから二回目か、しかしあれは布だったので描きにくかったしナナちゃんへの理解がまだ浅い頃だった)。描くというのは対象に究極まで向き合うということだなと小学校の図工の時間にクラスメイトを描いた時初めて気付いたのだが、対象に愛情を持ちすぎていると私はなかなか納得いくように描けない。特に仲良くないクラスメイトだと我ながらけっこう上手く描けて賞をいただいたりした。想いが強いと自分の中にある愛情と等しいものがちゃんと描けるか、いつも不安になる。だから大森靖子さんの絵は未だに納得いくように描けない。ナナちゃんだったら大森さんより自分の想いを客観的に捉えられるかなと思い描いてみた。でもやはり難しく、ナナちゃんの愛らしさがあまり出ていない寂しそうな絵になった。私がナナちゃんのそういう陰の部分で見ているからかもしれないし、自分の描く絵の画風によるものかとも思った。

画風というか色遣いは完全に小学校の時に通っていた絵画教室のおっさん先生の影響で、先生の絵のトーンが暗かったので、それを何となくかっこいいと思い私も暗い色を好んで使うようになった。大人になった今でも同じような色遣いだからおっさんの画風どうこうというより自分自身の性格によるのかもしれないし、幼稚園から6年まで7年か8年間通っていたからそもそも性格がおっさんに似てしまったのかもしれない。別のブログにも書いたが不思議な先生だった。寡黙で何を考えているか分からず部屋の隅に先生が描いた雲のある空の絵が無数に飾られていた。全部同じに見えたが微妙に違うようだった。赤の他人に性格が似るなんてすごい影響力だ。元気にしているだろうか、生きているだろうか。などと考えていたら朝になっていた。雨も止んでいた。絵を描いたら不思議と落ち着き、トラウマは消えはしないが洞窟にまた帰って行った。トラウマとは一生付き合っていかなきゃいけないし目前の問題もある。目を伏せないで対峙したい。


3月9日(金) 曇り
ようやく金曜日。はぁ。風は吹いていたが雨は止んでいてほっとした。サイは熱はないが食欲もりもりではなさそうだった。またバナナを食べて、あとパイの実をひとつずつ食べた。「これはなんっていうの?」と聞かれたので「パイの実っていうんだよ」と答えると不思議そうにしていた。出発すると風が吹き荒れていたのでサイは「きもちいいーー!」と言い、「もっとスピードやって!」と早く走るよう急かされる。歩行者がいて危なかったのであまり飛ばせず「スピード足りないねぇ」と弁明した。何もない広い道で二人でびゅーんと走りたいな。三年前自転車に全く乗れなかった(これを言うと誰にでも驚かれ笑われる)私が言う台詞とは思えない。人は何が起こるか分からない。

出社直後、いつもパンをくれる美人社員(パン美人とは別の人、ややこしいので今後名前を「美人のうーさん」としよう)がまたパンをくれる。私がパンが好きだと知ってからずっとくれるが、こちらはなかなかパン屋に行けないので何も返せない。さすがに一方的にいただきすぎなので今度可愛いお菓子でも買って渡そう。こういう見返りを求めないというか、打算なく気の利いたことをする人ってそれだけで美人だなって思う。仕事もできるし。うーさんに私が反発した挙句に上司から脅迫まがいを受けて最後は屈した制度の話(先週の日記参照)をすると、うーさんもよく思っていないようで未だ応じてないとのこと。脅迫されて結局やったんですよと言うとパワハラ案件だと一緒に怒ってくれた。自分は間違っていなかったと抱き締められた気持ちになって泣きそうになった。ありがとう、うーさん。かっこいいし美人だ。しかも私がその制度で悩んでいると聞きつけて飲みに行こうと誘ってくれた。ラインも教えてくれた。好きすぎて自分から誘えなかったから嬉しくてドキドキしている。パン美人も一緒に飲みに行くことになった。嬉し。二人とも顔は綺麗で中身は男前だ。付き合いたい。男前な女性が私は好きらしい。

夜、お迎え。サイは熱も上がらなかったとのこと、よかった。サイはトイレに行ったりして出るまでに時間がかかっていたので、いつもは会わないサイと仲の良いKくんとお迎えのタイミングが合った。Kくんのお母さんは嫌味な感じが一切なくとても気持ちがいい人だと思っている。豪快な感じというか枠に捉われずのびのび子育てされている感じがする。聞いたエピソードで一番面白かったのが、Kくんが一番最初に食べた食べ物が肉だったということ。離乳食を始める時は通常10倍粥から始めて擦った野菜やたんぱく質に移っていくのだが、お母さんはKくんにいきなり肉を食べさせたらしい。「なんか食べちゃったんですよね」と笑うお母さんが最高だなと思った。サイとKくんは保育園の初期メンバーというのか0歳の時からずっと一緒なので私はKくんが大きくなっているのを見る度に赤ちゃんのKくんを思い出して感慨深い。赤ちゃんの時他の誰よりも大きくて周りを驚かせたKくんは今やすっかりお兄さんとなり赤ちゃん気が抜けていた。「おにいさんだね~」と言うと、Kくんのお母さんが夏に二人目が生まれることを教えてくれてKくんは本当にお兄さんになると知った。サイと同じくらいの年齢の子がいる知り合いや友達から二人目が生まれた、生まれるという話を最近よく聞く。おめでたいと思うどこかで、自分にはもうない話なのでぐっとなる。サイも「サイくんのおうちにあかちゃんきてほしいの~」と最近たまに言う。どうすることもできないのでごめんねと思いながら黙ってしまう。

サイとKくんは保育園の入り口に置いてあるチラシを丸めてチャンバラ的な棒をそれぞれ作り、帰りに自転車に乗りながらお互いを空中で攻撃ごっこをしあったり奇声を発していた。Kくんの「ボタンをおしてください!」にサイが「はいっおしましたよ」と応答するなど二人の世界があって面白かった。
一週間の疲れが溜まっていたのか帰宅後サイはグズり夕食が作れなかったので冷凍パスタで済ます。入浴後、就寝。


3月10日(土)曇り時々晴れ
ゆっくり起きて朝ごはん。洗濯。サイがまだ咳をしていたのでいつも行く「やさしいせんせい」の小児科へ。木曜日に行った別の病院の診断が不安だったので念のため。待合室で数冊トーマスの本を読み聞かせた。テレビ版のトーマスの写真(今のCGでなく模型時代の)が挿絵になっているのだが、トーマス達の苦悶に満ちた表情が奇妙でサイと笑った。いつも思うがトーマスってけっこう彫深くて怖い顔立ちをしている。夜中に見たら絶対怖いやつ。「やさしいせんせい」に診察してもらうと私が安心した。サイはいつものように固まっていた。体重計に乗るだけで注射かと恐れていたサイに先生は「あら、だいじょうぶよ」と優しく言った。別の病院とは全然違う薬を出してもらう。

そのままお昼になったのですきやで私は牛丼小、サイはお子さま鶏そぼろ丼を食べた。隣のテーブルにいた大学の先輩後輩と思わしき男子二人組が「春休み終わっちゃうけど何もしてねぇ…勉強とか」「勉強なんかしなくていいよ、○○ちゃんとすごせば?」「あいつは今頃セブ島っすね」という会話をしていて、突然の「あいつは今頃セブ島っすね」という台詞が何かいいなと思って私は脳内で何度も反芻した。セブ島ってどこだったけ。そらからスーパーに行き、サイがいつも買う「めばえ」がなくプリキュアの付録がついている「おともだち」を欲しがったので買う。680円もした。それからTUTAYAに寄ってサイと私が観たい映画を5枚ほど借りた。帰ったらどっと疲れが押し寄せて一刻も早く昼寝したかったが「おともだち」の付録を作らされる。「めばえ」より台紙から外しにくかったり組立てにくく苦戦した(一誌で決めつけるのも何だが、厚紙のミシン線の入れ方など講談社より小学館の方が付録設計が優れている)。さすがに全部の付録は勘弁と思ったので途中で「布団でその本みようよ」と提案して寝室に行き、私はとりあえず横になった。講談社批判をしているわけでないが「おともだち」は誌面もごちゃごちゃしていて色遣いも派手で情報量が多すぎて頭痛がした。サイもしばらくすると寝た。
昼寝後、サイとたこ焼きをつくる知育菓子(この商品すごい、味も本物に近いたこ焼きができる!)で遊び、映画『それゆけ!アンパンマン いのち星のドーリィ』観る。アンパンマンミュージアム10周年記念作品ということもあり、ここ数年の劇場版アンパンマンに比べ制作側も力が入っている気がした。最近のはどうか知らないが、原作もやなせたかしのものだし。素晴らしい映画だった。感想を別途まとめたい。夕食は二人共あまり食欲がなく野菜煮込みうどんで済ます。入浴後、就寝。私は深夜に起きて書き物をしていたら朝になった。


3月11日(日)曇り時々晴れ
朝ごはん、洗濯。あまり寝なかったために一気に体調を崩した。何か作業を始めると後のことを考えず没頭してしまうのは私の悪い癖だ。昼はマックやコンビニで適当に済ます。サイと室内ピクニックをした。それから
昼寝後、サイと「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード」を観る。面白いと聞いてからずっと気になっていて、サイが最近しんちゃんに興味を示しているので一緒に観ることにした。映画を観てこんなに笑ったのは初めてかもしれない。げらげらずっと笑いっぱなしだった。サイも笑っていた。奇想天外なストーリーや小ネタが最高で最後はしみじみとし、本当に観てよかった。サイは初めて長編映画を最後まで大人しく観た。子どもでも飽きさせないなんてすごい。集中して観すぎたせいで観終わると疲労感を感じた。また布団でいちゃいちゃだらだらした後、夕食。胸肉の漬け焼き、野菜の味噌汁、ごはん。味噌汁に味噌を入れ忘れたまま食卓に出してしまった。入浴後、就寝。体調が悪いのに眠れず夜更かししてしまう。

今日で東日本大震災から7年。被災していなくてもあの震災を通じて人生が変わった人はいるだろう。私もその一人かもしれない。明確ではないがあの日を境にガラガラ崩れていったものがあった。逆にこの震災があったことで何かを見つめ直し人生が良い方向に向かった人もいるかもしれない。何を思おうが、海に消えて亡くなったことすら証明されない方が大勢いて、7年経った今生活を繰り返す自分がいて、そういう事実をずっと忘れないだろう。『それゆけ!アンパンマン いのち星のドーリィ」』を観て改めてそう思った。

対バンに生まれて初めて行ったり実家の押入れの奥でもう外に出ることなく眠る雛人形の顔を思い出したり

2月26日(月)
朝。パン、ヨーグルト。サイを保育園に送った後、午前中会社を休んで整形外科へ。二つ隣駅の病院に行ったら新しいクリニックセンターみたいなところにあり耳鼻科や小児科も同じ敷地内にあった。クリニックセンターの隣に大きなスーパーもあり便利で住みやすそうな街だなと思った。小さな子ども連れのお母さんをたくさん見かけた。整形外科でレントゲンを撮った。自分の外見を見るのはぞっとするがレントゲン写真で身体の中を見るのは好きだ。できることなら全身レントゲンを撮ってじっくり観察してみたい。腫れていると言われたが痛みの原因は不明だった。それから平日昼間しかできないので、銀行と区役所をはしごして所用を済ます。午後の出社まで早足で歩き回っていると脚がまた痛くなった。

夜。お迎え。サイは珍しく帰宅して夕食前におやつを欲しがらなかった。煮込みうどん。サイはよく食べてくれた。褒めたらすごいでしょと自信満々だった。入浴後、就寝。脚が朝よりもずきずきと痛む。診察と痛みの箇所がずれているので何か別の病気ではないかと恐ろしくなる。

2月27日(火)
朝起きると脚はもうほとんど痛くなかった。なんだったのだろう。出張でいつもより早く家を出発しなければならかったがサイは頑張ってくれた。車内で『新潮』3月号のリレー日記を読む。作家の日記は面白い。リレー日記なので一週間ずつ別の人が書いている。それぞれの日記の内容は全然違うのに時間が繋がっていて続けて読んでも面白い。朝吹真理子さんのごはんが美味しそうだった。アボガド醤油漬けとしらすをごはんにのっけて食べるのとか、私も真似してみたい。ずっと下を向いて読んでいたら乗り物酔いをしたため、読むのを辞め着くまで窓の外を眺めていた。出張先は寒くて山の近くで身体が冷えたけど晴れていて空気がよかった。上司がおやつにスニッカーズをくれたので持って行った大福は食べなかった。私はスニッカーズみたいなぬちゃっとした歯に詰まりそうな食べ物が好きだ。

帰りの列車(個人主義者の集まりのため行き帰りも皆席は別。楽で良い。)に乗り込みワゴン販売で買った缶ビールを一口飲んだら安堵した。ふと時間を見て「あれっこれは間に合うんじゃ」とはっとした。どうせ出張で遅くなると言ってある。行くしか。行くと決めるとツイッターで今日の銀杏BOYZ大森靖子の対バンライブのチケットを譲ってくれる方を探して、駅から会場までダッシュして無事受け取った。ツイッターは嫌いだけどこういう時は便利だ。

ZeppTokyoに入るといつもと確実に違う空気だった。ぴりぴりしていた。大森さんより銀杏BOYZのTシャツを着た人が多い気がした。会場へ入ると更にぴりぴりで何だか気が引けたので会場一番後ろの壁の前で観ることにした。数時間前まで山でスニッカーズを食べていた自分がなぜ今ここに立っているのか不思議だった。

ライブは全てが美しすぎた。今回は感情を文字化するのが一番良いとは思えないので未だに感想を書けないでいる。一番印象に残ったのは峯田さんが歌った『ミッドナイト清純異性交遊』。大森さん以外の歌手がミッドナイトを歌うのを聴いたのは初めてだった。好きな人のことを歌った曲をずっと追いかけていた人が歌う、大森さんはこの光景をどんな顔で見ているだろうとずっと考えていた。「モリステ!」で大森さんがカラオケにこの曲が入った時、何度も何度も繰り返し歌っていた姿を思い出した。「2005年から2018年まで遠くはないのさ」と峯田さんは歌詞を変えて歌った時、高校生の大森さんが峯田さんに毎日「件名:大森靖子」のメールを送っていた時と数年後峯田さんが「大森靖子」という四文字を見つけてはっとした時と今この瞬間が全部線で結びついていた。美しかった。峯田さんを初めて見たどころか、峯田さんの歌を初めてちゃんと聴いた。ほとんど知らない曲だったがステージ上で飛び跳ねたりダイブする峯田さんと鳴り響く音と一体化したもはや別の生き物のようにうねる群衆を夢の中で見る光景のようにぼんやり眺めていた。峯田さんが曲の合間に方言混じりで話す一言一言が胸に刺さって愛おしく、大森さんやファンへの優しさが尋常でなく、え、こんな人間が世界に存在したの、峯田さんって一体何者なのとずっと戸惑っていた。これだけで判断すべきでないが、熱狂的なファンがいるというのにも頷ける気がする。サイには峯田さんみたいに育ってほしいなと唐突に思った。「いつか君たちが銀杏BOYZ大森靖子を忘れて聴かなくなっても大森靖子銀杏BOYZは今日の日のことを一生忘れない」と峯田さんは言った。

終演後、会場を出た所でビールを飲んでいたら知っている人に会ったので少し話した。居合わせた方と三人であれこれ話しながら帰った。帰宅してやや潰れた大福を食べてお風呂に入って寝た。後から今日行った出張先と峯田さんの出身県が同じだと知った。ここへ出張へ行くのは初めてだったし当分はないだろうから奇跡のような巡り合わせ。


2月28日(水)
朝。パン。会社の制度に従わず反発していたら叱られた。この歳になって「社会の規定に反するなんて許されない」と言われると思わなかった。夜も夜で嫌なことがあった。夕食は野菜とハムのオムレツ、コーンスープ、ごはん。入浴後、就寝。


3月1日(木)
朝。大雨。ダメな一日だった。ちょっとしたはずみで心がガラガラに崩れてしまって会社を一日休んだ。サイを保育園に送ってからその足でスーパーまで自転車を飛ばした。平日開店直後のスーパーにはほとんど人がいなかった。無の表情で何かをカゴに放り込んでいる老人達が将来の自分に見えた。サイの好きなめかじきと豚肉と新じゃがとしらすとミレービスケットを買った。嵐の後のような空は風が吹き荒れていて清々しかった。ミレービスケット一袋(500kcal)を一気に食べた後アイスを食べ、青空が見えてきたので洗濯をする。が、洗い終えたものを干すまでに3時間ぐらいかかった。それから録画したドラマを観て朝吹真理子さんの真似をしてアボガド醤油漬けしらすごはんをビールと共に食べポテトチップスを食べ、ぼーっとしていたら外が暗くなり慌ててお迎えに行った。時間がいっぱいあるのに食べること以外何もしなかった。部屋は散らかっている。保育園ですれ違ったお母さんに「お疲れ様です」と口々に言われ罪悪感を感じた。

帰りながらサイは私の好きな食べ物をひとつずつ声に出した。「ビールでしょアイスでしょももでしょ、あとなにかなー」「いかも好きだよ」「へぇ~いか~!」サイはこうやってデータ更新していく。夕食はめかじきのソテー、コーンスープ、ブロッコリー、ごはん。「もうサイくんおとなだからビールのみたい!」と泣き、宥めるのが大変だった。入浴後、サイと布団の上でごろごろして遊んだ。「ままのセーターきるー」とまたリボン柄の汚いTシャツを着て寝た。Tシャツのことをセーターだと思っているらしい。就寝。


3月2日(金)
朝。パンとヨーグルトとクロミちゃんのビスケット。スムーズに出発。天気がいい。
もう人間関係とかネットとか全部疲れてしまった。海辺の街で冷蔵庫をアイスとビールでいっぱいにして暮らしたい。時々浜辺を散歩して。


3月3日(土)晴れ
天気が良い。朝ごはん、洗濯のち簡単なお弁当を作り缶ビールを持ってサイと公園へ。100均で買ったクマや星の型でおにぎりを作ったら可愛くできた。こういう型は可愛いけどうまく使えないと思い込んでいたが、最近のは米粒がくっつかないようにされていてなかなかよくできている。お弁当を食べた後、サイと夏場は噴水になっている池が今は水が抜かれているのでそこに入って探検隊ごっこをした。凸凹したちょっと危なそうな岩や石に登るのがサイのマイブームのよう。転ばないかと冷や冷やするがサイは得意気に進んでいく。サイ隊長に着いて行く私。それから二人で滑り台をした。一度私の不注意で顔面をぶつけてからトラウマになってしまいやろうとしなかったが、「まえにかおがぶつかっちゃったよね」とまだ思い出しつつ滑る気になったよう。横長の滑り台なので手を繋いで滑ったら楽しかった。それから「サイくんがママのせなかおしたげる」と言われ、なぜか私だけ滑らされたりした。砂にサイが絵を描いている時、あまりの陽気で眠気が押し寄せてきて私は座ったまま寝ていた。それから二人でアイスを食べて薬局に寄って帰って昼寝。「ママねてたよね~」と、あとからサイに公園で寝ていたことを指摘された。夕食は肉じゃが。入浴後、就寝。

そうえいばひな祭りらしいことは何一つしなかった。スーパーの食材に「こういう風にパーティーで使えばいいよ」という楽しげなメニュー写真が載っている度にうっとなる。集まってひな祭りパーティーとかやる人もいるだろうが、想像しただけでぞっとする。自分が小さい頃に住んでいたマンションは新築だったので、同じ歳くらいの子どもがいる家族が何組もいて、毎年持ち回りの女の子がいる家庭主催でひな祭りパーティーが開催されていた。今思えば豪華なひな人形や凝った手料理、子どもに着せる着物、その全てが母親同士のマウンティングだった。恐ろしい。笑顔の集合写真の裏にあるぴりぴりした大人の何かを見る度に震えた。私にはそういう付き合いもなければママ友自体いないので心配無用だが、とにかくサイが男でよかったとほっとした。サイにコンビニでおひなさまの砂糖菓子がついたケーキをねだられたがあまり美味しそうでなかったので買わなかった。サイは保育園に飾ってあるひな人形をいつも気にしていて、一番下の段にある牛車や重箱などの小物を「これはおべんとうだね~」と蓋を開けようとしたり、「サイくんこれほしい~かって~」とねだっていた。おだいりさまと「おひめさま」と呼ぶ。実家の雛様達はどうなるのだろう。いつか捨てられるのだろうか。


3月4日(日)夏のような陽気
早起きしてサイと電車に乗り、川崎市市民ミュージアムで開催している「MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」へ。タイトルからして最高ではないか。移動時間が長かったのでぐずったが途中お菓子を買ったりして何とか到着。駅でMJ部(私が会社で勝手に結成した部。4年前、パルコで開催されていた「国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO」に行ったのが部の始まりだったのでMJ部と名付けたが別にMJに関係なく面白いことがあればお出かけする。活動は不定期。)のメンバーと合流。サイは久しぶりなので緊張していたがすぐに思い出し懐いていた。初夏のように気温が高い上にトークショー(観たかったがチケットは完売)があった関係で大混雑だったので激しい頭痛がして展示に集中できなかった。全部見るのは諦めた。特に幼少期や青年期の漫画やポエムなどの自主制作品が面白かったがとにかく展示量・情報量が多かった。観終わった後、みうらじゅんが好きなメンバーも「しばらくMJは見たくない」と感想を述べるほど皆憔悴していた。サイはポスターのMJを見て「○○せんせい!」と言い、確かに○○先生はMJに髪型が似ているので私はげらげら笑った。その後も「へんなおばさん!」と言ったり、まさか男性だとは思っていないようだった。MJは自分のことをおばさんだといつも言っているので本能かもしれない。サイは「てんぐレンジャー」のショーのVTRとスタンプに夢中になっていたが後は興味がなさそうだった。MJの原画に「おっぱいだ~!!」と喜んで手を触れそうになったので冷や冷やした。会場でも「ちんちん!」などと絶叫していたのでくすくす笑われていた。ミュージアムを出てからも大人達にオリジナルの意味不明なクイズを披露したりしてテンションが高くずっと興奮状態だったサイは帰りの電車では電池切れとなりぱったり眠った。
帰宅後、夕食。入浴後、就寝。「楽しかったね」と言い合って寝た。珍しく夜泣きをしたので昼間刺激を受けすぎたのかもしれない。

ぽかぽか春の陽気が感じられる週末だった。でもまたぐんと寒くなるらしい。冬は終わっていない。人生のようだ。がんばらないと。