カニ日記

息子の成長と日々の記録

プラスチックの真珠 もうすぐ夏

しばらく日記をつけるのを辞めていた。なんとなく書く気になれなかった。その間、希望が見えたりまた隠れたり。思うようにいかない。

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5月19日(土)
朝から気の進まないことを長時間やり、精神的にも体力的にもくたくたになる。サイも頑張った。でも希望が見えなかった。どうしてこんなに不公平なのだろうか。普通に生きたいだけなのに。家に帰ると二人とも靴下の裏が真っ黒だった。疲れていたけど家の片づけを頑張って晩御飯を作った。偉いではないか。


5月20日(日)
昼前、サイと図書館へ。途中でスーパーに寄りそれぞれ食べたいものを調達。巻き寿司とメンチカツとビール。あと、サイが海老の天ぷらを食べたいと言うのでそれも買った。図書館の隣の広い公園で食べることにする。家の近くにも公園があるがそこは休日になると大混雑しているので落ち着かない。この広い公園は家からちょっと遠いが緑が生い茂った大きな木がいっぱいで道路から一段下がっているので走り回っても飛び出す心配がない。図書館の駐輪場に自転車を停めていると大きなカラスがいた。他の自転車に乗ってじっとこちらを見ていた。二人でびくびくしていたら守衛のおじさんが「食べ物を置いてると狙われますよ」と言われた。なるほど。サイとベンチで買ったものを食べるもサイは途中で「カラスをやっつけてくる」と言い残してどこかへ走って行った。行った方角を見つめているとすぐに戻って来た。最近レンジャーの影響ですぐ戦いポーズを取りたがるし実際私に攻撃してくることもある。顔面ヒットすることも稀でなく、鼻がへし折られるかと思うほど痛い。「痛い」と言っても罪の意識がないのか謝ってくれない。人を傷付けるのはよくないと教えたいが、なかなか難しい。

その後しばらく外で遊び、図書館へ。サイが紙芝居を読んでくれる。字の読めないサイは紙芝居の台詞の横に描いてある絵(聞く側が見ている絵と同じ)を見て話を創作する。なかなか面白い。それから図書館にある大量のぬいぐるみとままごとセットで遊びだした。晩餐会みたいで面白かった。ままごとしていたらお腹が空いたのか何か食べたいと言ったので図書館のカフェでケーキをテイクアウトし再び公園へ。芝生に並んで座ってサイはショートケーキ、私はチョコレートケーキを食べた。美味しいね、と言い合った。芝生の上でケーキを食べるっていいなと思った。食べ終わったら再び遊ぶ。ブランコをしたり滑り台をしたり草の中に入って探検隊ごっこをした。子ども達を遊ばせて親は離れて優雅におしゃべりみたいなママ友同士の人達がいたが、こちらは二人なので私は必然的に遊び要員となる。遊具で遊ぶし滑り台だって滑る。隙をみて休んでいると「こっちきてよ!すべろうよ!」と怒られる。なかなか疲れる。日光に当たり続けてバテてきたため、もっと遊びたいと言うサイを説得して夕方帰宅。それから昼寝。

サイがテレビの前のローテーブルで夕食を食べたいというのでそこで並んで食べた。夕食後、公園に連れていったメロンパンナのぬいぐるみ(通称:あちゃ)が酷く汚れていたので風呂場で洗う。みるみる綺麗になる。さすが「ウタマロ」。ウタマロはいつだったかアメトーーークの家事大好き芸人で某芸人さんが紹介していて試しに買ってみたら本当によく落ちる。何の汚れでも落ちる。あまりにも色が変わったのでサイは「ちがうあちゃになった」と悲しそうに戸惑っていた。だからドライヤーで乾かす時になるべく元の形から変わらないように気を付けた。自分達も入浴後して就寝。


5月21日(月)晴れ
朝。5時過ぎに起きたがサイは昨日遊び過ぎたのかなかなか起きてくれず、起こすのが出発直前になる。その瞬間全部を諦めてしまって上司に午前休の連絡をする。まだ3歳なのに親の都合で毎日急かされるのが可哀相だとつい思ってしまう。私が休みを取るだけで全てが平穏になるなら別にそれでいいかと思ってしまう。時間に余裕がないと私もイライラしてしまいサイもそれを感じ取る。そんなことで争いたくない。

せっかく休みを取ったのでサイを保育園に送ってから映画館に行き、人に勧めてもらってずっと気になっていた『君の名前で僕を呼んで』を観る。CMなしだとは知らず、最初の5分くらいを観逃す。ほとんどレビューやあらすじを読まずに観たがかえってそれがよかった。この美しさに匹敵する恋愛映画は『小さな恋のメロディ』くらいしか思い浮かばない。イタリア避暑地の眩しい緑、絵に描いたような庭での朝食、そこで食べ飲みながら談笑する人々、乾いた風を切りながら走る自転車、短パンから伸びる美しい脚、そこにある全てがただただ美しかった。もはやユートピアにすら感じ、観るというよりスクリーンの世界にどっぷりと浸るような心地よさがあった。だからこそ胸に迫るラストの静寂と冷ややかさ。ラストシーンがこんなに美しい映画は今まで観たことがない気がする。同性愛の話だが、それをテーマとして取り立てるのはどうかと思うほど、ただ人と人が愛し合うことについて宗教画のように描かれていた。あまりにも美しく切り取られ過ぎて感情移入しにくかったが、そもそも共感を得るために映画を観るわけではない。美しい風景や自然に出会った時と同じような気持ちになった。良い悪いでなく、ただ目の前の光景に圧倒されるような。しかし同じ人間なのに映画の世界と私のいる世界はなぜこれほどまで違うのだろうか、時代と国でそんなに変わるものだろうか、と喧噪の中を歩きながらある種の寂しさも感じた。出社前にルミネに寄り気に入ったイヤリングを3つ買った。クマと魚と定規の形。クマは耳より大きくてつけるとずっしりしたが可愛かった。そろそろピアスが開けたいな。

午後から出社。夕方、お迎え。サイは一日熱があったとのこと。そうとは知らず…。額が少し熱かったが園庭で元気に走り回っていた。サイの希望でまたローテーブルで食べた。いつもよりは食べず、二人で食後にアイスを食べた。美味しいねって昨日と同じように言い合った。それから二人で日曜日のプリキュアを観てから寝た。ほまれちゃんみたいな髪型にしたいな。サイはリアルタイムでも観ていたので「キュアエトワールが…」とネタバレしつつ得意気に解説してくれた。「メロディソード」という人を傷つけない音楽を奏でる武器をサイは欲しがっていたが私の方が欲しくなった。なんなら鞄に忍ばせて出勤したい。嫌な奴が現れたらこっそりメロディソードを向ける。プリキュアの主題歌も良い。CD欲しい。最近プリキュアが分かってきた。サイと一緒にいると自分一人では知ることさえなかったであろう新しい世界に触れられる。子どもがいてよかったと一番思うこと。サイは私の宇宙柄の靴下を見て「サイくんもおかあちゃんみたいなうちゅうのくつしたがほしい」と言っていた。キュウレンジャーがきっかけで最近宇宙に興味がある。サイはプリキュアと共にキュウレンジャー(ルパンレンジャーも)が好きだが、キュウレンジャーはもう放送終了しているので観たことがない。保育園でKくんから聞いたようなことを言っていた。


5月22日(火)晴れ
早起きして布団の中で考え事をしたり宇宙柄の子供用靴下を探していた。サイは横で寝ている。そろそろ起こそうかと思ったらパチッと目が開いて「さぁ、おきるよ!」と言われる。早く寝かせてよかった。すっかり元気そうだった。ユニクロで気に入って買った赤いワンピースを着て「これ可愛い?お仕事に着て行っていいと思う?」と思ったまま聞いたら「うん、かわいい。いいとおもうよ。でもおかあちゃんのおともだちにおはながへんだねっていわれるかもしれないよ」と具体的(?)な意見をくれる。確かに小さな花柄だった。本当によく見ている。というか職場で友達と過ごしていると思われているのだろうか。でも保育園しか外の世界を知らないサイの「同じ空間にいる人=園児=お友達(先生がそう呼ぶ)」という思考は納得できる。そういう細かな発言一つ一つが面白くて笑える。サイのおかげで私は笑っていられる。

退社後、お迎え。サイは昨日も一緒にじゃれていたHくんとまた園庭で走り回る。やっとのことで駐輪場に連れて行っても二人ともなかなか自転車に乗らない。追いかけ合ったりつつき合ったり。昨日とほとんど同じ光景。Hくんのお父さんはHくんには話しかけるが私とサイにはあまり話しかけてこない。聞こえる声で「ほら、H!サイくんが帰れないだろう」などと言う。でも私が二人に「ほら行こうよ」と促したりしているとさすがに「すみません」と一瞬私に話しかけてくれた。私も他の子の親にはほとんど話しかけないのでぎこちない空気が流れた。でもサイとHくんは動物園の猿のようにはしゃいでいて。私達と子ども達の間に温度差があり不思議な時間だった。Hくんのお母さんを一度も見たことがない。サイに「Hくんのお母さん見たことある?」と聞いてみたがよく分からなかった。なぜ知りたいのか自分でも分からないが、この保育園の親は両親共に仲良しです平和です家族ですみたいなオーラを醸し出す人ばかりで善良たる家庭の雰囲気に辟易していたからかもしれない。いやそれが一番いいのだろうが私には遠すぎる世界。

ごはんがなかったのでパスタにカレーをかけて食べた。サイは茄子(ほとんど溶けて小さくなっているのに)を嫌がって私に渡してくる。茄子ぐらい食べなくても別に大丈夫だと私は思っているので「嫌なら食べなくていいよ」「おかあちゃんも子どもの時茄子嫌いだったし」と言うとサイはへぇという顔をした。自分の親が食事のマナーに行き過ぎたほど厳しく食事自体が苦痛だった経験から、サイにはそう感じさせたくない。食後に二人でアイス。サイは得意気に冷凍庫からアイスを二つ持って来てくれた。「あまくておいしいね~」と幸せそうにしていた。ふと「サイくんは大きくなたら何になりたいの?」と聞いてみたら少し考えた後、「おかあちゃんみたいにおしごとしたい」と言い、私はサイに隠れてこっそり泣いた。働いていてよかったなと初めて感じた。お尻を振って踊っていたら「なにやってんの?おもしろいじゃん」と高評価(?)をいただく。アンパンマンの曲をかけて今度は二人で歌いながら踊った。私は家に居る時は大体ビールを飲んでいるか踊っている。とサイに思われていると自覚している。サイが保育園で描いた絵を褒めたらアンパンマン号を描いて見せてくれ、それと分かるように描かれていたのでいつの間にこんなに描けるようになったのだろうと感心した。

入浴後、就寝。サイが寝たら部屋の片づけと洗濯をしようと思っていたのに一緒朝まで寝てしまう。


5月23日(水)曇り時々雨
5時代に起床。でもサイはなかなか起きない。パンを食べてくれないのでコーンフレークにしたら喜んでくれた。バタバタ出発。通勤電車でプリキュアのテーマ曲を購入。蒸し風呂状態の満員電車で聴くプリキュアよ。二日酔いの人がいたのか車内は酒臭かった。

午前中、仕事で板挟み。今まで自分でやってきたことを他部署に依頼することになったが細かい理不尽な要望が多くしかも一度に言ってくれないため一人でやっていた時より何倍も手間がかかる。うんざり。昼休み、隠れ家にしている工事中の誰もいないフロアでお気に入りの動画で現実逃避する。そのフロアに入ろうとしたら知っている人が入れ替わりで出てきて「あっ」という顔をした後「やっぱここに来るよね…」と言われる。引っ越ししてからフロアあたりの人口密度が高くなり息苦しい。工事中のフロアは雑然としているが人がいないので落ち着く。午後からまた色々とうんざりし、一仕事終えて外階段の冷えた白壁にヤモリのようにへばりついて心を静めていたら上層部の一人に出くわし気まずい空気が流れる。

お迎え。会社から出た時点で雨が降り始め、保育園を出る頃には本格的に降っていた。私は出かける前に天気予報を見るという普通の人がやっていることが昔からどうしてもできない。それで何度も雨に降られている。被るものもないのでそのまま自転車を漕ぐ。顔が濡れて目に雨が入って痛い。髪から滴り落ちる水滴。不快だったがこれはシャワーだと思おうと決めると急に気持ち良く感じてきた。学校のプールの時間の最後に浴びるような冷たいシャワー。信号待ちの時にサイは大丈夫かなとぱっと無言で後ろを振り向いた瞬間、サイは「大丈夫」と言う代わりに、にーっと歯を剥き出して目を細めて笑ってくれた。か、かわいい!幸い、私が壁になり後ろのサイはほとんど濡れていなかった。よかった。

帰宅してタオルで拭く。私が濡れている様子を見て笑ってくれた。なんでも笑いたいよね。夕食前にサイはコーンフレークを2杯食べた。アスパラをほんの少しでいいから食べてくれと懇願してみたが、叶わず。全力拒否。好きなものだけ食べてご馳走様。サイは冷凍庫を漁っていたがアイスがないと知ると551がない時(関西限定ネタ)のように悲しむ。「アイスがないよなんで?」「サイくんとおかあちゃんが全部食べたからだよ」「えー」「また買いに行こうよ」「うん、どこにうってるかな」「コンビニにあるよ、どんなのにしようかねぇ」入浴後、就寝。


5月24日(木)曇り
今日は記念すべき日だ。なぜかというとサイがコーンフレークの残った牛乳の美味しさを発見した日だから。私が美味しそうに飲んでいるのを見て、食べ終わった後の牛乳がどうやら普通の牛乳と違って旨いらしいと初めて気づいたらしい。昨日までは気付いていなかったようで。真似して飲んでみて「なんかちがう」と嬉しそうな顔をした。それで残った牛乳飲みたさに何度もコーンフレークおかわりして好物のバナナを食べなかったほどだった。私はコーンフレークが牛乳に浸る前、まだパリパリの時に食べてしまうのが好きなのだが、どうしても救出しきれなかったコーンフレークが皿の底に沈んでいるのをいつも最後に発見する。そのへらへら達を子どもの時は妙に愛おしく感じていた。もう家族が食べ終わった食卓で一人になり、ぬるくて甘い湖の底から引き揚げられた瀕死のコーンフレークをそっとスプーンで掬って持ち上げて観察していた。バタバタと出発。

昼。また工事中のフロアで逃避。がらーんとしたフロアに自分以外誰もいないのが最高だ。別の階にはぎゅうぎゅうに人が詰まっていると思うとその落差に一人嬉しくなる。東京は土地に対して人が多すぎる。だからみんな殺伐としてしまうのでは、と先日北海道旅行に行った時に感じた。

初夏の夕方が好きだ。どうしようもなく。夕飯どうしようと思い冷蔵庫を開けると豚肉玉ねぎきのこがあったので、ビールを飲みつつ大森さんの公式ラインから作り方が送られてきた「大森靖子豚丼」を作ってみる。最近夕飯を作りながらビールを飲むのが日常化してしまっている。顔が丸くなった気がするので、糖質怖いと思いつつ帰宅したら暑すぎて辞められない。レシピに書いてある「かちこむ」っていいなと思った。えいやって勢いよく投入する感じ、それであっているのだろうか。変に丁寧な表現で書かれている料理本より分かり易くて楽しい。簡単で美味かった。サイは肉が嫌なのかあまり食べてくれなかった。作り過ぎたので残りはお弁当用に取って冷蔵庫へ。サイとお風呂に入って寝る。また朝までぐっすり。


5月25日(金)曇り
起床時間よりかなり早く目が覚めた時、何にか分からないが勝ったような気持ちで二度寝する。二度寝前にサイも起きて「おちゃのみたい」と言われたので飲ませて「まだ時間あるから寝ようよ~」と言うとすんなり寝てくれ、それから二人でまた寝る。やや寝坊。超特急で準備して出発。サイはぐずりつつもコーンフレークとあんぱんとバナナと牛乳を平らげた。バタバタ出発。

夜。ロイヤルホストでずっと食べたかったさくらんぼのブリュレを食べた。こんなこと言ってはいけないかもしれないが、アサコイワヤナギのパフェに匹敵する美味しさだった。ロイヤルホストの空間が好きだ。知らない人が鉄板の上でじゅうじゅうに焼けた肉など口に運んでいる様子が目の端に見えて、でも私的領域は侵されない絶妙な距離感が心地良い。


5月26日(土)晴れ
朝ごはん、洗濯。昼前、サイを後ろに乗せ自転車を走らせて好きな場所に紫陽花を見に行く。いつもは人がいないのに、良いカメラを持った人が何人かいた。くすんだ青やピンク、曇り空が似合う紫陽花の色が好きだ。何と言う品種だろうか、まとまりではなく小さい花がぽつぽつと線香花火のように咲いている紫陽花とか本当に可愛い。自転車を停め、サイに紫陽花の前に立つように言いカメラを構えるとやや恥ずかしそうにしながらもうさちゃんピースしてくれた。カメラを持ち出すのが面倒でいつもスマホばかりだが、ちゃんと撮るとなかなか良い写真が撮れた。写真を撮るのが好きだ。昔はフィルムでも撮っていた。でも中途半端に辞めてしまったので「写真が好きです」と声を大にしては言えない。「綺麗だね、可愛いね」「白い紫陽花もあるんだね~」「すごいねぇ」とサイと言い合った。花はいい。いつだって。

それからサイとの約束通りTSUTAYAでルパンレンジャーのガチャガチャをした後、モスバーガーでお昼を食べた。私は海老天のライスバーガーにした。美味しかった。サイはナゲットセットにしたがサイの好きなマクドナルドの味と違うからか一つか二つしか食べなかった。それから公園に行きサイにねだられてアイスを食べ、ぶらんこをしたりじゃぶじゃぶ池で遊んだり。地面に蟻がたくさんいて蟻の巣があるようだったので、「ここにお家があるから蟻さんがいっぱいいるんだよ」とサイに教えるとしゃがんで興味深そうに観察していた。「ありさんなにしてるの?」「ご飯をお家に運んでるんだよ」「なんで?」「中にお友達がいるから届けるの」「へぇ」「お仕事してるんだよ偉いよねぇ」「うん」「サイくんもありさんのおうちはいりたい…」「えっ中に入りたいの?」「うん」「サイくん大きいからちょっと難しいかな…」「えぇーあかちゃんだったらはいれたかな」「うーん」という会話をした。大人になるとどうしても叶わないことが否応にも増えてくる。サイはまだたった3年と少ししか生きていない。まだまだ知らない世界がある。だから小さいうちは希望や夢はできる限り叶えてあげたいなと私はいつも考えている。でも蟻の巣には入れない。巨大な蟻の巣の模型を作るしかないか、うーん。

夜。サイが自ら納豆や巻きすを用意したので納豆巻を作った。ついでに飾り巻寿司(金太郎飴みたいなやつ)もやってみようかなと軽い気持ちで作り始めたら大失敗してというか途中で海苔が足りなくなりぐちゃぐちゃの残骸が残る。急に襲い掛かる疲労感。こんなことしなければよかった。結局パーツの残骸や納豆巻という謎の晩御飯。飾り巻寿司は軽い気持ちでは作れない、練習が要りそうだし手先が器用でない私には向いていないかもしれない、今日の学び。お花とか動物とか作れたら可愛いだろうなぁ。やけに身体が怠いと思ったら発熱していて夕食後動けなくなりサイと一緒に朝まで眠る。


5月27日(日)
朝。サイが楽しみにしているプリキュアとルパンレンジャーの日。そういえば最近アンパンマンは観なくなった。「アンパンマン観ようよ」と言っても断られる。少し寂しい。今日のプリキュア『哀しみのノイズ…さよならルールー…』はとてもよかった。プリキュアを毎回観ている分けではないが、前回から録画してちゃんと観るようにした。サイが好きなものには向き合おうと思っている。悪の組織(クライアス社)からスパイとして送り込まれていたルール―という少女の姿をしたアンドロイドがプリキュアを手助けするため敵を裏切ったことで回収されたのが前回まで。回収されたルールーはクライアス社の親玉の怒りを買い、記憶を書き換えられ戦闘用ロボットになった。スパイとはいえプリキュア達と仲良くしていて情が湧いていたその感情や記憶も消された。攻撃的なルール―に戸惑うプリキュアの三人。でもやっぱり心の奥底から完全に記憶は消えていなくて…。みたいな話。プリキュアの三人で推せる子がいないなぁと思っていたが私はルール―が一番好きだ。紫の猫耳ヘアーに流し目というビジュアルも可愛い。戦いながら三人を騙していたことを悲しそうに告白するルールーに対しキュアエールが毅然として「騙されたと思ってないよ」と返すシーンが良かった。あと最後は二人が武器を使わず殴り合いで戦っていたのも身体のぶつかり合いという感じでよかった。ルールーはアンドロイドなのに一番人間的に葛藤するキャラクターとして描かれているのがいい。善と悪の間で揺れる彼女を見ていると泣きそうになった。

昼食を食べてサイと昼寝。開け放った窓から海底のような竜宮城のような謎の音がぽわわーんと小さく聴こえてきて心地良かった。風でカーテンが揺れていて。夕方、サイとスーパーに自転車を走らせる。信号待ちの数秒の瞬間、信号の側の広場にあるスピーカーから『さっちゃんのセクシーカレー』が聴こえてきた。広場で有線がかかっていること自体ほとんど意識したことがなかった。サイといた時に好きな人の音楽が街で流れていて。夕暮れの風が吹いていて。それから信号が青になり自転車を走らせて。言葉にすると上手く伝えられないがあらゆるタイミングがふわっと抱き合った瞬間だった。その重なり合いが嬉しくて少し泣いた。サイとスーパーでアイスを買おうと約束していたのに忘れてしまいコンビニに寄り箱アイスを買って帰宅。

コーンフレークの残った牛乳の甘さを発見したり、美しい映画に心奪われたり、紫陽花を観察したり、好きな音楽に街で出会ったり、それは人生の終わりまでにいつか輪郭が溶けて消えてしまう小さな出来事かもしれない。でも鮮やかな幸せが散りばめられた週だった。小学1年生の時、それが初恋かどうかさえ分からないが特別な想いを抱いていた6年生の男の子に修学旅行のお土産として偽物の真珠をもらい、勉強机の誰にも見つからない場所に入れて時々取り出しては眺めていた。大人になって上京した後、知らぬ間に机ごと捨てられたと知りひどく落ち込んだ。当たり前だが大切なものは大切にしなくてはいけない。失われたプラスチックの真珠みたいに愛おしい瞬間を見逃してしまわないよう、私は私の眼で世界を見ることをこれからも辞めないぞと誓った。もうすぐ夏がくる。

ピンクの海

4月23日(月)晴れ

朝。サイがなかなか起きてくれず出発30分前起床。最近眠くて起きるのを渋る時に「きょうほいくえんおやすみ?」と聞いてくる。土日は「うん休みだよ、あそぼう~!!」「ぃやったーーー!!!」となるのだが、平日は「休みじゃないよ…おかあちゃんもお仕事だよ…」「えぇー」「でもいかなきゃね…」とお互い暗くなる。3歳児なりに色々大変なのだろう。サイはパンを食べずキウイとヨーグルト。

昼。パン美人と食べる。ラインスタンプの話。パン美人はラインスタンプが購入できることを知らなかったらしい。そんなにラインをする相手がいないのに私は気に入ったスタンプを見つけるとつい買ってしまう。最新のお気に入りは大橋裕之さんのスタンプ。多分小学生の時に雑貨屋でシールを買っていた感覚と変わらないのかもしれない。パン美人に「私にはスタンプ送ってくれないですよね」と寂しそうに言われたので「人に応じて使ったり使わなかったりです、送ってこない人にはあまり送らないですね」と説明した後シール帳を見せるように今まで購入したスタンプを見せた。二人で色々なクリエーターズスタンプを見ていたら、「うみさんもラインスタンプ作ったら?」と提案される。需要があるものを作れるか分からないが確かに面白そうだなと思った。

夜。残業。サイは食べたいと騒いで回転寿司を食べたらしい。私も食べて帰った。春の夜の空気が好きだ。電車の中で安達哲バカ姉弟』第一巻を読み終える。人におすすめしてもらったこの漫画がどうしようもないくらい好きだ。こんな漫画を今まで知らなかったなんて何をしていたのだろうという気持ち。姉弟も周りの人達も出てくる人物が皆愛おしいし、細かい描写に苦しくなったり嬉しくなったり。


4月24日(火)曇り
朝。サイはまだ眠かったようで機嫌が悪い。パンを食べるか聞くと「そのパンきらい!たべない」、キウイを食べるか聞くと「いらない!」。「じゃあ何食べたい?何でも食べたいものでいいよ」と言うと「これたべる!」と半ばムキになって冷蔵庫の野菜室から長ネギを取り出す。サイは怒れる戦士という感じでネギを片手で握りしめて立っていた。私はその姿が可笑しくて半分笑いながら「それ食べたいの?そのまま食べたら苦いよ、苦くてもいいなら食べてみたら?」と言うと本当はネギが嫌いなのですぐに冷蔵庫に戻す。結局ヨーグルトを食べたいと言い、私も食べたいので二つテーブルに持って行ってもらう。突然「えーんつめたーい」と騒ぐので何かと思ったらサイはヨーグルトのフタを開ける時に勢い余りすぎてヨーグルトが足やお腹にかかったらしい。「あぁーこんなにこぼれてる!」と私が拭きながら笑うとサイも可笑しかったのか笑い出し、急に機嫌が良くなった。それでも私が一口食べると「これサイくんの!」と私の分を奪って二つを交互に食べ始める。こんなことで争って出発が遅れたら困るので、まぁいいやと思ってサイにあげる。途中で「あー食べたいなーヨーグルト」と言うと急に「はーい」と言い二つのスプーンでヨーグルトを口に入れてくれる。ツンデレ。バタバタと出発。

保育園に行くと玄関に新しい水槽があり、なんとうーぱーちゃんがいた。いや死んでしまったうーぱーちゃんよりずっと小さい。別の子だ。メダカの水槽も新調されていたので、新年度で経費ができて購入したのだろうという大人の推測は置いておき、うーぱーちゃんの生まれ変わりだと思うことにする。サイは前のうーぱーちゃんに愛着があったのかあまり興味を示していなかった。確かに前の子の方が愛嬌のある顔をしていた。いや、そんな見方をしてはいけない。

夜。スーパーに寄る。サイはルパンレンジャーのソーセージを欲しがったが、お菓子も欲しいというので「どっちか一つだけだよ」と言うとソーセージを諦めた。それから箱アイスを買った。冷蔵庫にあった挽肉で何かしようと思っていたらお惣菜コーナーの唐揚げを食べたがったので一人2個ずつ4個買った。帰宅してアイスを食べたいと言われたが夕食後にしようと提案すると納得した替わりに朝食用のパンを食べた。サイがやりたいと言い唐揚げをトースターで温めてくれた。お皿に盛るのもやりたいというのでやらせたらなぜか私が1個でサイが3個。「だめだよー2個ずつだよー」と言うと怒り出す。苦手な野菜をいつもよりちゃんと食べてるなと思っていたら食べ終わった瞬間、文句は言わせないという表情で「アイスたべる!」宣言。もう頭がアイスでいっぱいだったらしい。約束通り渡す。初めて買ったアイスだったので、これ美味しいねと言い合いながら食べた。「サイくんとおかあちゃんどっちの方がアイス好きかな~おかあちゃんかな」と言うと「サイくん!」とキレ気味に主張されたので「そうだね…サイくんの方がアイス好きだよね」と言ったら「だろ?よく分かってるなお前」という顔をしていた。無意識に食べていたら「おかあちゃん!あいすたべるのはやすぎ!」と注意を受けた。
それから使わなかった挽肉をお弁当用のそぼろにしていると興味津々で近づいてきた。やりたいと言われたがフライパンで火傷すると危ないので説得。

夕食後、プラレールの線路を作りたいと言われ一緒に作る。サイは線路で電車を走らせることより、線路自体を組立てることが好きらしい。そういうの何鉄というのだろうか。規定の形にせず無理矢理つなげようとするのでレールが綺麗に続かず接続部分がうまく噛み合わないので機嫌が悪くなる。時々誘導して手伝い、何とか完成したら喜んでいた。でも電車は走らせない。お風呂で水鉄砲をしてから就寝。床に放置された線路やサイが撒いたビーズが散乱した部屋を片付ける気力がなかった。夜は目がよく見えない(老化?年々見えなくなる)ので片付けのモチベーションが一気に下がる。


4月25日(水)雨時々曇り
朝から気分が悪かった。雨だからというのもあるがそれだけではない。後で読み返すときっと嫌になるので嫌なことはここには書かない。最近好きなこぶしファクトリーを聴いて気分を上げて出勤。こぶしファクトリー、どんどん好きになってきた。道重さんのサントラも大森さんのKAT-TUN提供曲も聴きたいのにまだ取り込めていない。取り込むのが面倒だとしてもやっぱりCDっていいなと思う。本もそうだし、目に見えて触れられるものが私は好きなのかもしれない。
昼休みに『バカ姉弟』第三巻まで読了。あぁ本当に好きだ。

夜。自転車の鍵を家に忘れて一旦帰宅してまた電車に乗って駐輪場に行くなどしていたらお迎えが最後になる。サイはいつもの教室ではなく、最終部屋(と私が勝手に呼んでいる)である事務室の椅子で大人しく絵本を読んでいた。コンビニに寄りチロルチョコと鮭とハンバーグ。今日も食後にアイス。アイスがあるとサイは野菜を残さないがその方法が正しいか分からない。夕食後、サイが観たいと言い、誰かが撮影したキューレンジャーのヒーローショーのYou tube動画をテレビで観る。もし知ると移動中もずっとはまりそうで怖いので、スマホでは動画は観られないと普段サイにはごまかしつつ言い聞かせていて、その代わりに家ではわりと自由に観せるようにしている。サイは今やっているルパンvsパトレンジャーよりキューレンジャーの方が好きらしい。私もそうかもしれない。キューレンジャーは宇宙と星座がモチーフなのがいい。またお風呂で水鉄砲。動画を観た影響でサイはレンジャーになりきっていた。入浴後、布団の上で幼児雑誌を少し読んで就寝。プリキュアの自己紹介台詞がアイドルっぽくて面白かったのでプリキュアになりきってやや高めの声で読んだら「…おかあちゃんのこえすごいかわいいね」と褒められて何回もやらされた。私は昔から自分の低い声が吐きそうになるくらい嫌いで、それが原因で人前で話したり歌ったりするのが億劫になるほどだったので子どもとはいえ褒められると驚く。実際に可愛いわけはないが、サイはいつもかわいいと言ってくれるので救われる。褒められて嫌な気分になる人はいないはずなので、世の中の人はたとえそれが過剰でももっと他人を積極的に褒めるといいのではないかと最近思っていて、私も良いなと思ったら何でも相手に伝えるようにしている。サイに学ばされている。


4月26日(木)晴れ
朝。久々に快晴。空港の夢。空港での手続きにいつも不安を抱いているため空港で飛行機に乗るまでの夢をよく見る。バタバタと出発。

夜。疲れたのでサイとファミレスで食べる。サイに何が食べたいか聞いたら「アイス!」と言われたのでファミレスならあるだろうと思って行った。サイはお子様うどんセット、私は薄切りステーキとビール。左隣のテーブルは真面目そうな高校生くらいの男の子が一人でドリアを食べていた。ドリアがくるとスマホで撮影していた。SNSに上げるのだろうか。右隣は母一人子二人の家族で、注文を済ませた途端母親はどこかへ去った。まもなくして料理が運ばれて来てまだ母親は帰って来なかったので子ども二人は黙々と料理を食べていた。その光景を見て『バカ姉弟』を思い出した。母親の料理も運ばれて来てしばらく経ってからようやく母親は戻って来た。もう二度と帰って来なかったらどうしようと勝手に不安になっていたのでほっとした。しかし途中で食事を辞めた娘を母親はものすごい剣幕で叱り始めてテーブルは暗いムードだった。「あなたは食べたくなくなったらすぐお腹痛いって言う!」などと聞こえた。その横で私とサイは運ばれてきたそれぞれの料理をけっこうなスピードで平らげていった。私はサイに食事中こんな風に叱ったことはないし苛立ったこともないから私が呑気なのかサイがいい子なのかもしれない。私達は大抵老夫婦みたいに黙々と食べている。

サイはうどんを食べ終えると自分のアイスが来ないことで「アイスまだかな~」と何度も落ち着かない様子だったので店員を呼び再度頼んだついでに自分の分のアイスも頼む。最初は分け合おうと思っていたが、待っている間にサイのアイスへの期待値が高まりすぎて分けてもらうのは難しそうだと判断したからだ。それでもなかなか来ないので二人で厨房を見つめていたら厨房のスタッフがだらだらと適当にアイスを作りながら雑談している様子が見えた。見なければよかったと思った。でもアイスはアイスである。やっと来たアイスを「おいしいね~」と言い合いながらそれぞれ一つずつ食べた。「おかあちゃんたべるのはやいよ」とまた言われた。サイも相当早かった。右隣のテーブルはまだ暗いムードだった。左隣の青年は黙々とチョコレートパフェを食べていた。ドリアとパフェって可愛いな。若い真面目そうな男の子が少し恥ずかしそうに甘いものを食べているのを見るとぐっとくる。全部食べ終えた私達は会計を済ませて店を出た。まだ叱られている右隣の子ども達がこちらを見ていた。

ルパンレンジャーのガチャガチャをやって帰宅。サイはピンクが当たって喜び、帰宅したら持っているイエローと比べていた。入浴後、就寝。寝る時もルパンレンジャーの乗り物を両手に握りしめて寝た。


4月27日(金)
体調不良で午前休。午後から出勤。


4月28日(土)
本気出してサイと二人で頑張った日。昼間は気を張っていたので夜はくたくたに疲れて動けなくなったが疲れたと言っている場合ではない。朝まで泥のように眠る。


4月29日(日)
断捨離と掃除洗濯。その他の記憶がない。


4月30日(月)
これからの生活に向け節約しなければいけないのに数年来好きな方の個展(東京では初めての個展)に行きそこで一目惚れした絵を買った。ピンクの海と青い空が描かれた絵。自分のために描かれた絵かなと思った。馬鹿なのだろうか。馬鹿なのかもしれない。でもこの絵と一緒にこれからやっていきたいと思った。それからサイがずっと欲しいと言っていたので粘土を買う。サイ大喜び。サイは夜にぐずったりして不安気な様子も見せていたので「だいじょうぶ」と言って全力で抱き締める。私は急に体調を崩す。いつも気合を入れて何かすると急に具合を悪くする。もっと頑張りたいのに体力が追いつかなくて悔しい。もう若くはないのだと実感した。あと10年若かったらな。

 

今後何が待ち受けていてもサイの前では笑っていたい。きっと大丈夫。最後は勝ちたい。

不確かなものの傍らには確かなものを

4月16日(月)晴れ
変な夢で目覚める。海老フライをスケッチしていたら上司が来て「全然描けていない」と言われる。よく見ると自分が手にしていたのはイカゲソのフライで海老フライではない。上司にスーパーの揚げ物コーナーに連れて行かれ、何時間も前に揚げられて冷めてギトギトになった海老フライを購入するよう促される。私が食べたいのはこんなのじゃない!と思いつつ反論できずにいたら目が覚めた。海老フライが食べたいという思い、明日から仕事かという気の滅入り、昔美術の先生にデッサンが全然ダメだと貶された思い出、などがごちゃ混ぜになって見た夢。

朝食はしらすチーズトースト。サイは半分しか食べないだろうなと思ったら一枚食べた。そして苺も食べた。月曜日のバタバタ出発。保育園に着いて玄関でなかなかサイが動こうとしてくれないが時間がなかったので「先にお部屋(教室)に行くね」と言いサイを置いて行くと着いて来ず、わんわんと大泣きする声。この世の終わりみたいに泣いていた。教室で替えの洋服など準備していたら先生が心配して廊下まで出てきたので私もサイのところへ戻る。漫画みたいに頬から大粒の涙を流していた。ごめんねと謝ったが教室に入ってもまだ泣き続けていた。自分にとってはちょっと先に行くねという感覚だったのだが、サイにとっては置いて行かれて一人ぼっちになったと思ったのだろうか。悪いことをしたと思った。いつも一緒にい過ぎるからかな。難しい。

昼。パン美人と食べる。たくさん話す。水曜日に私が有休を取るため、時間が合えばお昼どこかで一緒に食べませんかと聞いてみたら(パン美人は元々休み)、いいねと即答し夢のような提案をしてくれる。じゃ何時にここね、と約束は簡単に決まった。こういう思いつきにぱっと応じてくれる人が私は大好きだ。気分を上げるためにピンクニットにカラフルな花柄スカート、ピンク靴下という春に浮かれた人のような恰好で出勤したので言われる前に自分から「今日、私派手ですよね」と言うと「うん」と笑ってくれる。否定しないところがいい。お気に入りのビオラのネックレスを褒められて嬉しかった。しかしピンクに花柄は打ち合わせでも職場でも相当浮いていた。

夜。マルエツのNクリスピーフライドポテトに邂逅。しかも二袋!君に会えると私は元気になる。夕食後、サイはアンパンマン。お風呂で身体をつつき合う。嫌がっているのか喜んでいるのか分からないので辞めると「もっとやってよ~」とにやにや言われる。入浴後、布団で借りてきた絵本、いもとようこ『いつもいっしょに』を読む。ページ数は少なかったが子ども向けとは思えない内容で読みながら泣きそうになる。主人公のくまに感情移入した。サイは内容が分かっているのかいないのかあまり反応はなかったがじっと聞いていた。本当にいい絵本だ。サイはいつものようにすーっと眠らず、30分くらい大きな声を上げて泣き続ける。日曜日の嫌なことを思い出したのか。新しいクラスに慣れていないのか。原因は分からないが情緒不安定になっている気がした。赤ちゃん時代を思い出し抱き締めて背中をトントン叩いても泣き続け、最後に泣き疲れて寝た。私も疲れて寝た。


4月17日(火)曇り時々雨
サイはパンツで寝たため朝起きたらパジャマが漏れていた。着替え。それから朝食を食べていたら座ったまま再び漏らした。しかもじゃーっと洪水になるくらい。ふたたび着替え。ここ最近トイレがうまくいかないのは情緒と関係しているかもしれない。絶対に怒らないよう気をつけて、「洪水ぐらい余裕のよっちゃんだわ」という顔をして椅子や床を拭いてから朝食仕切り直し。私が怒らないのでサイはふざけて笑っていた。そうこうしていると時間がなくなってきた。余裕ではない。慌てて準備して出発。

昨日やり過ぎたため今日は白と黒のモノトーンにした。別に何もないが最近買って気に入っているレースのインナーをニットの下に着た。本格的な夏が来る前に可愛いインナーを集めたいと思っている。ネットで見た欲しいキャミソールが7000円もする。相場なのか。むむ。パン美人が昨日言ってた、白いインナーの上にメンズっぽいシャツを羽織ってゆるめのパンツを履く格好がしてみたい。ブルーのストライプシャツとか欲しいな。ヤエカだな。物欲。むむ。

夜。担任の先生とサイのことについて話す。去年の三人の担任のうち一人のT先生が担任で、でもこの4月からT先生一人で十何人も見なければいけないので本当に大変そう。先生はお疲れのようだったがとても優しく対応してくれて泣きそうになる。3歳児十何名に対し一人の保育士がつくのが保育の取り決め上問題ないとされていたとしても現実的には厳しいし先生への負担が半端ないと私は感じている。私は3歳児を二人相手に遊んだだけで疲労困憊だ。プロとはいえあまりにも酷すぎないか。保育士が完全に不足している。都は何とかして保育士の給与を上げて雇用人数を増やしてほしい。先生達は毎日本当に頑張っている。感謝しかない。

雨が降り始めていたがカバーがなく(まだ買ってもいない)、どうしようかなと思って取りあえず顔を覆わないよう注意してスーパーの袋をサイの頭に被せたら案外サイは気に入った様子だった。そのコックのような宇宙人のような姿を玄関で見た人誰もがすれ違いざまに笑っていた。先生も親もサイの友達もしらない子もみんな。特に子どもが「サイくんなにそれ~!!」と指差してゲラゲラ笑っていた。別に受けを狙ったわけではなかったが、冷静に見るとかなり可笑しくて私もサイも笑った。このサイの姿を見て皆の疲れが少しでも癒されたならまあいいか、と思った。外に出ると雨は小雨だったので可笑しなビニール姿は辞めて普通に帰る。でも雨が途中で降り出してやっぱり被らせておけばよかったなとも思った。私は何もないのでびしょ濡れ。いつも傘を持っていない時に雨が降り、持っている時には降らない。天気の予測が甘い。

サイにせがまれてコンビニに寄る。450円もするプリキュアのフィギア(大人向けなのか作りが細かい)を欲しがるが何とか言いくるめてチロルチョコにしてもらう。それから食べたいと言われたチルドの鮭の塩焼き、私はカレー。帰宅後ハムエッグとトマトと納豆を追加。なぞの夕食。サイはハムエッグの一番美味しい部分の黄身をいらないと言って私にくれる。夕食後、少しアンパンマンを観てから入浴。絵本を読んで就寝。私が自分で読もうと思って借りた児童向けの星座と神話の本を読んでくれと言われるも内容が難しすぎるのか苛立っていた。


4月18日(水)雨時々曇り
朝から雨。休みだったのでやや寝坊してもまあいいかと思いだらだら準備していつもより1時間半くらい遅く保育園に到着。いつも早いので園児が少ないが園児が揃った教室はさながら動物園だった。

それからずっと観たかった「ルドン―秘密の花園」を観に、丸の内の三菱一号館美術館へ。普段絵をゆっくり観るような時間が取れず、画家の企画展はほぼ毎回逃している。でもルドンはどうしても観に行きたかった。平日の朝とはいえマダムが多かった。それでも大混雑ではなかったので、一枚一枚の絵と対面してじっくり観ることができた。ルドンの絵を観たのは初めてだった。印象派の画家達と同時代に生きていたルドンが印象派と違うどんな絵を描くのか観てみたかった。主に木炭画やエッチングの白黒作品、「黒」(Noirs)(ルドンがそう呼んでいたらしい)と、油絵やパステルの色彩が遣われた作品があった。私は「黒」の絵が気に入った。なかでも、植物の先端が人の頭(たいてい年老いていて目が落ち窪んだ顔)や目玉になっている絵が面白いなと感じた。『「夢のなかで」 I. 孵化』という作品の人間の横顔が子宮みたいな丸い何かに包まれ暗闇に浮かんでいる作品がとても美しくて惹かれた。暗闇に星屑のような小さな光が散らばり宇宙のようだった。油絵やパステルの絵もとてもよかった。タイトルを失念してしまったが深海を描いた絵が好きだった。おそらくルドンが想像して描いたと思われる深海生物が描かれていた。シェイクスピアテンペスト』に出てくるキャリバンがモチーフとされる作品もよかった。大学の授業でいくつかのシェイクスピア作品を読んだが、キャリバンは「野蛮でグロテスク」という点で自分と重ね合わせていたからか一番記憶に残っている。ルドンは正体がよく分からないもの、明確でない神秘に関心があったのかもしれない。生き物と生き物でないものの境界にある見えない世界についてアプローチしようとしていたらしく、植物と生物の境界も曖昧だった。一見してそれが何なのか分からないものが多く描かれていた。「不確かなものの傍らには確かなものを置いてごらん」と若かりしルドンがコローに言われた(解説に書いてあった)通り、ほとんどの絵には木が描かれていた。明確な答えを提示しないルドンの世界が私にはとても心地よく、いつまでも眺めていられそうだった。図録は買わなかったが特に黒の画集が欲しい。あぁ好きだな、ルドン。

パン美人と待ち合わせし、神楽坂のla kaguというセレクトショップに入っているマドラグで分厚い卵焼のサンドイッチとプリンアラモード。どちらも最高に美味しかった。京都のマドラグ、いやコロナに行けず食べたいけど食べられない想いをいつからだろう、おそらく十代から長年拗らせてきたがまさか東京でこの分厚い卵サンドが食べられるとは。パン美人が教えてくれなかったら永久に拗らせていただろう。私は本当に情報に疎い。卵は分厚いのに口当たりが軽くて一瞬で平らげてしまった。パンも美味しい。また絶対来よう。パン美人にルドン展で買った「黒」のポストカードを見せたら「怖い」と言われる。感じ方は人それぞれなんだなと思った。たくさん話す。

それからパン美人と別れて某所で某相談。今日一日の楽しい空気が一変したが大事な話。最後に窓口の人に「今辛くても必ずいい結果が待っていますから、大丈夫です」と言われて泣きそうになる。大丈夫、あと少しだ。とにかく行動しようと某所に寄った後、帰宅。夕食、入浴、就寝。サイは寝る前にまた泣き、どうしたのと聞くとどうやら教室が変わって環境の変化に戸惑っているようだった。「あかちゃんぐみがサイくんのおへやとっちゃったの」と小さい声で訴えた。「そっか、それは悲しいね…でもね、サイくんが今いるお部屋はお兄ちゃん達がサイくんにどうぞしてくれたんだよ」と答えるもあまり納得していなかった。サイはサイなりに色々と感じていることがあるのだろう。


4月19日(木)晴れ 久々の青空
朝。やや寝坊。あんぱんとバナナ。実店舗に行けないので、通勤電車の中でスマホから欲しかったアルバムを発注する。大森さんの楽曲が入っているKAT-TUNのシングルも。よく考えればジャニーズのCDを生まれて初めて購入した。この長い人生でアルバムでさえ一枚も買ったことがなかった。中学の時はジャニーズJr.がクラスの女子の一番の話題だった時代で誰が好きかよく聞かれたがその度に答えられずどうして私は他の子のように好きになれないのか悩んだほどだった。KAT-TUNといえば初めてバイトした饅頭屋にいたパートのおばさんがいつも興奮気味に話していた。私は話題に入っていけず愛想笑いをしていた。あとは人におすすめしてもらった漫画を数冊。少量だとヤマトの人に申し訳ない気持ちになり一度にあれもこれも頼んでしまう。これで高いキャミソールは買えなくなった。それはそれでいい。いいのか?でも届くのが楽しみ。

夜。サイがコンビニに寄りたいと言うので寄ったらチョコベビーを買わされる。小松菜卵炒め、しらすごはん、ファミマのポテト(マルエツには劣るが美味しい)。夕食後、サイと最中アイスを一列ずつ食べる。サイは最中を先に全部剥がして中のアイスだけ舐めていた。サイとお互いの身体を触り合ってゲラゲラ笑いながら入浴。絵本を読んで就寝。


4月20日(金)晴れ 暖かい
朝。夜に控えた予定を考えて緊張して明け方まで眠れず早朝に布団に入ったら寝坊。寝る前にスイッチを入れた洗濯乾燥機が入れ過ぎだったのか全然乾いていない。濡れているものを干す。しわしわだ。悲しい。うーさんにもらったかぼちゃマフィンをサイと食べたら食べかすが机中に散らばり掃除に苦労する。などしていたら完全に間に合わないのが確定し、上司に遅刻の連絡を入れる。あーダメだな。大事な予定がある日にはいつもこうだ。

夜。丸の内コットンクラブにて道重さゆみさんの公演『SAYUMING LANDOLL~宿命~』。何かを観て鳥肌が最初から最後まで止まらないのは初めてだった。想いが溢れすぎているので別途綴りたい。最寄駅に着いたのに帰宅せずファミレスで2時間ほど余韻に浸っていた。


4月21日(土)夏のような日
朝。まだ昨日の余韻がすごいが、浸ってばかりもいられない。朝ごはん、洗濯のちサイと外出。マクドナルドでハッピーセット。おそらく男女が満足するようトミカとキティちゃんの二種類があったがサイはキティちゃんを選んだ。当たったプラスティックのかばんを嬉しそうに持ち開け閉めしていた。店内は満席だったので先週と同じ店の外のベンチに座って食べた。私は家から持ってきた缶ビールを飲んだ。サイはチキンナゲットを3/4くらい食べた残りを私にくれてまた新しいのを食べていた。このちょっと残しを最近よくやる。気持ちの良い青空で夏のように日差しがきつかった。広場に飾られたこいのぼりが風になびいていて、あぁもうそんな季節かと思った。毎年子どもの日にインスタで見かけるような気合の入ったことをできないでいる。やる人はやるのだろうが。

それからTSUTAYAに行ったりして歩いていたら(ネット配信の普及でレンタル業界が厳しいのかいつも百円なので毎週何か借りるのが習慣化してしまっている)、サイがスーパーに行きたいと言い、買うものはなかったが暑さにやられそうだったので入る。幼児雑誌を欲しがられたが断ると、サイはアイスコーナーに直行し食べたいと騒ぐ。賢い。仕方がないのでサイが選んだMOWを一つ買いレジでスプーンをもらってスーパーの外のちょっとしたスペースに腰掛けて二人で食べる。私達は外でマクドナルドやアイスを食べて周辺をうろついて、何だか夏休みの中学生みたいだなと思った。最近全然親子という感じがしない。サイはアイスを独占し私が食べようとすると怒りながら席を移動しほとんど一人で食べた。サイのアイス好きは完全に私の遺伝かもしれない。

その後、公園で2時間遊びコース。私は既にバテて帰って昼寝したかったが遊びたいと言われると付き合うしかない。暑すぎてまたビールが飲みたいと思ったが何と健全なのだろう、この公園には酒類が売っていない。サイは珍しく砂場で遊んでいた。なるべく日陰を選んで座っているとこっち来てよ!と言われる。砂を盛るのに苦労していたので、水を足すといいよとさっき飲んだビールの空き缶を洗って水を入れて渡すと嬉しそうに振りかけていた。「おかあちゃんのたんじょうびケーキつくるよ~」と一生懸命砂を盛っていた。小さい頃砂場遊びをよくしていたので、暑ささえ問題なければ私も嫌いではない。手が汚れることに抵抗がないしむしろ砂を触っていると妙に落ち着く。二人で手を土だらけにしながら遊んだ。自分の子どもと遊んでいるのに何十年前に近所の子やきょうだいと遊んでいた時と同じような不思議な心地がした。もはや中学生というより私も3歳児だ。

するとサイと同じ歳くらいの男の子が「ねぇあそぼうよ」と寄ってきたのでその子も一緒に遊ぶ。親の姿は見当たらない。なぜかいつも親に放置された子が私の元に寄ってくる。私は大人には大抵嫌われがちだが、子どもにはけっこう好かれると最近気がついた。もしかしたら大人だと思われていないのかもしれない。空き缶を見て恐々と「それおさけ?」と聞かれる。確かに酒の空き缶で遊ばせている親は見たことない。「ううん、入っているのはお水だよ」と説明した。サイは人見知りを発揮し距離を置き一緒に遊ぼうとしないので、なぜか私が知らない子どもと二人で遊ぶ形になった。「◯◯くんね、ふじさんつくりたい」と言われたので土を盛って山を作っていたら「トンネルつくりたい」と言われたのでトンネルを掘る。そしたら飽きたのか「けいきゅうつくりたい」「え、京急?」「うん◯◯くんけいきゅうすきだから」「…」ちょっと無理だなと思ったのでごまかして辞める。サイはまだ余所余所しく少し離れて何かを作っていた。すると◯◯くんがサイの使っている空き缶を使いたいと言い出し、サイはそう言われると意固地になって貸さない。サイを説得してもダメで、お互い取り合いになってどうしようもなくなった。そうしたら空き缶のプルタブが取れて危なくなったので、二人から取り上げて強制終了させた。こういう時は相手側の親がいたらお互い仲裁に入れるのだが、見まわしてもそれらしい人はいなかった。「◯◯くんのおかあさんはどこ?」と聞いても曖昧な返事だった。親が見つからないと帰るに帰れないなと思っていたらどこからか身なりが綺麗で美人のお母さんが現れて「◯◯くん」と呼びかけると、私に「ありがとうございました」と笑顔で一言だけ放ち、◯◯くんを連れてさっとどこかへ行ってしまった。他人の子と遊んでいた私とサイは土まみれで取り残されて馬鹿みたいだった。このお母さんは一体今まで何をしていたのだろう。我々も砂場を離れ、サイがやりたいと言うのでシャボン玉をしてからようやく帰宅。

くたくたで暗くなるまで昼寝。遊ぶのにも体力が要る。夕食は新たまねぎと豚の生姜焼き、ブロッコリーの卵とじなど。新たまねぎは炒めるより熱をじっくり通した方が美味しいので玉ねぎの上に下味をつけた豚肉を広げてのせ蓋をして蒸し焼きにして最後に味付けしてみたら玉ねぎがトロトロですごく美味しくできた。肉も固くならない。仕上げに入れたチーズがまた美味しかった。自画自賛。別に上手くはない時間があれば料理は好きだ。人が自宅に飲みに来て色々おつまみを作りつつ自分も飲んだりしたら楽しいだろうなとよく思うがまず呼ぶような人がいなかった。夕食後、入浴、就寝。


4月22日(日)夏のような日part 2
朝ごはん、洗濯、掃除。特に予定がないのでKくんのお母さん(過去日記参照)を誘ってみたら快諾してくれ、近所の公園で遊ぶことになる。少し早く待ち合わせの公園に着くと、サイは昼ごはんも食べていないのにセブンティーンアイスが食べたいと騒ぎ、仕方ないのでKくんの分と二つ買う。会っていきなり二人はアイスを食べる。こういうの嫌がるお母さんもいるだろうが、Kくんのお母さんは嫌な顔ひとつしなかった。それから公園で1時間ほど遊んだ。Kくんが持ってきた水鉄砲をやったり、探検隊ごっこをした。二人は仲が良いがお互い自由でバラバラに走り回ったりしていた。日差しがきつくなったので、Kくんのお母さん「近いのでお昼はうちに食べに来てください」と言ってくれた。私が交友関係が薄すぎてサイの友達の家に行くのは初めてだったので、突然で申し訳ないと思いつつ「保育園の誰かの家に行くのは初めてなので嬉しいです」と思ったことを言うと「私も保育園の誰かが家に来るのは初めてです」と恥ずかしそうに言ってくれた。

Kくん一家が住む家は元々おじいさんとおばあさんのものだったらしくとても古い家だったが明るくて風通しがよく私はとても気に入った。Kくんのお母さんは重身なのに「たくさんあるので」と餃子を焼いてくれた。豪快にフライパンのまま出てきた。Kくんは興奮して「サイくんママ(といつも呼んでくれる)、これみてよ!」と玩具の車を次々出して紹介したり落ち着きなくはしゃいでいたので、Kくんのお父さんに「ちょっとは落ち着けよ」と窘められていた。Kくんのお母さんが台所にいる間、私はほとんど挨拶くらいしかしたことがないKくんのお父さんと目を合わせることも会話することもできず気まずい感じになったのでKくんの玩具を必要以上に観察したりコメントすることに努めた。食べ始めてもKくんは落ち着かず、「サイくんママ、なっとうをごはんにかけて」と色々求めてきてまたお父さんに失笑されていた。あぁ可愛いなと思った。サイは緊張したのかあまり食べず大人しくしていたがだんだん本性を出しKくんと笑ったりはしゃいだりしていた。Kくんのお父さんは居心地が悪かったのか洗車をすると言っていなくなった。

「餃子どんどん食べて下さいね。これが終わったら第二段を焼きます。うちはみんな大食いなんです」と言われたので遠慮なく食べたがサイが食べ残した分も食べて苦しくなり結局第二段はなかった。食べ終わって二人が大人しくテレビを観ていたのでようやく私はお母さんとゆっくり話すことができた。ほうじ茶ラテを入れてくれた。お湯だしお腹にかかったら危ないなと思って台所にちらっと様子を見に行くと(入られて嫌な人もいるだろうからあんまり奥には入らない)、鍋でぐつぐつに沸騰したお湯を注いでいるところで、カップのお茶もぐつぐつと地獄のようになっていた。私はそれを見た瞬間、あぁこの人が好きだなと思った。「ほうじ茶ラテって美味しいですね」と言うと「そうなんです!前に飲んで美味しかったのでネットで探して買ったんです」と嬉しそうに言ってくれた。それから鍋敷が汚いことを気にしていた。「うちは何でもフライパンのまま出すのですぐにこうやって焦げ付いちゃうんです」と笑って話してくれた。話しやすい人なのでつい余計な話までしてしまい謝ると「いえ全然。そうやって時々誰かに話さないと辛いですよね」と言ってくれた。近所の美味しいケーキ屋さんの話になり、「綺麗なカフェでゆっくりお茶とかしたいなぁ」とKくんのお母さんは誰に言うでもなくぽつりと言った。みんな思っていることは同じだ。また遊びましょうね、あそこのケーキ食べましょうねと言って帰宅。サイは帰り際、Kくんが持っているような三輪車かバイクが欲しいとずっと言っていた。

帰宅後、それまで気を遣って我慢していたからかサイの機嫌が悪くなったので冷凍庫にあった最後のアイスを二人で分けて食べた。それから暗くなるまで昼寝。私は一足先に起きたがサイはまだ寝ていた。サイが起きて寝室に行こうとしたら慌て過ぎたため膝を強打した。痛くて蹲っていたらサイが寝室を出てやって来て私の前を素通りし冷蔵庫に向かった。いつものように何か食べ物を探しているのかと思ったら、冷凍庫から保冷剤を取り出し一生懸命ハンカチにくるんで渡してくれた。Kくんの家でKくんがテーブルの角で頭を打った時、Kくんのお母さん凍った保冷剤をハンカチに包んでさっとKくんの額に当てていた。サイはそれをちゃんと見ていて痛い人にはこの対処をすると覚えていたらしい。あぁなんて賢くて優しいんだ君は。

夕食は炊飯器でカオマンガイ風。予想外に薄味だったのでもっと濃く味付けしてもいいなと思った。でも美味しかった。サイは肉だけ食べた。夕食後、Kくんの家でたくさんあるからともらって来た水鉄砲でお互い撃ち合いながら入浴。入浴後、サイは甘えてきて「おかあちゃんだいすき、おかあちゃんかわいい、おかあちゃんいいにおい」と満面の笑みでそうプロミングされた人口知能のように褒めちぎった。いつも恥ずかしくなるくらい愛情表現してくれる。私も「大好きだよ」と返す。私たちは愉快な名コンビ(ロアルド・ダールか…)。布団の上で遊んでゲラゲラ笑い合った後、お互い疲れて就寝。

某所で「もうあとは行動するだけですよ」と言われはっとしたがいつも私はそうだった。あれこれ頭で考えたり綿密に下調べすることは好きだが実践する一歩手前で怖くなって動けなくなる。でもこれは自分との戦い。絶対に勝ちたい。そして最後は笑いたい。と、ルドンの絵や踊る道重さんを見て考えた週だった。

新緑の眩しさがクラウチングスタート

4月9日(月)

朝。パンとバナナ。月曜日のバタバタ登園。おたまじゃくしは更に成長していた。口をぱくぱくし動かしているのもはっきり見える。ここまでくると両生類なんだなと感じる。ソメイヨシノはほとんど散ってしまい新緑がどんどん伸びている。この屈託のない瑞々しい緑色よ。私が何を考えていてもいなくても新緑の季節はやってくる。あっという間に夏が来るだろう。

 

夜。しらすと新たまねぎのチャーハンと冷奴。大量のしらす消費メニュー。ポン酢で味付けして隠し味に少しバターを入れてみたら驚くほど美味しくて自画自賛。しらすはバターやチーズと合うらしい。旬のうちにしらすメニューの研究を続けたい。味付きご飯が嫌いなサイは食べず冷奴だけ食べた。SBのチューブ入り刻み青シソがとても使える。入浴後、就寝。サイが寝た後、布団で音楽を聴いていたら心地よくていつの間にか寝てしまっていた。音楽で入眠すると安眠できる気がする。特にアコースティックギターの音が良い。

 

 

4月10日(火)

朝。クロワッサンとバナナ。サイのバナナブーム再興か。傷んで変色した部分は食べない方がいいと言ったら「だいじょうぶよ」と平野レミのような言い方で言われる。「黒く傷んだ部分」=「腐敗している」とサイは分かっておらず何度言っても他と違う色をしているから特別で良いものだと思い込んでいる。真っ黒だとさすがに止めるが許容範囲かなと思いそのまま食べさせる。

 

昼。せっかく作ったお弁当を家に忘れてきたので久しぶりにフレッシュネスバーガーで食べた。フレッシュネスのポテトは美味しい。行く途中に数か月前に開店した激安定食屋があり、そこに行列ができていた。たまに外に立っている店主は何やら主張したそうなおじさんで、トタンでできた店の外壁の至るところに派手な色の紙に太字で書いたメニューと価格が貼られている。この感じなんだろう、意識高い系、いや意識溢れ出ている系というのだろうか。どうだ良いだろうと強く主張してくるものが私はやや苦手なのでいつもおじさんと目が合う度に「絶対入らんぞ」という顔をして前を通り過ぎる。繁盛しているから無意味な抵抗。

 

夜。サイが食べたいと言い回転寿司へ。サイがいなり寿司の皮だけ食べているのを見て、浜崎あゆみが寿司のネタ部分しか食べないといつかMステで話していたのを急に思い出す。サイは店の壁にかかった数字が寿司になっている時計を見つけて喜ぶ。会計時に寿司の形をした飴をもらい喜ぶサイ。飴は困ると思ったが店の好意を無碍にできない。家に帰る途中、公園で大学生の集団が花見(?)をしていた。なぜ大学生と分かるかと言うとこの時間に私服で酒を飲んでいるからきっとそうだと思った。あと見た目が若くて醸し出される空気が学生だった。集団が少人数グループに分かれ男女で話している姿が眩しかった。自分の学生時代にこういう経験が皆無だったので絵に描いたような光景を見ると嬉しいような苦しいような気持ちになる。帰宅後、サイは寿司の飴をがしがし齧っていた。虫歯が心配だったが止められなかった。入浴後、缶チューハイをごくごくと水のように飲んだ。就寝。サイが寝た後またビール。

 

立候補した覚えがないのにいつの間にかなっていた保育園クラス委員に関するメールが数件来ていて、とりあえず見なかったことにする。

 

 

4月11日(水)

朝。怠い身体。昨晩飲み過ぎたかもしれない。サイが寝起きで「かわいいおかあちゃん」と言ってくれる。なんと。バタートーストとキウイ。キウイの皮を剥くのが面倒で半分に切ってスプーンで食べてみるか聞くとそうしたいと言うので渡すがやはりうまく食べられず結局皮を剥いた。剥いて渡すと「すごいね」と魔法を見たように喜んでくれた。

 

出社前にコンビニに寄った際、財布を家に忘れて来たことに気付く。サザエさん。スイカのチャージが少しあったのと持参したおにぎりがあったので助かった。財布がないということはお金を遣わないということなので究極の節約方法かもしれない、と前向きに捉える。

 

夜。夕食は鶏胸肉とブロッコリーオーロラソース和え、トマト。サイは珍しくよく食べてくれた。オーロラソースに牛乳を入れて予め温めるとまろやかになって美味しい。一度しかやってないが海老でやっても美味しかった。海老は高い。あと火を通すと悲しいほど縮む。ああ大きな海老が食べたい。入浴後、就寝。いくつか嫌なことがあった。外からは見えない脂肪のように蓄積していく。二人一組でやるクラス委員の相方のお母さんから何件もラインが届いていたのに全然返せなかった。

 

 

4月12日(木)

早朝に起きたがクラス委員の案件に取り掛かれず。でもやるべきことは分かった。いつもこうやって事態を飲み込むまでに時間がかかる。興味がないことに対しては特に。入社して初めて配属された部署から次の部署へ異動になった際、厳しかった部長が新しい部長に「この子は何かに適応するまでに人一倍時間がかかります。でも慣れたら能力を発揮してくれると思います。」と私を紹介していたのがずっと忘れられない。本当にその通りで、自分でも信じられないほど適応までに時間がかかる。でも慣れると面白いように自分の中に嵌って楽しくなる。学生時代のバイトも慣れて楽しいと思うまでに相当時間がかかり、それで先輩や店長をイラつかせることが度々あった。やるべきことに手をつけないままぼんやりしていたら昨日の色々がじわじわと押し寄せてきて、朝から自己嫌悪になる。天気のせいにしたくても、できない時がある。サイが起きてくれたので一瞬忘れて朝ごはんや支度。することがあれば余計なことを考えずに済む。

 

夜。新玉ねぎと人参と挽肉のオムレツとトマトと冷奴。卵が多すぎるのかフライパンが寿命なのかうまく巻けなかった。悲しい。サイは冷奴ばかり食べてオムレツを食べてくれなかった(一丁くらい食べた)。オムレツの具にもSBのチューブ青じそを入れたらガパオ風になり美味しかった。使える!夕食後、お風呂を洗っていたらサイがスイッチを押したいと来る。その後、風呂場の鏡を画面に見立てて自撮りごっこをして遊ぶ。サイはうさちゃんピースもできる。げらげら笑って楽しかった。

 

入浴後、布団の上で二人で大森さんの新作アルバムレコーディング風景の生配信を観た。「おーもりさんはどうしてひとりなの?」としきりに聞かれる。レコーディングの様子は初めて見たので興味深かった。一度録った音にキーの異なる歌声を何度も重ねて録音したりサビのギター演奏を試行錯誤するなど、地道な作業を経て音源は完成する。大森さんは以前、盤の制作をお墓に埋めるような感覚とおっしゃっていたが、音源には生のライブとは違う美学や面白さがあるなと考えさせられた。画面の向こうの大森さんはキャンバスに絵の具を塗り重ねていくように歌声を重ねていた。魔法みたいだった。最後数分のところでサイの眠気が限界に来たため中断。

 

サイは「おんがくはまほーではない」と何度も繰り返し歌ってから寝た。サイが『音楽を捨てよ、そして音楽へ』を歌うところを初めて聴いた。「音楽」と「魔法」という言葉を発しているのを聞いたのも初めて。サイは私が教えなくとも好きなものや関心あるものは勝手に覚えていく。意味を分かっていなくとも、二つの単語を初めて覚えたのが大森靖子さんの歌だったなんて嬉しい。

 

 

4月13日(金)

寝坊。サイも夜更かしさせたせいでなかなか起きられず今日は休みかと聞かれる。ごめん。私は朝食パス。サイは勝手に冷蔵庫から出して蒸しパンを食べた後、もっと何か食べたいと言われたのでパン美人にもらった一本堂のレーズン食パン。苦手なレーズンを器用に取り除いてお皿の隅に寄せていた。その後、冷蔵庫の加熱用チーズとバターを取り出し「これ食べたい」と言う。夜にこれで何か作るから今は勘弁して欲しいと訴えるも不服そう。バターの美味しさに目覚めてしまったらしい。しかしサイの食欲はすごい。留まるところを知らない。

 

昨日聴いた新曲が脳内でリピートされつつ出勤。アルバムが本当に楽しみ。勤務中、窓の外に気配を感じていよいよ気がおかしくなったかと思ったら窓清掃の人だった。近々大規模な引っ越しがあるので清掃業者が入っているようだ。窓の内側から窓を拭く人の足元を眺めつつどうか落ちませんようにと願う。昨日失くしたと思ったイヤホンは給湯室にあった。

 

夜。昨日のオムレツの具の残りをごはんにかけ目玉焼きをのせてガパオライス風に。本物のガパオライスがよく分からない。入浴後、就寝。

 

 

4月14日(土)曇り

昼前に待ち合わせし、友達親子とフルーツパーラーへ。フルーツサンド、ハムと卵のサンド、苺パフェ、プリン・ア・ラ・モードと食べたいものを全部頼んで食べる。サイが店内で大声を出していたので注意される。絵本や子ども用食器を貸してくれたり気を遣ってくれたが、長居していた分けでもないのに1分おきくらいに空いた食器がないか確認しに来られて何だか落ち着かなかった。それでもサイと友達の娘Yちゃんが満足そうに食べていたのでよかった(サイの食べるスピードの速いこと!)。子ども達は特にプリン・ア・ラ・モードが気に入ったようだった。一方で私はあまり味わった気がしなかったので、改めてサイ抜きでゆっくり来たいなとも思った。その後、近くのアンパンマンショップやおもちゃ博物館へ行った。サイはYちゃんとおもちゃ博物館の庭園にある水の抜かれたプール(?)で走り回っていた。Yちゃんがくじらちゃんを可愛がってくれて嬉しかった。夕方、電車に乗って帰宅。サイは家に着くまでぐずらなかった。偉い。疲れたので夕食は買ったものや適当に調理したもので簡単に済ます。入浴後、楽しかったねと言い合って就寝。

 

私はサイが寝た後、何にも怯える心配がなく久々に朝まで一人時間を満喫できた。ビールを飲みながらアンパンマンショップで買った幻の漫画『アンパンマン初期作品集』(アンパンマンが子どもに嫌われている描写とかめちゃくちゃ面白い)を読んだり、録り貯めたドキュメンタリー番組を視た。『ラストアイドル』という大森さんが審査員を務めているアイドルのオーディション番組も初めて観た。ずっと観たかったのにタイミングを失ってここまで観ずにきてしまっていた。ちょうど第3期が始まったばかりだった。オーデション番組が好きすぎて、昔は食いつくように色んな番組を観ていたのだが(特に留学中に見た『Xファクター』が面白かった、優勝したレオナ・ルイスの歌が上手すぎて震えた…)、なぜか観ていると少し苦しくなり、若い頃に比べて一人の人間が優劣をつけられる姿を直視できなくなったのかもしれない。出演者が自分より歳下だということも関係している気がする。昔観た番組(番組名失念)で、足の脛に錘を落とされてどういう反応をするかという審査があったが、ライバル二人が一人はわざと大げさに痛がる、一人は黙って表情すら変えず堪えるという真逆の反応をしていて、それがずっと忘れられない。

 

明け方布団に入った。最初は裸だったアンパンマンがテレビのヒーローに憧れてあの衣装をジャムおじさんに作ってもらったなんて知らなかったな。

 

 

4月15日(日)雨時々曇り

朝ごはん。私はパン美人にもらったレーズンパン。サイはチーズトーストとキウイ。半分に切ったままスプーンで上手に食べていた。学習能力がすごい。朝食後サイがアンパンマンを観ている間に掃除、断捨離。迷いなくどさどさと捨てたら気持ちが良い。大事なものだけ残る。昼、地獄のように恐ろしいことがあった。絶望の淵。

 

気分転換に午後からサイと二人で出かける。公園を経由してTSUTAYAに行き、サイはアンパンマンの映画(選ぶ基準がロールパンナちゃんがパッケージにいるかどうからしい)、私はケン・ローチの『わたしはダニエル・ブレイク』を借りた。ケン・ローチは好きな映画監督の一人。イギリス映画が好きだ。それからスタバに行き、サイはお子さまミルク(レシートにそう書いてあるのが可愛い)、私は「アーモンドトフィートリプルチョコレートフラペチーノ」という名前だけで胸やけしそうなやつを発注する。年齢を弁えず未だにスタバの新作に果敢にも挑戦している。そしてたまに失敗する。気分が沈んでいたのでこういう過剰に甘そうなものを摂取したかった。会計時に「席の確保はお済でしょうか」と店員さんがわざわざ聞いてくれて「大丈夫です」と豪語したのに、座ろうと思っていた席は別の人に座われていた。トレーを持って右往左往していたら知らないおじいちゃんが「席ないのか?」と聞いてきて「ないです」と答えると、鞄で席取りされている空席を見て「このかばんは野郎だな」とか「こっちはどうだ」とかなぜか必死になって店内を歩き回って探してくれた。結局買ったものを紙袋に入れてもらい広場のベンチで食べた。サイは私のフラペチーノの上にのった生クリームを欲しがったのでストローですくって口に入れると幸せそうな顔をしていた。二人で食べようと思って買ったチョコレートワッフルをサイがぽろっと食べこぼしたらどこからか鳩がやって来て器用に咥えて去って行った。それを二人で見逃さなかった。サイはTSUTAYAでやったルパンレンジャー(多分一回しか観たことがないのにやりたがった)のガチャガチャで出た黄色い乗り物を果たしてそれが何かはっきり分からないまま鳩(敵?)に向けて追いかけていた。たくさん走って疲れたので帰宅して晩御飯まで二人で昼寝。夕食後、就寝。

 

 

嬉しいことも嫌なこともあり週末の天気のような週だった。あぁ大きな海老フライが食べたいな。たっぷりのタルタルソースに沈めて齧り付きたい。高校生の時、授業中お腹が空くと、よくノートの端にシャーペンで食べたい物の絵を描いていた。できるだけ本物みたいに。かつ丼とかオムライスとか。だから海老フライの絵を描こう。

湯会の後みたいな気分で最期を迎えたい

4月2日(月)快晴 葉桜

明け方起きてサイが寝ているのと反対側に頭をもたげて日記を書いたりしていた。だんだん気温が高くなり、素足で布団に触れるのが気持ち良い季節になってきた。布団からシンクロの選手みたいにぴんと足を出して布団の外側の冷たい部分を探るのが小さい頃から好きだった。あっここいいぞと見つけたらそこも次第にぬるくなるのでまた新たな冷たい場所を探す。それを繰り返す。素足の遊牧民

 

夜中に鼻詰まりで起きてぐずったこともあり、サイがなかなか起きないので先に着替えて朝ごはんも食べてから起こす。クジラちゃんが「すー」という効果音と共にサイのところに泳いでいく様子を見せたら喜んでくれたが眠いと言いなかなか布団から出てくれない。出発十分前にようやく起きてくれて朝ごはんを食べさせつつ同時に着替えさせるという荒業で急ぐ。今日から自転車は後ろ乗せ。後ろに重心がいくのでいつもの感覚と違ってフラフラする。後ろにいるサイは楽しそうだった。「大丈夫?え、大丈夫?」と誰に言っているのか分からない私の声だけが響いていた。トゥクトゥクを運転したことも乗ったこともないがきっとこういう感じだろうと勝手に想像した。保育園に着くと新しい園長先生が出迎えてくれて私もサイも少々戸惑いつつ挨拶。どんな人かまだ分からないが明るい人という印象だ。前の園長先生は明るい反面どこか物憂げな印象があったところが個人的に好きだった。

 

昼。最近行っていなかったお気に入りのパン屋に行く。職場から少し歩くので寒い時は億劫になる。パン屋の近くに怖そうなおばさんがやっている強気(穴が空いた汚いズボンが1800円もするなど値付けが堂々としている)なリサイクルショップがあって、店の奥にいる巨大なホワイトタイガーのぬいぐるみ(通称・虎夫、パン美人命名)がいるかどうか私は前を通る度にさりげなく店内をのぞいて確認している。一時見かけなくなって売れたかと思ったが、虎夫(とらお)は今日も同じ場所にいた。少し前は売り物のパナマハットを被らされるなどおばさんに弄ばれていて心配したものだが今日は何も被っていなかった。虎夫がいつか誰かに買われて欲しいのか欲しくないのか自分でもよく分からない。ビルとビルの隙間にある公園で買ったパンを食べた。スーツを着た男性の先客が二人いた。この公園は実は夢で見た幻ではないかと思うくらい喧噪の中にひっそりと存在しているがちゃんと実在する。

 

夕食は冷凍餃子、ベーコンとブロッコリーのオムレツ、トマト。帰宅して夕食準備しながらビール一缶飲み終えてしまった。これを毎日続けていると知らぬ間に太るので要注意。夕食後、サイと「パンツまてまてゲーム」(サイ命名)をする。「パンツまてまて~」と歌いながら(ちゃんとやらないと叱られる)交代で逃げたり追いかけたりして先にお互いのパンツに触った方が勝ちという意味不明の遊び。入浴後、就寝。

 

 

4月3日(火)曇り

日の出が早くなってきたのに従い、サイの起床時間も早くなってきた。サイは先に起きて居間に行ってしまった。私はすぐ布団から出られずしばらくしてから行くとサイは自分が食べるバナナを剥いて輪切りにし皿に載せていた。すごい。私が珈琲を飲むと思って珈琲ポットまで用意していた。すごい。早起きしたので余裕があった。サイはカーズのレゴをしていた。レゴを持っているが『カーズ』の映画を観たことがなく「みたい」と言うので先日観せたらそこまで興味を示していなかった。車にそれほど興味がないらしい。ピクサー作品が好きな私もあまり面白さが分からなかった。幼少期(今でもだが)激しく車酔いした記憶が蘇るので車を見ると少し気分が悪くなる。サイは基本的に私が嫌いなものは好きではないのだろうか。そういうの良くないと思うが車に乗る機会もない。

 

夜、お迎え。玄関にはうーぱーちゃんに代わっておたまじゃくしの水槽が置かれていた。十数匹のおたまじゃくしがひらひらと元気に泳いでいた。小学生の時に性教育のビデオで観た無数の泳ぐ精子を思い出した。そんなことを思い出すのはおかしいかもしれないが思い出してしまうから仕方がない。

 

サイと私は帰宅直後にそれぞれヨーグルトとビール。夕食はレトルトのハンバーグとブロッコリーの卵炒め。夕食後アンパンマン。今からこういうシーンになるよと事細かに解説してくれる。サイはこの週末、お花見でよくしてもらったCちゃんに会えるのを毎日楽しみにしている。「Cちゃんいるかな」と今日も聞かれた。入浴後、就寝。Amazonで届いたサイの無地Tシャツにアップリケをしたかったが眠気に負ける。

 

 

4月4日(水)晴れ 暑い

サイは今日もいつもより1時間くらい早く起きた。私はもっと寝ていたかったが「きてよ~」と言われたため自分が持って行くお弁当を作る。朝から弁当作りなんて偉いなと思ったがやっている人は毎日やっている。かりかりベーコンのチャーハン。サイが味付きご飯を嫌がるので最近食べていなかったが、そうだ私はチャーハンが好きだった。

 

夜。夕食。暑くてフライパンを使いたくなくて簡単に済ます。数年前に買ったが旅先で一度来ただけでなぜそれを買ったのか自分でも全然分からない無数のバレリーナが全面プリントされた派手なTシャツを着ていたらサイが「このひとはほかのひととちがうね」とバレリーナの柄を指さして分析していた。目新しいものに敏感に反応するしいつもよく観察している。入浴後、アンパンマンを観て就寝。ホラーマン可愛いなと改めて思った。今日は財布を家に忘れて来たがお弁当があったので助かった。こういう時のために折った千円札をどこか(定期入れなど)に入れているという人を聞いたことがあるがそうした方がいいかもしれない。

 

 

4月5日(木)曇り 肌寒い

今日もサイは早起き。私が眠くて起きられずサイは先に一人で台所に行って何かしているなと思ったら「わーん」と泣き声。様子を見に行くと食パンを袋から出そうとしたが袋がうまく開けられず無理矢理出そうとした食パンが千切れたことで泣いていた。「おかあちゃんがこれ食べるから大丈夫。サイくんはきれいなやつ食べたらいいよ。」と言うと落ち着いた。自ら朝食を準備していたなんて偉すぎる。余裕があったのでベーコンと目玉焼きも焼いたがサイはベーコンだけ食べたので私が目玉焼きを2枚食べた。

 

夜。今日も手抜きごはん。20時からEテレハートネットtv』に大森さんが生出演されるのでいつもより早めにお風呂に入る。私がテレビを観てサイをあまり構わなかったことでサイは機嫌が悪くなりわざと他のチャンネルに替えたり泣いたりした。オリンピックのフィギアを観ていた時もそうだった。普段サイが起きている時間はサイが好きな番組やDVD以外観る習慣がないので受け入れられないのかもしれない。しかも大森さんが出ていないVTRの時など「おーもりさんどこ?」とイラつき「また出てくるから」と宥めるのが大変だった。サイにとって大森さんはテレビの向こう側にいる遠い人というより会って触れ合える人という感覚が強いためテレビの向こう側にいるのが不思議だったようだ。ぐずり続けて15キロの幼児を赤子のように抱いたまま観た。重かった。

 

集中して観れなかったが昨年8月31日に放送された内容に似た構成だった。主に明日から新学期を迎える十代向けの番組だったが、私が十代の頃はこういう番組はなかったように思うし、何よりインターネットが当たり前でない時代だった。その時とは確実に変わった現在、私の想像を超える恐ろしい闇がきっと存在するはずだ。そんな闇に苦しむ十代の誰かがたった30分間のテレビ番組で救われるかどうかそれは私にも分からないが、生きることを明日からも続ける可能性がひとつでも残るといいなと願った。この手の番組はサイが生まれてからどうしても親目線で観てしまう。サイが将来「学校に行きたくない」とか「死にたい」と訴えた場合あるいは訴えなくてもそんな気がすると悟った場合に私は何が言えるのか、また誰かが学校に行くことや生きることを辞めたくなる要因を作る側の人間になったら私はどうすべきか、そういうあらゆる状況を想定してしまう。被害者になるばかりとは限らない。殺人だって起こす可能性だってある。親子とはいえ別の人間なのだから絶対なんてない。親としてどこまで何ができるのか、サイが生まれた時いや妊娠した時からずっと考えている。

 

番組終了後、就寝。十代なんて遠い昔に終わったはずなのに番組を観たら当時のトラウマがじわじわとぶり返してきて苦しくなり、後でもう一度観ようと思って撮っておいた録画を観るのを何となく辞めた。番組の最後に新曲(番組のために今朝書き下ろしたばかりと後で知った)をカメラの向こう側の一人一人に訴えかけるよう歌われいていた大森さんはとても美しく目が合う度にドキドキした。

 

 

4月6日(金)晴れ 暖かい

サイはまた今日も私より早く起きて台所へ行き、何かしているなと思って様子を見に行ったらサイと私のお皿にそれぞれ焼く前の食パンとその上に冷蔵庫から出した生のベーコンを一枚ずつのせていた。生のベーコン…。正しく朝食の準備ができたぞというサイの達成感に満ちた表情と生のベーコンが食パンにのっている様子があまりにも愛おしく、ありがとうと言ってぎゅっと抱き締めた。それから「これはちょっと焼いとこうか」とプライドを傷つけないようベーコンをさっとフライパンで焼いてトーストしたパンにのせた。それをサイがテーブルまで運んでくれた。一緒に暮らしている感がすごい!育てているという感覚がどんどんなくなる。サイは自分で用意したトーストは食べずバナナを食べた。だから私が食パンを2枚食べた。また太る。確か10年くらい前、何かのダイエット番組で子育て中のお母さんが「いつもこういう感じなんです」と子どもが残した分も合わせて山盛りのパスタを食べている映像がダメな事例として紹介されていて、その時はお母さんって大変だなとぼんやり観ていたが、サイが残したものを食べる度にその映像を思い出す。

 

登園。玄関のおたまじゃくしは数日のうちにも日に日に大きくなっている。私はカエルが苦手なので、この子達はもうすぐカエルになるのかと思うとちょっとぞっとした。サイは私が「おたまじゃくしはカエルになるんだよ」と教えたのを覚えていて見る度に聞いてくる。

 

お昼。久々にパン美人と食べる。可愛いお菓子をくれた。真面目にお金の話。化粧品に月々これくらいかかっているのだけどどうかと聞くとやはり同じくらいで倹約しなくてはいけないが年齢の問題もあるし特に基礎化粧品にかかる分はどうしようもないという話になる。歳をとるとお金がかかる。前会った時(二週間くらい前)より凛として見える!言われて単純に嬉しかった。

 

夜。お迎えを代わってもらい、町田康さんの新著『湖畔の愛』サイン会へ。新宿紀伊国屋町田康さんは生きている中では一番好きな作家。初めて読んだのは大学生の時で、片想いしていた人が読書マラソンで感想を書いていたのを購買で見つけて気になって読んでみたのがきっかけ。その後好きな人とは何も起こらず、でもその人はどうでもよくなるくらい町田さんの小説が面白くて没頭し作品を片っ端から読んだ。サイン会は行けたら毎回行くようにしている。今や大御所と言われる作家であろう町田さんは今でも新刊が出ればほぼ毎回サイン会を開いてくださる。そんな作家は他にいない。だから私も死ぬまで永久に行こうと思う。いつも物凄く緊張するため挨拶だけで何も話せない。でも今日は話したいと思い、震えながら小声で「先日ライブに初めて行きました、とてもよかったです」と伝えると署名を書いていた神妙な顔つきが急に緩み「ほんまに?6月にあるからまた来てな」と笑顔で言われる。ひいいいい。3月に町田さんが近年されている音楽活動「汝、我が民に非ズ」のライブに初めて行った。歌う姿をちゃんと観たのは初めてだったが小説に通じるような美しさがあった。また聴きたい。6月頃待望のアルバムも出るらしく楽しみだ。いつか大森さんと対バンして欲しい。夢。かっこよかったなというぼんやりした頭で下に降り、『フィルカル』最新号を買い店を出る。と、紀伊国屋地下でビールセット千円という幟を見つけ、もうそれを見たら吸い込まれるように入店してしまい一杯だけ飲んで帰宅。

 

サイを寝かしつけて、それからお風呂に入ろうとするが自分一人だとだらけてしまってなかなか入れない。気合を入れてようやく入浴し、サイが明日着て行くTシャツにアップリケをする。無音で数時間集中。器用ではないがこういう作業は嫌いではない。途中で眠くなりうとうとしながら縫っていたら朝が来た。

 

 

4月7日(土)雨時々曇り 寒いが中は暑くて熱い

最後の仕上げをしているとサイが起きたので布団の上で作業(去年と同じ…デジャヴ…)。サイは玉止めした糸をはさみで切るのをやりたいと言い張りきって切る。やっと完成。朝食後準備して湯会へ出発。友達との待ち合わせに30分ほど遅れるが友達も遅れてちょうど同じ時間になる。よかった。新小岩駅からのバスの中でサイはずっと「ちんちん!」と絶叫し乗客に失笑されていた。私はビールを飲むことしか頭になかった。

 

会場である東京天然温泉古代の湯に到着。受付に並んでいる間、テンションの上がったサイは落ち着かず走り回ったり展示物に触れ気が気でなかった。ようやく中に入り食べ物を調達し他のお子さん連れの方と合流して3階の食堂で乾杯。盛り上がっているライブ会場のある4階と違い、食堂フロアはおじいさんおばあさんが多くいてこれぞ温泉施設というまったりした空気が流れていた。昼間から湯に入って一杯なんて平和そのものではないか。人見知りしてゲームコーナーに逃げてなかなか着席しなかったサイはアイスを買うとようやく落ち着いた。最後はアイスでも何でも落ち着いてくれるなら何でもいいやの気持ち。たことイカのから揚げが美味しかった。嬉しくてみんなでたくさん頼んでいたら偶然会った大森さんファンの知り合いに「あ、宴会してる」と言われる。そうだ、これは宴会だ。楽しい以外の感情がなかった。親としてちゃんとしておかないといけないからと飲むか迷うけどやっぱり飲もう!と飲んでいた方がいて、何も考えずに真っ先に飲んでいた私は少し恥ずかしくなった。普段からそういうことを考えたことがなかった。サイはあんなに会いたいと毎日言っていたCちゃんにかまってもらえたのに照れて顔を背けていたが途中から抑えていたものを解放するようにCちゃんにべったりだった。

 

それからサイと二人で大宴会場に行った。出店が目当てだった。出店者一覧で見てから気になっていた、にどみさんがいらっしゃったのでサイと私の似顔絵を描いていただく。とても優しくて可愛らしい方だったし描いてもらった絵も本当に可愛かった。それから、大橋裕之さんのお客さんが空くのを待って、大橋さんにも似顔絵を描いていただいた。漫画が好きで憧れていたのでお会いできて嬉しかったがとても緊張した。似顔絵を描いてもらう間、あの漫画のような目でじっと見つめられたのでつい目を逸らしてしまった。大橋さんの作品はこの目力と観察力で作られているのかとしみじみ考えた。爆音の中、漫画が好きだということを伝えた。Tシャツを買ってサインをお願いしたら、Tシャツのイラストに合わせてマジックで小さな絵を描き加えてくださり感激。「僕の名前書いていいですか?」となぜか聞かれ、サインだから当然なのに謙虚な方だなと思った。舞い上がってTシャツを受け取った後、代金を払うのをすっかり忘れたまま去ったことに途中で気づいて戻る。写真は嫌だけど好きな人に描いてもらう似顔絵は好きだ。お二人に描いていただいた絵は一生大事にしたい。

 

3階に戻ると宴会は終わったようで他の方が綺麗に片付けをしてくださっていた。勝手な行動をして申し訳なかったなと感じた。それから皆で4階に上がり、大森さんのランチェキ(初めてのランダムチェキ!)を買ったり知り合いに会って話したりして相変わらず楽しかった。会った人は皆漏れなく楽しそうで、それが私には一番嬉しかった。ランチェキを子どものようにお互い見せ合ったりして、子どもの頃妹とお互いが当たったセーラームーンのカードダスを見せ合いっこした記憶が蘇った。

 

まもなくライブが始まり、大森さんが去年と同じように旗を持って登場される。大森さんはチェキと同じミニスカート、ビスチェ風トップス、くるぶし靴下という最強可愛いコーディネートだった。靴下可愛すぎる。大森さんの靴下だけで卒論が書けそうだ。あぁ楽しい、いいなぁと思って聴いていたらあっという間にライブが終わった。日記に書けない嬉しいこともあったし途中涙も流した。久しぶりにライブを聴いた!という実感があった。誰かと感想を言い合うのも違う気がして、サイと二人だけでライブ会場向かいの軽食スペースに行き、サイはアイス(本日二本目)、私は冷えた缶ビールを飲みながらお互い無言で先ほどの余韻に浸っていた。

 

印象的だったのは、大森さんが宴会場の中央で歌われていた時、私はステージから全体を俯瞰するように観ていたのだが、さっきまで出店ブースに座られていたはずの大橋裕之さんが輪になっている観客の後ろの方に立って大森さんが歌う様子をじっと見られているのに気付いた。似顔絵を描いてくれた時と同じ吸い込まれそうな目で瞬きせずに。私はその姿に見入ってしまい大森さんを観るのを一瞬忘れるほどだった。そして大橋さんの漫画と大森さんの歌は通じるものがあるなと考えた。二人ともこの世界で真ん中に立てない人のことをそっと掬ってくれる。

 

全ての出演者が終わった後はDJの音楽でみな楽しそうに踊っていた。私はクラブとかそういう場所には行かない(初めて行ったのは海外留学していた二十歳の時でそれはもうすごい体験だった。別記したいくらい面白い。)のでどうしたらよいか分からず後方に座って踊る人達を眺めながらビールを飲んでいた。でもそれがすごく楽しかった。私は自分が入れなくても人が楽しそうにしているところを見るのが好きだということに気付いた。楽しそうだったら何でも言いという訳ではなく、多分自分がそこに入りたいなと潜在的に思っている時にそう思うのだろう。サイも踊りはしないが楽しそうに観ていた。私達はそういうところが似ている。

 

終了後、3階のゲームコーナーでサイは大人達に太鼓の達人や他のゲームで遊んでもらっていた。古代の湯のこのゲームコーナーが私はとても好きだ。最近の機械はないが、懐かしいゲームがたくさんある。今やネットや家庭でゲームができる時代だからゲームセンターに行く人は少ないかもしれないが、古いゲーム機のデザインや安っぽい音楽、機械に百円玉を投入してあっけなく終る感じとかもう全て愛おしい。中でもエアホッケー(というのか)が小さい時とにかく好きで、ダイエーなどで見かける度に親にねだっていたが毎回はさせてもらえずたまに百円もらえると妹と大興奮してやった記憶がある。あるのを見つけて誰かやってくれないかなと可愛い女の子を誘ってみたら一緒にやってくれて嬉しかった。サイにやらせたら守備ができず、すとーんと盤(?)が一直線にゴールに入っていき、その様子を見て私はげらげら笑っていた。

 

ひとしきり遊んだ後、湯に入る皆と別れて会計を済ませて二人でバスに乗って帰った。出口付近で再びにどみさんに会い、ご挨拶して下さる。サイがにどみさんのバッジをTシャツにつけていたので喜んで下さり、「これは暗闇で光るんだよ」と教えてくれた。バスがなかなか来なかったために駅に着くといい時間になり、サイが空腹でぐずり出したので駅前のガストで私はラーメン、サイはお子様ランチを食べた。ファミレスで二人で向かい合って食事できるようになるなんてね、としみじみした。電車に乗って帰宅。サイはずっと機嫌がよく元気だった。帰宅後、サイが見たいと言うので、部屋を真っ暗にしてにどみさんのバッジが光る様子を見て二人で笑った。お風呂で突然わんわん泣き出したと思ったら風呂からあがった途端に裸のままぱたんと眠った。疲れたよね、でも楽しかったね。

会いたいなと思っていた人にも会えたしとてもいい日だった。最期死ぬ時はこういう楽しい気分のまま死にたいなと思った。また来年。

 

 

4月8日(日)晴れ

楽しい余韻が続く休日。朝起きて片付け(荒れていた)、洗濯。Kくんのお母さんから「遊びませんか?」と連絡が来た。普段人から誘われることがほとんどないので、自分ではなくサイが誘われたとしてもただただ嬉しい。サイと自転車で出発。途中でおにぎりとから揚げを調達して待ち合わせ場所の図書館の横にある公園へ。雨の日に図書館に何度か行ったことはあるが、この公園は初めて。芝生が広くて木がたくさんありとてもいい公園だった。Kくんはサイが保育園に入った数か月の時からずっと一緒だ。先に着くとサイはKくんがいつ来るかいつ来るかとそわそわしていた。

 

Kくんが来てサイがここがいいと言った場所で買ったものを食べる。Kくんのお母さんは近所のスーパーで色々買ってきてくれた。サイとKくんが喧嘩しないようおやつや飲み物は同じものを二つずつ。サイ達が途中で遊具のところまで行ってしまったので近くのテーブルに移動し仕切り直す。サイとKくんははしゃいで鳩を追いかけたり枝やどこかに落ちていた手袋を振り回していた。私はKくんのお母さんと初めてゆっくり話した。色々な話をした。何かの話の続きだと思っていたら急に「初めて会った時(3年前)からずっとサイくんのお母さんと仲良くなりたいと思ってて」と照れながら言われる。三年越しでそんなこと言ってくれるなんてそれ自体がもう可愛すぎて泣きそうだ。誰かに好きだとか仲良くなりたかったとか言うことはあっても言われることなんて滅多にないのでドキドキした。私でよいのでしょうか、という気持ちにもなった。Kくんのお母さんは豪快でまだ離乳食を食べたことがないKくんに焼肉を食べさせたエピソードを私は気に入っている(過去日記参照)。豪快で何でもいいよという感じだけどとても気が利く方で他のお母さんと群れずにいつも一人でいて何となく陰がある。よく笑って話が面白い。私の好きなタイプでないか。そしてKくんも実は私のことが好きでずっと話しているとお母さんは教えてくれてまた嬉しくなる。人に好かれることがないので嬉しくて戸惑ってしまった。Kくんのお母さんは二人目を妊娠してもうすぐ生まれる。性別は聞いていないそうだ。お酒が好きなのでノンアルコールを毎日飲んでいると教えてくれた。また飲めるようになったら一緒に飲みましょうと約束して別れた。声をあげて走るKくんの背中を見て、サイとKくんが成人したら乾杯したいなと一人妄想していた。その時私はかなりの歳だ。それを考えたら一瞬ぞっとしたが長生きしなければ。

 

スーパーで買い物をしてから帰宅しサイは昼寝、私はアイスを食べた。パルムの香るベリーショコラが美味しすぎるのでスーパーで見つけて複数買いした。夕方、サイ起床。テレビでYoutubeを観る。誰かが撮ったアンパンマン着ぐるみショーの動画。それから夕食。鯵の蒲焼と出し巻卵。鯵を焼いていると美味しそうで休肝日にするはずが発泡酒を開けてしまう。夕食後、サイとアンパンマンショーの動画を観ながら踊り狂う。湯会の影響で現場ロスになっている。ライブはもちろん、アンパンマンミュージアムでさえ行きたくなってきた。現場にいる臨場感や気分の高揚は何にも替えがたい。入浴後、就寝。私達は暗闇でにーっと顔を見合わせるのが好きだ。楽しい週末を終え、さあ明日からまた。

春に翻弄されるのも悪くない

3月25日(日)快晴 8分咲き
好きな人に一月ぶりに会うことに緊張し明け方3時に目が覚めそのまま眠れないで起きていたら朝になった。朝になって眠くなったがサイが起きて寝ることもできない。朝食洗濯掃除のち近所の公園にサイと出かける。桜の木の下でコンビニや売店で買ったたこ焼きや焼きそばを食べた後、二人でシャボン玉をした。サイは飽きもせず手元と洋服をシャボン玉液でべとべとにしながら3本分くらいシャボン玉を吹き続けた。私が吹くとシャボン玉ができる前に邪魔をして壊そうとしてくる。サイは自分の小さなシャボン玉に不服そうだったので、私がゆっくり息を吐くとこんな風に大きくなるよと見せるとサイも真似をしてふぅーっとゆっくり吹く。大きなシャボン玉ができると嬉しそうだった。それにしても吹くのが随分うまくなった。最初は吹くか吸うのかさえ分からなかったのに。それから噴水が抜かれている岩場で探検隊ごっこをした。その後滑り台。私は日光に当たり続けてだんだんバテてきたがサイは遊びを辞める気配が全くなかったので「ねぇ、アイス食べない?」とサイの大好物で釣る作戦に出た。それまで何を言っても聞かなかったサイは「アイス」というキーワードで目を輝かせ滑り台を即離れた。大成功。セブンティーンアイスの機械には行列ができていた。ほとんどのアイスが売り切れで前にいた兄弟と思わしき子ども達が「あれこれもない」「あれ?」と×印がついていることにも気付かず押し続けていた。幸運にもサイの好きなバニラは残っていた。日陰に二人で並んで腰掛け二人でひとつのアイスを食べた。あっと言う間になくなった。アイスで満足したサイはすんなり帰宅に応じてくれた。
 
くたくただったので少しだけ昼寝しようと思いサイと一緒に布団に入ったら、次に起きた時には出発時間だった。外で流れる帰りましょうの音楽で起きた。あーやってしまった。サイはまだ気持ちよさそうに寝ている。慌てて準備していたらKが帰宅したので交代で出発。出際に「おかあちゃん、出かけて来るね」と言うとサイは家着から着替えた私をじっと見つめて悟り、怒った顔をして黙り込んでしまった。置いていかれると思って拗ねたようだった。こんな寂しそうな顔は初めてなので戸惑った。「ごめんね、帰ってくるからね」と抱き締めて後ろ髪引かれる思いで家を出た。本当は休みの日の夜は出かけたくない。もうサイのこんな顔は見たくない。
 
大森靖子さんのファンクラブイベント続・実験室へ。大森さんがとにかく可愛かった。チェキ会でうまく話せなかった。いつものことだけど今日は特に酷かった。言うことを考えて何度も頭の中で繰り返していたのにいざ対面すると真っ白になって。帰りの電車で嬉しい幸せな気持ちと自己嫌悪がぶつかり合っていた。好きな人と話すのになぜみんなあんなに冷静でいられるのだろう。好きな人に会えるってそれだけで一大事件だ。今日も可愛かった。遠くから目が合うとにーっと笑ってくれた。帰宅してぼんやりした後お風呂に入って寝た。
 
 
3月26日(月)
サイは私が食べようとした桃のヨーグルトを「ダメ!サイくんの!」と奪って食べる。物は何でも好きに手に入るわけではないと教えたいが、兄弟がおらずこういう時に競り合う相手もいないのでどう教育すべきか悩ましいところではある。私が競り合ってもなんだか違う気がするし。そこは保育園や学校で気づいてもらうしかないのか。月曜日なのでバタバタ登園。新年度に備え、新しい部屋に移動し今度は出入り口に近いので廊下を歩く手間が減る。それだけで時間短縮になっている気がする。
昼、同じ年頃の子どもを持つお母さん社員さん達とランチ。もうすぐみんな違う支店に行ってしまう。誰も同じ境遇の人がいなくのは少しだけ不安だ。明日休むのでお迎えを代わってもらい少し残業して帰宅。サイは先にごはんを食べていた。夕食後、サイとお互いのお尻を先にタッチした方が勝ちという謎の遊びをゲラゲラ笑いながらやった。お尻とおっぱいがサイの最近の一番の興味対象らしく毎日触ってくる。私が逃げるとひーひー笑って追いかけて来る。サイが逃げて私が仰々しく追いかける。ドタバタとトムとジェリーみたいだった。入浴後、就寝。
 
 
3月27日(火)快晴 9分咲き
朝。やや寝坊。みかん味のヨーグルトがイマイチだったのか半分食べたところで「よるにおいとく」と言う。私が残った食べ物を次に回す時にサイに言うのをよく聞いて覚えていたようだ。一日有休を取っていたのでまあいいかという意識でいたら出発がいつもより1時間遅れる。サイが「こっしーやってない」と言ってたが時間がずれているので終わっていた。「おかあさんといっしょ」を観ていた。9時すぎに保育園に着くとほとんどの子が既に登園していて教室内は動物園状態だった。え、こんなに煩かったけと驚くほどぎゃーぎゃーしていた。まあ一人でも相当煩いので納得したが先生はすごいなとしみじみ思った。「おうちが~」「あれが~」と次々に子ども達が話しかけていてもちゃんと優しく対応していた。今年のクラスの先生は皆とてもいい先生だが、来年は先生一人当たりの園児数も増大する上に新しい先生になるから少し不安もある。
 
サイと別れて午前中、某所で某相談。このために休みを取った。具体的なアドバイスをもらえて前向きになれた。これを頑張ろうという強い意思も芽生えた。何にもやらないことには何にも始まらない。相談を終え外に出るとほぼ満開に咲き誇る桜が美しかった。外国人が写真を撮っていた。私も撮ろうと背後に接近して撮っていたら気付かなかったらしく振り返って驚かれる。桜を撮るのは難しい。カメラに収めると何か色褪せてしまい、眼で見たような光景が撮れたためしがない。
 
午後、さいあくななちゃんの展示を見に新宿から小田急に乗り岡本太郎美術館へ。感想や気持ちを綴っていたら長くなったので別途。
夜、お迎え。野菜の甘辛卵とじ、しらすごはんという質素な夕食。サイは私が見ていない一瞬にシラスをパックごとひっくり返し中身を全部自分のお茶碗に山盛り入れていて、「わぁ!かけすぎだよ」と驚くと怒れらていると感じ取ってわんわん泣いた。別に怒っているわけではないのになぁ。難しい。入浴後、就寝。布団に入って『おおかみと七ひきのこやぎ』を読んだ。おかあさんヤギはおおかみが寝ている間にお腹を切り裂いて食べられた子ども達を救出し代わりに重い石を詰め、そのせいでおおかみは井戸に落ちて死ぬ。知っているはずだったけど改めて読むとおおかみが可哀相に思えてきた。サイも「なんでおおかみさんいしいれられちゃったの?」とおおかみに同情していた。私はその気持ちが大切だと思ったので「おおかみは子ヤギを食べちゃったけどおかあさんヤギがおおかみのお腹に石を入れたのはよくないね」と思ったことを返したら納得していたようだった。
 
 
3月28日(水)快晴 満開
これぞ春という陽気。サイは起きる直前、突然「あははははー」と起きている時と変わらず大きな声で笑った後またすーっと眠った。寝言だったらしい。何の夢を見ていたのだろう。パンとバナナと牛乳。バタバタと出発。新しい教室になりサイがコップやタオルを自分で設置してくれるようになったのでとても助かる。保育園ではほとんど漏らすことがなくなったのでオムツも持っていかなくなって楽になった。それは赤ちゃんの時から思っていたけれど成長するにつれて荷物が減る。もちろん嬉しいのだけど私が数年前と変わらずぼんやりしている間に着実にサイは大きくなっていて驚かされるし僅かに寂しい。
 
出社して午前中外出。気持ちが良い天気。打ち合わせなのに眠くなってしまった。退社後、会社の近くを歩いて満開の桜を見る。夜空に浮かぶ白い桜はこの世のものでなく、いつか見た夢のような光景だった。地面から自ら根を引き抜いて今にもずずずずと歩き出しそうだった。怖くて美しい。当たり前だが生き物なのだなと思った。遠くに月が見えた。写真に撮ったが眼で見たようには撮れず後で見たら夜空にポップコーンがはじけているようだった。この光景を切り取ろうとすること自体間違っているのかもしれない。駅の雑貨屋で一目惚れしたクジラのぬいぐるみを買った。眼が半開きでなぜかもしゃもしゃのヒゲがあり絶対におじいちゃんだと思ったら「赤ちゃんクジラ」とタグに書いてあった。でもどう見てもおじいちゃんだ。
 
 
3月29日(木)快晴 満開 
春だ。サイが気持ち良さそうに寝てなかなか起きないので「新しく来たクジラちゃんいるよ!見てみる?」と言うと飛び起きた。ちょっと奇妙な顔つきだったので気に入るか不安だったがとても気に入ったようでひゃーと言って抱き締めた後一緒に朝ごはんを食べていた。「クジラちゃんパン食べるのかな」と聞くと「くじらちゃんパンきらいなんだって。バナナとぎゅうにゅうがすきなんだって」と自分のコップに入った牛乳を飲ませてあげていた。それから机の上に置いていたキャラメルコーンの小袋を勝手に開けて食べ、「くじらちゃんこれもすきなんだって」と言う。「え、キャラメルコーンも好きなんだ!というかそれ全部食べたらダメだよ」「うん、ばななとぎゅうにゅうときゃあめるこーん」それって本当はサイが好きな物じゃないだろうか。バナナと牛乳とキャラメルコーンが好きなクジラ。サイはメロンパンナとクジラちゃんを両手に抱いて登園。自転車に乗っているとクジラちゃんはヒゲが風でなびくのを嫌がっているとサイは教えてくれた。
 
夜、お迎え。サイの入園以来ずっといた園長先生が3月末をもって退職される。園長先生はとても優しく可愛らしくサイにも他の生徒にもいつも名前を覚えて話しかけてくれた。入口には季節折々の綺麗なお花や飾りがいつも飾ってあった。そういうのが好きな人なんだろうなと思っていた。サイは美しく飾られた花を見る度に「おかあちゃんのすきなおはなだね」と教えてくれた。保育園の雰囲気はこの園長先生によるものが大きいと思っているからいなくなるのはとても寂しい。別の保育園に変わってしまうくらいの動揺と不安がある。お母さん達からの信頼も厚いので、皆次々に挨拶していた。私も話したいと思ったが人がたくさんいたので遠目から見ていた。こういう時に気後れしてしまいいつもうまく入れない。昔からずっとそうだった。サイと自転車に乗って帰宅。コンビニでサイはお菓子を我慢できた。偉い。
 
帰宅即ビール。飲みながら料理するのが好きだ。夕食はしらすとチーズのオムレツ(サイが卵を割ってかき混ぜてフライパンに入れた、しらすとチーズめちゃくちゃ美味しい!)、トマト、ミートボール。夕食後、サイは「くだものやさんごっこ」をしたいと言い、いつか私がしたようにダイニング椅子を一つ運んできて空洞になっている背もたれに自分でハンカチをかけた。それからもう一枚ハンカチを持ってきて頭に巻いてくれと言われた。果たしてそれが果物屋さんの正しい姿なのか分からないが赤ずきんというか真知子巻にしたら喜んでいた。それでハンカチの奥からいらっしゃいませーと声をかけてくれたので「桃下さい~」と言うと私が以前作った紙でできた桃をくれた。顔がついているのとないものがあったので、ないものには描くように言われる。入浴後、就寝。シャーリー・モーガン作/エドワード・アーディゾーニ絵『あめあめ ふれふれ もっとふれ』を読む。読む本はいつもサイが選んで保育園から借りて帰る。わりと絵本には詳しいと思っているがまだまだ知らない絵本がある。『あめあめ ふれふれ もっとふれ』も初めて知ったが挿絵も言葉もとても好きな感じだった。なかがわちひろさんの訳がよかったのかもしれない。手前味噌だが、読み聞かせが随分上手くなってきた気がする。登場人物ごとに声色や抑揚を変えると楽しい。あと台詞には感情を込めること。とにかく役になりきりその場面に身を投じる。雨で外に出られない子ども達が窓の外を眺めながら色々と妄想する話だった。やや話が長かったので私の方が先に眠くなり読みながら全然関係ない言葉を口走ったりして何度もサイに「ちゃんとよんで!」と注意される。サイも眠そう。なんとか最後まで読み終えて絵本を閉じたらサイは即寝。とうに終わったのに未だ観れていない三回分の『anone』を観たかったが私も眠気に負ける。
 
 
3月30日(金)快晴 肌寒い
昨日までと打って変わって寒い。花冷えというやつだ。朝ごはんのあんぱんを割って「くりーむがよかったなぁ」とつぶやく。え、餡子好きじゃなかったっけと思いつつ子どものブームはすぐ去ることを改めて実感する。昨日コンビニで買ったブルガリアヨーグルトを二つの器に分けて入れてくれる。全然こぼさなくて上手に入れられるようになったなぁと感心。やりたがっているし料理もどんどん手伝ってもらおう。
 
お昼休み、そうだ園長先生に花を贈ろうと急に思い立ち、持参したおむすびを3分くらいで食べて会社から少し歩いた場所にあるお気に入りの花屋さんに行った。今日は予約なしでは難しいと最初言われとても忙しそうだったが諦めきれずお願いすると特別に作っていただけることに。好きな人には好きな花屋で買いたい。サイが好きなピンク色で小さな花束を作ってもらう。自分のものでなくても花屋で色んなお花を見たり花束を持って歩いているだけで嬉しい。ありえないくらい大きな花束をいつか誰かにあげてみたいしもらってみたい。時代が変わり技術が発達してどんどん色んなことが簡素化されても、花を贈る文化だけはずっと残り続けて欲しいなと考えていた。それから、普段あまり行けないミニストップで「完熟あまおう苺ソフト」を買い、公園のベンチに座って食べた。空気は冷たく肌寒いけれど日差しがぽかぽかと気持ち良かった。桜の花びらが空を舞っていた。右隣の男子高校生は塩むすびを食べていた。左隣のおばあちゃんは何もせずただ桜や空を眺めていた。私は綺麗なピンク色をしたアイスを食べながら色々なことを考えていた。静かだった。外に公園で過ごすのは気持ち良いので昼休みにまた来ようと思う。
 
夜、お迎え。園長先生に挨拶する。昨日と同じように園長先生に挨拶している数組の親子がいた。話している親子の後ろで話が終わるのを待ちつつサイに「園長先生に花束渡してね」と言うとサイは使命感に燃え、親子に割って入って渡そうとしたので「まだだよ、順番ね」と制止した。こういうところがいかにも子どもらしくて良い。前の親子が去るとサイは少し恥ずかしそうに花束を渡した。私は園長先生がいてくれたことでサイというより自分がどれほど救われたか安心していられたか、思いの丈を伝えた。クラス最後の日なので、保育園の廊下は挨拶する親や先生でざわついていた。私が数日前に出た貼紙通知をちゃんと見てなかったせいで見落としていたが、担任のK先生(MJ似の一番歳上の先生)が別の園に転勤で今日で最後だと知る。お花も手紙もない。しまった。とにかく挨拶はしようとサイと先生にお礼を言う。サイは照れて話の途中でどこかに消える。状況を呑み込めていないようだったので「K先生と今日でもうお別れなんだよ」と教えると「なんで?」「別の保育園に行くんだよ」「……Kせんせいにえをあげたい」紙がない。仕方なく私の鞄に入っていた画用紙の切れ端と保育園にあったマジックを渡すとサイは廊下の床に座ってアンパンマンのような顔を描いた。それを持ってまた教室に入り奥で書き物をしていたK先生に渡す。K先生は驚いたような顔をして喜んでくれた。涙目だった。本当はもっとちゃんと用意できればよかったのだけど。改めてお礼を言い先生がサイに向き合おうとするとサイは教室の扉まで逃げ背中を向けチラチラこちらを見てスカしたような顔をしていた。完全に照れ隠し。それで先生はまた涙目になった。サイらしいなと私も思った。いつもより遅めに園を出て帰ろうとしたらサイは誰もいない暗い園庭から明かりがついた教室の窓の側まで一人歩いて行き、中にいるK先生をじっと見ていた。私はあえて一緒に行かず離れて見ていた。しばらくして中にいる先生が気づき泣きそうな顔でサイに手を振った。サイは最後の別れが済むと満足そうに私のところに来た。サイなりのやり方。春は出会いと別れだなとしみじみ感じながら自転車を漕ぐ。月が綺麗だった。

帰宅して夕食。豚肉と小松菜の卵炒め、トマト、ごはん。食後、『ぐるんぱのようちえん』。私も好きな絵本なので張り切って読む。入浴後、就寝。


3月31日(土)快晴 散り始め
春の陽気。朝ごはん、掃除洗濯。サイと歩いて公園へ。桜がはらはら舞っていて美しかった。そういえば春らしい写真を撮っていなかったと気付きサイに桜の前に立ってもらいiPhoneを向けるも歯を剥き出して変顔ばかりされる。公園は花見客で大混雑。この同じ場所で人が誰もいない真夏の炎天下、たった二人でピクニックしたなと急に思い出す。売店で適当に買ったものを誰かのシートとシートの間のスペースで食べる。大きなシートを広げて無人で場所取りされている部分がけっこうあり、昼間いないのなら昼間は他の人に譲ればいいのになぁと少し思う。でも見えていないだけで実は透明な人達が今そこで宴会していたらと想像して面白くなった。幽霊のお花見。

それからサイとTSUTAYAに行ってマクドナルドでアイスとポテトを食べた。食べ終わってサイはこんなアイス食べたくなかった、バニラアイス(公園のセブンティーンアイス)がよかったと急に騒ぎ出す。収集つかずそのまま手を引いて歩き始める。サイは歩きながらわんわん泣き叫んでいだ。あー仕方ないなと思っていたらいつも通る川が流れている橋に差し掛かり、二人で「あっ」となった。川がピンク色だった。よく見ると桜の花びらが水面にびっしり浮かんでいた。絵本みたいになんとも不思議な光景でサイと私はしばし無言でその光景に見惚れた。サイは泣き止んだ。「ピンクだね〜」と言い、また歩み出した。春がサイを泣き止ませた。

再び公園で遊んだ後帰宅してサイは昼寝。私はまともに食べなかったので急にお腹が空き、いただいたおやつを食べた。サイはまもなく起きた。夕食は買ったもので手抜き。入浴後、就寝。


4月1日(日)快晴 桜吹雪
お花見シーズンもいよいよ終わりか。朝からサイと電車に乗り、去年も行ったお花見に出かける。もうベビーカーなしでどこにでも行けるようになった。駅で友達と待ち合わせしてスーパーで買い物してバスに乗って向かう。スーパーで食品を触ったり走り回ることもなくなった。成長したなぁ。バス停や着いてからも迷い辿り着くまでに相当時間がかかったので知っている人の顔が見えた時はほっとした。主催のSさんが着いて荷物も置かないうちからビールはここにあるよと教えてくれて、私が今ビールを飲みたくて仕方ないことをよく分かっている人だなと思った。陸に上がると死んでしまう魚のような顔をしていたのかもしれない。

大勢の大人達に圧倒されて最初は靴を脱いでシートに座ることさえしなかったサイだが、サイに優しく接してくれた人達のおかげで次第に打ち解けて笑い声を上げていた。全く去年と同じだ。サイはギターを弾かせてもらったり、食べ過ぎて膨らんだお腹をふざけて見せびらかしたり大人達に混ざって楽しそうにしていた。私の方が多分うまく混ざれておらず、シートの端の方で飲んだり食べたりしていた。それでも好きな人達とゆっくり会話して楽しかった。サイは人見知りが激しいが慣れると愛嬌を振りまくのて世渡り上手というか私よりずっとうまくやっていけそうだ。ギターを弾いて好きな歌を歌う人がいたり辺りを散歩したり眠る子がいたり自由な空気が流れていた。花びらがブルーシートの上の食べ物や人の頭に舞い落ちていた。サイは花びらを「はる」と呼び必死に集めていた。

暗くなり解散してまたバスに乗って帰宅。サイは帰りの電車で寝てしまい抱えたまま家まで歩いた。夕食後、入浴。布団の上でかるたをした後パタンと就寝。楽しかったね。

 

去年のお花見以来一年ぶりに会えた人や久しぶりに会えた人がいて嬉しかった。こうやって季節が巡り春に桜が咲き、花見という大義名分のもと何となく同じ場所に集まって同じ景色を見ながら話したり笑ったりしてそれぞれまた元の生活に戻っていくって何だかいいなと思った。冬が終わり春が来ると植物が芽生え生き物が動き始めて私も毎年少し浮き足立ってそわそわする。外に出かけたくなるしその時にしかない美しい時間を好きな人と共に過ごしたくもなる。訪れる春はあと何回だろうか。また来年。

なぜしずかちゃんはお風呂が好きか将来君とビールを飲みながら語り合いたい

日記がちゃんと書けなかった週。いつも習慣として朝、前日の日記を書くが今週は何となく手がつかなかった。そもそも日記を書くのは義務でないし誰かに求められているわけではない。サイの成長とそれに関わる私の生活があまりにも面白いので記録しておきたいと思って始めただけだ。最初の日記にも書いたが理想は武田百合子さんの『富士日記』。作家である夫・武田泰淳との富士山での暮らしを綴ったものだが、初めて読んだ時、毎日休むことなくこんなに細かく記録された日記があるのかと驚いた。何を食べたとか、どこへ行ってどんな人に会って何を感じたとか生々しいほど仔細に記されていて自分がそこで一緒に生活しているような気さえして、日記の世界に引き込まれるように熱心に読んだ。『犬が星見た』というロシア旅行記や他の随筆も入手できるものはほぼ全て読んだが文体や瑞々しい表現は一貫している。いつだったか、武田百合子の文章が好きだとある本好きな人に話した時、「あの人の文章はちょっと怖いよね、読んでいると怖くなる」と言われたことがある。それも分かるなと思った。感情表現が繊細すぎて時に怖くて震えるが、呼吸するように継続された記録は雪の結晶のように美しい。だからそういう記録をしてみたいと思った。私の日記を読んでくれている(いた)友達に「事細かすぎて滅入る」と言われた時やったーと思った。

あと、町田康さんの日記(http://www.machidakou.com/diary/ )も好きだ。百合子さんのように細かくないが、繰り返し同じ表現方法で毎日休むことなく淡々と記されている。続けて読んでいると暗号のような町田さんの造語が何を指しているか理解できて面白い。小説の時とは違い、続けて読んでいる人にだけ分かる造語や言葉の遊びが町田さんらしくてわくわくする。百合子さんや町田さんのように毎日休みなく、がどうしてもできずに途絶えてしまうこともあるが日記は可能であれば死ぬまで永久に続けたいと思っている。やれと言われると途端に無理になるが、誰にも求められていないことを続けるのが私は好きだ。


前置きが長くなったが、以下、今週したことや考えたことの記録。2月に行った汝、我が民に非ズのライブのMCで町田さんが「印象的だったり良かった思い出はわざわざ記録しなくてもちゃんと頭の中に残り続ける」と言われていてそれもそうだなと思っている。書いていることが全てではないし、逆に記録することがどうでもいいことという訳でもない。

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サイはドラえもんの漫画に興味津々。コンビニで買った週刊誌のようなドラえもんの漫画雑誌(映画の原作を集めたもの)を放置していたら、ドラえもんを最近分かってきたサイが勝手にめくって読んでいた。漫画にはまだ興味を示さないと思っていたので意外だった。藤子・F・不二雄先生の画力ゆえか。台詞を読むよう指示される。漫画の読み聞かせは今がどのコマか指ささないといけないので絵本よりずっと難しい。しずかちゃん(なぜかいつもドラミちゃんと呼ぶ)のシャワーシーンを気にして、「なんではだかなの?」と聞かれた。「お風呂に入っているからだよ」「なんで?」「しずかちゃんはお風呂が好きなんだよ」「なんで?」「え、なんでだろう…気持ちいいからかな」しずかちゃんがなぜ入浴が好きかとは、ドラえもんにおいて極めて重要かつ難しい論題だ。サイは毎日このコマばかり見て、同じ問いを一日十回は繰り返す。気に入りすぎて、白い紙を持って来てこれに模写しろと指示された。描くと切り抜くよう言われハサミで切って渡すと愛おしそうに裸のしずかちゃんを手に持っていた。私が最近、未読の藤子作品を読みたいと思って買った『エスパー麻美』を開いても裸のシーンを探し、冒頭の、麻美のお父さんが裸の麻美をモデルに描いた絵を見つけて大喜びしていた。裸とかおっぱいとか相当好きらしい。しずかちゃんと麻美の胸や裸の違いについて分析までしていたので笑ってしまった。もしお父さんが描いた絵のとおりだとすると、麻美ちゃんは年齢の割に豊満な体つきだ。エロを全面に押し出した漫画は少し苦手(浅野いにお『うみべの女の子』は話が好きなのに性描写が生々しすぎて挫折した)だが、手塚作品や藤子作品のエロ要素は私も好きだ。小学校くらいの時家にあった『クレヨンしんちゃん』や公共図書館で読んだ『火の鳥』で裸を見つけては興奮していた記憶が蘇る。それにしてもサイはまだ3歳なのにすごいなと思う。


サイとまたTSUTAYAに行き『それゆけ!アンパンマン シャボン玉のプルン』(2007年公開)を借りて観た。シャボン玉がモチーフなのとプルン(声は水野真紀)が可愛かった。プルンはとにかく自己評価が低いヒロインで早くアンパンマンを助けてやれよという苛立ちも含め私自身と重ねて観てしまっていたので最後は少し感動した。サイも気に入って、この場面でこれがこの色になるとか細かく記憶して後で教えてくれた。ヒロインに感情移入できなかった『妖精リンリンのひみつ』(2008年)より面白かったが、映画版アンパンマンは脚本が「ヒロイン登場、性格的な理由でヒロイン孤立、バイキンマンアンパンマンを倒すために最強メカを発明、街や自然を破壊、アンパンマン立ち向かうが倒れる、仲間もやられる、メカが故障してバイキンマンの手に負えなくなり暴走(責任ない悪として描かれるのでここはもしかしたら重要、)、意を決したヒロインが力を発揮する、メカで何か(花や玩具など)に変えられたキャラクター達が力を合わせてバレーボールのトスのようにアンパンマンの顔を運ぶ、アンパンマン復活、バイキンマンはメカと共にやられる、再び訪れる平和、ヒロインとの別れ」のパターンばかりで、それから脱却してもいいのではとおせっかいながら思う。『いのちの星のドーリィ』はパターンを踏襲しつつも「生きることとは何か」という投げかけがあり描写もヒロインも異質で面白かった。どうせ子ども向けと高を括らず、制作側は手を抜かずドーリィみたいな新作を本気で作って欲しい。


サイがお風呂のお湯でカプチーノを作ってくれた。アンパンマンに出てきたカッパチーノちゃんの影響。アンパンマンには笹の葉寿司や土瓶蒸しなど古典的な食べ物からマカロンシナモンロールなど新しい(?)スイーツまで幅広いキャラクターが登場する。河童に似たカッパチーノちゃんは「~ノ」を語尾につけた話し方をするので、サイも真似して「ありがとーのー」とたまに言う。保育園でもブロック遊びやままごとが好きらしいし最近料理も手伝いたがる(卵を割るのが特に好き、見ていて冷や冷やするがやりたいと言うのでやらせる)ので、何か創作したり組み立てるのが好きらしい。対して絵はあまり好きでないよう。私が絵を描くのを眺めるのが好きで「◯◯かいて」とよく言われる。私も小さい頃友達のお母さんが絵がとても上手で、線を描く手の動きや絵が出来上がる光景を眺めるのが好きだったなとふと思い出す。


最近服を買ってくれる(買ったあげた)とサイはよく言う。ある時「おかあちゃんにおようふくかってあげたよ」と急に小声で耳打ちしてきて、「え、どんな服?」「ピンクだよ」と買い物完了した妄想までしていた。何もなくてもその気持ちと言葉だけで嬉しい。ピンクの洋服はサイの中で憧れの服なのかもしれない。幼児雑誌にプリキュアのコスチュームが載っていて欲しがっていた。どの色(プリキュア)の衣装がいいのか聞いたらピンクだった。推しは黄色だが身に纏いたいのはピンクらしい。その感覚、何となく分かる気がする。


サイのバナナブームは終焉した模様。食べるか聞いてもあまり食べたがらなくなった。子どもの執着(特に食べ物)は一時のブームだとある時から気が付いたので、そればかり食べたいとせがまれると以前は戸惑っていたが最近はどうせいつか飽きるだろうと予想し、健康に影響ない範囲で自由に好きなだけ食べさせている。友人の子が同じようにレーズンパンにはまっているけどそればかり食べさせていいものか悩むと言っていたが、いいのではないかと私は思う。好き嫌いも同様で、嫌いなものを食べるよう促しはするが泣かせて嗚咽させながら強引に食べさせるのではなく、どうしても嫌なら少し食べたところで残してもいいことにして、そうするといつの間にか食べられるようになっていることもある。私は幼少期、食事を残すのが許されなかったので絶対食べねばという強迫観念から嫌いな物への嫌悪感が増大し、大人になった今も嫌いなままでいる。保育園の保健師さんが、「私なんて小さい時は卵しか食べなかったんです。本当に。それでもこんな風に育ったので好き嫌いなんて矯正しなくていいです」と言っていた。極端だが正論かもしれない。ちなみに今は鮭フレークブームだが、塩分がちょっと心配。


まだ漏らすこともあるがトイレがうまくなってきた。自分からトイレに行きたいと言ってくれるようになった。ゆるいアンパンマンブリーフしか持ってなかったので、ちょっとボクサーパンツ風のかっこいいブリーフを買ってあげたら急に男になった気がした。似合っていたがもう子供でないのだなと少し寂しくもなった。


珍しく人と食事する機会が多い週だった。普段何かするのに一人で平気だし、むしろ映画や買い物は一人で行動したい派なのだが、食事、特に外食に関しては一人だととても寂しい。一人で外食できないこともないが、チェーンの珈琲ショップで一気に食べて店を退出するので味わった気がしない。カウンター席でお酒があるとまだ大丈夫だが、例えば空間にゆとりのあるおしゃれなカフェとか、なんだか落ち着かずすぐに出てしまう。でも一緒に食べる人がいると嬉しいし楽しい。そして飲み込むように食べなくていいので美味しい。会社のランチも普段は席で急いで食べるが、人と食べると話もできて全然違う。業務中は話せない会社に対する違和感や意見交換もできる。でも飲み会はやや苦手。人数の問題かもしれない。多くて四人までがいい。食べログで行きたい店をリスト管理(そんな機能があるとは!)している友人にわぁすごいと驚いたほど最近食や飲食店への興味が薄れていた(空腹を満たせれば何でもOKの意識だった)が、好きな人と食べるごはんって美味しいのだなと改めて実感した。サイと食べるごはんも嬉しい。美味しいねってお互いに笑いながら食べるが調子に乗ってサイに話しかけていると「たべてるときはおはなししちゃいけません!」と保育園の先生を真似て注意される。


観たい映画がたくさんある。が、残念ながら観に行く時間がない。『素敵なダイナマイトスキャンダル』『シェイプ・オブ・ウォーター』『15時17分、パリ行き』『彼の見つめる先に』。良い作品や好きな監督の作品はDVDでなくちゃんと映画館で観るべきだと誰か言っていたが実現できないのがもどかしい。最近『シングストリート』をTSUTAYAで借りた。公開当時観れなくて悲しかった。ネット配信に未だに慣れないので結局TSUTAYAみたいな実店舗でパッケージを見て選ぶ方が私に合っている。映画ならまだいいが、絵画の展覧会などは見逃したら終わりだから悲しい。ルドン展、観たいのに一体いつ行けるだろう。5月までだからと悠長にしていたら終わってしまう。絵は後で図録を見ても生で見た時の感動は得られない。小学校2年生の時、展覧会で本物の「ピアノを弾く二人の少女」を観て衝撃を受けてからずっとルノワールの絵が好きだ。学校の宿題として提出するキャンパスノートにその感動を綴ったのを覚えている。だからサイにも年齢でまだ早いと制限せず色んな絵や芸術を見せてあげたい。生で観るって何よりもすごいことだと思うから。老後は絶対映画館&美術館に通い詰める婆になるぞ、足腰鍛えなくては、の気持ち。


例の事件(土地の名前がついた事件名を書いているだけで気分が悪くなったので辞めた)に対し、「殺人が犯人にとって疑似的な生きがいになっていた」とコメントしていた専門家がいた(犯人はヒモになりたかったと言っていたが全く信じられない)が、もしその通りだとしたら他人の生を繰り返し奪うことで生き伸ばすとはこれ以上ないほど自己中心的で悲しい思考だ。殺人という行為が、自己中心的快楽を満たす日常の延長か何かのように解釈されていたのかもしれない。理解の範囲を超えている。生きがい、とは。


生きがいも負に打ち勝つための何かも、それを求める時、絶対に人への依存であってはいけないと改めて考えた。そうなるのを自分が一番恐れている。例の事件のように殺人まで結びつかなくとも、対象が人である時点で本当の救済は得られない。あるどうしようもない鬱憤や手に負えない感情があったとして、その救済を人(サイも含めて)に求めるのではなく、生産性の有無に関わらず自分が満足いく形で創造や行動に変換するのがベストなのかなと思う。例えば絵を描いたり楽器を演奏して手や身体を動かすとか。例えばどこかに意思を持って出かけるとか。例えば仕事頑張るとか。変換させる何か。それを必死に遂行すること。「あの死にたみを 朝に変えたり 金に変えたり 髪を染めたり」という大森さんの好きな歌詞(『地球最後のふたりfeat. DAOKO』より)を度々思い出す。絶対勝つから待ってろよ、といつも自分自身に言い聞かせている。