カニ日記

息子の成長と日々の記録

肉と雪と三人のひげおじさん

2月8日(金)
母が今日から東京に滞在。サイのお迎えに行ってもらう。夜、Fさんと会う。初めて二人きりで会った。私が肉を食べたいとラインしたらその3分後に予約してくれたお店のカウンター席に二人で並んで座った。予約ありがとうと伝えたら「肉が食べたいという気迫がものすごく伝わってきて、予約しなかったら刺されるんじゃないかと思った」と笑われた。恥ずかしい。クリームチーズと鶏肉のパテ、ローストビーフ、ラム肉のグリル、牛タンのアヒージョ、手製ソーセージ、牛すじ肉のパイ包み焼き…あらゆる肉料理をお腹いっぱい食べた。全部びっくりするくらい美味しくて私は何か口にする度においしいおいしいとそれしか言語がなくなった人みたいに言い続けていた。「あーこれも食べたいな、いやでもこれも気になるなー」と私が迷っていたらFさんは全部頼んでくれた。パイ包み焼きが焼ける様子を二人でカウンターから眺めた。焼けたパイが運ばれてきて、私がパイを崩すという大役を担ってよいかスプーンを握ったまま躊躇していたら「ほら」と優しく言ってくれた。私が渡した誕生日プレゼント(渡すタイミングを計るのが苦手すぎて待ち合わせの駅で会った瞬間に押し付けた)を開けてから、Fさんはそっと紙で包まれた箱を鞄から出して私にもくれた。私がないから欲しいと言っていたコーヒーミルだった。私たちは誕生日が近い。すぐに時間が来てしまい、最寄駅まで一緒に電車に乗ってくれて、改札で別れた。Fさんはいつも別れる少し前、寂しそうな顔をして何も話さなくなる。だから私もあまり話さないようにした。そして私はFさんのことが好きだなとようやく自覚した。

帰宅したらサイはお風呂上りでご機嫌だった。三人で二枚の布団で寝たから少し狭かった。いつもと寝る向きが変わって旅先に来ているような変な気分になった。窓から入り込む冷気が寒かった。サイと母の寝息が聞こえていた。ついさっきなのにずっと前みたいな出来事の余韻に浸りつつ眠った。


2月9日(土)
朝起きて窓の外を覗くとたくさんではないが、はらはらと雪が降っていた。雪が道や屋根に積もり明るくて眩しい。昼前、母と一日違いの飛行機で着いた妹も家に来てそれから四人で出かけた。サイは外を歩きながら、「みちがしろい!」「あっ!はっぱもしろい!」「くるまもしろい!」と雪が積もった様子を興奮しながら実況してくれた。最初ルミネで昼ごはんを食べようとしたら子どもが入りにくそうな若者をターゲットにしたおしゃれカフェみたいなお店ばかりで全員で戸惑って、結局隣の東武のレストランフロアに行った。エレベーターを降りたら不二家のレストランがあり、サイもペコちゃんのお子様ランチが食べたいと言うのでそこで食べることにした。私の知っている不二家と違って店内はブルーのクロスで統一され高級感があった。四人掛けのテーブルに、サイが母と私が妹と向かい合うような形で座った。

小学生低学年くらいの頃、母と妹と三人で元町の中華街の近くにある不二家によく行ったのを思い出した。震災の少し前、80年代後半から90年代初めくらいまできっとその時代のどこの家庭もそうだったように我が家はバブルの名残でそこそこ裕福だった。週末は母と妹と三人で電車に乗って元町や三宮に出かけてデパートの玩具売り場で何か買ってもらうのがお決まりだった。そしてなぜかお昼ごはんは元町の不二家で食べると決まっていた。私はいつも目玉焼きハンバーグを、母はいつもたらこのスパゲッティを食べた。母は母の母、つまり私の祖母に小さい頃よく不二家のお菓子を買ってもらったらしい。それで親しみがあったから私たちをよく不二家に連れて行ったのかもしれない。

食事が出てくるまでの間、私が思い出したように、母や妹も昔三人で出かけた時の懐かしさに浸っているようだった。私は帆立と海老のドリア、妹はナポリタン、サイはお子様カレーを頼んだ。母はやっぱりたらこのスパゲッティを頼んでいた。昔と味が変わった、あの時より食べやすくなったと言っていた。母は嬉しそうだった。こういうこと、もっとしなくてはいけないのではないか、と突然感じた。母を全面的に好きじゃないし価値観が合わないしこの先絶対一緒に暮らしたくないけど、この人は何年後かそう遠くない先に、彼女の人生を終えてこの世界からいなくなるのだなということを当たり前だが急に実感した。

予定があるという妹と別れて三人でデパートをふらふらしてから夕方帰宅。晩ごはんは私が作った。白身魚のパン粉焼き。母は肉が食べられない。ちょっと味付けが薄かったがおいしいと言っていた。母は今日から妹と泊まるので夕食を食べ終えるとホテルに帰って行った。妹はどこに行ったのかわからない。昔からそういうところがある。


2月10日(日)
ルパパト最終回。感想は別途書きたい。終わり方がとてもよかった。サイとパジャマのままルパパトを見てたら母がホテルからやって来て、「テレビ観てないで準備しなさいよ」と言ってきた。「いや、最終回やから」と言っても事の重大さをわかってもらえなかった。サイの髪が伸びすぎていたので美容院。私の通っている美容院は乗り換えが面倒で駅からも遠いのでサイを連れて行くのがいつも一苦労だ。でもサイも美容師さんに懐いているし、他に良い店も思いつかない。母がいて助かった。いつもサイとそうするようにモスカフェに入ったらメニューに肉のバーガーしかなく、母は食べるものがないと困ってケーキを食べていた。ちょっと悪かったと思ったが表参道にはモスくらいしか入れそうな店がなかった。子連れで食事するのはなかなか大変だ。

三人で来ても美容師さんは特に気にする様子もなかった。「あれ、今日はお母さんも一緒ですか!?」とかわざわざ聞いてこない。察してくれる。そういうところが好きだ。カット中、サイは相変わらず固まっていた。私は前髪だけ切ってもらった。「いつまでこうやって一緒に美容院とか行けるのかなーと思います」と私が言うと美容師さんは「二十歳くらいでも母親と来ている人がいますよ」と教えてくれた。二十歳のサイを想像した。まさか一緒に髪を切りに行くことはないだろうが、良い関係でいたいなとは思った。サイがビールが飲めるようになる頃、私はもう初老だ。バラバラに暮らしているかもしれない。それから反抗期の話をした。美容師さんにも反抗期はあったらしく、意外だったので「なさそうに見えますがあったんですね」と言うと「きっとあった方がいいですよ、ありましたか?」と聞かれたので「アイロンとか投げてました」と答えた。反抗期、人に当たれなくて色んなものをぶん投げていた。親も教師も、周囲の大人が全員憎くて嫌いだった。自分のことも嫌いだった。自分のいる場所が怖かったのだと思う。今もまだ怖いけれど怖いなりに逃げる方法はあると学んであの時よりはやっていけるようになった。

ずっと母と過ごして疲れてしまったので、サイが寝た後、Fさんに電話した。明け方までなんと4時間も話してしまった。電話の最後の方で、お互いに好きだということを初めて確認した。そして私たちはこれから付き合うことになった。Fさんが私のことを好きだとわかって「で、どうしたいですか?」と問うと「え、付き合うということではないの?」と驚かれた。そういうものなのか。私はその辺りがよくわからない。人と人が定義された関係を持たず、ただ好きでいる状態ということもあるのかと思ったから。それに私はこんな状況だ。きっと世間ではひとり親が恋愛なんてすべきでないと思われている。親の恋愛は子どもを犠牲にするという考え方をする人がいたら、その人は何を以て自分以外の人にそれを正論として振りかざせるのだろうか。わからない。わからないけどわからないなりに模索していきたい。サイのことが大切なのは誰に言うまでもない。その上で私は自分の大切をできる形で守っていきたい。


2月11日(月)
母と妹は朝からクラシックのコンサートへ行ったらしい。サイは面会。私は一人で銀座に行き、松屋のバレンタイン催事を覗いたあと、自分にしては珍しく食べログで調べたラーメン屋に行ってみた。まあまあ美味しかった。それから三越のバレンタイン催事に行ったら松屋より混んでいた。色んなお店で試食して美味しかった、世界各地のカカオ豆を使ったチョコの詰め合わせをあまり何も考えず一箱買った。それは自分用にすることにした。人気がないお店で他に人がいなかったからか、他のお店に比べて、販売員のおばちゃんが親切だった。夕方にパティシエが来るからサイン入れられますけど、と何度も言われた。夕方まではいられないしサインにもあまり興味がない。その後も試食し続けて何が良いのかわからなくなってきて、人混みにも疲れてきたので地下のお菓子売り場まで降りて、ドゥバイヨルで箱が美しいナッツやオレンジピールのチョコの詰め合わせをFさんにひとつ買った。それから教文館に行き、面白い絵本があったのでチョコと一緒にあげようと思って買った。それからクライドルフの花の精たちが行進する美しいポストカードを部屋の壁に飾ろうと思って一枚買った。

急いで帰宅して、荷物を置いてから約束の時間に駅までサイを迎えに行った。お菓子やなんかをたくさん買ってもらったサイは興奮状態で口数が多かった。魚屋さんに寄って油ののった鮭を買う。サイは面会で疲れたのか、私が離れていたことが嫌だったのか、夜愚図っていた。面会の時に一緒にいられないのは申し訳ない。でも待ち合わせだけで気分が悪くなるので私にはそれが精いっぱいだ。普段サイといるのが当たり前すぎて、面会の時いきない一人になるとぽっかり穴が空いたような虚無感に襲われるので、できるだけ街に出かけたり予定を作って時間を埋めるようにしている。

深夜、またFさんと3時間くらい電話した。これから付き合うことに対する本音や不安を話したら「大丈夫だよ」って言ってくれた。お湯みたいな人だ。


2月12日(火)
一日中眠かった。パン美人にFさんのことを話したら喜んでくれた。少し早いバレンタイン、と言ってラスクをくれた。気が利くなぁ。私の周りは気が利く人ばかりだ。

疲れて中華屋さんで持ち帰り餃子。火曜は持ち帰り餃子が安い。電源オフモードでレジでサイと餃子を待っていたら「あれ、サイくんのお母さんですか?」と聞かれた。誰かわからなくてぼんやりしていたらZくんのお母さんだった。Zくんはハーフでお父さんが外国人(イケメン)。どんなお母さんだろうと思っていたらよく街で見かける気が強そうな外国人の妻ではなく、とても大らかそうな人だった。化粧気はないが美しかったのでお母さんも外国の血が入っているかもしれない。Zくんはあまりみんなと一緒にいない。みんながおやつを食べていてもわっと寄って来ないし、一人で遊んでいることが多い。前に体操をボイコットしているのを見た。でも笑う時はよく笑うし子どもらしい一面もある。きっと良いご両親なのだろう。髪が長くて女の子みたいにかわいい。「Zもここに連れて来ようと思ったんですけど一人でして」とお母さんは言うとまた店を出ていなくなった。私とサイはぱっと受け答えができず、ぼんやりしていた。

帰宅して晩ごはん(サイがまただし巻きを作ってくれた)を食べて大森さんのラインライブを途中まで聴きながら洗濯・洗い物をしてお風呂。また怒涛の日常が戻って来て疲れた。植物が見たい。花畑か植物園に行きたい。早く春が来てほしい。


2月13日(水)
目覚ましをかけ忘れたが目覚めたら起きる時間だった。ぐっすり眠った。サイはパンダの顔のパンを「かわいそうでたべれない~」と言っていたわりに真ん中から半分に割っていた。着替えるのにパジャマを脱がそうとしたら「じぶんでやるから!」とキレられた。それならその方がいい。助かる。でも気分によっては「はやくきがえさせてよ~」とキレられる時もありなかなか難しい。泣き叫んでいた数分後に笑っていることもあるくらい子どもは気分屋である。でもその気分を全て外に出すか出さないかで大人だって大して変わらないと私は思っている。泣いたり笑ったり忙しいサイを見ていると以前より自分が冷静でいられるようになった気がする。成長させてもらえている。

昼はアジフライ定食を食べた。夜は歯医者だからしっかり食べておこうと思った(ら結局予約を一日間違えていて受付で冷たく突き返された)。地元の実家からほど近い会社が今の仕事に少し似ている職種を募集しているのを転職サイトでたまたま見つけて、気になったので問い合わせした。会社のサイトを見たら一人一人顔写真・生年月日・実名とともに社員紹介していて、どうしてもそれだけが理解できなかった。でもどんな会社か調べてみないとわからない。

お迎えに行くとZくんのお父さんとタイミングが同じになり、サイとZくんが作ったブロック作品(親に見せようと置いてあるが先生は早く片付けたい)を片付けるように言われZくんのお父さんも私も手伝った。「昨日お母さんに会いましたよ」と心の中で声をかけたがZくんのお父さんが日本語を理解するかわからなかったので結局黙っていた。お父さんはZくんに英語(かイタリア語?)で話していた。Zくんは保育園では日本語で話しているからなるほど、バイリンガルはこうやってできてくのかと勝手に感心していた。

昼に転職のことを考えたからか、先のことに対する不安が急に押し寄せてきて、体調不良も相まって夕食後どんよりとした気持ちだった。あまりにも疲れていたので、サイに「ママ、先にお風呂先に入ってるから後で来てね」と言って熱めのお湯に浸かっているとサイはちょうどいいタイミングでご機嫌で脱衣所にやって来て一人で服を脱いで風呂場に入ってきた。嫌がるのに無理矢理連れて行って熱いお湯に浸からせたり、落ち着くのを待って冷めかけのお湯(なんとうちには追い炊き機能がない)に浸かるよほどいいやり方なのではと思った。だんだんそうやって成長していく。サイはサイの、私は私の意思を尊重したまま二人でうまくやっていきたいなと思っている。

「今日はあまり元気がない」とFさんにラインしたら残業から帰宅してすぐ電話してくれて、その優しさだけで救われた。無責任なことは言わず「がんばってるね、えらいね。なんにも的確なこと言えなくてごめんね」と謝られた。いつもえらいねって言ってくれる。幼少期から何をしても親からほとんど褒められたことがなく批判ばかりされ続けて大人になった私にはこの肯定にとても救われる。Fさんが電気毛布の使い方にこだわりがあるらしく、そのどうでもいいようなよくないような話を聞いていたら穏やかな気持ちになった。いつもありがとう。


2月14日(木)
世間ではバレンタインデーらしいが、私にとっては歯医者に行く憂鬱な日だ。過去二年連続で反応が薄かった上にそのことで余計なストレスを感じるのも嫌なので今年から上司へのバレンタインは今年から廃止。お昼にパン美人にコンビニで買ったラムレーズンのチョコをあげたら先に食べていいよと言われ、人にあげておきながら自分で食べた。問い合わせた地元の会社からはまだ返事がない。

夜、歯医者。今日は麻酔なし。痛くなかった。予約を取る時、「あの先生(麻酔が効いてないまま神経を拷問みたいに削った人)はもう嫌です」と院長に言ったら「そうだよね」と分かってくれた。治療中、サイは大人しくトムとジェリーを見て待っていた。スーパーに寄って、気になっていたたこ焼き屋さんで初めて買った。メニューを見て15個買おうとしたら焼けているのが13個しかないというので13個買った。それからサイが「バレンタインチョコレートかいたい~」と何度も言ったがサイにあげるチョコを特に用意していなかったので、二人でサイお気に入りのお菓子屋さんに寄った。サイはバレンタインの意味をきっと理解していないが「よくわからないがチョコを食べる楽しい日」と認識しているらしい。チョコを欲しがったが洋酒が入っていたので焼き菓子にさせたらそれも洋酒が入っていて、結局洋酒なしのマドレーヌとスイートポテトを一つずつ買った。「おしりたんていのスイートポテトだね」と嬉しそうに包みを持っていた。

帰宅してたこ焼きを食べた後、サイが律儀にお子様ランチ用の新幹線にのせ満足そうに運んできたマドレーヌとスイートポテトを半分ずつ食べた。サイはちょっとかわいく飾り付けしたり、お菓子をきれいにお皿に盛ることにすごくこだわる。私がクレヨンをちゃんとその色の場所にしまわないと怒る。その辺り、雑な私と性格が全然違う。誕生日にしか使わない新幹線プレートを使いたがったのは特別感を演出したかったのかもしれない。こうやって、他人にはきっと取るに足りない自分たちにしかわからない特別を日々の生活の中作っていけたらいいな。スーパーで買ったバブを早く湯舟に入れたいからとしきりにお風呂がたまったかどうか確認していた。

サイが寝る時に着る、もこもこの白いスリーパーをそれを着た時のサイが子熊みたいだから「くま」と呼んでいて、「くま」のファスナーを私がやろうとしたら自分でできる!と怒った。でも私でもやりにくいくらいなのでなかなかできず眠気も相まってもどかしそうにしていた。「やろうか?」と言うと「できる!」と格闘の末、時間をかけてジップの接続(あの下の部分のカチャってやるところ)に成功した。布団に潜って涙を流しながら「サイくんじぶんでやりたかったの」と訴えた。「そうだよね、やりたかったよね、ごめんね」と頭を撫でているとすーっと眠った。サイの意思とかやりたいと思う気持ちとかなるべく尊重したいがつい手を貸してしまったり時間がなくて私がやってしまったりする。でもサイにはサイの信念がある。頭を撫でて背中をトントン叩いていたら私も寝てしまい、数十分後目覚めた。布団をかけていなかったので寒かった。それから洗濯機から出してかごに入ったままになっていた大量の洗濯物を干してから寝た。


2月15日(金)
朝サイがなかなか起きないので、昨日お風呂上り裸のままパジャマを着なかったサイに「すっぽんぽんのすけ」と呼んだ名残でまた「ぽんのすけ~」と呼ぶと笑っていた。家を出て出発する前、マンホールを突然気にして、「このしたにはなにがあるの?」と聞いてきた。下水と書いてあったので「トイレのお水とかが流れてるよ」と教えた。「どこにいくの?」と聞かれたので「このお水は汚いから工場できれいにしてから海にいくよ」と不確かながら言うと納得して「しんちゃんでみたよ、しんちゃんのパパがお水と一緒に流れていったんだよ」と教えてくれた。美容院で観たクレヨンしんちゃんにヒロシが下水道に流されるシーンがあったらしい。サイは最近図鑑も好きだし色んなことに関心がある。そして私の知らないうちにどんどん知識を蓄えている。


2月16日(土)
朝ごはん、洗濯。サイがガンバライジングカード(データを読み込んでゲームができる進化型カードダス)がやりたいというので池袋のビックカメラ。西口だし穴場かもと思ったらまあまあ空いていて二回できた。レジ横にあったカードを欲しがったので「これを買ったら今日は何も買わないよ」と念押しして買った。その後別のおもちゃを欲しがったが約束は約束だから買えないと言うと最初は不機嫌だったが納得して諦めていた。そこまで欲しくなかったのかもしれない。その後、南池袋公園。芝生が開放されていた(ついに!)。出店があったから人がたくさんいた。コーヒー屋さんで珈琲でも買おうかと思ったが一杯ずつハンドドリップで淹れるため行列していて、諦めて隣のクラフトビールにした。「珈琲買おうと思ったら混んでいたのでビールにしました 笑」と店の人に言って、笑ってくれるかと思ったら無反応だった。芝生に直接座ってサイはアイス、私はビール。まだまだ寒いが日が当たると気持ち良い。その後すべり台。公園の出口にあった花屋さんでミモザのブーケを買って、屋上に行った後近所で唐揚げを買って帰って帰宅。ミモザはドライにしようと思って逆さまにしてカーテンレールに吊るした。


2月17日(日)
やや寝坊してプリキュア仮面ライダー、戦隊。プリキュアのララちゃんかわいい。今のところ一番好き。

すき家でお昼ご飯。食べていると突然サンタクロースみたいに立派な白い髭をたくわえた外国人の体格の良いおじさんが三人入店し、店内に明らかにそれまでと明らかに違う緊張感が張りつめた。おじさんの一人は楳図かずおのTシャツを着ていた。英語メニューをもらって、何を食べるか三人であれやこれや相談していた。どうやら初入店らしく、メニューを見てチープとか言っていた気がする。サイは絵本から出て来たみたいなおじさん達を凝視し、「がいこくじんだね」と小声で私に言った。「サイくんも外国に行ったら外国人だよ」と言うとわかったようなわかっていないような反応だった。横目で見たらマグロ丼をスマホで撮影していた。

それからサイと一駅分あるいて、少し大きめのスーパーに行く。いつものスーパーより安くて新鮮だったが広い分歩き回らないといけないし人が多くて疲れた。サイがりんごを二個も買いたいというのでかばんは野菜や果物でずっしり。更に本屋に寄り、気になっていた川上未映子さんの新作が載っている「文學界」を購入し、さらにずっしり。サイにねだられて仮面ライダーの本も買わされる。買いたくなかったが買わなければ愚図って家まで歩いてくれなさそうだったので仕方なく。帰ったらへとへとでやや眩暈。サイが本を読んでいる間、私は畳んだ布団の上で30分ぐらい寝ていた。サイに起こされて起きたら日が暮れていた。体力のなさを実感する。寝たい時に眠れたらどんなに良いかと思うがそんなこと考えていても仕方がないので重い腰をあげ、晩ごはんのシチューを作る。

ごはんをマロンクリームの形にしたら喜んでくれたが、煮え切らなかった玉ねぎが気に入らなかったらしく、ぐちゃぐちゃに潰したりかきまわして遊び食べし始める。途中で席を立つ。私はサイに食べろと強く言わない代わりにサイがごちそうさまを言うまで席を立たないと決めているので戻ってくるまで自分が食べた空のお皿を前にしてぼんやりしていた。「たべないの?」と聞くと「たべるから!」と怒っていた。野菜だけ食べてね、と言うと嫌々ながら口に押し込んでいた。サイがシチューがいいって言ったのにそんなにまずそうにされると悲しくなる。大方食べたところでもういいよと言い、ぐちゃぐちゃに混ぜられた冷たいシチューを私は黙々と口に運んだ。「サイくんが残したらこれはゴミになっちゃんだよ」と言うと前にEテレで残飯が餌になるという番組を観たのを覚えていたらしく、「どうぶつさんがたべるの?」と聞くから、「違うよ、捨てられちゃうよ」と言った。食べ物を無駄にすることの意味をまだあまりわかっていないようだった。でも私は「世界には食べられない子もいて…」みたいなことはあまり言いたくない。サイが美味しくないと思うのは自分にも非があるような気がするから。お風呂、就寝。


2月19日(月)
月曜はなかなか布団から起き上がれない。Fさんからおはようのライン(毎朝必ず送ってくれる、優しい)が来てやっと起きれるという有様。サイもなかなか起きてくれずギリギリまで寝かせてあげる。寝ている人を無理矢理起こすのが苦手だ。起こされることほど不快なことってないと思う。当人は眠いから寝ているわけで。だから起こされたという気分にならないよう、本人の意思で起きる気になれるように、なんとか持っていく。テレビをつけて「あ、びーすけ(ピタゴラスイッチのサイの好きなビー玉の冒険)やってるよ!」とか「ねえ、バナナたべる?」とか。

お昼ごはんに会社の近くにあるかわいいパンとケーキのお店で買った。ここのパンは全部おいしい。特にシナモンロールとチョコチップパンがおいしい。お店の人がものすごく丁寧な接客なのにけっして馴れ馴れしいわけではない絶妙な距離感も好きだ。対面販売が苦手だがここなら買える。好きになったお店に通いすぎると必ず潰れるジンクスが私にはある。だから本当は毎日通いたいぐらいだが毎日は行かない。

夜ごはんは昨日のシチュー。昨日嫌がったのでサイのお皿に玉ねぎが入らないように気をつけた。サイは食べたいと言ったリンゴをシチューにつけておいしいおいしいとご機嫌だったが、私の真似をして自分でシチューに投入したごはんがシチューと混ざるのを嫌がり手が止まる。理不尽だが「自分でやったでしょ」は通じない。仕方なく私がそれを食べ、サイには新しいシチューを入れる。食後サイとゴロゴロして遊ぶ。二人で犬になりきってワンワン言っていたらもっとかわいい声で言ってよと言われた。とにかく眠くて洗い物、お風呂、洗濯のち就寝。サイが寝たら起きようと思っていたが起きられなかった。朝まで眠る。


2月19日(火)
朝からどんより曇り空。サイは「おしっこもれた」と言い、私の布団に入ってくる。でももう起きる時間だよ。布団を干すと雨が心配だったのでドライヤーで乾かす。着替えのズボンを自分で履けた。先に朝食を食べ終えて洗面所で化粧をしていると「サイくん、クイズできたよ」と「みいつけた!」で正解したことを得意気に報告しに来てくれる。サイはクイズや迷路が好きだ。バタバタ出発。

仮面ライダーマリカの美脚と性格が悪いと自覚していそうな性格の悪さが好き

1月22日(火)
午後から休んでサイの保護者面談。先生の顔をじっと見て話したことがなかったのでつい目を逸らしてしまう。未だに自分が親の立場で話したり聞いたりすることに慣れない。家でどんな様子か話すと保育園の姿とは全然違ったようで驚かれる。家では意思が通らないと大声で泣きわめいたり怒って私を叩いてきたりすると言うと信じられないという感じだった。保育園では優しくて女の子に言い負かされているらしい。偏食について言おうとしたら先に向こうから「サイくんはよく食べますよね」と言われてぎょっとする。「いや、全然食べないですよ」と言うと「豆以外は何でも残さず食べますよ」と言われる。たった30分間で深い話もできず、家と保育園の相違をお互いに確認して終わった感じだった。もう慣れたがサイについて本気で話せる人が私にはいない。面談後、サイの教室に迎えに行くとちょうど昼寝から起きたところだった。せっかくなのでおやつを見学させてもらってから帰ることにした。

私が教室に入った瞬間、何人も子どもたちが集まってきて「ねえねえサイくんのおかあさん、ぼくのズボンはサイくんとおなじなんだよ、でもきょうはちがうけどね」「〇〇ちゃんのコップはプリキュアでね」「〇〇くんはトミカシンカリオンがね…」「サイくんのおかあさん!なんでいるの?」などと人生最大のモテ期かと思うほど次々に話しかけてくる。片手間でサイの話を聞くことに慣れている私でもさすがに4、5人の話を同時に聞くことは困難だった。これは聖徳太子でも難しいと思う。4歳児の話すことは脈略がなく、話す相手に対して今これを言うと相手はどう感じるか大人のように話す前に考えない。躊躇いがない。剥きだしの思考が至近距離から直球でぶつかってくるのが私には気持ち良い。私は自分が子どもだからか子どもと話している時が一番うまく話ができる気がする。「へぇ同じズボン持っているだね」「あ、でもこのコップにはルールーとえみるいないね」「いっぱい持ってるんだね」「今日はね、早く来れたんだ」などとこちらも何も考えず応えられる。それが十何人でしかも食事や着替えの様子も見るなんて保育士さんは本当に大変だなと思うが、話すだけなら私にもできる気がする。そんな甘くないと思うが子どもと話す仕事があればしたいな。大人よりよほど話が通じる。サイは決められた席に座り女子に囲まれてふざけながらおやつを食べていた。こういう子、クラスにいたなと思った。家とは違う姿だった。

おやつを食べ終えると出航する人のように他の子に手を振って見送られながらサイと保育園を出た。自転車の電池切れだったので歩いて駅まで行き、電車に乗ってなんとなく谷中に行ってみた。日暮里駅でサイが集めているキン肉マンのスタンプをした後、ゆうやけだんだんの方に歩いて行く。休日は人が多かったが平日なので人がほとんどいなかった。気になる雑貨屋をサイとのぞく。店で商品を触ろうとしてしまうが、前ほど落ち着きなく騒いだりしなくなった。友達にお土産を買った。自分にも買った。だんだん日が暮れてきて、途中のお惣菜屋さんで唐揚げを買いまた駅まで戻る。サイが漏らしてしまって着替えがなく色々大変だったけどたくさん歩いた。夜から歯が痛くなってサイの相手をあまりできなかった。ズキズキ脈打ってる感じ。


1月23日(水)
週に一度の仲の良い先輩と外ランチの日。ハンバーガー屋さんでハムとアボガドのサンドイッチを食べた。ずっと仮面ライダーの話をした。
歯が痛みが治まらず仕事にも集中できないので歯医者に予約の電話を入れる。

お迎えに行って「ママ歯が痛いから今から歯医者行かなきゃいけない」と言うと保育園の友達に「いまからはいしゃいくよ!」と絶叫していて恥ずかしかった。遅い時間の予約しか取れなかったため、ファミレスでサイだけ食べさせる。私は飲み物だけ。サイは私が食事していないことで具合が悪いと感じ取ったらしくいつも残しがちなお子様ランチを野菜もひとつ残さず綺麗に平らげた。食べ方もいつもと違った。「どうしたの?」と聞くと「ママないちゃうから」と言った。子どもなりに考えたのかもしれない。食べ終えるとアイスが食べたいと言うので全部食べられたし時間もまだあったので頼む。アイスも美味しそうに完食した。レジ横に売っていたゲイツの弓矢を欲しがるも「今日は歯医者行くからお金置いとかなきゃいけないんだ」と言うと「サイくんがまんするからね、がまんしたらあしたかうよ」と言う。いつも欲しいものは買えるわけじゃなく我慢しなきゃいけないと言い聞かせているのでそういうことを言ったらしい。

検索して口コミできれいで先生が優しいと書いてある歯医者にした。予約時間より早めに着くと受付の人は冷たくて感じが悪かった。入口のテレビでカーズが流れていたが終わってメニューモードになっていた。再生してとは言いにくいけどサイは一人で何もなく待っているのかわいそうだなと思っていたら先生が来て再生してくれる。サイが「おとならないね」と言ったのも聞き逃さず音を出してくれる。気が利くがやってやったぞ感もあり、親切なのに僅かに怖いものを感じた。そういう先生なのかもしれない。

個室なので診てもらっている間サイは受付のソファに一人で待っていた。レントゲンの前後にサイに「大丈夫?」と聞いたら「うん」と言うものの不安そうにしていた。レントゲンを撮り終えて個室に戻るとまたDVD(処置室でも観れる)が止まっていたので「すみませんがつけてください」と言った。結局、親不知の虫歯ということが判明。来週抜くことに。歯に薬を詰めてもらっている間「お口頑張ってあけようね~」「もうちょっと舌ひっこめてね~」と4歳児に言うように言われて、複雑な気持ちになった。でも痛いか頻繁に聞いてくれたり(これまた子どもに言うように)腕は良さそうで安心した。痛くないのが一番なので、性格はこの際どうでもいい。抜歯の予約を取る時に「一時間くらいかかるけど息子さん待っておけるかな」と言われる。連れて来るなと言われているような気持ちにもなったが預けられる人もいないので仕方がない。不安な顔をしていたからか「大丈夫ですよ、スタッフがみたりできますので」と言われる。

スーパーで買い物して帰宅。私だけ冷凍パスタを食べようとしたらサイもお腹が空いたと言いおにぎりと蒸しパン。よく食べるなぁ。我慢していて疲れたのか寝る前にちょっとしたことがきっかけで大泣きする。今日頑張ったねと抱きしめる。いつもより早めに倒れるように眠った。ありがとうサイ。どっと疲れたが歯は薬のおかげで痛くなかった。


1月24日(木)
帰りながら鎧武のテーマソングを歌っていたら「そういうのじゃない!」とキレられる。サイは音楽的才能が私より圧倒的に優れているので私が適当に歌って音程や歌詞を外すといつも嫌がる。

サイと鎧武を二話観てから寝た。少しずつ観ているが街を支配するユグドラシルという会社の本当の目的がはっきり明かされなかったり組織内で裏切りや抗争があり非常に面白い。単に悪と戦って終わりではなく「人間は力を手にすると化け物になるのか」など台詞も良い。他のシリーズも気になる。仮面ライダーを知らずに生きていたなんて人生損していた気がする。サイはお腹の調子が悪かったようで大量の汚れた洗濯物がリュックに詰め込まれていた。見たらそんなに汚れていない。ズボンとトレーナーが三組以上。大量の洗濯物を干してから就寝。


1月25日(金)
やっと金曜日。金曜恒例、ピザ食べながらドラえもんとしんちゃん。サイのお腹のことを忘れてピザを食べさせてしまったが大丈夫だった。しんちゃん観る度に、みさえは最高の女性だなと感じる。しんちゃんにボロクソ言われてるが子ども二人も産んでいるとは思えないくらいかわいいしスタイルがいい。


1月26日(土)
サイがライドウォッチを買いたいというので昼前、電車に乗ってイトーヨーカードーへ行った。まず最上階のうどん屋に行った。地元のジャスコにも入っているうどん屋で、小学生くらいの時に母とよく行ったなぁと思い出す。その店に親になった自分とサイがいるなんて不思議だなと思いながらうどんをすすった。サイはよく食べた。その後玩具・文具売り場へ。目当てのはなかったが別の欲しかったライドウォッチが売っていて大喜び。会計前にサイの靴下も見ておこうと靴下コーナーに行き後ろを振り返ったらサイがいない。あれまたどこか行ったかなと探すも姿が見当たらない。棚をひとつひとつ覗いてみるもいない。声もしない。少し焦る。もしサイが誰かに連れ去られていたら。ぐるぐるまわっていたら、靴下コーナーの近くに大粒の涙で頬を濡らしたサイが世界の終わりを見たような顔で立っていた。「ごめんね」と抱きしめる。何事もなくてよかったが、ちゃんと手をつないでおかないとなと反省した。サイは少し怒っていた。

それからゲームコーナーに行き、仮面ライダーの、ブットバソウルというメダルのゲームとガンバライジングカードというカードのゲームをする。一回百円。カードのゲームは何組も並んでいて人気だった。前にいる小学生くらいの子どもはカード入れのようなものに束になったカードを入れていた。サイは初めてなので持っていない。サイは得意気にゲームする小学生の横で悔しさと憧れが混ざった表情をしていた。サイの番がきて、出て来たカードを一枚だけ置いてゲームを始めると横で「初心者だ」と馬鹿にしたように小学生が言った。私は苛立ち「(熟練した君とは違って)まだ子どもだからね、初めてやるんだよ」とその子に言った。あっそという顔をされた。なんだか悔しかった。三枚のカードを組み合わせて戦うゲームなのに一枚しか持っていなかったのですぐに負けた。サイも横で小学生に馬鹿にされて悔しそうにしていたのでゲーム機から退散して玩具売り場でそのゲームのカードが三枚入ったものを買った。サイの悔しさが紛れたようで満足そうにカードを眺めていた。「これであのゲームできるね」と嬉しそうだった。「そうだね、次は三枚並べられるね」とサイとの間に小学生に見下された悔しさを晴らす同盟のような気持ちが芽生えた。街や公園でサイが少し年上の子に馬鹿にされて不安になると私も同じ気持ちになる。苦手だったクラスメイトに勝てなかったような気持ちになる。サイと一心同体なんて思っていないが、時々サイは私だし、私はサイだ。サイの眼球を通した世界が見える。

地下のスーパーで買い物をし、疲れたので横にある持ち込み可能なイートインコーナーでひとつ買ったアイスをサイと二人で食べた。夕方のイートインコーナーはペットボトルの飲料を机に置き一人で放心している中年男性、子どもがこれから塾なのかかつ丼を食べさながら親はエクレアを食べている親子、昼ごはんにしては遅く夜ごはんにしては早い大きなピザとナスの天ぷらを食べている年老いた母親と中年くらいの歳の娘、女子高校生グループなど、色んな人がいた。場全体に活気がなく皆疲れたようで楽しそうな表情の人は一人もいなかった。このイートインコーナーで買った総菜やおやつを食べることに浮足立っている人など一人もいないのだということを肌で感じた。私たちもその一員だ。ピザと天ぷらを食べている親子の娘が買った天ぷらをレンジで温めすぎたのかパックが歪み湯気が出ていて熱そうだなと私は眺めていた。そしてこの人たちはどういう暮らしをしていてこれまでどういう人生を辿ってきたのだろうかと想像した。私とサイは静かにアイスを食べ終えるとこの世界の端っこのような独特の空気に耐え切れず退散した。サイも空気を読んだのか騒ぐことはなかった。

それからユニクロに寄る。サイは子ども服のチュールスカートを欲しがった。買ってあげたかったが金銭的に余裕がなく「いいね、かわいいね」と言った。以前スカートが欲しいと言っていたが保育園に行くうちに恥ずかしいと思うようになったらしく最近は言わなくなった。でも、まだ忘れていなかったようで嬉しかった。いつか買ってあげたいな。外に出ると冷たい風が吹き荒れていた。風が嬉しかったのかサイのテンションは高かった。電車に乗って帰宅。買った鮭を南蛮風に焼いたら美味しかった。


1月27日(日)
Hug!っとプリキュア最終回。ハナが出産するシーンがわりと凄まじい感じでリアルで、さすがプリキュアだなと感じた。色々と深い意味がありそうで理解できないところもあった。プリキュア達が武器も使わず体当たりで戦う姿がいつも好きだった。あんな風にかわいくて強くなりたい、いつもそう思ってきた。最終回では、未来は定められたものではなく自分自身の選択や周囲にいる人によって過去はいかようにも変えられるというメッセージが込められているように感じた。次のトゥインクルプリキュアも楽しみ。ジオウ、ルパパトも面白かった。ルパパトはいよいよ最終回に向けて佳境に入ってきた感じ。来週会えるかと思うとドキドキした。洗濯、掃除。

サイがおにぎりを食べたいというので昼ごはんは簡単に家で済ます。それから約束していた通り、近所の公園へ。途中でサイが最近お気に入りのお菓子屋さんでそれぞれ食べたい焼き菓子を買い、ドトールでコーヒーをテイクアウトした。寒かったが天気が良くて気持ちよかった。公園についてコーヒーを飲み始めると保育園で同じクラスのIちゃんが公園にいるのを見つけた。サイが「あれIちゃん…?」と私に聞いてきたがよく見えず「そうじゃないかな、見てきたら?」と言うも恥ずかしがって動こうとしない。結局Iちゃんが先に気づいてこちらに来てくれ、それでようやく「ああやっぱりIちゃんだったんだ」と二人で気づいた。私たち親子はいつもこう積極性に欠ける。離れたところにIちゃんのお母さんが立っていた。Iちゃんのお母さんは明るく誰とでも話すタイプではなく、何を考えているのかよくわからない人だ。私とサイに気づいているようだったが遠くから見ていた。コーヒーを持ったまま近づくのも変かなと思い、私は飲んでいたコーヒーを急いで飲み干し食べかけのレモンケーキを喉に押し込んだ。近づいて挨拶すると軽く目を合わせただけだった。別に機嫌が悪いわけではなくそういう人なのだ。私も陽気に挨拶できるタイプではないのでわかる。Iちゃんはサイが持っていた変身ベルトに夢中だった。サイは得意気だった。それから二人で鳩(敵?)を追いかけていたが、Iちゃんは途中で疲れたのか戻ってきて座っていた。サイは仮面ライダーになりきり。相変わらず鳩を追いかけまわしていた。

Iちゃん親子と別れ、サイと普段行かないスーパーに行ってみた。生鮮が充実していた。肉が食べたいなと思って、オージービーフを一枚買った。それからお気に入りのケーキ屋さんで好きなケーキをひとつずつ買った。夜は私だけ肉を焼いて食べた。塩コショウして焼いただけなのに最高に美味しかった。焼く前に切り込みをちゃんと入れることと、常温にしておくことがポイントだとわかった。サイは肉は要らないと言ったのでスーパーで買った冷凍のチキンカツ。それから二つのケーキにろうそくを立てて部屋を真っ暗にしたらサイがハッピーバースデーを独唱して一日早い誕生日を祝ってくれた。動画を必死で撮った。二人きりだけど、ぬいぐるみ達がたくさんお祝いにかけつけてくれた(らしくテーブルが渋滞していた)。ここ数年、誕生日に何の喜びも見出さなくなってきた。死に近づいているだけだ。めでたくもなんでもない。でもこうやって必死にろうそくを吹き消して一緒にケーキを食べてくれるサイがいることが嬉しい。ありがとう。

もっと強くなりたい。もっと強くてかっこよくなって仮面ライダーみたいに戦いたい。「ママ、仮面ライダーになれるかな」と言うとサイはいつも「ももになりたいの?」と聞く。桃は鎧武に出てくる女ライダー、仮面ライダーマリカのモチーフ。鎧武の中で唯一の女ライダーで、歴代仮面ライダーシリーズの中でも数少ない女ライダー。マリカは悪の組織の秘書をしている。いつもミニスカートにヒール。とんでもない美脚の持ち主でとんでもなく強い。性格が悪いが信頼していた上司に裏切られると急に気弱になったり、敵であるはずの別のライダーにときめいたりかわいい一面もある。あんな風になりたい。

オットセイは今日も暗闇のなか階段を下っているだろうか

1月13日(日)晴れ
サイと友達と三人ですみだ水族館に行った。設備は新しくて洗練されていたが思ったより小さい水族館だった。屋外の場所がなく、すべての生き物が屋内にいた。ペンギンも水族館の中心部にある陽の当らない大きな水槽にたくさん泳いでいた。太陽のもとで気持ちよさそうだった葛西臨海水族園のペンギンたちをつい思い出し、一年中LEDに照らされたこの子達は日光浴したいだろうか、とついペンギンの気持ちになってしまった。陽の光がない暗いところに長時間いると閉じ込められて二度とここから出られないような窒息感を覚え具合が悪くなる。

ぼんやり館内をまわっていたらさっき自分が下りたばかりの階段からいきなり飼育員に付き添われたオットセイがびちゃびちゃと降りて来た。暗くてよく見えなかったが下まで降りると暗闇で立ち止まりこちらをじっと見つめ、また水を滴らせながら階段を上って帰って行った。オットセイは特にスポットライトを浴びるわけでもなく飼育員による説明もさほどなかったので、いきなりオットセイが水槽を抜け出して私たち人間がいる側に現れて頭が混乱した。見ている側と見られている側の境界が曖昧に混ざり合い、これは自分だけが見ている夢なのではと思ったが周りにいた人も同じような反応をしていたしサイが怯えていたのでそうでもなさそうだった。あれが何だったのかいまだに分からない。

サイは次第に空腹で機嫌が悪くなったので昼過ぎに水族館を出てソラマチのフードコートお昼ごはんを食べた。サイのラーメンを買うのに並びながらビール飲みたいなぁと考えていたら別の店で友達が何も言わず買ってくれていて、なんとまあ気が利く。私は普段食べられない海鮮丼を食べた。美味しかった。昼食後サイがトミカプラレールショップ(隣接やめてくれ…)をはしごして長居してなかなか離れてくれなかったためだんだん気分が悪くなった。ようやく外に出ると空は晴れていて気持ちよかった。水族館のペンギンの気持ち。スカイツリー近くの公園で日が暮れる前までのんびりした後、浅草に移動しもんじゃを食べて帰った。隣の席の真面目そうな若い男の子二人組がどうやったら好きな子にモテるか、一人がもう一人にアドバイスして真剣に考えていたが2時間飲み放題の時間がきてしまい追い出されるように店を出た。その後来た若いカップルは作り方が分からないからと言って店員さんに作ってもらっていたのが微笑ましかった。「インスタで見て」とカマンベールチーズがまるごと入ったもんじゃを発注していた。もんじゃ屋さんに行く前に仲見世を通ったら提灯の明かりがきれいだった。夜の仲見世はぞくぞくする。通りがかった店で何となく買った甘酒があったかくて美味しかった。楽しい一日だった。


1月14日(月)晴れ
昨日のルパパト・ジオウを観つつ、朝から大量の洗濯を二回。昼過ぎ、昨日会った友達とまた一緒に屋上。ブリトーとビール。サイはおにぎりと蒟蒻ゼリー。我々は常日頃からチーム偏食。チームの活動主旨は食べたいものを食べたい時に食べる。それからデパートでライドウォッチ。ガイムが欲しかったが既に持っているダブルが当たり落ち込むサイ。でも二回はやらなかった。おかいものくまちゃんがいて一緒に写真を撮ったらどんぐりをくれた。友達と別れ、デパ地下のスーパーで魚でも買って帰ろうかと思ったら高すぎて辞める。ぶり一切れ1500円とか、誰が買うんや。近所の魚屋さんの方がずっと新鮮で安い。魚が買えなかったし魚屋に行く自転車もなかったので、近所のスーパーでカレーの材料を買う。

退屈そうなサイに「一緒にカレー作ってみる?」と聞くと目を輝かせてサイが乗る椅子を台所に持って来た。肉や野菜を炒めるのをやってもらう。肉の色が変わったり、野菜が柔らかくなるのが不思議だったようで「いろがかわった!」と驚いていた。ぐつぐつ煮ていたらバーモンドの箱を持ちいつルーを入れるのかと何度も聞かれていても立ってもいられない感じだった。サイがルーを入れて完成。ごはんが炊き上がったので一緒に混ぜた。私がトイレに行っている間にサイは自分でお皿を出して私の分のごはんとカレーをよそってテーブルに置いてくれていた。それから自分の分も入れようとしていた。カレーが入りそうなお皿をちゃんと選んだところとか、一生懸命盛ってくれたごはんの量が少ないところとかちょっとルーが飛び散っているところとか全部かわいくて涙がこみあげてきた。私が喜んでいるとサイも嬉しそうだった。二人でおいしいねって言い合いながら食べた。サイはおかわりしていた。やってあげるやってもらうじゃなくて、こうやって何でも一緒にすればいいのだなと思った。


1月15日(火)晴れ
昨日の残りのカレー。サイはカレーが熱いからと言って水を投入し薄まったカレーは恐ろしくまずそうだったがにこにこと残さず食べていた。「いる?」と聞かれたが断った。食後洗濯物を畳んだり昨日できなかったことをする。毎日少しずつやるしかない。


1月16日(水)晴れ時々曇り
昨日から休んでいる向かいの席の人がインフルエンザだったらしく菌が席順にまわっているので次は自分かと怯えている。お迎えに行くとサイは今日もブロックで作った作品を私に見せるために置いていてくれた。薬局で買い物して重い荷物を持っていたら階段で「(自分が遅いから)さきにいっていいよ」と言われる。いつからこんな風に気が利くようになったんだろか。三日目のカレー。目玉焼きの白いところ食べたいと言うので二つ焼いた目玉焼きの白身をサイの皿に、黄身を自分の皿に盛る。私が半熟の黄身をカレーの上で潰しているのを見て、「そういうのだったらすきだよ」と言うので黄身も一つあげる。「たまごのとろとろがカレーとまざるとおいしいね」とまた大人みたいなことを言う。そうやってどんどん成長する。

震災やその他のことを考えると不安が押し寄せて眠れなくなり、用もないのに友達に電話した。優しかった。そういえば昔付き合っていた人に「用もないのに電話しないでほしい」と言われて悲しかった。電話したいとき、大抵用なんてない。


1月17日(木)
震災から24年。サイはニュースで震災の映像を見ると悲しそうに「あーぐちゃぐちゃだ…」「なんでおうちこわれちゃってるの」と聞く。災害が人の命を奪うことを今はまだ理解できない。でも包み隠さず話すようにしている。24年も経ったなんて信じられない。あの時の小学生だった気持ちのまま何も変わってないことがたくさんある。

カレーもなくなったし作るのが面倒で安い中華屋さんで食べて帰った。そこしか空いてなかったので広い8人がけぐらいのテーブルにサイと向かい合って座ってサイはお子様ラーメンセット、私はビールと枝豆。あとサイが食べたいと言ったので唐揚げを頼んで2個ずつ食べた。向かい合っていると大人同士みたいだった。頼んだものが運ばれてくる間、以前だったら愚図ったりしていたが今では大人しく静かに待っている。そういう時私たちは今日あったことを話したり、仮面ライダーの話をしたり、ただにやにや見つめ合ったりしている。当たり前だがサイが生まれた時から一緒なので細かいことを確認し合わなくてもお互い何を考えているかだいだいわかる。サイが考えていることはもちろん、サイも私の感情をとっさに読み取る。私が疲れているから今日は良い子にしてようと感じさせている時があるなと思う時がある。「サイくんまめきらいなんだよ」と私が枝豆を食べる姿を見る度に言う。「そうだよね」と答える。ラーメンセットについてきゼリーをお姉ちゃんにあげるから持って帰ると言う。サイは最近架空の姉の話をする。お姉ちゃんは小学生らしい。寂しさから生まれたのだろうか。少し胸が痛む。帰ってサイはみかん。サイはみかんが大好き。


1月18日(金)
やっと金曜日。ドラえもんとしんちゃんだけを楽しみに一日過ごした。いつも晩御飯の時にテレビはつけないが、金曜日はピザ(スーパーで売ってる焼くだけのやつ)と冷凍パスタを食べながらテレビを観ることが習慣になっている。フライパンを使わなくていいし洗う食器も少なくて済む。お酒を飲みながらドラえもんやしんちゃんを観るのが至福。今日のドラえもんジャイアンが作った地獄のようにまずいシチューを他の三人がジャイアン家に呼ばれて食べに行くという話。ドラえもんが出してくれた「ふりかければ何でもごちそうになるパウダー」をのび太が持っていくのを忘れて届けにきたドラえもんがウィルス感染防止のような顔面マスクと防菌服という出で立ちで笑ってしまった。しんちゃんは相変わらず面白かった。前半は憎愛劇作家ねねちゃんの新作、「床暖房殺人事件」が最高だったし、後半の、秘境で出会った不思議な女の子が餅を焼く間に野原家各々の夢が膨らんでそれが混ざり合って混沌とする幻想的な話がよかった。親になってからしんちゃんの面白さが分かるようになった。大人達を斜めから見るしんちゃんや子ども達がまっとうで愛おしいし、みさえは最高の母親だ。細かいギャグや言い回しが好きだ。映画観たいな。


1月19日(土)
遅めに起きて朝ごはん、のち大量の洗濯。先日百均で買ったごはんに色をつけられるふりかけを試してみたいとお昼になる前から言うので久々に新幹線プレートを出してお子様ランチっぽいものを作ったら喜んでくれた。作っている最中にサイがにやにや覗き込んできたので「お楽しみだからまだ見ちゃだめだよ」と言うも横でにやにやしていた。黄色の粉を入れたごはんとハムで作ったひよこのおにぎりは食べてくれなくて結局私が食べた。

午後から巣鴨。元々用があり行く予定だったが知り合いがたまたま巣鴨に遊びに来ていたらしく合流した。いきなり来て突然混ざっても誰も何も言わず優しいなぁと思った。目的もなく商店街をぶらぶら歩いたり年配者が好みそうなもの(時代が止まってしまったようなものがたくさん売っていて外国みたいだった)で溢れたお店をのぞいたり、知人が赤いパンツを迷いながら買うのを横で見ていたりした。なぜか昔から人の買い物に着いて行くのが好きだ。傍観者でいられるし、自分が買い物する時の使命感みたいなものがなく気楽で自分じゃ行かないような場所に行けて楽しい。サイは初め緊張して固まっていたがふとしたきっかけで自我を開放していた。大人に対していつもそうだ。コンビニで人数分買ったチロルチョコを恥ずかしそうに配っていた。コンビニで値下げしていて買うか迷って辞めたお菓子を友達が買っていて「あ、それ私も買おうと思ったけどやめたよ」と何気なく言うと「あげるよ」と一つくれて泣きそうになった。こういうことを私はきっと一生忘れない。その優しさが必ず報われますように。

みんなと別れた後スーパーで買い物して帰る。恵方巻の顔出しパネルを見つけると自ら顔をはめに行って写真を撮るように指示される。前は恥ずかしがっていたのに最近顔出しパネルが好きらしい。撮った写真を見たら死ぬほどかわいかった。

教えてもらった美味しいケーキ屋さんで買ったケーキをサイが寝た後ワインと一緒に食べたらあまりの美味しさに感動した。また買いに行こう。ケーキを食べながら、中学時代誰も話が通じる人がいなくて、その状態が一生続くのかと思っていたが大人になったら今日みたいにちゃんと話せる人がいるんだなと考えた。あの時の自分に大丈夫って言ってあげたい。友達が誕生日なのでおめでとうの絵を描いて送ってから寝た。


1月20日(日)
朝ごはん、プリキュア、ジオウ、ルパパト。寝坊してプリキュアは後半から。ジオウはゲイツのパジャマ姿にぐっときた。話がどんどん複雑に。ルパパトはゴーシュがいなくなり寂しい。ゴーシュはボスのドグラニオから寵愛を受けていることでやや傲慢になっていたところもあるがドグラニオはゴーシュがつまらなく感じいきなり突き放しコレクションを回収。コレクションの力なしでは弱かったゴーシュは動揺し自爆して散る。泣ける。次はいよいよ最終回。

午後から面会。待ち合わせに遅れられたのになぜかこちらが責められて憂鬱が募る。サイと別れて電車に乗って美容院。気分が落ちていたので美容師さんと最初うまく話せなかった。それで最初黙っていたら切り始めて「さあ、年が明けましたね…」と独り言のようにぼそっと言われたのであぁありがとう…と思った。相変わらず優しい。話しかけてくるタイミングや間の取り方全てが心地良い。容姿もすばらしいし(すばらしいというかタイプ…痩せているのに大きめの服を着ているところとか最高…凝視できない)、この人は絶対モテるだろうなと思わせるものがある。さすがに何か感情を抱くことはないが、勝手に疑似恋愛気分に浸らせてもらっている。それで髪も切ってもらって数千円なんて安い。時間があったからかシャンプーもしてくれたが緊張するので女の人に代わってほしい。前に日記を書いている話をしたら教えてほしいと言われたがこんなことを書いているので絶対教えられない。美容師さんも毎日書いているらしい。聞いたお店の名前が覚えられないと言うと「じゃあ今もう一度言うのはやめときますね」と言い最後の最後に教えてくれたところとか、あぁもう好き…となった。おすすめしてもらった体に良さそうな薬膳スープ屋さんに行ったら美味しかったけど物足りなかった。とんかつ屋かラーメン屋行けばよかった。それから地図を頼りに美容師さんに聞いた名前が覚えられない雑貨屋に歩いて行ったがおしゃれすぎて買うものがなかった。時間がなくなり電車に乗ってサイを迎えに行く。

サイと児童館に行ってみるも閉まっていたので一旦帰宅しおやつを食べて布団でだらけた後気合いで起き上がり、サイは自転車、私は徒歩で近所のスーパーまで買い物。サイは意気揚々と自転車を漕いで買った折り紙を前かごに入れていた。大根と手羽中の煮物。肉がとろとろになって嬉しかった。大森さんのラインライブを観てから寝る。サイは画面の中の大森さんに話しかけていた。

小学生二人組の夏休みみたいな年末年始

12月31日(月)
夕方まで掃除。大掃除というよりただの掃除。部屋が久しぶりに綺麗になった。たくさん捨てた。いつのまにかサイが着られない服が思っていた以上に増えていた。夕方から歩いて買い物に行き、ピザを食べながら「大晦日だよドラえもん」。紅白が始まるとサイは「カモンベイビー(サイはそう呼ぶ)いつやるの」と何度もしつこく聞いてくる。「サイくんカモンベイビーすきなんだよ!」「うん、そうだね」というやり取りを何度もした。9時半頃DA PUMPが出ると満足そうにしていた。紅白前の番組でISSAさんが「今年USAを何度くらい歌われましたか」という問いに「わからないですね」と答えていたのがかっこいいなと思った。長年やってきて、一曲がヒットしてあまり呼ばれなかった歌番組で急に引っ張りだこになり同じ曲ばかり歌わされるのはどういう感情だろうと考えていたが嫌な顔はしていなかった。レコ大で他の曲も歌っていて、踊りも歌も昔と変わらずすごくてプロだなと感心した。

年越しそばも食べず静かに新年を迎えた。サイが寝た後、友達とだらだら電話しながら「ゆく年くる年」を観ていたら年が明けた。だから寂しくはなかった。


1月1日(火)快晴
朝早く起きて池袋でサイと『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』。朝イチの上映。売店で生ビールを買う。サイは予告を観て音の大きさや映像の迫力に圧倒され「こわい」と言っていたが本編が始まると引き込まれていた。映画はめちゃくちゃ面白かった。途中泣いていた大人は私だけだろうか。感想を別途書きたいくらいだ。観終わってサイは「こわくなかったよ」とにっこりしていた。それならよかった。数年前は朝から晩まで泣いていた子とこうやって並んで二人で映画が観れるようになるなんてなぁ。西武の屋上で私はポテトとビール、サイはアイス。パンフレットを見ながら二人で感想を言い合った。

それからなんとなく巣鴨に寄った。きっと神社は混んでいるだろうし、絶対に初詣に行きたいというわけでもなかったがサイにお正月らしい空気を感じてもらいたいなと思ってなんとなく。とげぬき地蔵へ向かう商店街はたくさんの人で溢れていた。餅や甘酒を求める人や店先で売る人。元旦の空気だった。お参りをしたあと、二人で笑いながら頭に煙を浴びて、サイがやりたいというので人生で初めて射的をやった。ルパパトで圭一郎と魁利が射的をするシーンがあって、それを思い出してやりたくなったらしい。1回500円。高い。怪しげなアジア人のおじさんから受け取った射的銃はずっしりと重かった。先端にコルクをセットして回転する台に乗ったお菓子をめがけて発射する。私はこういうのが苦手なのでうまくできなかった。サイが持ちたがったので支えるようにしたら、サイが打った球がミルキーの箱に当たった。すごいなぁ。それからマクドナルドで休憩。外国人男女二人ずつの4人組がいて、そのうちの一人の女の子がコンビニで買ってきたヨーグルトをけだるそうに食べていて私がドキドキした。冬なのにみんな薄着だなとしげしげ眺めてしまった。

帰りに元旦から開いているSEIYUでサイの靴下とサイが欲しがっていたガイムアーマーのソフビ人形をお年玉で買う。レジでサイに千円札を渡すと満足そうに支払っていた。最近お金を触りたがる。地下でパック入のお寿司と大根とキャベツを買い、一駅分歩いて帰った。リュックの野菜がずっしり重かった。日が沈みかけていたが空気は澄んでいて気持ちよかった。サイはずっと『U.S.A.』を踊りながら歌っていた。最初は歌だけだったのに年末から歌番組などで繰り返し観るうちにサイのパフォーマンスはアップデートされていた。おせちもお雑煮も食べず、正月らしいことはしていないが二人きりの時間は自由でひそやかで楽しかった。サイと歩きながらこの感じはなんだろうと考えたら、小学生の時に放課後知らない道を探検した時の気持ちを思い出した。


1月2日(水)快晴
サイが仮面ライダーの別のソフビ人形が欲しいというので、昼過ぎから後楽園へ出かけた。二人で銀だこ(と私はビール)をそこら辺に座って食べた後、シアターGロッソ横のショップでカブトの人形を買う。これもお年玉で。サイは昨日かった人形と合わせて二体を大事そうに手に持つ。「観覧車に乗りたいなぁ」と言うと毎回拒否していたのに「いいよ、かんらんしゃのろうよ」と機嫌良く言ってくれる。二人で乗り場までウキウキで階段を上った。天気が良く空は澄み渡り、観覧車日和だった。列に並んでいよいよ次の番という時、いきなり「じゃあ撮りますので」と記念写真を撮られた。誰かが乗って降りたばかりの動く観覧車に遅れないよう乗り込んでドアが閉められて突然しんとする。この感覚久しぶりだ。私たちが乗ったその小さな空間はゆっくりと上がっていく。窓からの眺めは絶景と言うよりはどこもかしこもビルだらけだった。スカイツリーも見えた。これが東京だ。二人で遥か下に見えるウォーターボートの水を見てはしゃいだ。私が窓からの風景やサイの写真を撮っているとサイは「ビデオとってよ!」と動画撮影を求めてきて、言われるがまま動画を撮影した。サイは手に持った二体の仮面ライダー人形を何やら動かして紹介していた。きっとYoutuberになりきっているのだろう。最近こんなことをよくする。観覧車は乗った場所まであっという間に戻り、出口で紙のフォトフレームに入った最初に撮った写真を見せられる。私もサイも急に撮られてびっくりしたみたいな変な顔をしていたが、サイと映っている写真が嬉しくて買ってしまう。

それから東京ドームシティに入っている駄菓子屋さんに行った。それぞれかごを持ち、好きなお菓子を選んだ。選びすぎるサイに「もうそれで終わりだよ」と言うと、サイも真似して「ママもかいすぎ、おわりだよ」と言う。一緒に駄菓子を選ぶなんてやっぱり小学生の友達同士みたいだ。赤ちゃんだったサイの精神年齢がだんだん私に追いついてきて、子どもといるという感覚がどんどんなくなる。帰りにサイが千円以上のレシートで一回できるガラガラとまわす福引がどうしてもやりたいというので、本屋ではたらく乗り物が工作できる本を買い、一回福引をした。何も当たらなかったがまわして納得したようだった。

観覧車に乗る前に撮った写真を改めて見て変な顔してるねぇと二人で笑った。サイは「だってきゅうにとられたんだもん」と最もなことを言っていた。私は顔が丸かった。ビールを連日飲みすぎていることにここで初めて気づいて反省。


1月3日(木)極寒
二日間遊んだので一日家でゆっくりした。洗濯、掃除。サイとAmazonプライム仮面ライダー。電王と鎧武とオーズとカブトを最初から少しずつ観た。サイは鎧武とオーズがお気に入り。鎧武はフルーツの鎧がかっこいいし、オーズがコインで返信するのもかっこいい。オーズの主人公が「生きるのにちょっとのお金と明日のパンツがあればいい」って言ってるのがなんか良いなと思った。悪者が人間の欲望から生まれているというのもまた良い。お昼はインスタントラーメン。サイはハムと焼きのりを自分でかざって「うさぎちゃんラーメン」を作り、マロンクリームのぬいぐるみに見せていた。外ではもうお兄ちゃんだからかわいいものは好きじゃないとか言って強がっているが、毎晩メロンパンナとマロンクリームのぬいぐるみを抱いて眠っているのを私だけが知っている。サイのひみつだ。それから自転車で買い物。いつもの魚屋と八百屋は正月休みで閉まっていた。「あー閉まってるー」と言うと「ほらね」と言われた。すっかり暗くなったが公園で遊んでから帰宅。晩ごはんはぶり大根。


1月4日(金)快晴
サイは保育園初め。私は上野まで行き東京都美術館の「ムンク展」へ。入るのに30分以上かかるほどの盛況ぶりだった。ムンクの絵は生で観るのはもちろん、『叫び』くらいしか作品を知らない状態だった。画家はたいていそうなのかもしれないが、ムンクはこれまで観たどの画家よりも孤独な人に思えた。カメラによる自撮りを好んでいたらしく、自画像も多かった。友人の恋煩いや死など、描かれるテーマがとにかくどれも暗く、観れば観るほどムンクのことが好きになった。若くして家族を無くしたり、恋人と別れる際に指を失うほどの発砲事件に発展したり、精神病棟に自ら入院したり、さまざまな転機があり、その度に作風が変わり、彼の人生が芸術と密接であることを目の当たりにした。同じモチーフを執拗に繰り返し描いたり、描かれた人物が死神のようであったり、一見非現実的であるようで描かれているのは空想のものではなく現実だった。彼にはそう見えていたのだと思う。物販はビニール人形やブローチなど叫びグッズで溢れていたが、ムンクはこれを見たらどう思っただろうかなどと考えた。笑っただろうか。

夕方、お迎え。昨日のぶり大根。新春特番でドラえもんとしんちゃんがなくてがっかり。


1月5日(土)快晴 春みたいな天気
朝からパン美人と公園でサンドイッチとビール。サイは初めて変身ベルトを外に持ち出した。公園でベルトを組み立てて装着していた。朝の公園は空いていて気持ちよかった。この公園はすてきな人に教えてもらったお気に入りの公園なので好きな人としか行かないと決めている。都会にあるとは思えないほどのんびりできる。サイとパン美人と三人でシーソーをする。それからアイスを食べてからパン美人と別れた。買い物して帰宅。三日目のぶり大根。


1月6日(日)晴れ
久々のプリキュア、ジオウ、ルパパト。ジオウが面白かった。新たに加わったパラレルワールドの要素。ウォズもシノビもかっこいいので目が離せない。サイが面会をしている間にセールを見てまわる。伊勢丹に行ったが良いなと思うものはセールでも高かった。ジルサンダーのコートがかわいかった。でもこれを今ここで買うのはどうなんだろうと躊躇した。サイと公園で遊んでから帰宅。サイのリクエストで麻婆豆腐。七草がゆからほど遠い。明日から仕事なのが嫌で最後の悪あがきのように深夜3時くらいまで夜更かししたら朝起きるのが辛かった。当たり前。

なんだかんだ言いつつクリスマスが好き

12月21日(金)
お昼はいつも行く私が「蕎麦屋界のベルク」と呼んでいるお蕎麦屋さんに行った。いつもは500円のミニ天丼セットだが朝から元気がなかったため640円の上天丼セットにした。量が少し多かったが海老が二本乗っていて嬉しかった。更にたまたまレディースデーでお菓子のサービスがありチョコパイをもらった。やったー。それから百均へ行き、サイのプレゼントと自分のプレゼント用の包みを買う。いつも通りがかる造花屋さんをウィンドウ越しに覗くと店の中は春爛漫で色とりどりの花が咲き乱れていた。まだ夏の暑さが残る頃、お店はクリスマスだった。いつもこのお店だけ季節が違うのでこの世界から隔離された異世界のようだ。

「サンタは空からいつでも見てるからほしいものがあったら言っておくといいよ」と教えるとサイは律儀にベランダに出て空に向かって「トミカをください」とお願いしていた。そして「ママにかわいいおようふくください」とお願いしてくれていた。Amazonで安く買ったスニーカーがあって、別にプレゼントでもなんでもないのだが、私に何も届いていないときっとサイは悲しむから自作自演をすることにした。演技力が試される。

前日、知人の家族が病院に運ばれたと聞き容態が気になりあまり眠れなかった。自分がもしそうなったらサイはどうなるのだろうと一日中考えていた。今を生きなければいけない。


12月22日(土)
サイと朝からピューロランドへ行った。私は4回目、サイは三回目。サイは最近お気に入りで毎晩一緒に寝ているマロンクリームのぬいぐるみを連れて行く。電車で三人で楽しかった。
先に昼食を食べようと思ったものの空いている席がなく、空きそうな席があったと思ってすぐ横で待っていたら気の強そうな女に奪われて半泣きになった。女は勝ち誇ったような顔をしていた。するとかわいい女の子が親切にも「二人でしたら相席どうぞ」と座っていた四人席の円卓の半分を譲ってくれた。なんていい子なんだろうと感動した。サンリオを愛する人はこうでなくてはいけない。

昼食後、クリスマス特別パレート。サンタの恰好をしたキャラクター達がかわいかった。パレード後、キティちゃんとグリーティング。私はキティに会うのは三回目。緊張してハグできなかった。サイも会いたがっていたわりにいざ対面すると後ずさりしていた。あとで買った写真を見たら二人とも表情が固まっていた。サイと二人で映っている写真が嬉しくて1600円だろうが何だろうがすぐ買ってしまう。その後、サイが乗りたいと行ったマイメロドライブに1時間以上並んで乗った。サイは並んでいる間愚図らず大人しくしていた。偉い。それから私が乗りたかったサンリオボートに乗り、お土産を見た後キキララの部屋に行った。キキララの部屋で若い子が写真をたくさん撮っていて、サイや他の子どもがいると邪魔そうにしていて、ピューロランドっていつからインスタ映えランドになってしまったんだろうと悲しくなった。いや、どこへ行ってもそうかもしれない。それが嫌になり、最近どこへ行ってもあまり写真を撮らなくなった。6年前くらいに始めたインスタも鍵をかけほとんど更新しなくなった。SNSに上げることが目的で何かをしたりどこかへ出かけたりするのが手段になってしまうとしたらその行動自体は空っぽになってしまわないだろうか。かわいいものを見て単純にかわいいと感じ誰知れずひっそりと愛でるその内向きの気持ち悪さこそがサンリオ文化だと思っていたのだが最近は変わってきたのかもしれない。帰りにタイミングよくサンリオラッピングの京急が来たのでそれに乗って帰宅。くたくたになったけど楽しかったね。


12月23日(日)
我が家では今日をクリスマスイブとする。伊勢丹でサンタとトナカイのケーキを買い、近所のケンタッキーでチキンを買いに行き、スーパーでスパークリングワインとジュースを買った。サイはチキンの味が気に入らなかったようで一口二口食べて放置し、ケーキも要らないと言い、結局私はチキンやケーキが載った食卓で黙々とそれらを片付けていった。少し寂しかったが仕方ない。あと何年かしたら静かに乾杯して落ち着いて食事できる時が来るかもしれない。サイと二人は楽しいが、じっくり語らったりお酒を飲んだりする相手が今私にはいないので時々こうやって寂しい気持ちがふと訪れる。誰かいてくれたらなと思う時もある。でもそれが自分が選んだ結果なので良いとも悪いとも思わない。そういうものだ。

サイが寝た後、隠しておいたプレゼントと自分用にAmazonで買ったスニーカーにラッピングし、サンタからの胡散臭い手紙を英語で書いて、サイの枕元に置いてから寝た。


12月24日(月)
我が家では今日がクリスマス。朝、私はサイより早く起きてサイの枕元にある昨晩自分で包んだ二つのプレゼントを見つめてそわそわしていた。目覚めるサイ。プレゼントに気づいた時のサイの表情や目のキラキラが本当にかわいくて胸がいっぱいになった。開けるところは動画で撮影した。開封した途端、「トミカじゃない~」と不服そうに絶叫していた。サンタの手紙にも無関心だった。子どもは正直で良い。私は自分で包んだスニーカーを開け「わぁ!ママにも靴届いた!」と白々しく叫んだ。不満ながらもサンタからのレゴに興味津々でどんな形のブロックがあるか二人で点検した。今まで使っていたデュプロよりずっと小さくて細かいパーツがあって面白い。私の母親からもプレゼントが届き(いまだに毎年私にも送ってくる)、財力が足りずサンタが用意できなかったトミカプラレールが交差する踏切セットをもらったサイは大喜びだった。家中が段ボールや包装材で溢れて散らかった。

入っていた作り方を見てレゴでカメラやクレーン車を作ってみたら楽しかった。サイは作り方通りにきっちり作りたいタイプらしく少しでもずれたりパーツが揃わなかったらイライラしていた。この性格は赤ちゃんの時からで、適当な私と全く似ていない。夜はまたパーティーっぽいことをした。今日もケーキは要らないと言われたので昨日サイが食べなかったサンタのケーキを食べた。


12月25日(火)
仕事で嫌なことがあった。いまだに納得していない。


12月28日(日)
仕事納め。納会で韓国の女優に似ているとそれほど仲良くない人に言われたがそれが誰かわからなかった。納会もそこそこに缶ビール片手に退散。いつも年末の挨拶がうまく言えずもごもごしてしまう。保育園の先生にも挨拶。


12月29日(土)
朝からサイと横浜へ行った。初めて行った鉄道模型博物館では実際に鉄道模型を走らせて運転を体験できる機会があり、サイは大喜びだった。売店でヒロのプラレールを買わされた。サイによるとヒロは優しいらしい。中華街で食べて帰った。疲れたけど楽しかった。

新しくやってきたクマの名はQちゃん

最近、保育園の後、家に帰らず夜の公園でサイと遊ぶのが慣習化している。二人ともお腹が空くし、その後の時間がずれるし、何より寒いから正直私は早く帰りたいが、サイがどうしても行きたいと言う。サイは「がらがらすべりだい」と呼ぶローラー滑り台がお気に入りで、それをサイと同じように公園に通うのが常になっている同じクラスの男の子YくんとZくん(仮)と三人で滑ったり登ったりするのがたまらなく楽しいらしい。私は最初YくんとZくんのお母さんを全然知らなかったので公園で人見知りして、あまり会話をしなかった。でも二人のお母さんはずいぶん前から夜の公園に来ているらしく仲が良いらしかった。毎日通ううちに二人と少しずつ話すようになり、とてもいい人達だと分かった。Yくんのお母さんはいつもにこにこしていて、Yくんにとても優しい。そしてちょっとオタクっぽい(「働く細胞」というアニメが好きらしい)。詳しくはわからないが。Zくんのお母さんは男性のように短髪でいつもエプロンをしている。何かお店をされているのかもしれない。二人とも化粧気がない。それからもう一人。このお母さんのお子さんは姉妹で、同じ保育園だが学年が違うのであまり話したことはない。でもとても気を遣ってくれるし明るい。大きな体でがははと豪快に笑うアニメから出てきたみたいな人だ。でもがさつではない。私は二人に何と思われているかわからないが、いつも疲れて一人でぼんやりベンチに座ったりしているのでそういう人だと思われているかもしれない。三人はしているかもしれないが、私はそれぞれのお母さんとお互い必要以上の会話はしないので家や職業や家族構成を聞かれることもない。それが楽だ。すぐ「旦那さんは…?」とか「家どのへん?」とか気軽に聞いてくる人がちょっと苦手なのでちょうど良い。三人のお母さんはとても子どもを心から愛しているのがいつもよく伝わってきて、サイにも優しい。子ども達はほとんど照明のない真っ暗な公園できゃーきゃー行って走り回ったり滑り台をして遊んでいる。時々知らない老人もいる。早く帰りたい、なんて言う人は一人もいない。だから申し訳なくて私は帰りたいと誰にも言えない。

 

10月10日(水)
昼。会社の先輩と週一外ランチの日。ちらし寿司を食べつつひたすらサンリオの話。私たちは80年~90年代のキャラクターをサンリオは今後積極的に商品化すべきだと数年前から熱く語っていたので、最近それが現実になり喜んでいる。サンリオ世代(30代~)はお金があるからその世代が好きだったキャラクターグッズをリバイバルすれば売れると考えたのかもしれない。その戦略にまんまとハマりサンリオショップに行くと悶えている私。たあ坊やタキシードサムも好きだが興奮してグッズを買い漁るほどではない。でもダークホースであるマロンクリームを出されると困る。いや困らない。マロンクリームはあまりにも思い入れがありすぎる。ノスタルジーが大爆発を起こす。小学校低学年の時、みんなキティやキキララが好きだったが私はマロンクリームが好きだった。マロンクリームが他のキャラクターに比べて田舎臭いと薄々気づいてもやっぱり好きだった。あの花柄が。あのPINKHOUSEのような90年代特有の重苦しいロマンチックさが。最近買ったお気に入りのマロンクリームのポーチを先輩に見せたらすごく良いねと褒められた。先輩はセブンドワーフという小人のキャラクター(かわいい)が好きなのでお互いの好きなキャラクターが今後どんどんグッズ化すればいいねという話になった。私の一番の推しのタイニーポエムはほとんどリバイバルされていないので推し続けることが大切だ。お寿司屋さんはいつも誰もいないがとても落ち着く。

お迎え後、薬局で買い物、その後いつもの公園。いつものメンバー。私はお昼のちらし寿司が足りなかったのか、お迎え時点で猛烈に空腹を感じたためベンチに座り薬局で買ったじゃがりこを食べ始めたが他のお母さんは誰一人お腹が空いたような素振りを見せたり飲食している人はおらず、私は何かいけないようなことをしている気がしてお母さん達に見られないようにこっそり食べた。夜風が最高だし、ここに缶ビールがあればなぁと考えたが、じゃがりこで気まずいのだからビールなんて飲めるわけないよな、とも思った。子どもにおやつを食べさせても自分は絶対食べたないし、なぜ他のお母さんはあんなに「いいお母さん」でいられるのだろうと不思議だった。お腹が空くとおやつを食べてすぐビール飲みたくなる私がおかしいのだろうか。

サイが寝る前に洗濯機のスイッチを押したが、干そうとした瞬間雨が降り始める。天気予報を見ない自分が悪いが悲しい。こんなに山盛り洗濯しなければ良かったという後悔と絶望で干し始めるまでに時間がかかり、結局干し終えるのに1時間以上かかった。半分残していたハーゲンを食べて寝た。アリスのやつ。紅茶味が好きだ。


10月11日(木)
朝バタバタ。何となく雨が降りそうな予感がしてサイに新しい長靴を履かせ傘を持って行かせる。連休中に伊勢丹で買ったグレーの長靴がかっこいい。私も同じものが欲しいくらいだ。その前に履いていたカエルの顔がついた長靴から急に大人になった感じ。

夜。雨は降らなかった。勘が外れたが降るよりは降らない方がいい。今日も公園に行きたいと言われ、空腹で死にそうになるのが嫌だったのでサイと富士そばに行き先に夕食を食べた。チーズダッカルビが果たして何なのかわからないままチーズダッカルビ丼セット(サイは冷やしうどんしか食べないのでいつもセット)というのにしたらチーズダッカルビは辛くて、追加でビールの食券も買った。サイに「ビール飲んでいい?」と聞くと「いいよ」と大人みたいな口調で言われたのでいいということにした。

食べ終えて公園に行くとやはりいつものメンバーがいた。「食べて来たんです」と遅れて来た理由を言うと「えぇーすごい!」「もうごはんができてるなんてすごいですね」と言われて恥ずかしくなり「いや、ふ、ふじそばで…」と小声で言った。ビールを飲んだことは黙っておこうと思った。空腹を満たして遊ぶと心の余裕ができ、早く帰りたいと空腹でイライラすることもなくお互い楽しかった。帰ってお風呂に入って寝るだけだしこれもたまにはいいかもしれない。


10月12日(金)
あまり記憶がない。だし巻き卵を作った気がする。肉まんを食べたような気がする。サイは中の具が「おにくとたけのこががったいしてるのがいやだ」と言って、外の皮だけ食べた。タケノコみたいな食感がある野菜が嫌いらしい。レンジャーの影響で合体という言葉をやたらと使いたがる。肉とタケノコが合体したロボットを想像したらちょっとおかしくて笑った。Zくんが持っていたプリキュアのケース入りグミを買わされた。中にハート型のピンクのグミが入っていた。私が桃が好きなのでサイはパッケージのイラストを見て「ももだよ!」と嬉しそうに教えてくれた。プリハートみたいでかわいい。アイスも食べた。


10月13日(土)
昼前に待ち合わせしてAちゃんと下北沢で遊んだ。最高に楽しかった。サイはAちゃんが好きなのでテンション上がりすぎて駅で待ち合わせした時からもう落ち着きがなく走り回っていた。Aちゃんがおかゆのカフェに連れて行ってくれた。Aちゃんはいつも私の好きそうなお店を会う前から考えてくれていて、それを事前にわざわざ言われることもないが「こっちだよ」と道案内してくれて、着いて行けば安心みたいな空気があり、絶対的信頼を寄せている。だから店が分からなくて歩き続けて空腹で悶々としたことが一度もない。とても気が利く。私はこういう段取りが根本的にできないからできるAちゃんを心から尊敬している。カフェはおしゃれな感じで、サイが騒ぎそうな予感がしたので入店する時に一応「子ども大丈夫ですか?」と聞いたら快く応じてくれた。いい店だ。しかも奥の広いゆったりしたソファ席を案内してくれた。蛍光灯ではない照明の具合がとても好きだなと思った。Aちゃんが連れて行ってくれるお店はいつも幸せな気持ちになる。

昼食後、ガレージで開かれていた古本と雑貨のマーケットに行った。古本市自体久しぶりでわくわくしたがサイがいて途中トイレを探しに行ったり(漏れ事件があり悲惨だった)全然落ち着いて見れなかったのでじっくり見るのは諦めて気になる本をさっと選んで購入した。私が過去何度か配送で本を売った横浜の古書屋さんが出店していると行く前に知り、これは挨拶したいと思っていた。買い取りの時は着払いでいいのでメールでやり取りしているが店主さんがとても丁寧な方だ。私が売る本を一冊一冊よく見て値付けしてコメントしてくださるし、私の売った本で私がどんな人物か想像までして聞いてくれる。古いイギリスの絵本が入っていたからそういう研究をされていたのですか、子育て関連の本が入っていたからお子さんがいらしゃるのですか、とか。オンラインショップで売っている古書のラインナップも素晴らしく、古書への愛に溢れている。買った本は丁寧に梱包されて手紙付きで届く。私のせいでメールのやり取りが途中で途切れてしまっていたから、いつもありがとうございますと口頭で伝えたかった。広くない会場にその古書屋さんの出店ブースを見つけ、店主らしき人がいたので「いつも買い取っていただいている者なのですが…」とおずおず話しかけたら笑顔で「そうなのですね、ありがとうござまいます!よろしければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか…?」と感じよく尋ねてくださった。店主の男性は想像していたより若い方だった。名前を言うと「あぁ、〇〇様!先日はありがとうございました」とすぐに分かってもらえた後、サイを見やって「あ、やはりお子様がいらっしゃるのですね」「はい、メール返せずすみません…」「いえいえ、今おいくつですか」などと話してくださる。店主にも小さなお子さんがいて、今奥様が授乳をされに行っているということだった。「どこに行ったかな」と気にしてくださったがサイがぐずついたので奥様が戻って来るのを待たずにご挨拶してその場を離れた。ネットでやり取りしていた人に会えると嬉しいな。しかも約束したわけではなくこんな形で会えるとは。いい本屋さんだと改めて分かったので次もまたここに売りたいし、買いたい。それからいくつか見てまわったが昼食をまともに食べなかったサイの機嫌が悪くなってきたので終了。

収穫は手品や漫画の古本数冊とかわいいロシア雑貨の店で一目ぼれしたアンティークのクマのぬいぐるみ。テディベアはあまり買わないが、あまりの可愛さに一目ぼれした。目が少し物憂げで、口元の毛がわしゃわしゃしている。店主は感じが良い女性で、私が値段で迷っていたら値下げしてくれた上におまけに古いロシアのバッジを二つ選ばせてくれた。お腹にプロペラをつけて空を飛ぶおじさんのバッジが気に入ったのでそれを選ぶと「これはロシアの絵本に登場するキャラクターなんですよ」と教えてくれる。名前を聞いたのに失念してしまった。ロシアにはチェブラーシカやミーシャ以外にも変てこでかわいいキャラクターがたくさんいると知った。ロシア行きたいなぁ。Aちゃんもカード類など色々買っていた。マーケットはお店の人と話すのが楽しい。普段話すのが苦手な私でも興味のある分野なら楽しく話せる。古本とクマが入った大きな紙袋を持ってマーケットを出た後、サイゼリアでお茶した。サイは二人で食べようと思って頼んだアイスを魔法みたいに一瞬で食べて(その前に巨大なプリンも食べたのに)私が食べる隙を与えなかった。

夕方Aちゃんと別れた後、何軒か古着屋を見てまわったが買いたいほどいい古着はなく、サイも私もだんだん疲れてきたしすっかり暗くなったので通りがかったたこ焼きスタンドでたこ焼きを食べることにした。サイに「サイくんたこ焼き食べられる?」と聞くと(前食べなかったので)、「うん、サイくんたべれるよ。もうおにいちゃんだからね」とお決まりのセリフを言う。「おにちゃんだからたこやきたべれるんだよ」だって。どうだろうと思ったけど私もお腹が空いていたので8個入りを一つ買い、外に設けられたテーブルで食べた。ドリンク持ち込み不可で、しかも水がなくサイが飲める飲み物が売ってなかったのでどうしようかなと戸惑っていたら「ないしょね」とたこ焼きを焼いていたおばちゃんが自分用?の大きなペットボトルから紙コップに水をいれてくれた。助かる。悪いと思ったので私はビールを買った(いや飲みたかっただけ)。たこ焼きは鰹節がたっぷりかかって美味しかった。熱いから割って冷ましてサイにあげるとふーふーして美味しそうに食べていた。二人で竹串でたこ焼きをつつくなんて、成長したなぁとしみじみした。「おにいちゃんになった」って本当だな。そうやってあっという間に大きくなるんだろうな。それから駅に向かい電車に乗って帰宅。

最寄駅に着いたらサイが公園で滑り台をしたいと言った。小腹が空いて来たので近くで唐揚げを4個買って公園へ行った。サイが暗闇で遊ぶ様子を眺めつつ私はベンチに腰かけて揚げたての唐揚げをむさぼっていた。近くにはカップルが何組か座っていちゃついていた。平日は子供が遊んでいるが、土曜だとカップルの場所になるのだなと初めて知る。匂いでムードを壊して申し訳ないと思いつつも唐揚げは美味しい。サイも合間合間に私のところに来て食べていた。それから帰宅して就寝。楽しかったね。私たちはいつもこんな風に遊んで暮らしている。気まますぎて、子育て本に載っているような規則正しい食事や生活ができているとは胸を張って言えないが、毎日が楽しい。


10月14日(日)
朝からどんより曇り空。でもまだ雨は降っていない。Aちゃんにお土産でもらったかわいいトトロのシュークリームを二人で食べた。Aちゃんはいつもかわいいものをくれる。なんて気が利くのだろう。あまりにかわいくてサイと二人でそれぞれのトトロを見つめて「た、たべられないね…」と固まってしまった。食べたけど。美味しかったけど。

ルパパトとプリキュア。洗濯と片付け。昼過ぎマクドナルド、のち、商店街で買い物。日曜は判を押したように大体これを繰り返している。肌寒く気分的にマクドナルドを食べたくなかったので「ラーメンにしない?」と提案するも拒否される。ハッピーセットが欲しいということだった。ルパパトとプリキュアのおまけももう終わりだろうし、と我慢して行く。サイはプリキュアハッピーセット、私はえびフィレオと珈琲をいつものテラス席で。私たちのお気に入りの席。店内は混んでいても裏口のこのテラス席はなぜかいつも空いている。食べながら二人で電柱の上の方にいるカラスを眺める。「なんでおそらにとべるの?」と聞かれたので「羽があるからだよ、すごいよね」と言うと「えぇサイくんもおそらとびたい~」と言われる。「飛びたいねぇ」とカラスの黒い体を眺めつつ答えた。カラスって本当に頭から尻尾の先まで真っ黒だなと思った。途中でいなくなり、サイはどこに行ったのか気にしていた。

商店街へ。八百屋さんの夫婦は奥さんがすごく怖そうで、レジの故障で操作がうまくいかなくなった旦那さんが奥さんを呼んだらイラついていた。でも仕方ないわねぇという感じもして、本当は奥さんは旦那さんを愛しているのだろうなと内心でにやにやした。結局レジは外国のサッカーチームのユニフォームを着てピアスをした若い男の子が来て簡単だよという感じで直した。息子さんなのだろうか。奥さんと旦那さんと男性の顔を見比べたが真相はわからなかった。その後、魚屋で新鮮そうな鮭の切り身(安い!)としらすを購入。サイが「いいおさかなだねー」と興奮していたら知らないおばさんに「(品定めして)えらいわねぇ」とにこにこ言われる。サイは何しても知らない人にすぐ褒められる。私は自分が幼少期、同じように大人に褒められた記憶がないのでそれはサイの才能かもしれない。世の中を生き抜く力が私よりずっとありそう。

魚屋さんを出たら商店街のスピーカーから何やらおじさんの声が聞こえてきて、フリーマーケットの案内のようだった。「(商品との出会いが?)一期一会でございます。ぜひこの機会にお立ち寄りください」という言葉がやけに心に沁みた。本当だよな、人も一期一会だなと感じた。フリーマーケットを見ようとしたら、何やら絵が飾ってあるスペースがあり、よく見ると出張絵画教室とのことだった。有料だがキャンバスに絵を描いたりアクセサリーを作れるということだった。サイに聞いたらやるということだったので、500円でエコバックに絵を描く体験をすることにした。スペース内に入るとテーブルでは既に小学生くらいの女の子が二三人、アクリル絵の具で絵を描いていた。サイはたくさんいる大人達や自分より歳上の子ども達を前に固まっているようだった。無表情のまま汚れ防止のエプロンを着せられ、開始。最初はやる気がない不良みたいに筆を持つ手が進んでいなかったが、だんだん好きな色を筆に取り、バッグにぺたぺた塗り始めた。いいぞと思っていたら男性の先生が「ん?何を描いているのかな?先生に教えてくれる?」とか「こんな風に塗ってごらん」とサイの筆を持って言うものだから、サイはまた固まってしまう。そういうのやめてほしいなと思う。いや、絵画教室だから仕方ないのか…。サイは何かする時はわりと一人の世界に入りたいタイプなので、干渉されることを嫌がる。サイが混ぜたり作る色を見ていた先生によるとサイは緑や茶色の自然物の色が好きらしいということだった。先生は好きになれなかったが、それは新しい発見だった。いつも二人で植物や空を見ているからかもしれない。途中から私もやりたくなり塗り始めたが、サイが横で手伝ってよ~と言ってきたりして集中できず、思うように描けず塗り重ねていたら変なものができあがった。先生は私にまで「これは雲ですか?ならば下に影を描いた方がいいですよ」とかアドバイスしてきて嫌だった。わかっとるわい。私まで反抗期の中学生みたいになってしまった。小学生の時行っていた絵画教室はよかった。ほとんど干渉されなかったから。ただ描くことができる場所。先生は基本放置で、色とかどうしたら良いかわからないときだけ助けてくれた。今日の先生は高校生の時、私がデッサンができないことで酷く叱ってきた美術部の先生を思い出して気分が悪くなった。絵画教室も様々だが、ここにはサイを行かせたくないな。もやもやとした気持ちのまま終えると外は暗くなっていた。放置していた切り身が大丈夫かやや心配になりながら帰宅。

鮭のバターポン酢焼、味噌汁、トマト、だし巻き卵。いつも朝食みたいな晩御飯。寒くなってきたので沸かしたお風呂がすぐ冷める。冷めることを想定して熱めに入れてもサイが気分が乗らないとすぐ入ってくれない。フタを買わないと。物件を選ぶ時、追い炊き機能がないお風呂はキツイなぁと正直思ったが他の条件を取ったので我慢した。完璧な物件なんてない。

 

なんてことない日々だがやたらと日記が長くなってしまった。そういえばこの前の週の運動会のことを書いていない。毎日バタバタ。そうしている間にも冬は着実にやって来る。冬の空気が好きだ。 

 

カレーを作る度にいずみちゃんを思い出すだろう

眠る前は一日の疲れがピークに達しているので毎日日記をつけるのが思いの他難しい。あれもこれも書き留めていたいことはあるのだが。もうすぐ4歳になるサイの言動が本当に面白い。意表を突くような語彙やフレーズを突然言うので笑いが絶えない。サイが最近好きなフレーズは「どんどん大人になる」。「サイくんどんどんおとなになってるからね!」と度々言っては自分の身長が伸びたことを私に確認させ、もう赤ちゃんでないことをやたらとアピールをする。そして半年前や去年の記憶を回想する時に「あかちゃんのとき」と言う。「あかちゃんのときこれかいたんだよね」「あかちゃんのときあそこいったよね」など。まだまだ子どもなのに、今はすっかり大人に近づいていると思い込んでいるところが可愛くて笑ってしまう。でも確かに成長している。知ってるよ。

 

 

9月14日(金)

有給を取り横浜美術館まで行き、モネの絵と海を見た。小雨だったのでどんより曇ったグレーの空だったが、ずっと向こうまで広がる海を見ると心が晴れた。幼少期から海が見える環境で育ってきたからか、定期的に海を見ないと気が滅入る。そこが東京が今も好きになれない理由の一つだ。横浜はいい。千葉もいいかもしれない。とにかく海か川か何かしらの水がないと息ができなくなる。魚か。

 

モネの絵はこれまで何度か観たことがあったが展覧会で初期の作品から追って観たのは初めてだった。モネは好きな画家の一人だ。一番好きなのはルノワールだが私は印象派が好きらしい。絵画の専門的な知識はないので、色同士が光を含み曖昧に混ざり合う感じが単純にいいなと思う。モネの作品自体の展示点数は多くないものの、別々の年代にか描かれた絵は目の前に立ってじっと向き合うと胸の奥に迫ってくるものがあった。いつもそこまで意識しないが、作品の解説に書かれた制作年からモネがそれを描いた時に何歳だったか計算しながら観るようにしたら、あぁこの時今の私と同じくらいだな、あぁこの時は晩年か、などと後で年表で見たモネの人生を自分も辿っているような気になった。最近インスタントに共感したり感動できるものが世に溢れ無意識のうちに五感が鈍っていたが、こういう展示に足を運んで自分の眼で観なければ絶対に得られない感情があることに気付いた。夕方お迎え。久々にリフレッシュできた。私にはこういう日が必要だ。

  

9月16日(日)

サイとHさんと三人で川崎のドラえもんミュージアムに行った。半年前に「行きたいね」と約束してから伸ばし伸ばしになっていたが、ようやく実現した。時間が経っても約束を守ろうとしてくれる人が私は好きだ。ほぼ初めてのHさんにサイは最初緊張していたがHさんが目線を合わせて話しかけてくれたり笑いかけてくれたおかげですぐに心を開いた。ドラえもんミュージアムへは5年前に一度行った以来。その時サイはまだ生まれていなかった。前回と同じように駅からめちゃくちゃかわいい藤子仕様のラッピングバスに乗ってミュージアムに向かった。サイの推し(?)のエスパー麻美のバスが来てテンションあがる私とサイ。麻美かわいい。

 

サイは展示コーナーに入る前に貸してもらった電話のような子ども用の音声案内に夢中だった。原画に合わせた立体的な人形が子どもでも見易い低い位置のガラスケースに入っていて、サイはそれを夢中で覗いていた。子連れあるあるだが、順路の途中でサイが急にトイレに行きたくなったりして、ゆっくりは見れなかったがHさんは微塵にもイライラした素振りを見せずなんてすばらしい人なんだろうと感動していた。5年前は気付かなかったが、サイと一緒に行くとミュージアムが子どもにとても配慮した場所であることが分かった。その立場になってみて初めて見えることは案外多い。川崎市の支援があるのか、完全バリアフリーで子ども用トイレもあり掃除が行き届いていて設備がとても綺麗で気持ち良かった。こういう部分は案外子連れで出かける時に重要だ。子ども向けを謳っている施設でもトイレなど細かな部分が使いにくい場所はたくさんあるので、ドラえもんミュージアムみたいな場所が今後もっと増えていくといいなと感じていた。しかも某ミュージアムと比べると入場料が安すぎる。それでこの綺麗さ。やっぱり川崎市が絡んでいるのかな。

 

展示をさっと観終えて屋外のドラえもんの人形やどこでもドアや土管が置かれて自由に遊べるエリアに出るとサイはやっと出番が来たという感じでぐるぐると全力で走り回っていた。5年前に妹と来た時に恐竜にまたがったのび太ドラえもんの人形の前に立って撮ったので、今度は同じ場所でサイと並んで撮ろうと思ったらサイは落ち着きなく走り去ったので仕方なく一人でそこへ立ち、Hさんに撮ってもらった。帰って5年前の写真と見比べてみたら老けてはいたが5年前と表情が同じだった。サイははしゃぎすぎて派手にこけて肘をまあまあ深く擦りむいた。最近はあまりこけることはないので余程興奮状態だったのかもしれない。痛い痛いとテンション急降下するサイに声をかけていたらスタッフのお姉さんがどこからかやって来て、消毒したり絆創膏を貼って処置してくれた。なんという。そして痛かったけどがんばったね、とドラえもんのシールをくれた。感動した。カフェも待ち時間は別の場所で過ごして順番が来たら登録した番号に電話がかかってくるシステムで、ぐずる子どもを宥めて店の前で待つ必要もない。なんというストレスフリーな場所!しかも楽しい!カフェの飲み物は可愛かったし空間広めでゆっくり休むことができた。怪我して凹んでいたサイも元気を取り戻す。

 

面白かったのがHさんが藤子に関してはまあまあオタクだと思っていた私よりずっと藤子オタクで、私の知らないマイナーなキャラクターや話を教えてくれたのが楽しかった。Hさんはスタイルがよくてめちゃくちゃ仕事ができそうな美人なのに中身がすごいオタクなので大好きだ。好きなものが似ているというか、共通の好きなものが多い気がする。いつも穏やかで優しくてすーと流れる小川みたいな人だ。こんな人と結婚したい!といつも思うので旦那さんが羨ましい。売店に売っていた頭につけるタケコプターが欲しいと騒ぐサイを何とかごまかして宥めてミュージアムを出た。駅までバスがあるのもありがたい。まだ少し時間があったので、その足で上野に向かった。サイは電車の中で俺の家に来ないか、おもちゃがいっぱいあるよなどどHさんを口説いていた。大人の女性をプラレールや絵本で落とそうとしているのが面白すぎて笑った。

 

ポエトリカルジャムという詩の朗読イベントが上野水上公園で観覧無料で行われていて、我が敬愛する町田康さんが初めて出演されるというのでどうしても見たかった。Hさんの旦那さんも朝から行っているというので私達も行くことに。こういうイベントは初めてだったが言葉が次々に飛んでくる感じで歌のライブとはまた違って新鮮だった。町田さんはトリなのでサイがそれまで待てないと思い、時間を潰すために一旦退場した。晩御飯を食べられて入り易そうなお店がなかったので(居酒屋の勧誘がしつこくてHさんと二人でうんざりした、初対面なのに距離感を考えず踏み込んでくる男は怖い)、スーパーで適当に買って会場前で食べることにした。サイはピクニックと喜んでいた。

 

お酒(サイはジュース)と割引になったお惣菜を買って会場すぐ側の池の前に腰かけた。すっかり日が落ちた空にぼんやり光る蓮がずっと奥まで広がっていて、この世じゃないみたいだった。私はこういう外の何でもない場所で飲むお酒が大好きだ。Hさんがそれが好きな人でよかったなと考えていた。サイはHさんと一緒に蓮の池に枝を投げたり、レンジャーになりきって台詞を叫び続けたり、元気が有り余っていた。私はそんな光景を見ながら今日は良い日だったなと思いながらビールをちびちび飲んでいだ。再入場すると町田さんが始まる前にサイは寝てしまった。町田さんは石牟礼道子さんの詩を静かに朗読された。一日の疲れがすーっと浄化されていくような素晴らしい朗読だった。終演までいて電車に乗って帰宅。サイはその間も寝ていたので駅から抱えて歩かねばならぬ、なかなかきつかったがゆっくり歩いた。こんな時誰かいればな、と少し思った。帰宅後サイを何とかお風呂に入れすぐに寝かした。少し遅くなったけど楽しかったね、Hさんありがとう。

 

9月17日(月)

朝から雨。一日ルパパトやプリキュアを観てゆっくり過ごした。夕方になってスーパーに行って出たところでゲリラ豪雨。少しの距離だったがレインコートも意味ないぐらい全身びしょ濡れになった。帰って少し経つと止んだ。そういうものだ。夏の終わりだ。

  

9月18日(火)

大好きな人の誕生日。しかし去年に続き私はお祝いに行けなかった。いつも通りの火曜日。朝からどんよりと気分が重かった。退社後、駅に着いて自転車を漕いでいたらぽつぽつ雨が降り出し、保育園に着いた頃にはざあざあ降りの大雨に。昨日より激しい。レインコートも傘もなかったのでしばらく保育園で待った。他の親子も待っていた。だが一向に止まない。園庭の土が波打つほど激しく雨が降る中、帰れず何組もの親と子が入口に増えて行く。連休明けの疲れで放心状態みたいな親と雨の異様な光景にはしゃぐ子ども。サイもわざと濡れに行ってキャーキャーとはしゃいで騒いで、風邪を引くから辞めさせたかったがなかなか聞かない。こういう時、女の子はじっとしている。女の子の方が成長が早いというのは3歳児を見ているとよく考える。女男関係ないかもしれないし男の子にも大人しい子はもちろんいるが、呆れるくらい馬鹿なことをしているのは総じて男の子が多い気がする。激しく降る雨はなかなか降りやまず、濡れるのを諦めて嵐の中に突入して帰って行く親子もいた。でもMちゃん親子と私達だけ「もう少ししたら止むかもしれないし待ってみましょう」と帰らずに待った。私は待つのはそんなに嫌いではない。Mちゃん(プリキュアに憧れている女の子)はいつもにこにこしている。「いつもにこにこしてますね」とお母さんに言うと「そんなことないですよ」と言っていたので家では大変なのかもしれない。Mちゃんのお母さんの無理に明るくしようとしないちょっと疲れたおじさんのような表情とテンションが好きで見かけたら嬉しくなる。4人でお腹空いたね~などと言いながら外も寒いので園の玄関で絵本を読む。サイもMちゃんも食べ物の絵本を持って来る。あー寿司食べたい…。Mちゃんのお母さんは絵本を見ながらMちゃんに「お腹が空いてるんだねぇ、ひもじいねぇ」など励ますように言っていた。園内の電気も消され園児は他全員、先生もほとんど帰ってしまい、たった4人だけ宇宙船に取り残されたような気持ちになった。結局1時間待ったところで残っていた先生に「そろそろ帰ったら?」と言われて追い出されるように園を出た。先生も帰りたいよねそりゃあ、すみませんという気持ちで出たら雨はほとんど止んでいた。よかった。待った甲斐があった。くたくたで帰宅して焼くだけのピザを食べた。サイは空腹を通り越したのかあまり食べなかった。サイが寝たら好きな人の誕生日を祝えなかった哀しみや他の不安や憂鬱が一気に押し寄せて布団の中で泣いた。大人なのに泣くなんて。

 

9月21日(金)

別府へ。朝サイは保育園。その間に準備して昼寝後お迎え。一旦帰宅して急いで出発。早くもサイの上着や現地の時刻表をメモした紙を忘れ物をしたことに気付く。前もって念入りに用意するのに肝心なところでダメになるタイプ。バタバタして成田行きのスカイライナー乗り過ごす。払い戻しできず買い直し。先が不安。スカイライナーでサイはまあまあご機嫌。おやつを買う時間もなく二人で空腹に耐える。成田着。別府行の飛行機が遅れている。なんや急がんでよかったんやんか、どっと押し寄せる疲労。成田は羽田より遠い。空港からターミナルまでも遠い。予定より1時間ほど遅れて搭乗。その前におにぎりやサンドイッチをサイと食べる。飛行機の中でサイはほとんど寝てくれていた。無事に別府着。夜遅いのに友達のSちゃんが明日運動会だというのに息子を連れて大分空港まで迎えに来てくれる。義理堅い。サイと友達の息子ぶんくんは約一年ぶりなので、サイは空港でぶんくんに会う前、ぶんくんに電話するなどと言って公衆電話をがちゃがちゃ言わせていたのに、対面するなり緊張で固まる。車内で二人はほとんど話さなかった。Sちゃんのおかげでバスに乗るよりずっと早く宿に到着。いつも本当にありがとう。シャワーを浴びて倒れるように二人で眠る。

 

9月22日(土)

別府で迎える朝。サイとホテルで簡単に朝食を済ませ、駅まで歩いてバスに乗る。駅では何かのイベントが行われていたようで露店が出ていた。バスに乗ったら道路沿いにキラキラと光る海が見えてとてもきれいだった。急に旅先に来た実感が湧く。大分バスの車内シートが可愛くて、ワンピースにしたら良いだろうなぁとぼんやり考えた。降ります、のボタンも見たことない古いデザインでかわいかった。「うみたまご」という水族館に到着。9時の開館に間に合わせるはずがなんやかんやで遅れて10時すぎに到着。その後11時20分のバスで別府に戻ると決めていたので焦る。うみたまごの隣には高崎山があり、猿がいるようだった。バスを降りたらすれ違った若い子のグループが「まずはサルみようよー!!」と元気よく言っていて、サルでこんなに元気になれるなんてこの子達はきっといい子なんだろうなと考えた。うみたまごに入るとすぐに外から何か声がすると思ったらちょうどオットセイのショーが始まるところだった。間に合ってよかった。ペリカンのショー(前座?)の後、オットセイのいずみちゃんはどこからどうやって現れるのだろうと思っていたら左手の方から係のお姉さんについて自分でのしのしと歩いて来た。詳しい体重は忘れたが、ものすごい巨大な身体だ。昨晩友人が「オットセイのショーはね、大きいなって感想だったよ、ははは」と言っていたまさにその通りだった。いずみちゃんはよく訓練されているようで、まるでお姉さんの言っていることが分かるかのように頷いたり首を振ったりしていた(ような素振りをした)。それに会場が湧いていたが私は何となく全力で笑えなかった。いずみちゃんの意思はどこだろう、などと余計なことを考えてしまったためだ。サイは興味深そうに目を丸くして集中していた。

 

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最近色々と傷心することがあり、これ以降の日記を書くのが止まってしまった。でも水族館の後に行った地獄めぐりは面白かったし大森さんのライブはここまで来て本当によかったと思わせるものだった(感想を書くのも止まってしまったままツアーも始まってしまったが書こうとは思っている)。みうらじゅんが紹介していたのを見てからずっと気になっていた「毎日が地獄です」Tシャツも思わぬ形で購入することができた(上に家宝になった)し、寝てしまった16キロのサイを抱っこしてホテルまで歩いたりなかなか大変だったが良い旅だった。忙しいなか空港まで送り迎えしてくれた友達Sちゃんにも感謝の気持ちしかない。私は別府が好きだ。海と山と温泉の煙を眺めていると自分でもほとんどそうと意識することがないくらい自然にノスタルジーが溢れ出して、浸かってなくとも温泉に入ったような気持ちになる土地だ。来年もまた行きたいし、この先も死ぬまで行き続けたいなと思っている。