カニ日記

息子の成長と日々の記録

陣痛週間

5月15日(月)曇り
夜。Kはおらずサイと二人。最近、食欲旺盛なわりに野菜など嫌なものを残すようになってきた。今日もメカジキだけ勢いよく食べて(確かに脂がのっていて美味しかった)野菜は皿に残っていた。私はビールを我慢したのとサイと同じ量だったので食べ足りずポテトサラダをおかわりしたら「サイくんもポテトサラダ」と野菜そっちのけになった。ポテトサラダなんて言葉いつの間に覚えたのだろう。「それ全部たべたらあげるよ」と言うと残っていたブロッコリーを勢いよく口に詰め込みだした。やや乱暴な食べ方ながらも全部きれいに食べた。「わ!すごいね!偉いね!」と言うと「ぱちぱちは?」と拍手を要求された。嫌なものを頑張って食べた時に大げさに褒めて拍手していたらそれが我が家の定番となった。つい忘れるとこうやってリクエストされる。すごいすごいと言い手を叩いた。食後、朝も食べたぶどうをまた食べたがったけど晩御飯がやや多かったので、「ぶどうさん、今冷蔵庫で寝てるからそっとしといてあげて。明日の朝食べようね。」と言うと「うん」と大人しく引き下がった。

続トイレトレーニング。成功したら一枚ずつあげているシールが普通すぎて効果が薄れてきたので可愛いアンパンマンのシールを買った。効果抜群。シール欲しさにトイレに前より行ってくれるようになった。アンパンマンカレーパンマンが揃ったから次はしょくぱんまんをゲットしたい、などと男の(?)収集癖を刺激するらしい。ただ、魅力的過ぎてサイはシールの塊がどこにあるのか目を光らせて探している。隠し持っていることを追及され、トイレが成功したらどこからともなく現れると必死に説明するも疑いは消えず。


5月16日(火)曇り
朝。ぶどうのことをちゃんと覚えていて「ぶどうさんねてる?」と食べたそうに聞いてきた。ぶどうのパックを冷蔵庫から出して房から外していると「サイくんもやりたいー」と言ったのでやらせた。外したぶどうを持ってどこかへ行ったので「それ洗わないといけないからね」と言うと「こっちであらうよ」と洗面所から声がした。最近色々なことを自分でやりたがり得意気にしている。前ピクニックへ行った時も果物を入れた容器を「サイくんもっていくからね」とやはり得意顔で率先して運び出し、その時の自分がやらなきゃという使命感で満ちた顔があまりにも可笑しくて吹き出してしまう。

夜。あまのじゃくが出てきて(食事の時は久しぶり?)、「サイくんたべないー!」と騒いでいたがとりあえず着席させた。お皿を出してもまだ食べないとぐずっていた。「そうか、じゃあ食べなくていいよ」「お父さんたち先に食べてるね」と私とKは言い黙々と食べ始めると「サイくんたべないから!」と強く言った後「ちょっとだけたべるよ」と言い好物のポテトサラダから食べ始めた。言葉と行動が乖離しすぎてて本当に可笑しくて笑ってしまった。その後も食べないと言いながらフォークを持ってどんどん食べ進めていた。でもやっぱり機嫌はあまりよくなく、ブロッコリーが皿に残った段階で「もうごちさま(ご馳走様)なの!」とお皿を押しやった。保育園で出る野菜も少ないし野菜だけは食べてほしいなと思ったので、食べてほしいと宥めたがサイは耳を貸さず、最終手段で「あ、じゃあこれ食べたら後でみんなでこのおやつ食べようよ」と提案すると顔色を変え、昨日と同じようにブロッコリーを口に詰め込み始めてあっという間に完食した。すごいねと二人で拍手したら遮るように早口で「おやつたべる」とテーブルの上のもみじ饅頭を見つめて言いった。みんなで分けて食べようねと袋を開けようとするとまた得意顔で「サイくんあけるよ、みんなにわけてあげるよ」と言ったので渡すとなかなか開封できず苦戦していた。結局私が開けてサイに饅頭を渡し、サイがみんなに分けてくれた(私とKの分が気持ち程度というかあまりにも少なくて自分だけたくさん食べようとしていたのが面白かった)。少量かつ食後ならおやつ作戦もありかもしれない。


5月17日(水)曇り
サイと私はいつもどちらかが先に起きるのだが同時に起きた。同時と言っても私が目が覚めて時計を見たらサイがごそごそ動き始めてぱちっと目が開いて目が合った。いつも寝起き直後でいきなり話すのに驚くのだが今日も「おかあさん・・」と突然話かけられた。「どうしたの?」「こんどおはなかいにいこうよ」「うん、買いに行こうね」「おとうさんにおはなかいにいこうよ」「うん、お父さんにお花あげようね」という会話をした。私が前の日の夜もお花もらって嬉しいありがとう、と飾ったお花を見ながらサイに何度も言ってたので頭の中に「お花をあげることは人を喜ばせること」とインプットされたらしい。そうでない人もいるかもしれないが私はお花をもらうのが好きだし人にあげるのも好きだ。サイも将来、人に花を贈るような男になってほしい。

昼。久しぶりに保育園から「熱が出ました」の呼び出し電話。インフルエンザとノロを除けば最近風邪らしいものはひかず元気だったのでここへ来て、という感じ。連休の帰省や祖父母と過ごした疲れがどっと出たのかもしれない。半休をもらいお迎えに行くと昼寝時間の終わり頃で教室の外から覗くと子どもたちが布団を並べて寝ていてサイは一人眠れず辛そうにしていた。私に気付いて窓ガラス隔てて目が合うと助けを求めるような表情をしていた。泣いているようだった。(お昼なんか食べずに早く迎えに行ってあげればよかったと後悔。)電話の時は38度代の発熱と聞いていたが担任の先生から「39度まで上がりました」と言われる。一旦家に保険証を取りに帰り、そのまま病院へ行った。いつも行っている小児科が時間外だったので初めて行く病院へ行った。方向音痴のため少し迷いながらようやく病院を見つけた。病院に着くまで何度も「大丈夫?」と声をかけると小さな声で「うん」と答えるだけで、騒ぐことなく大人しかった。高熱で辛かったのだろう。人気のある病院のようで平日だというのに30分以上待たされた。受診中も大人しかった。お腹がごろごろしているので胃腸炎かもしれないとのこと。薬を出してもらう。サイと私が診察室から出る瞬間、診てくれた男の先生が「夜までの間に何かあれば電話してくださいね」と優しく声をかけてくれた。私が週末に控えている予定がダメになることなど考えてやけに暗い表情をしていたからかもしれない。診療中も子どもに向き合って声をかけてくださったし、いい先生だ。またここへ来よう。いい医者がいる病院は混んでいるのだな、と以前行っていた空いているけどものすごくいい加減で態度の悪い医者の事を考えた。

帰って一緒におやつを食べ(おやつは食べた)、辛そうではあったけどサイは夜まで寝ていた。私まで一緒に寝てしまった。晩御飯食べさせなきゃと思い起きたらサイも起きた。冷蔵庫にあった野菜、ツナ缶、卵で簡単な雑炊を作った。ぐつぐつ煮える鍋をみていると離乳食時代に戻ったような不思議な感覚だった。その間サイは横浜アンパンマンミュージアム10周年の豪華ステージ(前にKと揉めて連れて行ってあげられなかったやつ)の動画(誰かが撮った高画質なものがYou tubeに上がっていた)を観ていた。フルメンバーの着ぐるみが次々と出てきてステージで踊っているのでサイは一緒に歌ったり、出てきたキャラクターにコメントしていた。ライブの動画でもそうだけど、現場に行けない者にとってこういう動画が本当にありがたい。
「ご飯できたよー」と声をかけてもお腹が空いてないのかあまり気が乗らないようだったので膝に座らせた。再び赤ちゃん時代を思い出した。トマトを食べた後雑炊には手を付けず、ツナだけ一生懸命探して手で食べた。あとはスプーンで口に運ぶとと少し食べたがあまり食欲がないようだった。私も並行して同じ雑炊に塩コショウとオリーブオイルをかけて食べた。こうするとちょっとワインでも飲もうかなというおしゃれな味になり薄味の雑炊もけっこういける。(さすがに飲まなかったけど。)

食後、また熱が上がってきたようだったので解熱剤を飲ませてお風呂は入れず布団に寝かせる。泣きはしないものの、寝付けず苦しそうに呼吸し、暗闇で何度も目を開いて私がいるか確認していたのでなかなか立ち去ることができなかった。寝たかなと思って部屋を出ようと私が起き上がる度にサイが目を開いて行かないでという顔をするのでまた横になり、を繰り返していたらやがて薬が効いてきたのか眠りに入った。私は変な夢を見て寝たり起きたりを繰り返していた。
深夜、Kが帰ってきて目が覚めた。(いつも物音や歩く音がうるさいので目が覚める。)Kは日帰り出張で帰ってくるはずだったのが、ちょうど晩御飯を作っていた時に電話があり明らかに酔った声で「あ、今日、泊りになったから」とLINEで知らせていたサイの様態を少しも心配することなく軽々しく告げられたので殺意を覚えて電話をぶち切った。夫婦ともなればどれくらい酔っているか声ですぐに分かる(と思っている)。さすがに私がキレたのを察したのか泊まりを辞めて帰って来た。サイが起きている時が大変だったので夜中に帰って来られてもあまり意味がない。とはいえようやくシャワーを浴びることができた。寝室に戻ったらサイは解熱剤が切れている頃なのに生まれる前のエコー写真と同じ顔ですやすや眠っていた。

5月18日(木)曇り
ぱっとしない天気が続く。サイは朝起きて顔色もよく元気そうだった。私のメガネを奪ったりぬいぐるみに話しかけたり平常運転に戻ったようだった。お腹が空いていたのかごはん(Kのお土産の笹寿司)とパンを両方食べた。落ちていたビニール袋におもちゃを袋いっぱい詰め込んで満足そうにしていた。目を離した隙に隠していたアンパンマンシールを発見し勝手に貼っていた。全てが平常通りというか、むしろ反動で前より元気になった気もする。あとは熱さえ上がらなければ。保育園へ行く途中、いつもあったブルドーザーがなくなったと教えてくれた。本当によく観察している。それで「ブルドーザーがやってきたー」と働く車の歌を歌い始めたら「やめて!うたわないで!」と制止された。仕事中、どきどきしていたが保育園から呼び出されることはなかった。

夜。すっかり快復したのか帰宅後、朝より更にテンションが高く、歌を歌ったり話したり絶好調のサイ。表情も生き生きしていた。保育園の連絡帳にも「昨日のサイくんとはまるで別人」と書かれていた。大人だと39度の熱が出たらその後数日はしんどいのに苦しんだかと思うとぱっと元気になる、それが子どもの風邪なのか。それとも知恵熱だったのだろうか。分からないが無理はさせない方がいい気がする。食後もサイは異様にテンションが高く私にくっついてまわったり変な感じだった。食後、私が疲れたなと思って巨大な猫のぬいぐるみを抱いて放心していたら「サイくんのおかあさんなんだから!」とぬいぐるみに嫉妬して床に叩きつけた。


5月19日(金)晴れ
ようやくぱっと晴れたかと思うと暑い。昨晩サイと一緒に寝て夜中に起きて洗濯しなきゃと思ったが重い腰が上がらず結局空が白みだす頃にしたので、朝なかなか起きられなかった。サイが先に起きて「おかあさんおきてよー!ねちゃだめー!」と言われたが寝たまま応じなかったので怒ってぎゃーぎゃー泣き出した。それでも私は起きられなかった。横でサイが泣き叫んでいる。眠い。近所に朝から虐待していると思われたらどうしよう。いつも起きる時間になってようやく「ごめんごめん」と起きたらすぐに機嫌は直り一緒にぬいぐるみで遊んだ。起きてというのは「起きて一緒に遊ぼう」という意味だと思う。
「おとうさんは会社だね」という話をしていたら「サイくんもかいしゃいくよ」と言った。「え、何の会社?」と聞くと「でんしゃのかいしゃ!」「電車の会社で何するの?」「おしごと」ときっぱり言った。会社は何かよく分からないけど「おしごと」をする場所だと分かっているらしい。私もそれくらいしか分からない。それにしても電車の会社ってどこから発想したのだろう。
夜。明日大森靖子さんに会えるということで寝る前にかばんにギターやお気に入りの玩具をせっせと詰めて準備していた。寝る前に「おかあさん、あしたおーもりさんにあえるね」とぽつりと言ったのが忘れられない。


5月20日(土)快晴
サイと一緒に寝てしまい、明け方起きてサイが着て行くTシャツにフェルトでアップリケをした。嫌いだと思っていたけど刺繍は案外楽しい。ミシンの類は本当に苦手。もう少しで完成というところでサイが起きたので危ないけど寝室に針と糸を持って行き、サイが布団でごろごろしている横で最後の仕上 げをした。百均で買った色とりどりのビーズを興味津々で眺めて容器から出し入れして最後は布団の上にぶちまけていた。寝室にビーズなんか転がっていたらKが絶対怒りそうと思って注意して片付けた。完成したTシャツを気に入ったようで早速着てくれた。うまくできず既に取れそうな感じだったが縫い付けたビーズが特に気に入ったらしい。これはナナちゃんって言うんだよ、と教えるとアップリケに何か話しかけていた。ど根性ガエルみたい。

朝ごはん、洗濯の後バタバタと用意して湯会の会場である「東京天然温泉古代の湯」に向けて出発した。
湯会とは温泉でライブが行われるイベントだと認識していたのだが、会場である大宴会場に着くと予想以上の爆音でサイの耳が心配になった。一つ下の階に食堂がありそこは静かだったので他のお子さん連れの方と一緒に早めのお昼を食べた。肉巻おにぎりをすごい勢いで食べていた。食堂の奥にゲームコーナーがあり、アンパンマンの動く乗り物があったので執着していた。その後キッズルームへ行ったら、昔のアンパンマンのぬいぐるみがたくさん置いてあり、それがものすごく可笑しくて奇妙な顔をしていたのでサイは怖い怖いと言って泣いた。一度怖いと思ったものにはずっと怯えて近づかない性格なので、その後もキッズルームへ行くのは気が進まないようだった。いつもお昼直後に2-3時間は昼寝するのだが、絶えず大きな音で音楽が鳴っている上にたくさんの人がいるので全く寝る気配がなかった。大人に構ってもらっても人見知りして私の後ろに隠れたりしていたが、次第に慣れてきたのか音に合わせて飛び跳ねたり踊ったりしていた。そんな調子だったので肝心の大森さんのライブが始まって、しばらくは元気にペンライトを振ったり大人しくライブを観ていたがやがて眠ってしまった。隣のお子さんも寝ていたのでギターの音が心地よかったのかもしれない。

ライブ後、大森さんとの撮影会があった。それまでに起きなかったら仕方ないなと思っていたらちょうどよいタイミングで起きた。順番が近づいてきた時、サイに大森さんあそこにいるよと耳元で囁くと、サイはきょろきょろと探して大森さんを見つけ、前にディズニーランドでミッキーに会った時と同じ表情をしていた。何度も写真や動画で見ていたからか他の大人には人見知りするのに大森さんには全くせずちゃっかり膝の上にまで座らせていただいた。聖母のように優しい大森さんの対応にただただ恐縮した。その後も終わりまでテンションが高く走り回ったりお茶を入れる機械に執着していた(サイはボタンを押すと出るとかそういうのが大好き)。お茶の飲み過ぎでオムツを何度も替えた。

帰りのバスでもテンションが高く「きゃべつのなかにあおむしがいたよ~」という謎の歌を大きな声で歌っていた。疲れたので最寄駅の回転寿司で晩御飯を済ませた。寿司を食べていると突然私の方を向き、「おかあさん、おーもりさんにあえたね」と嬉しそうに言った。
家に帰っても三人で撮ったチェキを愛おしそうに眺めていた。耳は大丈夫だったようで安心した。

5月21日(日)快晴
疲れているであろうサイに申し訳ないと思ったがKも私も別の予定があり、私がサイを連れて出かけた。天気がよかったのでデパートの屋上で昼食を食べた。屋上はうるさくしても怒られないし走り回れるのでデパートに屋上があれば嬉しい。私が食べている途中で席から降りたがったので、食べ終わった友人に付き添いをお願いした。食べ終えて二人を探したら熱帯魚コーナーにいて、サイは釣堀コーナーの前にしがみつき、なぜか友人の手をぐいぐい引いて離さなかった。多分魚釣りやりたい、という意思表示だったらしい。有料で自分の力ではどうにもならないから何とかしてよ大人、お金出してよという意味のような気もする。知恵をつけてきて恐ろしい。ベビーカーに乗せるとぐずったのでデパートのおもちゃ売り場で欲しがったままごとの卵を買った。しかしすぐに飽きてしまい、買わなきゃよかったと後悔した。欲しいと言われるとつい色々買ってしまうが、物を与えすぎてそれが当たり前になるのもよくない。ぐずり続けた後、外出時にしてはいつもより長く昼寝をした。昨日ほとんどしなかったので、その分も寝ているようだった。昼寝から起き、おやつにプリンを頼むと機嫌がよかった。サイはレストランのショーケースにある食品サンプルが大好きでいつもにやにや眺めてサイくんはこれにしよう、などとあれこれ言って楽しそうにしている。この日もショーケースの海老を見てなんだこれ~と興奮していた。

夜。嫌いなアスパラを一度口にたくさん入れて飲み込まずに吐き出したので叱ったらわんわん泣いた。でも説得の末、吐き出したものをもう一度食べた。まあまあ根性があるのかもしれない。

熱が出たり憧れの人にあったり出産前の陣痛のような一週間だった。