カニ日記

息子の成長と日々の記録

卒論は2万文字、一週間は8747文字

6月12日(月)曇り
朝。目覚めた瞬間、気温や外の明るさで「あ、寝坊したかも」と何となく感じた。リビングに行き時計を見るとやはり寝坊していた。慌てて朝ごはんの準備をし、サイが食べている間に着替えたりサイの洋服を準備した。いつもは側で食べる様子を見守っているが放置したばかりに戻ると牛乳をテーブルのマットにこぼし、それを手で広げて遊んでいた。こぼれた牛乳の染みを見て「ミッキーみたい~」とへらへらしていた。私が一緒に笑ってくれると思っていたらしく、叱ったら不意打ちを受けた顔をした。もうやらないようにと低い声で言ったら「うん」と反省していた。私がサイが生まれる前に買ったジンジャーブレッドのぬいぐるみ(通称ジンジャーちゃん)を抱いて登園。


帰りの自転車に乗りながらぶつぶつジンジャーちゃんに話しかけていた。夜はK不在。夕食は冷凍してあったチキンライスに焼いた卵を載せてオムライス風。人参とケチャップでアンパンマンの顔にしたらサイは喜んで、顔を壊すのが嫌なのかもったいぶって食べていた。暴食を止めるには何でもアンパンマンの顔をつけるのがいいかもしれない。夕食後、甘えてきかと思うとわんわん泣き続けてぐずっていた。体が熱かったが体温を計ると平熱だったので眠かったらしい。保育園での昼寝が短かったのかもしれない。ベッドに連れていくと案の定いつもよりすーっと入眠した。


6月13日(火)小雨 寒い
明け方喉が痛くて起きた。空気清浄器を付け忘れていた。布団に入りながらラジオを聴いて会社の美人にもらったパンを2個食べた。サイはいつも起きる時間を過ぎてもまだ寝ていた。やはり昨日の昼寝が短かったのだろう。キウイを切って全部サイのお皿に入れたら一切れだけ私に分けてくれた。「たべてね」と大人みたいな顔で言われた。今まで全部独占していたのが最近少しずつ自分の分を「分け与える」ということを覚えてきたらしい。ぬいぐるみ二三人(体?)に見えない「エアお菓子」を分け与える姿も時々見られる。今日もジンジャーちゃんと登園。教室に入ると「ジンジャーブレッドだ」と先生が言い、それを聞いて他の子も物珍しそうに集まってきた。他の子に奪われると思ったのか素直に私に預けた。

夜。サイは昨日と同様機嫌が悪い。コンロに立って焼きそばを作っていたらくっついてきて危なかったのでKに代わってもらった。先週の懇談会でどの子も家でイヤイヤが酷いのに保育園で泣くことはなかったり、家で何も食べない子が保育園では好き嫌いなく食べるという話が多く、聞いたお母さんは皆驚いていた。「園では我慢しているのですが家では甘えたくてぐずることがあると思います」と言われてからあまのじゃくに納得し少し可哀相に思っている。甘やかしてはいけないけど家がサイにとって自然でいられる場所でありたい。食後もぐずっていたのでKはテレビをつけたらいいと言ったが何となくテレビに頼りたくなく、ソファから滑り落ちるふりをしてサイに助けてもらう遊びをしたり、空き箱をテレビに見立ててぬいぐるみを動かしたりしたら泣き止んで嬉しかった。あとは「大きなかぶ」の蕪役になってサイに引っ張ってもらって床をずるずる這っていた。Kは失笑していた。書くと阿呆みたいだが必死。親は子に受けてなんぼだと思っているし子どもの前で恥なんて一切存在しないので新人芸人並にいつも体当たりで何でもやりますの精神でいる。途中から失笑していたKに代わってもらい、テレビ禁止を条件にしたら箱でテレビごっこをして結構頑張っていた。サイの機嫌もよかった。


6月14日(水)
朝。Kがいたのでわりと余裕があった。Kがいつ休みなのかよく把握していないが時間になっても起きなければそうなのだと理解している。私が嫌いなさくらんぼを二人分器に入れたらサイが全部食べた。器用に種も取って食べていた。今日もジンジャーちゃんを抱いて登園。

夜。K不在。冷蔵庫に茹でたとうもろこしとブロッコリーが入っていたので助かった。あとハムエッグと納豆。朝ごはんみたいな夕食。夕食後、サイと二人で大森靖子さんやビートルズの曲をかけてひたすら全力で踊るという遊びをした。サイは大森さんの「ピンクメトセラ」を気に入ったようで私がティッシュの空き箱を切って子どもの日の帽子に張り付けたなんちゃって猫耳帽を被り、ペンライトを振りながら踊り狂っていた。私が踊りながら移動するとサイも着いてきて、二人で笑いながら色んな場所で足を踏み鳴らしたり手を振ったりして楽しかった。サイは勢い余りすぎて時々よろめいていた。いい運動になった。お風呂に入れて布団に寝かせると「おとうさんは?おとうさんは?」と言って泣き出し30分以上寝付かなかった。普段はこんなことないので驚いた。


6月15日(木)
朝。サイが寝ている間にラジオを聴こうと思ったものの、タイムフリーで聴き始めてすぐにサイが起きてしまい仕方なくそのまま流していた。「ピンクメトセラ」が流れて、サイはイントロですぐに「きのうのやつ!」と言った。そして踊ろうと思ったのか、猫耳を探し回って見つからないと機嫌が悪くなった。え、今!?と思ったけど落ちていた帽子を拾って渡すとペンライトを持って再び踊っていた。朝は時間がないから勘弁してほしいけど可愛かった。

夜。サイは帰宅すると空腹を我慢できなくてグミなど小さなお菓子を一つ食べる。今週は日曜日に買ったアンパンマンチーズがそれになっている。「おかあさんもたべる?」と言って私の分も出し、いらないと言っても口の中に入れてくる。半年ぐらい前にチーズを買った時も同じように夕食の前に欲しがり、椅子に座って食べるように促していたのだが、それを今も覚えているようでチーズを一個食べるために椅子に座りに行く。先週コンビニで買ったプリンも食べたがったが、「お父さん帰って来てからみんなで食べようね」と言うと大人しく従った。整骨院帰りのKが帰宅したら「肩いたいの?」「ぷりんたべよう」と大人みたいな口調で言っていた。夕食はささみに冷蔵庫にあったキャベツを千切りにしたものとチーズを入れたら不思議な味がした。Kは一口食べて「面白いね」と言った。面白い夕食。夕食後、三人で奪う合うようにサイが振り回してぐちゃぐちゃに混ざったプリンを食べた。空になってもサイはKと交互にもうないプリンを急いで食べるふりをして可笑しそうに笑っていた。


6月16日(金)曇り
朝。サイがいつもより早く起きて私が起きられないでいるとアンパンマンチーズを食べたいと言われダメだと分かっていたが残り2個しか入っていなかったので袋ごと渡しまた布団に入った。サイは2個とも食べていた。それでもぐずっていたので「今日サイくんとお母さんが着る服見てきてよ」と言ったら部屋を出てしばらくして戻ってきて、サイは引き出しから自分のTシャツを出し低い位置にかけてあった私のブラウスと一緒に持ってきてくれた。感心している場合でないが偉いなぁ。サイが選んでもってきてくれたブラウスを着て出勤した。

昼。虐待で娘を殺した母親に懲役13年の判決が下ったとニュースで見た。サイが生まれてから虐待のニュースがどうしても気になる。母親はどんな人なのか、Facebookの写真や子どもと写っているプリクラなどが公開されていると食い入るように見つめてしまう。皆育児に疲れたというより、私より綺麗で化粧をちゃんとしているし活発そうな感じがする。それでも子どもは殺された。記事を読むと虐待内容は信じられないぐらい惨いものだった。亡くなる直前の衰弱した娘を見て夫とLINEで笑いあっていたらしい。いつもそうとは限らないが虐待する母親は父親と共犯関係にあるというか我が子より夫を愛している感じがする。私にはそれが信じられない。こんなこと言ったら怒られるが、もしサイとKが同時に崖から落ちそうになって一人しか助けられないとすると迷わずサイを助けるだろう。など言っている場合ではなく、判決を受けた母親は今何を考えているのだろう。考えたところで亡くなった女の子は戻って来ない。

午後、仕事関連でセミナーというか勉強会に参加していつもより少し早めに直帰した。話が難しくてついていけなかったけど勉強になった。まだ明るいのが嬉しいと思っていたら空模様が怪しくてベランダの洗濯物が一瞬頭によぎったが、行く所があったので家に一度帰る選択肢は捨てた。セミナーで頭が疲れたので電車に乗る前に駅前のスタバに行った。「チョコレートブラウニーなんたら抹茶ショット」というのが看板に描かれていて、テイクアウトしてお店から出て一口食べた(飲んだ?)大学生らしき女の子達が「超おいしー♡」と声を上げていた。女の子達が手に持っているカップを見たらチョコレートケーキがどかんと丸ごと乗っていて何これ最高と思って迷わずそれを頼んだ。前の人も前の前の人も同じものを頼んでいた。店員の女の子は三回続けて慣れた手つきでケーキをフラッペに載せたり生クリームを絞っていた。一口食べたらブラウニー、生クリーム、抹茶の相性が最高でこれぞ幸せの極みと思った。食べ進めるとブラウニーが崩れフラッペと混ざってしっとりするのがまた美味しかった。1/3ほど食べたところで突然この味がキツく感じて胃が重くなってきた。美味しいのに苦しかった。え、そんなはずないと焦って周りを見渡したら若い子は嬉しそうに皆完食して一緒に別のケーキまで食べている人もいた。その瞬間、自分がこの子達とひとまわりくらい離れていてもう若くないという事実に気が付いた。自分がおばさんなのは分かっているはずなのに時々それを忘れてしまう。キラキラした大学生と同じ感覚に浸れるなんてとんだ勘違いだった。何とか食べ終わると急いで店を出て電車に飛び乗り原宿に向かった。

原宿へ行ったのは「さいあくななちゃん」の展示を観るためだ。時々ネットで見かけて気になっていたけれどネット上の画像ではよく分からず、実際見てもないのに好きか嫌いか判断したくなかった。自分の目で作品を観てみたかった。土日は予定が詰まっていたので、「どうしてもみたい絵がある」と言ってKにお迎えを代わってもらい行かせてもらった。駅に着いてギャラリーまでの道のりをグーグルマップで見ると竹下通りを抜けた方が早そうだったのでそうした。平日夕刻なのに竹下通りは人でごった返していて通り抜けるのが大変だったから後悔した。お台場かどこかで購入したのかタカ&トシのトシがいつも着てるライオンがプリントされた赤いTシャツを着ているアジア人観光客のおばさんがいた。おばさんは堂々としていてそれを昔から着ていたみたいによく似合っていた。パステルカラーの巨大な綿あめを持った外国人、自分の時代からは信じられないくらい大人びて見える高校生、よく分からない人、色んな人がいた。小学生の時、家族旅行で初めて東京に来て竹下通りを怯えながら歩いたことを思い出した。

ギャラリーに着くと展示室には先客がいてななちゃんと思わしき方に大きな声で一方的に話していた。「売れている草間彌生奈良美智でも必ずバックにサポーターがついていて何ちゃら」と言っていた。広くはないスペースだったので入口で待機し、その男性が話し終えて出るとようやく入ることができた。初めて作品と対面した。どう感じたかなどの感想は別途記述するとして(というか感想なんて野暮な気がする)辞めておく。誰も来ないのを良いことに長い時間展示室にいた。ななちゃんともたくさんお話しできた。人が来たので後ずさりしながらお礼を行って出た。ギャラリーを出ると外は真っ暗だった。本当に観てよかったなと思いながら、うっかり忘れていた父の日に父と義父に色サイズデザイン全てお揃いのTシャツを買って急いで帰宅した。サイはチラシをみて「なにこれー、おおもりさん?」と言っていた。髪型が似ているからそう思ったのかもしれない。ななちゃんの作品、サイにもいつか見せてあげたいな。


6月17日(土)晴れ
朝ごはん、洗濯。私が洗濯を干している土曜日の朝、サイはいつも前日放送分のアンパンマンを観る。やきそばパンマンが美味しそうだった。美味しそうだねぇと言ったらサイも「やきそばあんパンマン(ちょっと間違っている)かいにいきたい~」と言った。なので二人で自転車に乗ってここならあった気がするという美味しいパン屋さんに買いに行った。
期待してるんるんで入店したらやきそばパンは売ってなかった。サイと二人で気が狂ったみたいに「やきそばパンやきそばやきそば」とぶつぶつ言って店内をきょろきょろした。店員さんに聞いたら「そういうのはないです」と言われた。「え、今日だけないんですか?それともいつも作ってないんですか?」とやきそばパンがないと生きられない人みたいな感じで聞いたら若い店員さんはもうちょっと上の人に確認して戻ってきた。「そうですね、お作りしていないですね」と言われた。残念だったが仕方がないのでコロッケサンドとカツサンドと可愛い犬とうさぎのパンを買った。飲み物の冷蔵庫に行くと「サイくんこれね」と飲んだこともない豆乳を選んだ。私には「おかあさんこれね」とよく分からないオーガニックな珈琲牛乳を選んでくれた。豆乳大丈夫かなと思ったけどそれがいいと言うので買った。パッケージを眺めて「きのこのジュース」と勘違いしていた。

父の日の荷物をコンビニで送った後、いつもの公園へ行った。適当な日陰にピクニックシートを広げてサイと買ったパンを食べていると、目の端に保育園でサイが好きな◎ちゃんと◎ちゃんのお母さんが友達親子といるのが見えてげっと思った。いい人だけど◎ちゃんのお母さんが実はちょっと苦手。その友達のお母さんはもっと苦手。もしこちらに気付かれたら嫌だなと思って知らぬふりをしてサイと食べ続けて、そろりと後ろを振り返って見たら◎ちゃんのお母さんと思った人は全くの別人で友達親子も全然知らない人だった。先週もそうだったけど、私は保育園のお母さんに会うことを極度に恐れすぎている。食べ終わった後しばらくそのまま公園でサイと遊んでいた。1時間ぐらい遊んでいたら暑さで私が気持ち悪くなってきたので家に帰って二人でシャワーを浴びて昼寝。昼寝後、楽しい宴へ向けて出発。

以前みんなで築地に行った時にまぐろ料理の店の前を通りがかり、一同気になって改めてそのお店で会を開こうということになっていた。ここよさそう、となっても結局行かないで終わることが大半なのでちゃんと実現して嬉しい。きめ細やかで仕事のできる幹事様と優しい方々のおかげだ。Kは夜不在だったのでサイも連れて行った。最初は固まっていたサイも優しくて可愛いお姉さん方やぬいぐるみ、ある方がiphoneで流してくれた童謡やアンパンマンの歌のおかげで徐々に打ち解け、途中から飛び跳ねたり私のiphoneでめちゃくちゃな写真を撮ったり、「サイくんとってよ」と壁の前に立ち撮影の指示までしてきてテンションマックスだった。ぬいぐるみも童謡もあり可愛いお姉さん達にチヤホヤされながら美味しい料理に舌鼓を打つなんて幼児向け超高級ラウンジみたい。盛り上がる中、あまり遅いとよくないと思い先に失礼した。それまで笑って奇声を上げていたくせに、別れ際「サイくんバイバイ♡」とお姉さん達に言われてもズボンの両ポケットに手を突っこんでそっけない態度を取る塩対応には笑ってしまった。どこでそんなスマートなモテる男の技みたいなのを身に付けたんだろう。
せっかく機嫌が良かったのに出際に挨拶をした店主にいきなり抱きかかえられたのと飼っている犬が大きな声で吠えてきて、嫌がってるのに店主が無理矢理犬をサイに近づけようとしたのでサイは怖い嫌だと言ってわんわん大泣きした。好意のつもりだろうが、こう距離感なく寄ってくる人は勘弁してほしい。おかげで帰りは大変だった。帰宅後、超特急でお風呂に入れて就寝準備をした。いつもより一時間遅くなってしまった。布団の上で「おさかなおいしかったね。おなかとおしり、どっちがおいしいんだろうね。おもしろいね」と言ってからパタンと寝た。

私は何だか眠れず楽しかった思い出を反芻したり、この人のここが好きだなと考えたりしていた。


6月18日(日)曇り時々雨
眠れず遅くまで起きていたせいで寝坊した。今日はアンパンマンの握手会なのに。Kはこのために丸一日休みを取った。なぜ早起きの必要があるかというと、握手会に参加するには早朝から配る整理券(一グループにつき代表者一名がもらえばOK)が必要だからだ。知り合い家族と行く予定だったが、電話すると知り合いも寝坊したらしい。本気が足りない私達。父親達はそれぞれ急いで朝ごはんを食べて整理券配布場所に向かったが、着いた時には整理券は終わっていたらしい。それでもショー観覧の整理券はもらえた。みんな日曜なのに早起きしてすごい。子どもの夢の後ろには親の必死さが不可欠なのかもしれない。
11時すぎに知り合い家族と合流して一緒にお昼を食べた。空間を重視してバイキングにしたら落ち着かなかった。サイは黒いジュース飲みたいと紅茶をほしがって騒いだ。おまけにジュースのコップをひっくり返すし散々だった。知り合いの子はサイと生まれた日が半月違いで予定日は4日違いだった。何度か仲良く遊んだのにサイは忘れたのか固まっていた。実はKとは知り合い夫婦の結婚式二次会で出会った。そういう縁もありずっと仲良くしてくれている。家族ぐるみで付き合いがある人は稀なので大事にしなきゃなと思う。奥さんは二人目を妊娠中で来月予定日。もうすぐ生まれる赤ちゃんを大きなお腹越しに撫でさせてもらった。食後それぞれ別行動をして、整理券に書いてある時間に合わせてショーが開催される場所に向かった。

握手会の整理券を勝ち取った家族はステージに近い優先エリアにいた。子どもにアンパンマンのコスプレをさせたりしていて我々とは本気度合いが違った。間もなくお姉さんが登場して説明があった後アンパンマンバイキンマンの着ぐるみが子ども達の掛け声と共に飛び出してきて始まった。今出るぞという瞬間、サイはそわそわしていた。大森さんを待つ私と一緒だ。私より年上であろうお姉さんの甲高い声と語尾をやたらと伸ばした話し方が気になってショーに集中できなかった。Kはどう思っているかなと思って横を見たら寝ていた。サイがどんな顔をしていたかよく見えなかったが、一緒に踊ろうよのコーナーになってもサイは固まったままステージを見つめていた。ショーはあっという間に終わり、握手会の前にアンパンマン達はさっさと捌けてしまった。
会場を離れ「握手会、残念でしたね」などと言いながらエレベーターを待っていたらいきなり係のお姉さんが来て道を空けて下さいと言った。えっと思って顔をあげたら目の前の業務用扉が少し開いていた。ああ、これチャンスやんと思ったら予想通りアンパンマンバイキンマンが二度目の会場の掛け声でどわっと飛び出してきて、扉の真ん前にいたサイと知り合いの子をちらっと見て手を振ってから去っていた。思わぬ形で出待ちになりラッキーだった。

みんな疲れてその後すぐ解散した。サイは帰りの電車で相当機嫌が悪く、途中で欲しがったセブンティーンアイスを与えたが食べ終えるとまた機嫌が悪くなった。何してもぐずって車内でわぁわぁ騒ぐので何かないかなとiphoneを出しメモ帳のお絵かき機能を触らせたらようやく落ち着いた。サイの向かいに座っている男の人を描けと命令されたので描いた。なのでメモ帳には知らない人が難しい顔で俯いて音楽を聴いている謎のスケッチが残っている。何とか家に辿り着いたらどっと疲れがきて私もKも放心していた。あんなにぐずっていたサイは家に入った途端、急に機嫌が良くなりショーの再現をしたりアンパンマンの台詞を絶叫したりテンションが高かった。顔を交換する時の効果音を歌わされてタイミングが遅れると怒られた。

ふと父の日なのにKに何も用意していないことに気が付いた。自分の父親でいっぱいいっぱいだった。どうしようもないので正直に謝って晩御飯好きなもの作るから言ってよとリクエストを促した。「からあげ」と返ってきたが揚げ物なんて勘弁と思ったので「お好み焼きとかどう?好きでしょ」と冷蔵庫にあったキャベツを使うために強制的にお好み焼きになった。じゃあ聞くなよという感じ。まあまあ美味しくできたお好み焼きとKが買ってきた刺身を食べた。食後、サイがショーの内容を記憶していて話し出したので、ショーのお姉さんの台詞をモノマネしたらげらげら笑って大受けした。調子に乗って2回目をしたら更にツボにはまったようで、終わる度に「もういっかい!」と言われ計50回ぐらいやらされた。お風呂でもやらされてまだ笑っていた。
サイが寝た後、何だか眠れず「父の日やし私が洗濯とか掃除するから寝ていいよ」とKに提案すると「なにそれ怖い」と言われた。家事をやると言って怖いと言われる妻って一体と思った。日中たくさんの人といたので一人になりたかったのもある。のそのそ家事をしながらお礼をしたり返事をしたりしていた。

芸術から始まる濃くて甘美な週末だった。
父のTシャツは母の方が「変なTシャツ(オタT)しかなかったから助かる」と喜んでいた。

それにしてもこの日記長すぎる。8747文字。論文か。