カニ日記

息子の成長と日々の記録

たまには星座をみにいこう

6月20日(月)晴、蒸暑い
朝。昨日疲れてしまったのか寝る時間は遅くなかったのにいつもの時間になっても珍しくサイは起きてこなかった。なので先に準備を済ませ、ぎりぎりまで寝かせてあげることにした。それでも朝ごはんを食べないで登園するのは可哀相だと思い、食べる時間くらいの余裕は残して起こした。寝ているサイをほとんど起こすということをしたことがないので、「もっとねたい~」と機嫌が悪かった。頼まれない限り寝てる人を起こすのはあまり好きじゃない。たまにKがいつもの時間に起きてなさそうでも特に起こしたりしない。社会人だし遅刻しても自己責任。なんで起こしてくれなかったの?と言われたこともない。余裕をみたはずなのに、サイはまだ眠そうでいつもより食べるスピードが遅かったり、途中でうんちをしたりそれでオムツを取り替えてお尻を拭いたり時間はどんどんなくなった。着替えさせてバタバタ登園した。今日はメロンパンナちゃんが同伴。

夜。会社で朝イチで嫌なことがあったのと、大勢が集まるのに冷房が全く効いてない部屋に立たされて暑さで吐きそうになったダブル悪で食欲があまりなかった。帰りながら冷蔵庫に良品週間に買った無印の冷汁の素があったことを思い出し、冷汁なら食べられそうと思った。ボウルに液と刻んだ茗荷と適当につぶした豆腐を入れておしまい。何て簡単なんだろう、火も使わないから去年の夏も一昨年前の夏もこればっかり食べてた気がする。きゅうりと紫蘇がなかったのでKに買ってきてもらって入れた。あと肉屋で鶏天も買ってきてもらった。サイは薬味が嫌かなと思ってサイの分だけ薬味を抜き代わりにカニかまを入れた。「なにこれー」とカニかまを触って珍しそうに眺めていた。カニだと言って先生や周りに「サイくん、おうちでいつもカニたべるよ」など言われてしまっても大変なので「おさかなだよ」と本当のことを言った。魚の姿と違うからか「おさかな~?」と不思議そうにしていた。食欲ない時にも食べられる冷汁なのに私はほとんど食べられなかった。帰りながらあれだけ飲みたいと思っていたビールも飲まなかった。Kがほとんど全部平らげた。

夕食後、1月に引っ越してから我が家初のGが出た。Kが発見して変な叫び声を上げていた。男気なく私に殺させようとしたので「初めに見つけた人が最後まで面倒みるのがルールでしょ」と押し付けた。Kは慣れてなさそうな手つきでGジェットを噴射。実は私はG処理に関してはかなり自信がある(気分悪くする人がいるかもしれないので理由は書かないでおく、聞きたい人がいたら聞いてほしい)のだが存在が嫌いで見たくないので関わりたくなかった。手間取っていたので食器洗用洗剤を持って応戦した。トドメにはこれが一番利く。黒々としてかなり大きいGだった。大きい方が外から来る系で安心だけど。ようやく始末したKが生気のない顔で戻ってきた。情けない。サイは遠くから見ていて気になっていたようだけど何となく殺しているところは見せなかった。「むしさんは?」と聞かれたので「外にいっちゃったよ」と言った。Kは「G-SHOCK」と急につぶやき、面白かったので私が爆笑したら力なく笑っていた。

二人が寝た後、大森さんが作ったゆるめるモ!の新アルバム収録曲「うんめー」のMVを観たら自分でも信じられないぐらい涙がぼろぼろ出てきて観終わって大森さんに感想を言おうと思っただけでまたぼろぼろ泣いてしまった。落ち着くために歌詞を紙に書き写した。とてもいい曲だった。少し大きくなったサイがもし学校やどこかで嫌なことがあった時、この曲を聴かせてあげたい。


6月21日(火)晴、蒸暑い
朝。写真を撮ろうと思って布団の上で我が家のぬいぐるみを大集合させたら並んでいる様子が最高に可愛くてサイと二人でげらげら笑った。サイは私が5年くらい前に買った嫌な思い出のつきまとうけっこうリアルな鰐のぬいぐるみを特にかわいいかわいいと言い抱きしめていた。私も鰐のぬいぐるみを気に入っているし鰐に罪は全くないので捨てたりは絶対しない。目につくところからは少し遠ざけてしまうが、こうやって時々可愛がる。サイはその鰐のぬいぐるみ、通称「わにちゃん」を抱いて登園した。好きな漫画、岡崎京子のPINKみたいでいいなと思った。わにちゃん(を動かす時)は結構がらがらした声で喋る。

私は昔からとにかくぬいぐるみが好きだ。所詮布の塊に過ぎないともちろん頭では理解しているが、どうしても生きているように接してしまう。一人で部屋にいる時に話しかけるとかは流石にしないが、子ども(もしくは人)相手だとぬいぐるみを動かしていくらでも話せる。小さい時から母はぬいぐるみを動かして私やきょうだいに話していた。もちろん普段の母とは普通に話していたが、本当に大事なことや言いにくいことはぬいぐるみに言わせていた。それぞれ声や性格を変えてぬいぐるみ達(を動かす母)は私に接してきた。関西弁、関東弁も性格に応じて使い分けられていた。どこの家庭でもそれが当たり前に行われていると思っていたものだから、人にぬいぐるみの話をしたら気味悪がられて初めて「うちの家」が特殊だと気が付いて驚いた。きょうだいも同じことを言っていた。この話は書くと長くなるので後日。

夕方。今日のお迎え担当はKだったはずが、「取引先につかまった」とLINEが入った。だから鐘と同時に退社して駅まで走ってサイを迎えに行った。サイを迎えに行くといつものように犬のように飛んできた。わにちゃんは年配の保育士に人気だった。サイは機嫌が良く校庭で飛び跳ねてなかなか帰ろうとしてくれなかった。耳鼻科へ連れて行きたかったのでなんとか自転車に乗せて園を出た。耳鼻科に行く途中、運送会社のトラックが止まっていて、車体の横か後ろから白い煙がもうもうと上がっていた。なんか様子がおかしいと思っていたら煙は更に増え、焦げたような匂いがした。あ、これ危ないかもと思い、その道を通るのを辞め反対側へ行った。付近の人は怪訝な顔をしていた。結局トラックはどうなったのか分からないが、爆破か炎上するかと思った。二人で死ぬかもと思い咄嗟に逃げた。何もなかったかもしれないがサイだけは死なせてはいけないとドキドキした。サイを産んでから危険察知センサーみたいなのがかなり敏感になってしまった。
耳鼻科で遅くなったので帰り道の食堂でサイと二人で食べて帰った。カオマンガイと一瞬迷ったけどビールも頼んだ。サイの水と乾杯した。サイはお子様ランチ的なのを食べて喜んでいた。5名くらいの真面目なおじさん集団(なんやそれ)もビールを飲んでカオマンガイを頼んでいた。「今、若い女の子に人気らしいよ」とうきうき言っていて同じものを食べてる私は「若い女の子」になった気がして嬉しくなった。「どこの国だっけマレーシアだっけ」とカオマンガイ談義は続いていた。

コンビニへ寄ってから帰宅。お風呂を入れようと思っていたらKが帰ってきてお風呂を代わってもらった。普段は私がサイと入るがたまにはいいかと思って。そしたら風呂場から鳴き声が聞こえてきてサイはすがるように出てきた。Kは多分洗い方とか慣れていないのだと思う。Kとサイが寝て、私はシャワーを浴びて部屋を最小限に暗くして静寂の中、水をお供に心の整理(部屋は汚い)をしてから寝た。思考や雑念が渦巻いている時は文字にして打ち込むことが私には合っているらしい。

6月22日(水)
朝。K休。サイはさくらんぼの種を飲み込む快感?を覚えたらしくわざと飲み込んでいた。心配していたらKは「でるんだからいいんじゃないの」と呑気だった。
昼。前は同じ場所にいて別の支店に異動になった人が仕事でこちらに来たらしく久しぶりに会った。悪い人ではないが、その人が開催する飲み会に行くと自分以外にがんがん酒を飲ませて潰した挙句、酔った人々を盗撮し自分のSNSに載せる。だから飲み会は行かないか、どうしても行く必要がある時は心を鬼にして、飲んだふりをして別の空グラスに入れたりして酔わないようにする。それはどうでも良いとして、その人(素面の時は普通にいい人)に「Iくんが少し前に辞表を出したがっていた」と聞いた。Iくんはその人の元部下で、今は違うけど同じ支店で働いている。Iくんは私より3つくらい後輩で、普段はぼーっとしてナマケモノみたいなのに仕事になると頭がキレてこちらの思うことを先読みした働き方をする。入社して間もない研修期間の頃、Iくんが仕事できすぎて私の用意した練習用業務が物足りなさそうだったのを覚えている。その支店では、よからぬ者達によって優しい人がどんどん潰されているとか辞めたとか飛ばされたとかあまりいい噂を聞かない。信じられないようなパワハラは揉み消されていた。でもIくんは強いから大丈夫かなと思っていた。様子を聞いて泣きそうになって社内メールをした。

夜。知り合いに急ぎで渡すものがあってお互い終業後待ち合わせして軽く食事をした。私の大好きな場所。ここには好きな人としか行きたくない。サイのお風呂&寝かしつけがあったので1時間くらいだったがたくさん話せて嬉しかった。そういえば土曜日にあったばかりなのに喋りたいことが山のようだった。テイクアウトしたアイスを一緒に食べながら駅に向かって別れた。家に帰るとKがサイをお風呂に入れ始めてくれていて、サイの嫌がる声が聞こえた。私が帰って来て救いを求めるように、サイはカラスの行水で風呂場から飛び出してきた。「こわかったねぇ」と言ってタオルにくるんで抱きしめた(Kには私がそうやってサイを父親嫌いになるよう洗脳しているといつも言われる)。歌いながら入眠。私は少しだけ寝て起きて大森さんの深夜ラジオを聴いてから寝た。


6月23日(木)曇り
朝起きて貧血で顔面蒼白。最近食事を十分にとってなかったのと昨日夜更かしした自分に責任はある。メンタル的には問題ないがふらふらで出社。出社したがやっぱりムリと思って一応上司に打ち明けた。帰っていいよと言われたが朝やらねばならない仕事があったので午後休を申請した。データ入力と打ち合わせをしたら即退社。

家に帰って寝たかったが、常に近所の動向をチェックしている監視おばさんに「この人子ども保育園行かせて家で休んでるわ」と思われるのが嫌で、思いついたのが好きだがサイが生まれてから行けてなかったプラネタリウムだった。映画のように必死になって観ずに何なら寝てしまってもいいかもしれないと思った。上映が始まり、もたれ具合がちょうどいい座席、貸出の気持ちいいブランケット、最新技術を駆使した半球スクリーンに投影される映像(こんなにすごいって知らなかった)、某好きな女優のぼそぼそとしたナレーションと音楽、なんか漂う癒し系の匂い(ヒーリング効果のためそういう香りを出しているらしい)で完璧最高だった。天国。開始間もなく眠くなってきて、でも予想以上にプログラムが面白かったので半分寝ながらもぼーっとして観聴きしていた。「昔の人は星を頼りに航海していました」、というどこかで聞いたはずの解説に自分でも驚くほど感動して(女優さんの声の効果絶大)、気が付いたら泣いていた。さすがに声を出して泣かないがひたすら静かに涙が流れていく感じだった。冬の空で大森靖子さんの曲にもなっている「オリオン座」が見えて、あぁーとまた涙が出てきた。なぜかこれまでの人生の良かったこと悪かったことが溢れてきて、ちょっと眠くて意識が朦朧としていたので死ぬ前ってこんな感じかなと思った。上映が終わり明るくなったら、隣の知らない人は何事もないような顔をしていた。「(映像がきれいすぎて)気持ち悪くなった」と言っている人もいた。泣いているのが自分だけなのが恥ずかしくて急いでハンカチで拭いて平気な顔で出た。

帰ろうと思ったら外でビールを飲んでいる人が見えて、吸い込まれるように入店して外の座席に座りビールを一杯だけ頼んだ。風が気持ちよかった。涙を流したからか目を休めたからか気持ちと頭がすっきりしていた。少しだけ洋服屋を覗いていつもの時間に仕事帰りのような顔をしてお迎えに行った。Kが帰宅して「ビール飲む?」と聞かれ「いや、いいよ」と答えたら驚かれ三回も確認された。別に怒らないと思うが、半休を取って出かけたことは何となく秘密にしようと思った。
夜、暑くてサイがなかなか寝付かなかった。