カニ日記

息子の成長と日々の記録

いつでも笑っていたいよね

7月24日(月)
朝。サイは週末からアンパンマンの映画(一作年の魔法のランプのやつ)を繰り返し観ることにはまっている。きっと私が週末映画に連れて行かなかったから「俺はこんなに映画好きなんだぜ」というアピールかもしれない。家を出る時間になってもなかなかテレビから離れてくれず困った。時間がないので無理矢理連れて行く。自転車に乗りながら「おかあさんおしごといかないで~」とまた言われた。これ言われたら本当に辛い。教室の前でも泣いてぐずりにぐずり一生の別れみたいになった。自営業でもしようかなもう。起業しようかな。~でもしようかなという軽い気持ちでできる訳ないが今の会社からいつ戦力外通告受けるか分からないし(私の入社前にひどいリストラがあったそう)、一度真剣に調べてみたいなとは思っている。何にせよお金が要る。「おしごといかないで」の一言でそういうところまで考えてしまった。

夕方。家の冷蔵庫がすっからかんなのでスーパーに寄った。Kの気分に何でも対応できるよう、何日か分の食料を買い込む。帰ってきたKに「きょうはなに?」と何よりも食が大事みたいに聞かれてムカついた。「別に決まってないよ」と選択肢を与えたら何故か冷凍餃子になった。私は冷やし中華が食べたかった。

サイには餃子は味濃いと思いハムエッグを焼いた。そういえば小さい頃、自営業で料理が苦手な祖母の家に夏休み一人で泊りに行った時、ハムエッグと納豆が夕食に出てきたのを突然思い出した。でもけっこう美味しくて家ではそんなの晩御飯に出て来なかったから嬉しかった。ちなみに祖父は一応和菓子職人だった。父が跡を継いでちゃんとしてたら私もその道へ行ったのか行かなかったのか。サイは黄身を残して私にくれた。けど絶対後から欲しがるなと思って食べずに皿の端に置いておいたら案の定欲しがった。そういう予測、Kにはきっとできない。入浴後、またアンパンマンの映画を観てから就寝。粘土はどうした君。

サイと少し寝て深夜に起きて作業。


7月25日(火)曇り じっとりする暑さ
朝。サイは今朝もアンパンマンの映画。今日も入口で「おかあさんおしごといかないで」と泣いた。ごめんねと思いながら先生に日中の様子を尋ねたら「え、教室では笑ってますけどねぇ」と言われその姿を想像すると余計辛くなった。

昼休み。延命治療を断念し尊厳死が決まったイギリスの赤ちゃんのニュースを読んで苦しくなる。人の死って自由だけど不自由だ。

夕方お迎え。いつものように教室の前でサイを抱きしめる。Aくん(イケメン、サイと悪ガキコンビになりがち、Aくんのお父さんは甘い)がお父さんに抱っこしてもらい廊下に天井から下げてある動物の紙風船を触っていたのを見て、サイもやりたがる。抱っこして紙風船に触れると満足そうだった。その後Aくんが抱っこしてもらって帰ってるのをみて「サイくんもだっこー!」とねだられた。

コンビニに寄る。カニかまとファミチキと明日のパン。帰宅後、夕食準備。冷やし中華。サイはカニかまが異常に好きらしく(また一瞬のブームか)、帰宅した瞬間5本くらい食べた。どれも同じなのに「サイくんがえらべるー!」と自分で選びたがった。冷やし中華の麺があまり好きでなかったようで手で掴んで握り潰していた。夕食後、日曜日に愚図って買っためばえの付録で遊ぶ。入浴、就寝。


7月26日(水)雨
朝。寝坊。身体に違和感。急いで準備して保育園に行き最寄駅に着いた時にはぎりぎり間に合う電車の時間を過ぎていた。遅刻するのが嫌で体調も変な感じだったので午前休の連絡をした。家に帰って熱を測ると38度もあった。普段意識していないけどわりと熱や痛みにはわりと強い方らしく、なんか気のせいかもしれないけど変だなぁと思うと大体熱が出ている。しんどいなと思ったら39度超とか。帰宅したら安心して、雨だから洗濯もせずソファに寝転がっていた。昼になっても熱が下がらず一日休みの連絡をする。少し食べて寝る。何時間も寝ていたらしく起きたら陽が暮れかかっていた。慌てて散乱した部屋を掃除する。まもなく二人が帰ってきた。

夕食の用意ができなかったのでKに買って来てと頼んだ。なぜかKは私の食べられない唐辛子たっぷりの激辛棒棒鶏や苦手なレバーを買って来た。よくみるとKの好物(で私の嫌いなもの)ばかりだったので、おまえそれ自分が食べたいもんやろって心の中でキレたが顔には出さず、ただ食べずにいると「なんで食べないの!?」とむっとして聞かれた。辛いもの全般無理なの知ってて嫌がらせかなと思った。「食べなきゃ治らないよ」と言われたので内心で呆れながら一口だけ食べたら辛くて泣きそうだった。Kは冷蔵庫の中に昨日飲みきれなかったビールが入っているのを見つけて「なんでビールなんか飲んでるわけ?」って口調を強め怖い顔をして聞いてきた。体調不良で飲むわけない。何をしていてもわざと怒らせようとしているのかと思う行動ばかり。

夕食後、私が布団で寝ていてお願いしたはずなのにKはサイの相手をしてくれなかったため、サイは寂しかったのか私のところに一人で来て抱きついたり突撃したり(2歳児の力はこんなに強いのかと思うくらい痛い)大きな声で騒いだりして今日だけは勘弁してほしかった。体当たりを避けるべく、ねぇ絵本読んでよ、と言うとサイは使命感に駆られたのか絵本を探してきて枕元でアンパンマンの絵本を読んでくれた。Kは一体何をしているのだろうか。叫ぶこともできないので色々を諦めたが限界がきて家の中なのに電話した。夜中起きると嘘みたいに熱は下がっていた。知恵熱だったのか。


7月27日(木)曇り
朝起きたらKがいたので驚いた。休みらしい。私は朝友人に渡したい物があるから朝マックの約束をしていて、サイも連れて行かなきゃいけないのは楽しそうだけど大変だなと思っていたからおおラッキーと思ってKに保育園を頼んだ。一人だとなんて身軽なんだろう。テラス席で待っていたら友人がやって来て、30分もない短い時間ながら色々と話した。私達以外はビジネスマンの二人組や男性お一人様が座っていた。短いのにけっこう濃い話をした。あー、やっぱり私この人が好きだなぁと思った。駅の入り口(ああ優しい)まで一緒に来てくれて別れた。朝から人に会って話すのっていいなと思った。朝活に嵌る人がいるわけだ。

お腹も気持ちもいっぱいで電車に乗っていつも通り仕事。

夕方。休みなのでKに買い物とお迎えを頼む。晩御飯はKの独断でチャプチェ。あまり食欲が湧かず、もずく酢と豆腐を食べた。もずく酢はいつでも味方。サイの機嫌よかった。Kが海苔を持って来たのを見て、サイは私にお茶碗に残ったごはんで「さんかくおにぎり」と「まるのおにぎり」を作るよう要求してきた。げっ面倒臭いなと思ったがラップを持ってきて小さい△と○のおにぎりを作って海苔を巻いて渡したら満足そうにしていた。
明日から小旅行。旅行の準備をしておいて欲しいと頼んだのに全くされている気配がなかった。聞いたら何もしていないとのこと。夕食後、サイはまたアンパンマンの映画。


7月28日(金)雨時々曇り
軽井沢1日目。朝起きて準備していないことに気づき慌てて準備する。Kがスーツケースを拒否したので大きい布鞄に何でも詰めたら恐ろしいほど重くなった。新幹線。いつもはもったいないから膝の上だが最近暴れがちなので、サイの席も一席取ったら広さが全然違って本当に取ってよかったと思った。軽井沢駅着。サイは改札を出たところにある軽井沢と何の関係もない300円もするガチャガチャを目ざとく見つけてやりたがる。過去に同じシリーズを義父が勝手に二回もやらせたが中身の玩具にはすぐに飽きて投げ捨てていたから絶対にやりたくなかった。「やらないよ、高いしね」とスルーしたら「たかいのやりたい~」と騒ぎ出し、それから30分くらいガチャガチャのところへ走って行ったり泣いて騒いでぐずり続けた。

何とか駅前のレンタサイクルのお店まで辿り着く。子連れだと何でもない工程にものすごいパワーと時間を要する。レンタサイクル屋で子ども乗せ付電動と普通のママチャリを借りた。私は電動を選んだらいつも乗っているのと違い過ぎてなかなかうまく進めなかった。その姿を見てKがイライラして文句を言った。そういう時に笑ってほしい。何とか目的の駐輪場まで辿り着いたが行く予定のレストランはそこから10分歩いて行く必要があった。サイが走り回るのと空腹でKの機嫌は最悪だった。空腹でキレるのはいつもだから分かっていたがまだ11時代だ。
レストランに着いたらKは仕事の電話をし始めたので、私が適当に選んでオーダーした。料理は丁寧で美味しかった。サラダが美味しかったので中に入っていた食材をメモした。Kは酒を飲んで美味しいものを食べたら一気に上機嫌になった。サイは運動していないからかいつも程食欲がなかったがパンが来たら目を輝かせていた。食事に飽きたサイが店内で走り回ろうとして大変だったので退散した。

食後、歩き出したら昔のキャラクターものを扱うリサイクルショップとアンティークショップの中間みたいな面白そうなお店があった。古いアンパンマンがたくさんあったので、おお入ろうと思ったらサイを連れたKは遠く先にいた(歩くのが早すぎる)。これを逃すと次いつ来るか分からないと思って入店し、お店の中を少し見てにこにこぷんのコップとアンパンマンの人形を買って出たらKから着信が2回もあった。合流して謝ると怒られた。サイに買ったアンパンマンの指人形を渡すと喜んでいた。その後、最初から行くと予告していたレースのお店に入って5分くらい見ているとKが我慢できなくなり、「まだなの!?」「早くして!!」と苛ついて何度も聞かれた。旅行に来てまでイライラされるのが悲しかった。
その後ジェラート屋さんがあったので美味しそうだから食べようよと言って買って三人で食べた。サイは嬉しそうに食べていた。食べ終わってKは「珈琲ソフトが食べたかったのに」と吐き捨てるように言った。サイは珈琲無理だし、別に両方食べたっていいやんかと心の中で思った。あー、もう本当に嫌。楽しくない。珈琲ソフトで有名なお店へ向かった。食べたかったものを食べたらKの機嫌は少し直った。その後「夜飲むワインが買いたい」と言い出したため、ワインが売っている店に入ったら買いたいものがなかったらしくまた機嫌が悪くなった。

雨が降りそうだったので駐輪場に戻り、自転車に乗り「旧三笠ホテル」まで行った。木々の緑が綺麗だったのに、のぼりの坂道と凸凹道が辛くサイクリングを楽しむ余裕はなかった。後ろ乗せをしたのは今回の旅行が初めてで姿が見えないのが不安だったので、何度もサイに「だいじょうぶ?」と声をかけた。眠いのかあまり返事はなかった。しかし漕いでも漕いでも着かない。途中、目の端に別荘が何軒も建っているのが見えた。まさに「カルテット」の世界やなぁとぼんやり思った。しかしあの人達、週末ごとに東京の職場と別荘を行き来していたけど、それって結構大変だなと思った。まあドラマやけど。「旧三笠ホテル」にようやく辿り着くとサイはパタンと寝た。サイが寝たから交代で見ようと提案するとKはむっとして、建物に入らずサイを抱いてベンチで座っていると言い張った。せっかく来たのに。まあいいかと思って一人で中に入った。想像以上に見ごたえがあった。部屋の中や廊下に配置された家具や装飾品の子細を観察したり、写真を撮ったりした。建物内の塗装にメインで使われているくすんだピンク色と窓の外の鮮やかな緑色のコントラストが美しかった。これがピンクじゃなくて寒色系だったら緑とぶつかり合うから設計した人はよく考えたもんだなと感心した。感心していると昼寝から起きた(起こされた?)サイとKが階段を上ってやって来た。交代しようと思っていたのに。サイは部屋がたくさんあるのが面白かったのか興奮状態で部屋を出入りした。高そうな調度品を破壊しないかドキドキした。

旧三笠ホテルを出た後は疲れていたので予定を変更し宿に戻ることにした。途中で地元の牛乳と珈琲牛乳の自販機があり、美味しそうだったので自転車を停めて寄った。珈琲牛乳を買って牛乳も買おうとしたら何度お金を入れても戻って来て買えなかった。諦めて珈琲牛乳を2本持って戻ったら、Kは「え、なんで珈琲牛乳買ってんの?俺は牛乳が飲みたいって言ったでしょ」と私が酷い悪事を働いているかのような感じで物凄く怒り出した。機械がおかしくて牛乳が買えなかったことを言い訳してもむすっとしていた。この瞬間、単純でつまらない原因だけど何かがかっちり決まった気がした。パズルの最後のピースが嵌るように。「あはは、珈琲ばっかりだね」って笑ってくれる人はここにはいない。

Kが手配した宿は2階建ての小さなログハウスで1階が畳で2階にベッドが3台あった。陰気な感じで照明も暗かったが清潔だった。カップルにはいいかもしれない。どっと疲れたので珈琲牛乳を一気飲みした後一人で2階に上がりしばらく寝させてもらった。サイとKは1階にいた。1時間ほど経ってKが晩御飯来たよ!と何度も呼ぶので階下に降りた。小さなテラスにBBQセットが設置されていた。外の席に食器や途中で買った野菜を運び、Kは肉を焼き始めた。焼けた肉を小さく切ってサイのお皿に入れたがサイは食べずにミニトマトと付いてきた焼きおにぎりばかり口に入れていた。信州牛らしい。美味しいけれどお腹いっぱいになり箸を休めていたらKに「食べないの?食べないの?」としつこく聞かれた。Kはご機嫌で肉を焼き続け食べ続けた。ルームサービスのワインを2本も頼んでいた。サイが寝たら話したいことがあると行く前から言っていたからえっと思い「話したいことがあるからあんまり飲まないで」と言うと「わかったわかった」と返ってきた。その返事で、ああもう今日は話せないなと感じた。案の定、食べ終わって少しテレビを観て(ドラえもんとMステを久々に観た)、サイとお風呂から出た直後、Kはサイをほったらかしにして私が二人がお風呂に入っている間に敷いた布団に大の字になって寝た。起こしても起きなかった。話したいのにいつもこうやって話せない。私も急いでお風呂に入りサイと自分の髪を乾かしてサイを寝かした。サイは昼間私が買った指人形のうちおむすびまんが見つからないと騒いでなかなか寝てくれなかった。明日絶対探すからと何とか言い聞かせて寝かせる。Kは起きる気配がないし、私も疲れたので寝た。


7月29日(土)おもに雨
軽井沢2日目。明け方目が覚めた。二人はまだ寝ている。2階に上がってチケットを取ったりした後、昨日自分が起きたままになっていたベッドに再び潜り込んで寝た。少し寝たら朝ごはんが運ばれてきた音がして起きた。フードコートで呼ばれる時と同じ音だった。自家製らしいパンと卵と昨日買ったケーキなどを外のテーブルに並べる。サイはご機嫌だったが途中でアンパンマンが観たいと騒ぎ出した。あれは録画だからここでは観れないよと言ってもよく分かってもらえなかった。サイが部屋の中でテレビを観ていたのでテラスでKに思っていることなど少し話す。部屋に入ると相手にしてもらえなかったからかサイがぐずった。ごめん。
チェックアウトした瞬間、大雨が降ってきた。呼んでもらったタクシーに乗るだけでびしょびしょに濡れた。目的の「ペイネ美術館」があるタリアセンという施設に辿り着いた時には雨は更に強くなっていた。タクシーの運転手は降りる際、濡れている私達を憐れむこともなく、前を見て一切手伝ってくれなかった。雨に濡れたことでKの機嫌は最悪になった。雨に濡れても家族で笑い合いたいな、と心の中で思ったがすごいイラついているのが分かった。イラついてベビーカーのカバーもちゃんとつけてくれなかったから荷物も全部濡れた。「ていねいにていねいに」というアンパンマンに出てくる鉄火のマキちゃんの弟子、こまきちゃんの言葉が浮かんだ。施設に着いて私が傘を閉じるタイミングが遅いと「なにやってるの!」とキレられた。チケット売り場で複数施設が巡れるお得なチケットがあると言われたため、「わたしは軽井沢高原文庫にも行きたいけど(Kは一切興味ないと最初から言っていたので)、その間二人でどこかで待っててもいいよ」と言うと「はあ?どこで待つわけ?」と言われた。もう嫌だ。帰りたい。

施設の敷地内に入ってもずっと機嫌が悪かったため、もう限界だと思い、「帰るね」と言って出口に向かった。「はぁ?」という声が背中から聞こえてきた。歩きながら、そうだサイを連れて帰らなきゃと思って引き返した。引き返したらまた何か言ってきて、もうこれ以上やり合うのが馬鹿馬鹿しくなりKを無視してベビーカーを押した。結局、帰らずにペイネ美術館に行った。Kは美術館内でもサイが落ち着かないので「人に迷惑だ」とずっとイラついていた。

ペイネの絵が好きだ。結婚式にも使った。しかし険悪な空気の中、愛に満ちた絵を観るなんてこんな皮肉はない。それでもペイネの絵は素晴らしかった。幸せそうな男女の絵とか添えらえたポエムとか、一見目を瞑りたくなるほどの甘ったるい愛を描いているようだが、色合いや彼の描くモチーフはどこか影があってシニカル。そういう所が好きだ。初めて観た「ノアの方舟」というタイトルがついた絵が素晴らしかった。方舟に乗っている動物たちが全員地獄へ行くみたいな表情をしていた。パネルにはペイネと奥さんの出会いのエピソードも書いてあった。踊っていてペイネが奥さんの足を踏んでしまったのが仲良くなったきっかけらしい。いいなぁ。

Kはサイがじっとしていないのに耐えられなくなったから(サイは楽しそうだったのに)と言って、雨も止んだしサイと池のボートに乗ってくると言い出て行った。それはいい。物販でポストカードを買い外に出てペイネの絵をモチーフにした銅像を眺めていたらKから電話がかかってきた。「ボートに乗ってる姿を撮ってくれ」と言われた。なので池まで近づいて撮った。もっとこっちから撮れとボートの中から指示された。サイははしゃいでいるという程ではないがまあまあ嬉しそうだった。二人がまだボートに乗っていたので先に食堂に行くからと電話して、人がまばらな広い食堂で珈琲を飲みながら二人を待った。もっとゆっくりでいいのに10分ぐらいして二人はすぐにやってきた。

昼食後、サイと少し遊んでからタリアセン敷地内にある「睡鳩荘」(別称:旧朝吹山荘)に向かった。ヴォリーズの建築。この別荘の持ち主、朝吹氏の娘は文学者の朝吹登美子で、朝吹登美子は芥川賞作家の朝吹真理子の叔母にあたるらしい。だから色んな関連書籍が売っていた。幼少期のものから年頃ものまで登美子の写真が飾ってあって、何というか何も困ったことないような伸び伸びとした表情をしていた。こんな別荘もあるし、お金があるっていいことなんだなとしみじみ感じ、私がこの家系に生まれていたらどうなったかなと想像した。お金があるからと言って、太宰みたいになる場合もある。
睡鳩荘の帰り道、サイと陸上に上がっていたカモを眺めて話しかけた。大人しくて全然逃げなかった。

軽井沢高原文庫。結局全員で行った(が途中でKはサイといなくなった)。野上弥生子展をしていた。恥ずかしながら野上弥生子を初めて知った。夏目漱石の門下生と結婚したり、漱石と縁があるらしかった。執筆メモや手紙を見ていたら面白くて作品を読んでみたいと思った。が、売店には売っていなかった。

タクシーに乗り、今回高すぎて泊まれなかったからお茶だけでもしようと万平ホテルへ。着いたらサイは寝始めたので、喫茶室に入ってからKと話をした。今までで一番思っていることを真剣に話した。伝わったか分からないが、前よりも100歩くらい前進した。でも簡単に越えられない新たな壁を作ってきた。卑怯だ。アップルパイとフレンチトーストを食べたが話をした後だったからか何も美味しく感じなかった。Kは「(食べる前に)写真を撮らなくていいのか」と聞いてきた。結局一つも分かっていないのかもしれない。サイが起きたのでホテル内を見て回った。泊まったら素敵なんだろうなと思った。ミュージアムに展示されていたすずらんがデザインされた昔のティーカップが売店で復刻版として売っていて欲しかったが我慢した。

受付でタクシーを呼んでもらい軽井沢駅に向かった。新幹線に乗り東京へ戻る。サイはKが買ったさけるチーズを細く割くのにはまってそれで時間が持った。帰宅。入浴。入浴後また嫌な態度を取られた。二度とイライラしないって約束したばかりなのに。約束と違い過ぎて笑いが込み上げてきた。笑っていたらKは一層キレた。サイが困って泣き出したのでごめんね、と謝って抱きしめた。サイは小さな声で「おとうさんがおこってこわい」と言った。ごめんね、サイ。

7月30日(日)雨時々曇り
普通の生活に戻る。朝ごはん、洗濯、Kとサイが出かけている間に掃除、昼食作り。お昼ご飯を作っている途中でコンビニに行きたいと言うと「やることやってから行ってよ」と言われた。Kが昼からビールを飲んでいいか聞いてきたので「じゃあ寝かしつけやってよ~」と軽い感じで言うと「仕事いかなきゃいけないの!」と逆切れされた。ムカついたから私もビールを飲んだ。サイを寝かしつけるもなかなか大変。途中で水が飲みたいというので台所へ行くとKはまだいた。仕事行くんちゃうんかい。ようやくサイは寝た。疲れて私も少し寝た。途中で起きて作業をしたらサイもすぐに起きた。二人でスーパー。魚が食べたかったので魚が安いちょっと遠いスーパーに行った。ポイントカードを作ろうとサービスカウンターに行ったら対応してくれた女の人は丁寧だった。よかったなぁと思って帰ろうとした瞬間、「さて」と図太い声が聞こえてきて、え、誰と思ったら同じ人だった。どこからこんな声が。隣で怯えて立つ新人バイトさんと思わしき女の子に対しての声だった。さっきの声と全然違うやん。私が見ているのに気付かず女性は「○○さんは、・・」と図太い声で女の子に説教を始めた。それが表情含めてすごい嫌な態度だったのでウンザリした。あそこまで態度の違う人は初めて見た。人間って怖いなって思った。私は初バイトの和菓子屋で根性の曲がった悪魔みたいなおばさんに毎日虐められて辛かったから(なぜか一年も働いた)、自分が下の子に何か教えたりする時、絶対に高圧的な空気を作らないよう心掛けてきた。女の子に幸ありますように。人には優しくありたい。

遅くなったがKは帰って来ていなかった。7時頃今から帰ると電話があった。Kが帰宅して晩御飯。買い物(別に今日買わなくていい物)をしたから遅くなったらしい。そんなことで私は怒らないぞ、という気持ちでへぇと言った。入浴。風呂に入りながら「東京タラレバ娘」最終巻を読む。最終巻と知らずに読んでいたら急に終わりに向かっている感じがして驚いた。やや無理矢理感があったが、「人の幸せを願いたい」とはいい終わり方だと思った。サイと布団の上で転がったりして楽しく遊びながら就寝。さて明日からまた一週間。

 

 

耐え切れないことがあった翌日、SNSにうんざりしツイッターのアカウントを消した。アプリも消したら正直寂しいが不思議と清々しい気持ちになった。最近、会いたい人に会って食事したり時間を共有するうちに、好きな人と(ビール飲んで)同じテーブルで同じ皿の料理を突っついてどうでもいいことや真面目なことを話したり、ゲラゲラ笑い合ったりすること以上に尊くて美しいことはないと気が付いた。

同じ時代に生きている限り、意思さえ合えば本当に会いたい人にはどこかで必ず会える(はず)。