カニ日記

日記のような記録

魚が踊る水面はきれいだった

2月13日(火)
朝。パン。サイは今日もパンツを履いて行く。シーツをつけていたらまた遅刻してしまった。仕事がほとんど手につかないほど気が滅入っていたので、本当にどうにかしなきゃいけない。お昼、パン美人に話を聞いてもらい助言などしてもらう。夕食はきゃべつの味噌汁、出し巻卵、トマト、お惣菜。心臓がずっとドキドキして頭が痛い。入浴後、就寝。

2月14日(水)
朝。サイはバナナとパン。私はパン。二人ともいつもより早く起きたのに出発はぎりぎり。恐竜のリュックを私が持ち、サイはマイメロの手提げに色々詰めて登園。強い曲が聴きたいと思い、満員電車の中で『ドグマ・マグマ』を聴く。出社して、上司に感謝の言葉が予め書かれたチョコレートを渡す。去年おしゃれな感じのチョコを渡したら反応が薄かったので今年はギャグっぽいものにした。でもやはり反応は薄かった。目もくれず鞄に仕舞われた。もう辞めようかなと思ったけど毎日助けてもらっているし御礼という意味で。人に物を買ったり贈るのは嫌いじゃない。

お昼。人と話がしたいと思い、先週ランチをしたお母さん社員さんとまたランチをする。家事の手抜き加減とかけっこう感覚として気の合う方だなと思っている。話すと少しだけ楽になった。複数は苦手だけど一対一の付き合いが私はやっぱり好きらしい。

夕方、お迎え。保育園に向かう電車の中で『東京と今日』という大森靖子さんの新曲のMVを観ながら帰る。きりが悪く電車を降りた後少しだけ立ち止まって観ていたら閉園時間ぎりぎりになる。最後の二人だった。Sくんとサイがぽつんと教室にいた。「動画を観ていました」とはまさか言えず、「電話しようと思いましたよ」と言う先生に何度も謝ってサイを抱き締める。いつもお迎え時は騒がしいが、誰もいない保育園はひっそりしていて別の世界のようだった。『東京と今日』を歌いながら家まで自転車を漕ぐ。サイに何のうた?と言われた。サイと週末コンビニで買い込んだ冷凍食品を食べた。私はビールを飲んだ。その後、二人でMVを観た。サイは唯一分かる「東京」という言葉に反応していた。ここが東京で、東京に住んでいることを少し前からサイはちゃんと自覚している。

入浴、就寝。寝るまでに30分くらいかかるものの、本当にすぅーっと目を閉じて眠るようになって、1時間も2時間も大きな声で泣き止まず暗闇で揺らし続けていた赤ちゃんの頃が嘘みたいだ。友達に少しだけ電話してから寝た。


2月15日(木)晴れ 春のように暖かい
朝。朝食をサイが用意してくれた。びっくり。難しい顔をしてウェイターのように両手にスティックパンが2つずつ載った皿を持ち、慎重にテーブルまで運んでいた。サイの分は洗うのが面倒で誕生日とかイベントごとの時しか出さない新幹線のお子様ランチプレートにのっていた。私のは私がいつも使っているお皿だった。すごい。そしてなぜかパンを二つ積み上げた盛り付けがなされており、「サンドイッチですどうぞ〜」と言われた。あまり美味しくないパンだったけど嬉しくて美味しいね、と言いながら食べたら本当に美味しく感じた。

終業前、ニュースで「さいあくななちゃん」が岡本太郎賞を受賞したと知り嬉しくて席でこっそり泣いた。退社後、お迎え。家に食材がなく夕食をサイゼリヤで済ます。イカとかポテトとかチキンとか食べたいものを食べた。サイゼリヤは安くて美味しい。ワインが100円なので一人暮らしの時もよく行っていた。スーパーで食べてみたかったルマンドアイスを買ってから帰宅。

湯船に浸かりながらサイに「ななちゃん覚えてる?ピンクの絵の?」と聞くと「うん」と返ってきた。去年何度か展示に行ってななちゃんに会ったり絵を見たことをちゃんと覚えているようだった。サイは大抵の大人に人見知りをするが、ななちゃんには異様なほど懐つく。二人で会話もする。私が入れない美しい世界がそこにできていた。ななちゃんは小さい子どもの心を引き寄せる何かを持っているのかもしれない。「ななちゃんね、一番に選ばれたんだって」「いちばん?なんで?」賞の概念を説明するのが難しい。競争でもないし。「ななちゃんの絵が一番いいですねって言われたんだよ、一等賞なんだよ」サイは不思議そうに少し考えた後、「……おいわい?…だよね?」「そう!お祝い!」それから二人でぱちぱち手を叩いたりリーグ優勝した野球チームのようにばしゃばしゃと空容器に汲んだお湯を頭からかけ合った。わーい。入浴後、就寝。芸術は賞が全てでないけど、自分が好きな人が名誉ある賞を獲得するとこんなに嬉しいんだな、とまた泣いた。世の中捨てたもんじゃないなと思った。明日から頑張ろう。ななちゃん、おめでとう、そしてありがとう。絵は一生大事にするね。


2月16日(金)晴れ また冬に逆戻り
深夜に起きて、『anone』の録画を観た。このドラマは俳優がいいと思う。主役の二人はもちろん小林聡美阿部サダヲもいいし、娘さん役の女優さんもいい。観終った後、『ねぽりんぱほりん』で観て気になっていたホストクラブの仕組みを調べたり(「ネオホスト」という新しい言葉を知った)ホスト通いで破産した人のブログを読み、その後明け方まで文字フォントがのっているサイトで美しいフォント(「ぶどう」というフォントが好き)をひとつずつ見ていた。もっとやることはあるのに無駄といえば無駄なことに時間を割いてしまった。結果、寝坊した。

目覚ましを間違って早く設定して二度寝したのも敗因。サイが何度も「おきてよ~!」と起こしてくれたのに起きれなかった。ごめんねと謝って自分の支度をしている間に急いでパンを食べさせる。くるみパンのくるみを嫌がって取り除こうとしたのか数分後戻ると無残な姿になっていた。一瞬もう午前は休んでしまおうかと思ったけど来週休む予定があるので保育園に行った後遅刻しつつも出社した。最近遅刻しすぎでいかんなぁと反省している。タイムカード推し忘れという小細工で乗り切っているが何度もしていては怒られそう。

退社後、高円寺JIROKICHIにて我が民に非ズのライブ。初めて観に行った。想像以上に圧倒された。思うことがたくさんあるので感想を別途書きたい(ここに途中まで書いていたら膨大になった)。町田康さんがやっぱり好きだ。そう確信したライブだった。終演後、数年前の記憶で好きな古着屋を探すが道に迷い辿り着けず。代わりに良さそうな古本屋を見つけて入店。楳図かずおの未読漫画2冊と欲しいが高くて渋っていた『楳図かずお論』を購入。帰り道、うどん屋でかきあげうどん。半熟卵のかきあげが美味しかった。22時半にかきあげを一気に食べたから帰りの電車でお腹が痛くなる。遅い時間帯に調子に乗って飲食してはいけないなと思った。


2月17日(土)
朝。パンとヨーグルト。洗濯。サイがかるたを作って欲しいと言うので画用紙を切ってアンパンマンのキャラクターと頭文字を描いた絵札だけ作る。文字にどんどん興味が出てきたらしい。それから缶ビールを持ってサイと出かける。途中で移動スーパーやコンビニでそれぞれ食べたい物を調達して公園へ。寒いし中の飲食スペースで食べようと思ったらママさんバレーの集団が宴会していてびびって退散。まだ寒いが真冬の頃よりは暖かく外で食べるのも楽しかった。それから公園中を探検家になって走り回るサイに着いて目的もなく走り回った。次第に空が曇って本当に寒くなってきたので帰ろうとすると先ほどのママさんバレー集団が大勢巨大テレビのまわりに集まっていて、スケートっぽい映像が見えた。「あ、フィギア!」と思って全速力で自転車を漕いで帰宅。

テレビをつけたら羽生選手も宇野選手も滑り終わった後でリプレイ映像が流れていた。画面右上に「羽生66年ぶり連覇、宇野銀!」と書かれていたのでそういう結果だと知った。リアルで観たかったなぁ。仕方ない。スポーツが嫌いなのでオリンピックには興味がないがマラソンとフィギアスケートだけは別でいつも楽しみにしている。リプレイ映像で観た羽生選手の表情が忘れられない。羽生選手の精神にいつも驚かされる。全身全霊という言葉がこれほど似合う人はいないのでは。インタビューで「オリンピックに特別な思いはない」と答えた宇野選手もいい選手だなと好感が持てた。サイは最初、両選手の真似をして飛ぶふり等していたが、飽きたのか私が彼らをすごいなぁと褒めるから嫉妬したのか機嫌が悪くなりケーブルテレビにチャンネルを変えられた。どうしようもないので二人で昼寝。

起きたら真っ暗になったので買い物に行く時間がなく、夕食は簡単に済ます。入浴後、就寝。


2月18日(日)
朝。パンとヨーグルト。サイはバナナ。洗濯、掃除。むしゃくしゃした時に何も考えずがーってどんどん要らないものを捨てながら片付けるのが気持ちが良い。部屋も綺麗になるし。完全に綺麗になる一歩手前で疲れて辞めて楳図かずおの短編集『蟲たちの家』を読む。スプラッター的な要素が少ない代わりに人間の感情や欲から生まれる恐怖が描かれていて面白かった。楳図作品は何を読んでも面白い。サイとKは外で食べたので、昼ごはんを食べ損ねる。サイ帰宅後、昼寝。その後、準備してるとあっという間に出発時間になった。サイと駅まで行き、駅でKにサイを預け大森靖子さんのファンクラブイベントへ。

三か月ぶりだったので朝から緊張していた。『裏』や聴いたことのない曲が聴けたのも嬉しかったが、半年ぐらいライブで聴きたいなと思い続けていた『非国民的ヒーロー』を歌ってくれたことが何より嬉しかった。大森さんに小学生というか幼稚園児みたいなプレゼントを渡して言葉を失っていたら「今の髪型似合うね」と褒めてくださり、動揺して狼狽えていたら「いつも可愛いね」って言ってくださって頭が真っ白になった。大森さんこそ可愛い(外ハネの可愛さは異常だった)のに「可愛いですね」って返せなかった自分が嫌になった。返すどころか言いたいことは何も言えなかった。ぼーっとした頭で帰宅しアイスを食べてお風呂に浸かり布団に入った。

小さい頃から不細工と言われて育ったし学校で顔面を揶揄されることもあったから自分のことを「可愛い」と一度も思ったことはないし間違っても思ってはいけないと信じてきた。だから言われるとびっくりするが本当に嬉しい。「きれい」とか「かっこいい」よりずっと特別な言葉。「面白い」も同じぐらい嬉しいけど「可愛い」の絶大さには叶わない。それを好きな人が言ってくれた。サイも言ってくれる。勘違いでも自惚れでも喜びたい。

 

すぐに消えそうにない問題はあるけど水面で魚が跳ねるように嬉しいことがある一週間だった。