カニ日記

日記のような記録

対バンに生まれて初めて行ったり実家の押入れの奥でもう外に出ることなく眠る雛人形の顔を思い出したり

2月26日(月)
朝。パン、ヨーグルト。サイを保育園に送った後、午前中会社を休んで整形外科へ。二つ隣駅の病院に行ったら新しいクリニックセンターみたいなところにあり耳鼻科や小児科も同じ敷地内にあった。クリニックセンターの隣に大きなスーパーもあり便利で住みやすそうな街だなと思った。小さな子ども連れのお母さんをたくさん見かけた。整形外科でレントゲンを撮った。自分の外見を見るのはぞっとするがレントゲン写真で身体の中を見るのは好きだ。できることなら全身レントゲンを撮ってじっくり観察してみたい。腫れていると言われたが痛みの原因は不明だった。それから平日昼間しかできないので、銀行と区役所をはしごして所用を済ます。午後の出社まで早足で歩き回っていると脚がまた痛くなった。

夜。お迎え。サイは珍しく帰宅して夕食前におやつを欲しがらなかった。煮込みうどん。サイはよく食べてくれた。褒めたらすごいでしょと自信満々だった。入浴後、就寝。脚が朝よりもずきずきと痛む。診察と痛みの箇所がずれているので何か別の病気ではないかと恐ろしくなる。

2月27日(火)
朝起きると脚はもうほとんど痛くなかった。なんだったのだろう。出張でいつもより早く家を出発しなければならかったがサイは頑張ってくれた。車内で『新潮』3月号のリレー日記を読む。作家の日記は面白い。リレー日記なので一週間ずつ別の人が書いている。それぞれの日記の内容は全然違うのに時間が繋がっていて続けて読んでも面白い。朝吹真理子さんのごはんが美味しそうだった。アボガド醤油漬けとしらすをごはんにのっけて食べるのとか、私も真似してみたい。ずっと下を向いて読んでいたら乗り物酔いをしたため、読むのを辞め着くまで窓の外を眺めていた。出張先は寒くて山の近くで身体が冷えたけど晴れていて空気がよかった。上司がおやつにスニッカーズをくれたので持って行った大福は食べなかった。私はスニッカーズみたいなぬちゃっとした歯に詰まりそうな食べ物が好きだ。

帰りの列車(個人主義者の集まりのため行き帰りも皆席は別。楽で良い。)に乗り込みワゴン販売で買った缶ビールを一口飲んだら安堵した。ふと時間を見て「あれっこれは間に合うんじゃ」とはっとした。どうせ出張で遅くなると言ってある。行くしか。行くと決めるとツイッターで今日の銀杏BOYZ大森靖子の対バンライブのチケットを譲ってくれる方を探して、駅から会場までダッシュして無事受け取った。ツイッターは嫌いだけどこういう時は便利だ。

ZeppTokyoに入るといつもと確実に違う空気だった。ぴりぴりしていた。大森さんより銀杏BOYZのTシャツを着た人が多い気がした。会場へ入ると更にぴりぴりで何だか気が引けたので会場一番後ろの壁の前で観ることにした。数時間前まで山でスニッカーズを食べていた自分がなぜ今ここに立っているのか不思議だった。

ライブは全てが美しすぎた。今回は感情を文字化するのが一番良いとは思えないので未だに感想を書けないでいる。一番印象に残ったのは峯田さんが歌った『ミッドナイト清純異性交遊』。大森さん以外の歌手がミッドナイトを歌うのを聴いたのは初めてだった。好きな人のことを歌った曲をずっと追いかけていた人が歌う、大森さんはこの光景をどんな顔で見ているだろうとずっと考えていた。「モリステ!」で大森さんがカラオケにこの曲が入った時、何度も何度も繰り返し歌っていた姿を思い出した。「2005年から2018年まで遠くはないのさ」と峯田さんは歌詞を変えて歌った時、高校生の大森さんが峯田さんに毎日「件名:大森靖子」のメールを送っていた時と数年後峯田さんが「大森靖子」という四文字を見つけてはっとした時と今この瞬間が全部線で結びついていた。美しかった。峯田さんを初めて見たどころか、峯田さんの歌を初めてちゃんと聴いた。ほとんど知らない曲だったがステージ上で飛び跳ねたりダイブする峯田さんと鳴り響く音と一体化したもはや別の生き物のようにうねる群衆を夢の中で見る光景のようにぼんやり眺めていた。峯田さんが曲の合間に方言混じりで話す一言一言が胸に刺さって愛おしく、大森さんやファンへの優しさが尋常でなく、え、こんな人間が世界に存在したの、峯田さんって一体何者なのとずっと戸惑っていた。これだけで判断すべきでないが、熱狂的なファンがいるというのにも頷ける気がする。サイには峯田さんみたいに育ってほしいなと唐突に思った。「いつか君たちが銀杏BOYZ大森靖子を忘れて聴かなくなっても大森靖子銀杏BOYZは今日の日のことを一生忘れない」と峯田さんは言った。

終演後、会場を出た所でビールを飲んでいたら知っている人に会ったので少し話した。居合わせた方と三人であれこれ話しながら帰った。帰宅してやや潰れた大福を食べてお風呂に入って寝た。後から今日行った出張先と峯田さんの出身県が同じだと知った。ここへ出張へ行くのは初めてだったし当分はないだろうから奇跡のような巡り合わせ。


2月28日(水)
朝。パン。会社の制度に従わず反発していたら叱られた。この歳になって「社会の規定に反するなんて許されない」と言われると思わなかった。夜も夜で嫌なことがあった。夕食は野菜とハムのオムレツ、コーンスープ、ごはん。入浴後、就寝。


3月1日(木)
朝。大雨。ダメな一日だった。ちょっとしたはずみで心がガラガラに崩れてしまって会社を一日休んだ。サイを保育園に送ってからその足でスーパーまで自転車を飛ばした。平日開店直後のスーパーにはほとんど人がいなかった。無の表情で何かをカゴに放り込んでいる老人達が将来の自分に見えた。サイの好きなめかじきと豚肉と新じゃがとしらすとミレービスケットを買った。嵐の後のような空は風が吹き荒れていて清々しかった。ミレービスケット一袋(500kcal)を一気に食べた後アイスを食べ、青空が見えてきたので洗濯をする。が、洗い終えたものを干すまでに3時間ぐらいかかった。それから録画したドラマを観て朝吹真理子さんの真似をしてアボガド醤油漬けしらすごはんをビールと共に食べポテトチップスを食べ、ぼーっとしていたら外が暗くなり慌ててお迎えに行った。時間がいっぱいあるのに食べること以外何もしなかった。部屋は散らかっている。保育園ですれ違ったお母さんに「お疲れ様です」と口々に言われ罪悪感を感じた。

帰りながらサイは私の好きな食べ物をひとつずつ声に出した。「ビールでしょアイスでしょももでしょ、あとなにかなー」「いかも好きだよ」「へぇ~いか~!」サイはこうやってデータ更新していく。夕食はめかじきのソテー、コーンスープ、ブロッコリー、ごはん。「もうサイくんおとなだからビールのみたい!」と泣き、宥めるのが大変だった。入浴後、サイと布団の上でごろごろして遊んだ。「ままのセーターきるー」とまたリボン柄の汚いTシャツを着て寝た。Tシャツのことをセーターだと思っているらしい。就寝。


3月2日(金)
朝。パンとヨーグルトとクロミちゃんのビスケット。スムーズに出発。天気がいい。
もう人間関係とかネットとか全部疲れてしまった。海辺の街で冷蔵庫をアイスとビールでいっぱいにして暮らしたい。時々浜辺を散歩して。


3月3日(土)晴れ
天気が良い。朝ごはん、洗濯のち簡単なお弁当を作り缶ビールを持ってサイと公園へ。100均で買ったクマや星の型でおにぎりを作ったら可愛くできた。こういう型は可愛いけどうまく使えないと思い込んでいたが、最近のは米粒がくっつかないようにされていてなかなかよくできている。お弁当を食べた後、サイと夏場は噴水になっている池が今は水が抜かれているのでそこに入って探検隊ごっこをした。凸凹したちょっと危なそうな岩や石に登るのがサイのマイブームのよう。転ばないかと冷や冷やするがサイは得意気に進んでいく。サイ隊長に着いて行く私。それから二人で滑り台をした。一度私の不注意で顔面をぶつけてからトラウマになってしまいやろうとしなかったが、「まえにかおがぶつかっちゃったよね」とまだ思い出しつつ滑る気になったよう。横長の滑り台なので手を繋いで滑ったら楽しかった。それから「サイくんがママのせなかおしたげる」と言われ、なぜか私だけ滑らされたりした。砂にサイが絵を描いている時、あまりの陽気で眠気が押し寄せてきて私は座ったまま寝ていた。それから二人でアイスを食べて薬局に寄って帰って昼寝。「ママねてたよね~」と、あとからサイに公園で寝ていたことを指摘された。夕食は肉じゃが。入浴後、就寝。

そうえいばひな祭りらしいことは何一つしなかった。スーパーの食材に「こういう風にパーティーで使えばいいよ」という楽しげなメニュー写真が載っている度にうっとなる。集まってひな祭りパーティーとかやる人もいるだろうが、想像しただけでぞっとする。自分が小さい頃に住んでいたマンションは新築だったので、同じ歳くらいの子どもがいる家族が何組もいて、毎年持ち回りの女の子がいる家庭主催でひな祭りパーティーが開催されていた。今思えば豪華なひな人形や凝った手料理、子どもに着せる着物、その全てが母親同士のマウンティングだった。恐ろしい。笑顔の集合写真の裏にあるぴりぴりした大人の何かを見る度に震えた。私にはそういう付き合いもなければママ友自体いないので心配無用だが、とにかくサイが男でよかったとほっとした。サイにコンビニでおひなさまの砂糖菓子がついたケーキをねだられたがあまり美味しそうでなかったので買わなかった。サイは保育園に飾ってあるひな人形をいつも気にしていて、一番下の段にある牛車や重箱などの小物を「これはおべんとうだね~」と蓋を開けようとしたり、「サイくんこれほしい~かって~」とねだっていた。おだいりさまと「おひめさま」と呼ぶ。実家の雛様達はどうなるのだろう。いつか捨てられるのだろうか。


3月4日(日)夏のような陽気
早起きしてサイと電車に乗り、川崎市市民ミュージアムで開催している「MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」へ。タイトルからして最高ではないか。移動時間が長かったのでぐずったが途中お菓子を買ったりして何とか到着。駅でMJ部(私が会社で勝手に結成した部。4年前、パルコで開催されていた「国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO」に行ったのが部の始まりだったのでMJ部と名付けたが別にMJに関係なく面白いことがあればお出かけする。活動は不定期。)のメンバーと合流。サイは久しぶりなので緊張していたがすぐに思い出し懐いていた。初夏のように気温が高い上にトークショー(観たかったがチケットは完売)があった関係で大混雑だったので激しい頭痛がして展示に集中できなかった。全部見るのは諦めた。特に幼少期や青年期の漫画やポエムなどの自主制作品が面白かったがとにかく展示量・情報量が多かった。観終わった後、みうらじゅんが好きなメンバーも「しばらくMJは見たくない」と感想を述べるほど皆憔悴していた。サイはポスターのMJを見て「○○せんせい!」と言い、確かに○○先生はMJに髪型が似ているので私はげらげら笑った。その後も「へんなおばさん!」と言ったり、まさか男性だとは思っていないようだった。MJは自分のことをおばさんだといつも言っているので本能かもしれない。サイは「てんぐレンジャー」のショーのVTRとスタンプに夢中になっていたが後は興味がなさそうだった。MJの原画に「おっぱいだ~!!」と喜んで手を触れそうになったので冷や冷やした。会場でも「ちんちん!」などと絶叫していたのでくすくす笑われていた。ミュージアムを出てからも大人達にオリジナルの意味不明なクイズを披露したりしてテンションが高くずっと興奮状態だったサイは帰りの電車では電池切れとなりぱったり眠った。
帰宅後、夕食。入浴後、就寝。「楽しかったね」と言い合って寝た。珍しく夜泣きをしたので昼間刺激を受けすぎたのかもしれない。

ぽかぽか春の陽気が感じられる週末だった。でもまたぐんと寒くなるらしい。冬は終わっていない。人生のようだ。がんばらないと。