カニ日記

日記のような記録

つかれちゃったうーぱーちゃんはメキシコの湖に帰りたかっただろうか

3月12日(月)
朝。寝坊。完全に夜更かしのせい。日曜日は明日から仕事か嫌だなという気持ちの反動か最後の自由を楽しもうとつい夜更かししてしまう。自省。遅刻も嫌なので午前休にし、体調も悪かったのでついでに病院へ行った。鼻炎と風邪らしい。この病院は受付も先生も恐ろしく愛想が悪いがほとんど混まないし腕がいい。6種類も薬を出されてすぐに飲んだら次第に楽になってきた。月曜朝の病院は空いていて、前はなかったモニターが至るところに増えていた。そのモニターから海や森林のいわゆる「患者を癒しますよ」という映像が無音でエンドレス再生されていて、それを眺めてこれはどこだろうなと考えていた。こういう映像は何となくぼんやり見てしまうが、必ずどこかの場所でありちゃんと世界に実在すると考えたら不思議な心地になった。また、こんな癒し映像を流しているのに全員愛想が悪いとは実に可笑しいなと一人でにやにやした。

病院が終わると午後の出社まで時間が空いたので新宿に行った。こんな時は伊勢丹に行くしかない。他のデパートに比べ、伊勢丹で洋服や雑貨やお菓子を見た時のアドレナリンの放出量は半端ないので行くだけでエネルギーが満ち溢れる。だからちょっと落ち込んだ時とか今から頑張りたい時とか用事がなくても行く。DJみそしるとごはんさんが以前伊勢丹のイベントの時に作った「This is ISETAN Underground」を脳内で流しつつ。CDも持っているしとても好きな曲。デパ地下はホワイトデーのお返しを求める男性で混雑していた。母がバレンタインにチョコレートを送ってくれたことを思い出し美味しそうなパウンドケーキを実家に発送した。

それから上の階で洋服を見る。春夏シーズンの服がちょうど出揃っている時期ということもあり、アドレナリン絶賛大量放出。あぁーかわいい、あぁーすてきーと胸をときめかせ、そっと触れたり鏡の前で合わせたりした。良いと思った服も自分の顔に合わせるとあれ何か違うなとなる場合もありその瞬間はアドレナリンがやや減る。そんな感じで見ていたら我がオアシス3階解放区で、ある洋服に一目惚れした。ずっと憧れていたが自分には美しすぎると思って一度も買ったことがないブランド。伊勢丹は神接客なので、そわそわしている初期段階ではまだ店員さんは寄って来ない。絶妙な距離から放置して私が洋服と向き合う時間をくれる。万引きする不審者のように何度も触っているとようやく静かに近づいて来て「よろしければ合わせてみて下さいね」と一言だけ優しく放つ。どこかの店員みたいに「ここが可愛いですよねっ」などと価値を決めつけるような発言はしない。いやでもな、私がこのブランド着るとは、と一旦引き下がって他の服を見たりしたが、やはり忘れられず戻って試着させてもらう。

着てみると断裁や縫製にデザイナーさんが隅々までこだわっているのが着る前よりよく分かった。ギャザーの寄せ方や計算された丈、肌に纏わりつく布の感覚そのひとつひとつに感動した。「この服を考えたデザイナーさんはすごいですね、すごい」と思ったことをそのまま口走ってしまうと「そ、そうですね」と少し困ったように笑いながら頷いてくれた。でもやはり自分には美しすぎる気がした。迷っていたら試着室に「色でお悩みの方はパーソナルカラー診断をさせていただきますのでお声かけ下さい」という貼紙を見つけて、聞いてみたら無料でやってもらえることになった。大森さんが前にやったと言っていてちょっと気になっていたので嬉しい。密室で専門の人が顔に色々な布を順にあててくれた。あてる布で顔色が全然違って見えた。診断の結果、私は秋だった。今まで似合わないと思っていた色が似合う色だと知ったり新しい発見があって面白かった。それでさっき試着した服は秋に当てはまる色だったので、いよいよ決心がついた。伊勢丹は商売上手である。それも分かって伊勢丹が好きだ。さすがに大きな紙袋を抱えて会社に行けないので夜まで取り置きしてもらった。

夜。お迎えを代わってもらい、また伊勢丹に行って洋服を引き取った。朝よりは冷静になっていたので果たして本当に私がこの服を買っていいのかなという気持ちで迎えに行った。昼間の店員さんにお礼を言おうと思ったが見当たらずまぁいいかと思って解放区を出たら背後から「○○様」と呼ばれてその店員さんが私を追って来てくれた。こういうところが伊勢丹はすごい。マニュアルにあるのかないのか分からないが接客が人間レベルだ。自分がこの美しい服を買ったこととパーソナルカラー診断で似合うとされた色に今後縛られそうで不安になっていたので、心理相談かというくらいどういう小物が合うかしつこく聞いたら丁寧に教えてくれた。いい店員さんだった。タイミングが合った友達と合流し、一緒に色んなブランドの服をあれこれ話しながら見た。自分がいつも見ないブランドも見ることができ新鮮で楽しかった。それから日記にかかない幸せ。美味しくて穏やかな夜だった。帰宅すると「私はこれを着れるかな、高い服買ってしまったな」とまた不安になりなかなか紙袋から取り出せず、でも皺になるのも嫌だったので寝る前にお気に入りのハンガーにかけてあまり見ないようにして急いでクローゼットの一番奥にしまった。


3月13日(火)
朝。バナナとヨーグルト。サイは最近ハサミで色々なものを刻むのが好きだ。ハサミ遣いがかなり上級になって小さな細かいものも上手に切れるので側で見ていなくてもまあ大丈夫。しかし私が準備している時に今日も何か切ってるなと遠目で思っていたら床にたくさんの黒い髪が落ちていてびっくりした。どうやら自分で切ったらしい。驚いたが叱ってはいけないと思い訳を聞くと「あたまちっさくしたかったの~」と可愛いことを言う。小さくって…。さすがに危ないので髪は自分で切るより美容師さんに切ってもらった方がいいよ今度行こうよと説得してはさみを取り上げると不満そうだった。伸びすぎて野生の子みたいになってきているので、早く美容院を予約しなければ。そんなことがありつつバタバタと出発。

夜。お迎え。玄関に行くとサイは水槽のコーナーに駆け寄って「るーぱーちゃんがいないの」と教えてくれた。その言葉通り、「うーぱーちゃん(サイはるーぱーちゃん、まあどっちでもよい)」と勝手に呼んで愛でていたウーパールーパーの水槽があった場所には何もなくなっていた。毎日帰りに二人で水槽をのぞいて声掛けしていたうーぱーちゃん。私は何となく悟って、側にいたやや高齢の先生に聞いたら「死んじゃったんだって」と教えてくれる。「うーぱーちゃん、しんじゃったんだって」と私がサイに言うと「おじいちゃんになったんだって」と何か知っているようだった。先生が知らせたのかもしれない。お迎えしているお母さんも子どもも先生も、誰もうーぱーちゃんが死んだことを気にしてない様子だった。私はショックで一人茫然としていた。気が付いたら涙を流していた。私があまりに茫然としているから、さっきの先生が「園庭にお墓があるから今度場所教えてあげるね、今は暗くて見えないけど」と言ってくれた。暖かかったので、サイは園から出ると庭園で先生にもう帰りなさいよと言われるまで他の子達と走り回ったり遊んでいた。私は子ども達から離れて立ち話をするお母さん達から更に離れた所に一人で立ってうーぱーちゃんの死について考えていた。少しピンクがかった白い体をした可愛いうーぱーちゃん。ほとんどじっとしていたが時々思いついたようにゆらゆら泳いでいたうーぱーちゃん。トンネルに隠れていたうーぱーちゃん。毎日会うウーパールーパーに特別な思い入れがあったというより、まあそれもあるけれど、最近亡くなった人やいつか死ぬ人や自分について、ばーっと連鎖反応みたいに色々考えて辛くなった。

帰り道でサイに「なんでるーぱーちゃんはしんじゃったの?」と聞かれ「病気かな」と答えると「つかれちゃったのかな」とサイは言った。「そうかもしれないね」と自分に言い聞かせながら答えた。自転車に乗りながら今日保育園で何をしたか聞いた。「ままごとしたよ」「へぇ何作ったの?」「からあげ、おかあちゃんにからあげつくった」「えー唐揚げ大好き!嬉しい!ありがとう!」「でしょーこんどからあげかってあげるよ、サイくんおかねあるから」「えっお金あるの?すごい」「うん、からあげは280えんだよ」「へぇ~」「こんどおはいふ(お財布)かって」「いいよ、どんなのがいいかな~」こんな風に私達はいつも会話している。

夕食後、入浴。サイはお風呂にままごとのコップや使わなくなった御猪口を持ち込んでジュース屋さんごっこをした。「いらっしゃいませ~なんのジュースがいいですかー?」「えーとじゃあビール下さい」「ここはジュースやさんです!ビールはありません!」とか、「えーとじゃあ、みっくしゅじゅーちゅ下さい~」「みっくしゅじゅーちゅはふゆなのでありません、あたたかくなってからです」とか最もなことばかり言われて笑った。いちごジュースを発注したら仕入の苺が高すぎて販売中止になったとのこと。いい経営者になりそうだ。入浴後、就寝。めずらしくテレビを観ない日だった。


3月14日(水)快晴
暖かい。春だ。夜中や明け方に何度も目覚めたが10時からずっと布団で寝ていたので普段に比べてよく眠った気がした。夢を見たはずだが覚えていない。あまりいい夢でなかったと思う。サイは朝起きるなり「もっとこっちにおいでよ~」とにっと笑って私を抱き寄せる。ハーレークインのロマンス文庫か。機嫌が良くてよかったと思ったら朝からウィンナーを食べたい、それもカニさんウィンナーが食べたいと騒ぐ。時間がなかったのでげっと思い「夜に作ってあげるね」と断ったら今食べたいと言って聞かず、機嫌が悪くなったので仕方なく急いでウィンナーに切り込みを入れ(慌てすぎて足が少しちぎれる)果物を切っている間にフライパンで焼く。母親をしていて自分が偉いとあまり思うことはないのだが、今日は思った。こういう臨機応変さは仕事にだって活かせているはずだ。人によって子育て方針は違うと思うが、私は怪我するとか命に係わるとかもう本当に無理なこと以外は何でも一緒にやろう、やってあげようのスタンス。母親というのは売出し中の芸人と同じだ。ゴミ出しして昨日作ったお弁当をかばんに放り込み何とか出発して保育園に行き通勤電車に滑り込む。いつもその瞬間ほっとする。うーぱーちゃんがいなくて寂しい。

夜。退勤してフロアに置いてある共有コート掛けから何も考えず自分のコートを取って纏い、そのまま会社を出て文房具屋に寄り駅まで着いて電車に乗ろうとしたときにいつも定期を入れてる右ポケットに定期がなかった。あれ、と思い左ポケットを探ると手に覚えのない感触。何だったけこれと取り出してみると自分のものではない手袋。その時初めて他人のコートを着て来てしまったことに気付いた。慌てて会社に戻り何食わぬ顔で間違えたコートを戻して自分のコートを捕獲した。家まで帰らなくてよかった。持ち主はサイズ的に男性だと思われるが誰か分からなかった。自分のコートがなくて仕方なく何も着ずに帰ったのかもしれない。そりゃそうか。傘なら残ったものを差して帰るがさすがにコートは着ないか。それにしても他人の服を間違えてある程度の時間を過ごしたのは初めての経験だ。我ながら自分のした失態が面白いなと思って歩きながらにやにやした。

夕食は買った惣菜など。我慢できなくて夕食を並べる前にビールを飲んだ。食後にサイとくっついてアンパンマン映画『いのちの星のドーリィ』(途中から、サイはロボットが暴れるクライマックスのシーンが好き)。入浴後、就寝。


3月15日(木)快晴
いよいよ春だ。嬉しい。が、気温が急に上がったので頭痛がする。保育園に着いて玄関でサイは一瞬何か考えてから「るーぱーちゃんなんでしんじゃったの?」と小さな声で放った。サイはうーぱーちゃんが死んだことを気にしていないようで気にしている。サイの答えを真似て「つかれちゃったのかな」と言うと「なんで?」と聞かれたので「本当は広い海が好きだから、この保育園の狭い水槽の中にいるのが疲れちゃったんじゃないかな」と自分なりに推測した答えを返したら、納得したようなしてないような表情をしていた。ウーパールーパーの生態に詳しくないしそもそも海に生息しているか分からないが、少なくとも水槽よりは広いだろうと思って。(後で調べたらメキシコサラマンダーというサンショウウオの原種を人工的に品種改良したのがウーパールーパーで、原種はメキシコのソチミルコ湖とその周辺に生息していたが湖は現在、土地開発や埋め立てで湖と呼べないほどの状態になっており個体数も減っているとのことだった。うーぱーちゃんは突然変異で生まれた黒目の白個体リューシスティックで日本で最もよく知られたウーパールーパーらしい。)

昼。パン美人と食べる。いつも楽しい。コートを取り違えた話をすると笑ってくれた。「間違えられた人が私のコート着て帰るかと思ったんですが、そうでもなかったです」と言うと「そりゃそうでしょ、自分のがないからって他人のコート着て帰らないでしょ」と真っ当なことを言われまた笑う。それからお互いが最近買った洋服(私は月曜に買った服)や欲しい物の話をした。パン美人は何を言っても興味を示してくれるので嬉しくなる。

夜。お迎え。保育園バッグと一緒に大きな黄色い袋が掛けてあった。数日前から教室で並んでいるのを見かけた。その中にはサイが一年間に作った絵や工作作品がたくさん入っていた。布の表にはそれぞれ好きなように描いた絵で彩られている。サイの袋には大きな顔が三つ並んで描かれていて、聞くと三人の担任の先生の顔だと言うこと。人数が多いので担任が三人いる。サイがみうらじゅんを見て似ていると言ったK先生、T先生、A先生。K先生が一番年上ベテランで、T先生は私と同じくらい。A先生はおそらく専門を出たばかりでとても若くて可愛い。私はA先生の顔が好きなので親子会で子どもを撮るふりをしてA先生を盗撮したことがある。T先生は背が高く控え目で優しい。一番仲良くなれそう。K先生はちょっと怖いなと最初思っていたが実はいい先生だと後々分かった。若い先生ばかりだと子ども達にも舐められるのでK先生みたいな先生がいた方がいい。サイが描いた三人の顔はK先生とT先生が大きくてA先生はその1/3程と小さかった。A先生がK先生に意見されている姿をよく見るのでその力関係をよく表していて面白いなと思った。サイはよく見ている。K先生に「これは三人の先生の顔だそうです」と言うと「あらそう?」と大きさの違いにまで気付いていないようだったのでまた一人で可笑しくなった。

帰宅後、とりあえずビールが飲みたかったので三歳児に「ビール飲んでいいですか?」と聞くと「いいよ!」と許可が下りる。交換条件としてコアラのマーチいちご味を食べることを許可した。サイが私にもくれたが全くビールに合わなかった。疲れていたので簡単に夕食を済ます。それからサイが一年間に作った作品を一つずつ眺める。先生が全部に日付を書いてくれているので、だんだん上手くなっていて最初春夏は抽象的だったのが年末頃の作品は何の絵か分かるようになっていて面白いなと思った。褒めたらサイは得意気になり「どこにかざろうかな~」と飾る場所を一人で考え始めていた。疲れていたので週末にしようと思いお風呂に入る。なんだか身体がだるい。就寝。倒れるように横になる。熱っぽくてしんどい。お腹も痛くて変な汗をかくし気持ち悪かった。サイは何ともなさそうだった。


3月16日(金)曇り
明け方起きてから眠れず朝まで起きた。会社を休もうと思って熱を測ってみるも熱はなく有休を無駄遣いしてはいけないと思い行くことにした。朝になっても空がどんより曇っていて嫌な天気。体調不良は自律神経の乱れかもしれない。サイが起きて「曇ってるよ」というとカーテンを開けて外を覗き「これいけそう?」と不安そうに聞く。「うん大丈夫だよ、サイくんは保育園、ママはお仕事、今日一日頑張ったら帰ってアンパンマン観れるよ」と希望を提示すると「ぃやったーー!!」と分かり易く喜んだ。それから再びだらだらと寝転がっている私の側に来てサイも寝そべって「おかあちゃんのことすきだからちかくにきたよ」と状況を教えてくれた。可愛いな。金曜日はアンパンマンの放送日だし一週間の終りなので私もサイも嬉しい日。貧血でクラクラしつつ出社。精神は元気なのに参ったなぁ。

出社しても仕事に集中できず、というより眩暈で視界が悪くなりデスクトップが見辛くなってきたのでこれは無理だと思い午後休みを取って早退した。月曜日は午前休だったし社会人としてダメだなと自省しつつも月曜は午後から金曜は午前までという制度だったらいいのにな、と悪いもう一人の自分が思っていた。帰宅後、薬を飲んで音楽を聴きながら布団で横たわっていたらいつの間にか寝ていた。次に起きた時にはお迎えの時刻だった。このままずっと寝ていたいと思ったが、そういう分けにもいなかいのでとりあえずマスクをしていかにも仕事帰りという顔で慌ててお迎えに行った。雨が降っていて寒い。サイは元気そうだった。

再び帰宅後、一瞬床に倒れて蹲っていたらサイが駆け寄って来て「だいじょうぶ?」と心配そうに背中をトントン叩いてくれた。優しいな君は。倒れているとか、あんまりこういう姿はサイに見せたくないのだがどうしてもしんどい時は仕方がない。子育てにおいては何でも一人でやれると強く自負していたのに自分の体調が悪いとどうしてもうまくいないと実感し情けない気持ちになった。健康第一だとしみじみ実感した。夕食はうどんがあったので適当に焼うどん。私はブロッコリー入ポタージュ(市販のスープに茹でて入れただけ)。サイは夕食前にパンを食べていたこともあり、スープしか食べなかった。なので誰も食べない焼うどんは冷蔵庫へ移管された。
ドラえもんクレヨンしんちゃんでも観よう(観ていてもらおう)と思ったら別の番組が拡大していてやっていたなかった。なのでアンパンマンを観た。他のアニメと違い家族愛をやたら強調することもないので、アンパンマンを観ると心安らぐ。アンパンマンの世界の住人達はそれぞれ孤立している。今日はオクラちゃん。野菜を人に配る度にいちいち野菜たちにドラマチックな別れ言葉を贈るオクラちゃんが面白かったのでサイと笑った。入浴後、就寝。私は身体がしんどくて寝付けず夜中何度も起きては寝るを繰り返した。


3月17日(土)快晴
私は寝過ぎたので早朝起きた。サイも休みの割には早く起きた。二人でゆっくり朝ごはん。時間があるのが一番良い。ゴミ出し。洗濯。サイはアンパンマン。昼前、おにぎりと出し巻卵を作りお弁当箱に詰め出発。ローソンに寄りシールを貯めた台紙とキティちゃん&マイメロの小皿を交換してもらう。こういうポイント貯めてもらえる物は最後まで達成したためしがないのだが、サイがいつだったか「サイくんキティとマイメロのおさらほしいんだ」とローソンのポスターを見て言ったのに対し「あれはシール貯めたらもらえるんだよ、じゃあもらおうよ」と口約束したばかりに初めて必死に頑張った。自分で決めたことや気の進まないことはすぐに諦めがちだが、大事な人との約束は守るタイプなのかもしれない。しかし当分コンビニのパンとスイーツは見たくない、という感じ。それからTSUTAYAで先週借りたDVDを返却し(自分用に借りたものは案の定観る時間がなかったためまた借りた)、違うアンパンマンの映画と『パディントン』を借りた。

公園に行きシートを広げてサイとお弁当を食べた。サイはTSUTAYAでやったガチャガチャで出た玩具(小さながちゃがちゃマシーンの玩具)に夢中で最初全然食べなかったが、私が食べ始めると取られまいと勢いよく食べ始めた。食後、サイはシャボン玉。ひとつしかないので私はシートの上でサイを眺めていた。日光に当たっていると体調が回復してきた気がした。私の服に偶然シャボン玉がくっついたのが面白かったらしく、またつけようと私をめがけて吹いてくる。それからシートを畳んで公園で走り回る。と見せかけてサイはセブンティーンアイスの自販機コーナーに直行した。そういう時だけ早い。サイのお気に入りの「バナナ」(正確にはバニラ)を買い、二人でベンチで食べる。

食べていると溶けかけたソーダアイスを持った男の子が近寄って来た。サイより少し年上な気がした。「きみだれ?」「なにたべてるの?」と接近して一方的に話しかけてきたり顔を寄せたり距離が近く、人見知りのサイは戸惑っているようだった。親の姿は見当たらない。男の子がベンチのテーブルに座って足を乗せていたので「そういうことはしちゃだめだよ」と静かに注意した。私は他人の子にはけっこう厳しいのだなと思った。ほどなくして祖母と思わしき人が現れて何やら男の子に話しかけていた。男の子はまだテーブルに座っていたので「それだめだよ」とおばあちゃんにも聞こえるようちょっと強めに注意した。そうするとおばあちゃんは「○○くんダメよ」と言ったが男の子は聞いていないようだった。おばあちゃんは私に「男ですか?女ですか?」と聞いた。私はキャップを被っていたから自分のことかと思って「母親です」と答えたがサイのことだった。そう言われると髪が伸びて最近一見どっちだか分からなくなっていた。サイは男の子があまり好きでなかったようでアイスを食べ終えるとベンチを離れた。すると男の子も着いて行った。どうやら男の子はサイのことが好きらしかった。男の子はなぜか前歯が全部なかった。おばあちゃんは眉を全剃りして細く描き青いアイシャドウをしてちょっと怖い顔だった。サイがどこに行っても男の子は着いて来てなぜかサイのことを「おにいちゃん」と呼んだ。そのうちにサイもまあいいかと心を許し始めたようで二人で声を上げて走り回ったり遊具で遊んでいた。サイ達が走ると私とおばあちゃんも着いて行かねばいけないのでその時になってようやくおばあちゃんと会話した。聞くと、男の子は4歳で上に二人高校生と大学生のお兄ちゃんがいるということだった。「てめぇ」とか「うっせー」とか普段サイが言わない言葉遣いをしていたのでなるほどなと思った。親の影響ってこともあるけど。両親は今日も仕事でおばあちゃんが相手をしているらしい。両親はどうしても女の子が欲しくて歳の離れた三番目の子に懸けたが結局男の子だった、でも生まれればいいよねと愛おしそうに言った。男の子はおばあちゃんが度々注意しても反発していた。でも心細さから来る反発に見えた。同年代の子や親と遊ぶ機会が少なくて寂しくて寄って来たのかなと思うとこの子なりに色々あるのだろうなと考えてしまった。なぜ前歯がないかそこは聞けなかった。おばあちゃんは体力的に遊具の上までは追いつけず、だから私がずっと二人の相手して、普段こういうことはないのでなかなかに疲れた。

15時すぎに男の子と別れ(また遊びましょうねとおばあちゃんに言われた)、くたくたで帰宅し昼寝。私はまた体調が悪くなってきた。夕方、サイと借りてきた『それゆけ!アンパンマン 妖精リンリンのひみつ』を観た。ヒロインがヤンキーっぽいなと思ったら声優が土屋アンナだった。先週観たのに比べストーリーが陳腐で面白くなかった。夜になりK帰宅。外に食べに行きたいと言われたが私は食欲がなかったし何より着替えたくなかったのでそれを言うと不服そうにされる。じゃあサイと二人で食べてきていいよと言うと本当に二人で出かけていなくなった。私は急に小腹が空いてきたので柿ピーの小袋を食べた。片付けでもしようかと思ったらタイミングよく大森さんのLINEライブが始まったのでそれを観た。終わったタイミングで二人が帰宅した。入浴後、就寝。


3月18日(日)晴れ
朝から家族で美容院へ。切るのは私とサイだけ。サイが切り終わると二人で先に帰ってもらう。今の美容師さんに切ってもらうのが今日で最後なので一人でゆっくり話したかった。上京して東京のことをまだ何も知らない時にネットで見つけた美容院へドキドキしながら初めて行ったのが約10年前。それからずっと同じ人に切ってもらっている。人生で一番長い。あまりこうしたいと具体的に言わなくても感じ取ってくれるのが楽だし何より切る技術が優れている美容師さんだ。とても残念だが、美容師を辞めて新しい道へ行くと言うのでこればかりは仕方がない。最後ということで過去を色々振り返りつつ、つい本音で話してしまったら「ん?ちょっと分からない」と言われて本音を言い過ぎたかなとも後で後悔した。3月末で辞められるので、もう一回挨拶だけでも来れたら来たいですが来れるか確約できませんとお別れかどうか明確にしないまま店を出た。

それから一人で塩ラーメンを食べて(カウンター両脇のお客さんの方が早く食べ始めたのに私の方が早く食べ終わった)、NextやH&Mなど海外ファストファッションをハシゴし、サイの保育園用の服を大量に買って帰宅。前は無印とユニクロばっかり着せていたが、あまりにも地味で可愛そうになってきたので色鮮やかな海外ブランドも取り入れようという試み(?)。サイズアウトしていたが今まで買いに行く時間がなかった。Kは入れ替わりで仕事へ。じっくり選ぶ時間がなかったので変なデザインの服を買わなかったか後で点検してみた。ちょっと変なのもあった。サイは昼寝していた。私は居間の床に横たわっていたらいつの間にか寝てしまっていた。サイが起きて寝室に行くと、サイは私の髪を見て「あれっ?かみのけかわいいね」と新しい発見をしたみたいに言った。その言い方が可愛いなと思ったので、私も知っているけどわざと「あれっ?サイくんも髪可愛いね!」と驚いた風に言ったらサイもまた同じように真似した。二人でおやつにビスケットを食べた後(サイが用意してくれた)、『パディントン』を観る。私はぬいぐるみをコマ撮りした『パディントン』の信者なのでこのCG実写版はどうにも受け入れられなかった。でも妹が面白いと言うので観てみた。冒頭から心の中で「えぇ野生かよ!」と変な突っ込みをしてしまった。パディントンは可愛いぬいぐるみなのに…。とはいえ原作ではクマとしか書かれていないから実際はどうか分からないが。これはパディントンではないと思って観ると楽しめそうだった。が、サイもコマ撮りのぬいぐるみを見慣れているため、「このパディントンなんかちがうね」と拒否反応を示していた。結局冒頭でもう観たくないと言われ、ロンドンが出てくる前に再生中止した。吹き替えだったので字幕で夜中にまた観ようと思う。イギリスが舞台の映画は好きだ。

夕食を作って煮込んでいる間にサイと丸い缶をボールみたいに転がしたりぬいぐるみを動かしてゲラゲラ笑って遊んだ。疲れたのでテレビ。ちょうどEテレで『レイチェルのキッチンノート』という私の大好きなBBCの番組が吹き替えでやっていたのでサイと観る。レイチェルというロンドン在住の女の子が彼女のアパートメントの可愛いキッチンで料理するだけのドキュメンタリー(?)番組なのだが、レイチェルが材料をざくざく包丁で切るところとか、こちらが冷や冷やするほど目分量で鍋に投入するところとか、あと料理するのになぜか色鮮やかな可愛い服を着て真っ赤な口紅してるところとか、失敗してもえへっと笑って驚くほどポジティブなところとか、ロンドンの街に繰り出して友達と陽気に会話するところ(吹き替えなので英語ではない)とか全部好きだ。ロンドンは廃れた街の再開発がどんどん進んでいるらしく、新しくできた屋上ビアガーデンの様子が映っていて「あぁ―!ビールおいしそー!」と思わず声を上げてたらサイは呆れた顔をした。夕食は野菜カレー目玉焼きつき。サイはあまり食べなかった。夕食後、二人で電子ピアノに入っているフュージョン系の音楽をかけてそれぞれ好きな踊りをした。悲しいことにこれしか電子ピアノを使っていない。お互いに世界一流の前衛ダンサーだと思い込んで踊るのがコツ。入浴後、就寝。布団の上でまた「あれっ?かわいいね」という遊びをした。「あれっ」の時に驚いた表情をどれだけできるかで面白さが変わってくる。いつだって新しい発見をした人のような気持ちでいたい。サイが寝た後、私は悪夢を見ては起きるを繰り返した。変な汗をたくさんかいた。


桜が咲いた。サイは桜や梅が咲いているのを観る度に「さいている」ではなく「あ、はるだ!」と言う。その表現がなんかいいなと思った。ソメイヨシノではない、開花宣言もされない種類の桜が私は好きだ。ソメイヨシノも日曜日に咲いているのを見つけた。いよいよ春か、春なのか。桜の色をしたうーぱーちゃんは春が来るのを待たずに去ってしまった。今は土の中に埋まっている。その上には桜が咲いている。去年と同じ光景。さあ春。