カニ日記

日記のような記録

プラスチックの真珠 もうすぐ夏

しばらく日記をつけるのを辞めていた。なんとなく書く気になれなかった。その間、希望が見えたりまた隠れたり。思うようにいかない。

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5月19日(土)
朝から気の進まないことを長時間やり、精神的にも体力的にもくたくたになる。サイも頑張った。でも希望が見えなかった。どうしてこんなに不公平なのだろうか。普通に生きたいだけなのに。家に帰ると二人とも靴下の裏が真っ黒だった。疲れていたけど家の片づけを頑張って晩御飯を作った。偉いではないか。


5月20日(日)
昼前、サイと図書館へ。途中でスーパーに寄りそれぞれ食べたいものを調達。巻き寿司とメンチカツとビール。あと、サイが海老の天ぷらを食べたいと言うのでそれも買った。図書館の隣の広い公園で食べることにする。家の近くにも公園があるがそこは休日になると大混雑しているので落ち着かない。この広い公園は家からちょっと遠いが緑が生い茂った大きな木がいっぱいで道路から一段下がっているので走り回っても飛び出す心配がない。図書館の駐輪場に自転車を停めていると大きなカラスがいた。他の自転車に乗ってじっとこちらを見ていた。二人でびくびくしていたら守衛のおじさんが「食べ物を置いてると狙われますよ」と言われた。なるほど。サイとベンチで買ったものを食べるもサイは途中で「カラスをやっつけてくる」と言い残してどこかへ走って行った。行った方角を見つめているとすぐに戻って来た。最近レンジャーの影響ですぐ戦いポーズを取りたがるし実際私に攻撃してくることもある。顔面ヒットすることも稀でなく、鼻がへし折られるかと思うほど痛い。「痛い」と言っても罪の意識がないのか謝ってくれない。人を傷付けるのはよくないと教えたいが、なかなか難しい。

その後しばらく外で遊び、図書館へ。サイが紙芝居を読んでくれる。字の読めないサイは紙芝居の台詞の横に描いてある絵(聞く側が見ている絵と同じ)を見て話を創作する。なかなか面白い。それから図書館にある大量のぬいぐるみとままごとセットで遊びだした。晩餐会みたいで面白かった。ままごとしていたらお腹が空いたのか何か食べたいと言ったので図書館のカフェでケーキをテイクアウトし再び公園へ。芝生に並んで座ってサイはショートケーキ、私はチョコレートケーキを食べた。美味しいね、と言い合った。芝生の上でケーキを食べるっていいなと思った。食べ終わったら再び遊ぶ。ブランコをしたり滑り台をしたり草の中に入って探検隊ごっこをした。子ども達を遊ばせて親は離れて優雅におしゃべりみたいなママ友同士の人達がいたが、こちらは二人なので私は必然的に遊び要員となる。遊具で遊ぶし滑り台だって滑る。隙をみて休んでいると「こっちきてよ!すべろうよ!」と怒られる。なかなか疲れる。日光に当たり続けてバテてきたため、もっと遊びたいと言うサイを説得して夕方帰宅。それから昼寝。

サイがテレビの前のローテーブルで夕食を食べたいというのでそこで並んで食べた。夕食後、公園に連れていったメロンパンナのぬいぐるみ(通称:あちゃ)が酷く汚れていたので風呂場で洗う。みるみる綺麗になる。さすが「ウタマロ」。ウタマロはいつだったかアメトーーークの家事大好き芸人で某芸人さんが紹介していて試しに買ってみたら本当によく落ちる。何の汚れでも落ちる。あまりにも色が変わったのでサイは「ちがうあちゃになった」と悲しそうに戸惑っていた。だからドライヤーで乾かす時になるべく元の形から変わらないように気を付けた。自分達も入浴後して就寝。


5月21日(月)晴れ
朝。5時過ぎに起きたがサイは昨日遊び過ぎたのかなかなか起きてくれず、起こすのが出発直前になる。その瞬間全部を諦めてしまって上司に午前休の連絡をする。まだ3歳なのに親の都合で毎日急かされるのが可哀相だとつい思ってしまう。私が休みを取るだけで全てが平穏になるなら別にそれでいいかと思ってしまう。時間に余裕がないと私もイライラしてしまいサイもそれを感じ取る。そんなことで争いたくない。

せっかく休みを取ったのでサイを保育園に送ってから映画館に行き、人に勧めてもらってずっと気になっていた『君の名前で僕を呼んで』を観る。CMなしだとは知らず、最初の5分くらいを観逃す。ほとんどレビューやあらすじを読まずに観たがかえってそれがよかった。この美しさに匹敵する恋愛映画は『小さな恋のメロディ』くらいしか思い浮かばない。イタリア避暑地の眩しい緑、絵に描いたような庭での朝食、そこで食べ飲みながら談笑する人々、乾いた風を切りながら走る自転車、短パンから伸びる美しい脚、そこにある全てがただただ美しかった。もはやユートピアにすら感じ、観るというよりスクリーンの世界にどっぷりと浸るような心地よさがあった。だからこそ胸に迫るラストの静寂と冷ややかさ。ラストシーンがこんなに美しい映画は今まで観たことがない気がする。同性愛の話だが、それをテーマとして取り立てるのはどうかと思うほど、ただ人と人が愛し合うことについて宗教画のように描かれていた。あまりにも美しく切り取られ過ぎて感情移入しにくかったが、そもそも共感を得るために映画を観るわけではない。美しい風景や自然に出会った時と同じような気持ちになった。良い悪いでなく、ただ目の前の光景に圧倒されるような。しかし同じ人間なのに映画の世界と私のいる世界はなぜこれほどまで違うのだろうか、時代と国でそんなに変わるものだろうか、と喧噪の中を歩きながらある種の寂しさも感じた。出社前にルミネに寄り気に入ったイヤリングを3つ買った。クマと魚と定規の形。クマは耳より大きくてつけるとずっしりしたが可愛かった。そろそろピアスが開けたいな。

午後から出社。夕方、お迎え。サイは一日熱があったとのこと。そうとは知らず…。額が少し熱かったが園庭で元気に走り回っていた。サイの希望でまたローテーブルで食べた。いつもよりは食べず、二人で食後にアイスを食べた。美味しいねって昨日と同じように言い合った。それから二人で日曜日のプリキュアを観てから寝た。ほまれちゃんみたいな髪型にしたいな。サイはリアルタイムでも観ていたので「キュアエトワールが…」とネタバレしつつ得意気に解説してくれた。「メロディソード」という人を傷つけない音楽を奏でる武器をサイは欲しがっていたが私の方が欲しくなった。なんなら鞄に忍ばせて出勤したい。嫌な奴が現れたらこっそりメロディソードを向ける。プリキュアの主題歌も良い。CD欲しい。最近プリキュアが分かってきた。サイと一緒にいると自分一人では知ることさえなかったであろう新しい世界に触れられる。子どもがいてよかったと一番思うこと。サイは私の宇宙柄の靴下を見て「サイくんもおかあちゃんみたいなうちゅうのくつしたがほしい」と言っていた。キュウレンジャーがきっかけで最近宇宙に興味がある。サイはプリキュアと共にキュウレンジャー(ルパンレンジャーも)が好きだが、キュウレンジャーはもう放送終了しているので観たことがない。保育園でKくんから聞いたようなことを言っていた。


5月22日(火)晴れ
早起きして布団の中で考え事をしたり宇宙柄の子供用靴下を探していた。サイは横で寝ている。そろそろ起こそうかと思ったらパチッと目が開いて「さぁ、おきるよ!」と言われる。早く寝かせてよかった。すっかり元気そうだった。ユニクロで気に入って買った赤いワンピースを着て「これ可愛い?お仕事に着て行っていいと思う?」と思ったまま聞いたら「うん、かわいい。いいとおもうよ。でもおかあちゃんのおともだちにおはながへんだねっていわれるかもしれないよ」と具体的(?)な意見をくれる。確かに小さな花柄だった。本当によく見ている。というか職場で友達と過ごしていると思われているのだろうか。でも保育園しか外の世界を知らないサイの「同じ空間にいる人=園児=お友達(先生がそう呼ぶ)」という思考は納得できる。そういう細かな発言一つ一つが面白くて笑える。サイのおかげで私は笑っていられる。

退社後、お迎え。サイは昨日も一緒にじゃれていたHくんとまた園庭で走り回る。やっとのことで駐輪場に連れて行っても二人ともなかなか自転車に乗らない。追いかけ合ったりつつき合ったり。昨日とほとんど同じ光景。Hくんのお父さんはHくんには話しかけるが私とサイにはあまり話しかけてこない。聞こえる声で「ほら、H!サイくんが帰れないだろう」などと言う。でも私が二人に「ほら行こうよ」と促したりしているとさすがに「すみません」と一瞬私に話しかけてくれた。私も他の子の親にはほとんど話しかけないのでぎこちない空気が流れた。でもサイとHくんは動物園の猿のようにはしゃいでいて。私達と子ども達の間に温度差があり不思議な時間だった。Hくんのお母さんを一度も見たことがない。サイに「Hくんのお母さん見たことある?」と聞いてみたがよく分からなかった。なぜ知りたいのか自分でも分からないが、この保育園の親は両親共に仲良しです平和です家族ですみたいなオーラを醸し出す人ばかりで善良たる家庭の雰囲気に辟易していたからかもしれない。いやそれが一番いいのだろうが私には遠すぎる世界。

ごはんがなかったのでパスタにカレーをかけて食べた。サイは茄子(ほとんど溶けて小さくなっているのに)を嫌がって私に渡してくる。茄子ぐらい食べなくても別に大丈夫だと私は思っているので「嫌なら食べなくていいよ」「おかあちゃんも子どもの時茄子嫌いだったし」と言うとサイはへぇという顔をした。自分の親が食事のマナーに行き過ぎたほど厳しく食事自体が苦痛だった経験から、サイにはそう感じさせたくない。食後に二人でアイス。サイは得意気に冷凍庫からアイスを二つ持って来てくれた。「あまくておいしいね~」と幸せそうにしていた。ふと「サイくんは大きくなたら何になりたいの?」と聞いてみたら少し考えた後、「おかあちゃんみたいにおしごとしたい」と言い、私はサイに隠れてこっそり泣いた。働いていてよかったなと初めて感じた。お尻を振って踊っていたら「なにやってんの?おもしろいじゃん」と高評価(?)をいただく。アンパンマンの曲をかけて今度は二人で歌いながら踊った。私は家に居る時は大体ビールを飲んでいるか踊っている。とサイに思われていると自覚している。サイが保育園で描いた絵を褒めたらアンパンマン号を描いて見せてくれ、それと分かるように描かれていたのでいつの間にこんなに描けるようになったのだろうと感心した。

入浴後、就寝。サイが寝たら部屋の片づけと洗濯をしようと思っていたのに一緒朝まで寝てしまう。


5月23日(水)曇り時々雨
5時代に起床。でもサイはなかなか起きない。パンを食べてくれないのでコーンフレークにしたら喜んでくれた。バタバタ出発。通勤電車でプリキュアのテーマ曲を購入。蒸し風呂状態の満員電車で聴くプリキュアよ。二日酔いの人がいたのか車内は酒臭かった。

午前中、仕事で板挟み。今まで自分でやってきたことを他部署に依頼することになったが細かい理不尽な要望が多くしかも一度に言ってくれないため一人でやっていた時より何倍も手間がかかる。うんざり。昼休み、隠れ家にしている工事中の誰もいないフロアでお気に入りの動画で現実逃避する。そのフロアに入ろうとしたら知っている人が入れ替わりで出てきて「あっ」という顔をした後「やっぱここに来るよね…」と言われる。引っ越ししてからフロアあたりの人口密度が高くなり息苦しい。工事中のフロアは雑然としているが人がいないので落ち着く。午後からまた色々とうんざりし、一仕事終えて外階段の冷えた白壁にヤモリのようにへばりついて心を静めていたら上層部の一人に出くわし気まずい空気が流れる。

お迎え。会社から出た時点で雨が降り始め、保育園を出る頃には本格的に降っていた。私は出かける前に天気予報を見るという普通の人がやっていることが昔からどうしてもできない。それで何度も雨に降られている。被るものもないのでそのまま自転車を漕ぐ。顔が濡れて目に雨が入って痛い。髪から滴り落ちる水滴。不快だったがこれはシャワーだと思おうと決めると急に気持ち良く感じてきた。学校のプールの時間の最後に浴びるような冷たいシャワー。信号待ちの時にサイは大丈夫かなとぱっと無言で後ろを振り向いた瞬間、サイは「大丈夫」と言う代わりに、にーっと歯を剥き出して目を細めて笑ってくれた。か、かわいい!幸い、私が壁になり後ろのサイはほとんど濡れていなかった。よかった。

帰宅してタオルで拭く。私が濡れている様子を見て笑ってくれた。なんでも笑いたいよね。夕食前にサイはコーンフレークを2杯食べた。アスパラをほんの少しでいいから食べてくれと懇願してみたが、叶わず。全力拒否。好きなものだけ食べてご馳走様。サイは冷凍庫を漁っていたがアイスがないと知ると551がない時(関西限定ネタ)のように悲しむ。「アイスがないよなんで?」「サイくんとおかあちゃんが全部食べたからだよ」「えー」「また買いに行こうよ」「うん、どこにうってるかな」「コンビニにあるよ、どんなのにしようかねぇ」入浴後、就寝。


5月24日(木)曇り
今日は記念すべき日だ。なぜかというとサイがコーンフレークの残った牛乳の美味しさを発見した日だから。私が美味しそうに飲んでいるのを見て、食べ終わった後の牛乳がどうやら普通の牛乳と違って旨いらしいと初めて気づいたらしい。昨日までは気付いていなかったようで。真似して飲んでみて「なんかちがう」と嬉しそうな顔をした。それで残った牛乳飲みたさに何度もコーンフレークおかわりして好物のバナナを食べなかったほどだった。私はコーンフレークが牛乳に浸る前、まだパリパリの時に食べてしまうのが好きなのだが、どうしても救出しきれなかったコーンフレークが皿の底に沈んでいるのをいつも最後に発見する。そのへらへら達を子どもの時は妙に愛おしく感じていた。もう家族が食べ終わった食卓で一人になり、ぬるくて甘い湖の底から引き揚げられた瀕死のコーンフレークをそっとスプーンで掬って持ち上げて観察していた。バタバタと出発。

昼。また工事中のフロアで逃避。がらーんとしたフロアに自分以外誰もいないのが最高だ。別の階にはぎゅうぎゅうに人が詰まっていると思うとその落差に一人嬉しくなる。東京は土地に対して人が多すぎる。だからみんな殺伐としてしまうのでは、と先日北海道旅行に行った時に感じた。

初夏の夕方が好きだ。どうしようもなく。夕飯どうしようと思い冷蔵庫を開けると豚肉玉ねぎきのこがあったので、ビールを飲みつつ大森さんの公式ラインから作り方が送られてきた「大森靖子豚丼」を作ってみる。最近夕飯を作りながらビールを飲むのが日常化してしまっている。顔が丸くなった気がするので、糖質怖いと思いつつ帰宅したら暑すぎて辞められない。レシピに書いてある「かちこむ」っていいなと思った。えいやって勢いよく投入する感じ、それであっているのだろうか。変に丁寧な表現で書かれている料理本より分かり易くて楽しい。簡単で美味かった。サイは肉が嫌なのかあまり食べてくれなかった。作り過ぎたので残りはお弁当用に取って冷蔵庫へ。サイとお風呂に入って寝る。また朝までぐっすり。


5月25日(金)曇り
起床時間よりかなり早く目が覚めた時、何にか分からないが勝ったような気持ちで二度寝する。二度寝前にサイも起きて「おちゃのみたい」と言われたので飲ませて「まだ時間あるから寝ようよ~」と言うとすんなり寝てくれ、それから二人でまた寝る。やや寝坊。超特急で準備して出発。サイはぐずりつつもコーンフレークとあんぱんとバナナと牛乳を平らげた。バタバタ出発。

夜。ロイヤルホストでずっと食べたかったさくらんぼのブリュレを食べた。こんなこと言ってはいけないかもしれないが、アサコイワヤナギのパフェに匹敵する美味しさだった。ロイヤルホストの空間が好きだ。知らない人が鉄板の上でじゅうじゅうに焼けた肉など口に運んでいる様子が目の端に見えて、でも私的領域は侵されない絶妙な距離感が心地良い。


5月26日(土)晴れ
朝ごはん、洗濯。昼前、サイを後ろに乗せ自転車を走らせて好きな場所に紫陽花を見に行く。いつもは人がいないのに、良いカメラを持った人が何人かいた。くすんだ青やピンク、曇り空が似合う紫陽花の色が好きだ。何と言う品種だろうか、まとまりではなく小さい花がぽつぽつと線香花火のように咲いている紫陽花とか本当に可愛い。自転車を停め、サイに紫陽花の前に立つように言いカメラを構えるとやや恥ずかしそうにしながらもうさちゃんピースしてくれた。カメラを持ち出すのが面倒でいつもスマホばかりだが、ちゃんと撮るとなかなか良い写真が撮れた。写真を撮るのが好きだ。昔はフィルムでも撮っていた。でも中途半端に辞めてしまったので「写真が好きです」と声を大にしては言えない。「綺麗だね、可愛いね」「白い紫陽花もあるんだね~」「すごいねぇ」とサイと言い合った。花はいい。いつだって。

それからサイとの約束通りTSUTAYAでルパンレンジャーのガチャガチャをした後、モスバーガーでお昼を食べた。私は海老天のライスバーガーにした。美味しかった。サイはナゲットセットにしたがサイの好きなマクドナルドの味と違うからか一つか二つしか食べなかった。それから公園に行きサイにねだられてアイスを食べ、ぶらんこをしたりじゃぶじゃぶ池で遊んだり。地面に蟻がたくさんいて蟻の巣があるようだったので、「ここにお家があるから蟻さんがいっぱいいるんだよ」とサイに教えるとしゃがんで興味深そうに観察していた。「ありさんなにしてるの?」「ご飯をお家に運んでるんだよ」「なんで?」「中にお友達がいるから届けるの」「へぇ」「お仕事してるんだよ偉いよねぇ」「うん」「サイくんもありさんのおうちはいりたい…」「えっ中に入りたいの?」「うん」「サイくん大きいからちょっと難しいかな…」「えぇーあかちゃんだったらはいれたかな」「うーん」という会話をした。大人になるとどうしても叶わないことが否応にも増えてくる。サイはまだたった3年と少ししか生きていない。まだまだ知らない世界がある。だから小さいうちは希望や夢はできる限り叶えてあげたいなと私はいつも考えている。でも蟻の巣には入れない。巨大な蟻の巣の模型を作るしかないか、うーん。

夜。サイが自ら納豆や巻きすを用意したので納豆巻を作った。ついでに飾り巻寿司(金太郎飴みたいなやつ)もやってみようかなと軽い気持ちで作り始めたら大失敗してというか途中で海苔が足りなくなりぐちゃぐちゃの残骸が残る。急に襲い掛かる疲労感。こんなことしなければよかった。結局パーツの残骸や納豆巻という謎の晩御飯。飾り巻寿司は軽い気持ちでは作れない、練習が要りそうだし手先が器用でない私には向いていないかもしれない、今日の学び。お花とか動物とか作れたら可愛いだろうなぁ。やけに身体が怠いと思ったら発熱していて夕食後動けなくなりサイと一緒に朝まで眠る。


5月27日(日)
朝。サイが楽しみにしているプリキュアとルパンレンジャーの日。そういえば最近アンパンマンは観なくなった。「アンパンマン観ようよ」と言っても断られる。少し寂しい。今日のプリキュア『哀しみのノイズ…さよならルールー…』はとてもよかった。プリキュアを毎回観ている分けではないが、前回から録画してちゃんと観るようにした。サイが好きなものには向き合おうと思っている。悪の組織(クライアス社)からスパイとして送り込まれていたルール―という少女の姿をしたアンドロイドがプリキュアを手助けするため敵を裏切ったことで回収されたのが前回まで。回収されたルールーはクライアス社の親玉の怒りを買い、記憶を書き換えられ戦闘用ロボットになった。スパイとはいえプリキュア達と仲良くしていて情が湧いていたその感情や記憶も消された。攻撃的なルール―に戸惑うプリキュアの三人。でもやっぱり心の奥底から完全に記憶は消えていなくて…。みたいな話。プリキュアの三人で推せる子がいないなぁと思っていたが私はルール―が一番好きだ。紫の猫耳ヘアーに流し目というビジュアルも可愛い。戦いながら三人を騙していたことを悲しそうに告白するルールーに対しキュアエールが毅然として「騙されたと思ってないよ」と返すシーンが良かった。あと最後は二人が武器を使わず殴り合いで戦っていたのも身体のぶつかり合いという感じでよかった。ルールーはアンドロイドなのに一番人間的に葛藤するキャラクターとして描かれているのがいい。善と悪の間で揺れる彼女を見ていると泣きそうになった。

昼食を食べてサイと昼寝。開け放った窓から海底のような竜宮城のような謎の音がぽわわーんと小さく聴こえてきて心地良かった。風でカーテンが揺れていて。夕方、サイとスーパーに自転車を走らせる。信号待ちの数秒の瞬間、信号の側の広場にあるスピーカーから『さっちゃんのセクシーカレー』が聴こえてきた。広場で有線がかかっていること自体ほとんど意識したことがなかった。サイといた時に好きな人の音楽が街で流れていて。夕暮れの風が吹いていて。それから信号が青になり自転車を走らせて。言葉にすると上手く伝えられないがあらゆるタイミングがふわっと抱き合った瞬間だった。その重なり合いが嬉しくて少し泣いた。サイとスーパーでアイスを買おうと約束していたのに忘れてしまいコンビニに寄り箱アイスを買って帰宅。

コーンフレークの残った牛乳の甘さを発見したり、美しい映画に心奪われたり、紫陽花を観察したり、好きな音楽に街で出会ったり、それは人生の終わりまでにいつか輪郭が溶けて消えてしまう小さな出来事かもしれない。でも鮮やかな幸せが散りばめられた週だった。小学1年生の時、それが初恋かどうかさえ分からないが特別な想いを抱いていた6年生の男の子に修学旅行のお土産として偽物の真珠をもらい、勉強机の誰にも見つからない場所に入れて時々取り出しては眺めていた。大人になって上京した後、知らぬ間に机ごと捨てられたと知りひどく落ち込んだ。当たり前だが大切なものは大切にしなくてはいけない。失われたプラスチックの真珠みたいに愛おしい瞬間を見逃してしまわないよう、私は私の眼で世界を見ることをこれからも辞めないぞと誓った。もうすぐ夏がくる。