カニ日記

息子の成長と日々の記録

暗闇で光るプラスチックのティラノサウルスみたいに今日と明日とそのまた先を

楽しそうに見えるが嫌な部分を排除して書いているのでけっしてそういう分けではない。でもサイと交わした会話や嬉しいと思った瞬間はこんな時だからこそ記録しておきたい。

 

7月23日(月)
今後の人生を左右する重大なことが決まった。地獄の修行のように人生最大の苦難が訪れている。でもやるしかない。苦しくて深夜に好きな人にメールした。プライベートなことは言わないと決めていたのについ送ってしまった。夜中なのに数分後「お疲れ様」とすぐ返ってきてやっぱりすごい人だなと思った。みんなが好きな可愛くてかっこよくて美しい人。だけど私が好きな人。私は友達と呼べる人や信頼できる人がほとんどいない。子どもの頃から一人で行動することに慣れてきたので他者と一緒に何かするという概念がそもそもあまりない。だから集団行動ができない。大勢の飲み会が未だに苦手。SNSで誰かが誰かと遊びに行ったというような投稿をみると別に何とも思わないが、なるほどそういうことがあるのかと別世界の出来事ように感じる。でも全くいない分けでない。数少ない大切な人はいる。本当に少ないから一生付き合っていくのだろうなと思う。今まで話を聞いてくれた人、心配してくれた人、遠くから見守ってくれている人、心からありがとう。


7月24日(火)
サイは最近片方ずつ違う種類の靴下を履いて登園するのにはまっている。彼なりのおしゃれなのかもしれない。だから今日はどれにしますか、と聞く。最近のお気に入りはピューロランドで買ったピンクのマイメロ靴下。マイメロを履いて行ったら好きな女の子に褒められたらしい。

夕方駅から保育園に向かう途中、私のことが大好きなKくんとすれ違ったので「Kくん~♡」と呼びかけたらめちゃくちゃ嬉しそうにしてくれた。か、かわいい。Kくんは自転車風のバイクに乗っていた。横にはおじいちゃん。アイコンタクトして再び漕ぎ出すと背後から「サイくんママ~~♡」と聞こえたので止まって振り返るとKくんが止まってこちらを振り返っていた。本当にかわいいなもう。Kくんが成人したら絶対Kくんとサイと三人で飲むって私は決めている(勝手に)。その頃行きつけになっているであろう街の小さな飲み屋に行って「二人とも好きなの頼みな」とか威勢よく言って好きな女の子の話とか聞きたい。「それはちょっと距離置いた方がいいんじゃない」とか日本酒と焼き鳥を挟んでアドバイスしたい。お節介婆。若い子の恋愛の話を聞くのがとにかく好きだ。相談してくれるような若い人は実際周りにいないが。


7月25日(水)
朝家を出る時、サイに「きょうぜったいおむかえきてね」と言われたので「うん絶対行くよ」と約束した。絶対なんかないけれど言いたい時はある。夕方お迎えに行ったら実際そんなに嬉しそうではなかったが最近サイは照れ隠しをする。二人で保育園の入り口においてある虫かごに入った蝶のさなぎを観察した。昨日青虫だったのがさなぎになっていて、でもまださなぎになったばかりで半分くらい身体が青虫の緑色でもう半分くらい白い殻になっていた。その混ざり合っている感じがグロテスクで異様で、生き物ってすごいなと単純に思った。サイは給食サンプルを指さしてその日何を食べたかいつも教えてくれる。おやつに枝豆を食べたらしい。「枝豆嫌いでしょ食べられた?」と聞くと「うん」と自信満々だった。園庭をぐるぐる走り回ってから帰宅。子どもは本当に意味なく走る。

「汝、我が民に非ズ」のファーストアルバム『つらい思いを抱きしめて』が届いた。9月の発売に先駆けてライブ会場でのみ先行販売とのことだったが、調べたらネットでも販売していた。ライブに行けないので嬉しい。こういうのをサーチする能力だけは私はずば抜けている。サイは自分のルパンレンジャーパンツが届いたと思って勢いよく段ボールを開封したがパンツでないと分かるとがっかりしてCDを投げ捨てる。食後にアイスを食べた。サイは私が早く食べ過ぎるといけないと、いつも途中で私の食べかけのアイスを「もっといてあげるよ」と奪ってそれを持ちつつ自分のアイスを食べる。謎のお節介。


7月26日(木)
通園途中にサイが鼻血を出す。子どもの血って綺麗だなと鼻を拭きながら思った。

サイとサイゼリヤで食べて帰る。行く途中自転車で坂道をくだったら気持ち良かった。二人で「さんぽみち」を歌う。サイは「蜘蛛の巣くぐって」のところがいつも「果物くぐって」になる。サイはお子様ランチ、私はイカのマリネ、お子様ポテト、旨辛チキン、ワイン。いつも同じものばかり食べている。帰りにスーパーに寄るとルパトのプラモデルの最新シリーズ、エックスが出ていたので、そのうちの一つ「エックストレインシルバー」を買う。生鮮コーナーにあるテレビでレシピ動画が流れていて、サイはそれを見つけると「みて!すごーい!」と私の腕を引っ張る。サイは料理に興味津々である。時々手伝わせているうちに生卵だって上手に割れるようになった。「サイくんはお料理好き?」と聞いたら「うん!」と興奮気味に答え、美味しそうだねと言い合いながら画面の中で我が家で作ることのない分厚いステーキが出来ていく様子を二人で見守った。それから果物コーナーでいつものようにゼスプリのキウイくんに話しかける。キウイくんはキウイの身体をした兄弟のぬいぐるみで私達のお気に入り。行く度に話しかけて癒されている。今日はハイタッチした(動かしているのは私だが)。サイは喜んで売り物のキウイを「はいどうぞ」と甲斐甲斐しくキウイくんに食べさせていた。共食い…。キウイくんのぬいぐるみが欲しすぎて、ネットで調べたらどこかから流れたものが入手可能だと分かった。兄弟で四千円で販売されていて、高いか安いか分からないままこれ以上ぬいぐるみを増やしていいものかと保留にしている。帰り道空を見上げると満月が綺麗だった。「月がきれいだよ、見える?」と聞くと「うん、あかるくて、つきがサイくんのおうちまできたらあさになっちゃうね」とサイは言った。急に秋のように涼しくなった。エアコンを久しぶりにつけなかった。

ルパンエックスのプラモデルを組み立てる。小さくて難しかったが完成したらかっこよかった。サイも喜んでいた。残りも順に買ってロボットを完成させたい。いつだったか遠い過去、ディアゴスティーニの暗闇で光るティラノザウルスを毎週組み立てて完成させるのが楽しみだった。CMで見て安かったという理由で恐竜がそんなに好きでもないのに創刊号を買ってティラノザウルスの顔ができたら思いのほか嬉しかった。身体も見たい完成させたいと思って親に嫌がられながら毎週買ってもらった。ティラノザウルスの最後のパーツの号に次のトリケラトプスの断片がついてきたがそれ以降続くと困るからもう辞めろと言われた。確かにこういうのは終わりがない。不明瞭なものが手を加えることでだんだん確かになっていく過程が私はけっこう好きらしい。ジグソーパズルや塗り絵も好きだ。数学も好き。サイの組み立て好きは私の遺伝かもしれない。

いつもの寝室とは別の部屋に二人で一枚の布団を敷いて寝た。「ほいくえんみたい~」とサイは喜んでいた。


7月27日(金)
やるべきことを少しずつこなしているつもりだが思うように進まない。もう金曜日だ。朝から涼しくて気持ちが良い。クーラーをかけて寝なかったら急に体調が良くなった。暑すぎると仕方ないが私の身体はクーラーとの相性が悪いらしい。サイもまったく起きて来なかった。出発直前にサイがざーっと漏らしてしまい、下着もズボンを取り替えたり床を拭いたり時間がなくなって焦った。普段ならイライラすることはないが、急いでいたのでサイにイラついた態度を見せてしまい、申し訳なかったなと思って後でごめんねと言った。言い訳かもしれないが子どもがいると時間通りに動くことが本当に難しい。会社はその辺を考慮してくれるようになればいいのになと甘いことを考えてしまう。なんとか遅刻せずに出社。


7月28日(土)
朝からサイと美容院に行った。電車に乗って表参道まで。数か月前から私が担当してもらっている人にサイは初めて切ってもらう。前の美容師さんが美容師を辞めるということで姉妹店の今の美容師さんに変わった。何もない限り同じ美容師さんに切り続けてもらいたいタイプなので、地元にいた時はずっと同じ人(女性)に切ってもらっていたし、上京してから9年ほどその辞めた人(男性)に切ってもらっていた。今の美容師さんになる時、合わなかったらどうしようとドキドキしていたが、とてもいい人だったので安心した。まず見た目が私が好きな感じで服装もお洒落(白いTシャツに無地のパンツ、みたいなさらっとした格好)で、話していて始終穏やかで苦にならない。冷静で礼儀正しく、淡々としていて場を盛り上げるような感じではないがそこがいい。髪を切ってもらう時に「最近どう?」とか馴れ馴れしく聞かれると嫌悪感を感じてしまうので。またカット技術が優れていて私が「スケボーに乗ってる中学生みたいな感じにしてください」と無理のあるオーダーをしても馬鹿にして笑ったりしないで、それはどういうイメージなのか真剣に聞いてなりたい感じの髪型にしてくれるので信頼できるなと感じている。前髪が特に良い感じ。こちらが話す内容を理解して共感してくれるのも嬉しい。サイも気に入ったようで最初は緊張していたが途中から自ら話しかけて美容師さんを驚かせていた。美容院を出て「またあのおにいちゃんにきってもらいたいな」と言っていた。サイがそういうことを言うのは珍しい。近くにある私が好きなパン屋のテラス席でサイと向かい合って食べた。気温がいつもより低く、「ピクニックみたいだね」とサイは喜んでいた。私はハートランドを飲んだ。それからフライングタイガーで新しい家に敷くマットを買った。そう、来週サイと新しい家に引っ越しする。かわいい家にしようねと言ったら「かっこいいいえにしたい!」と言われたので「かっこよくてかわいい家」にテーマが決まった。サイはタイガーで買ったピンクの300円のサングラスをかけてパリピみたいにテンション上げ上げで帰ったが疲れたのか電車で熟睡した。帰りに雑貨屋でマイヤーのフライパンが半額で4千円だったので、高いか安いか分からないが深さもあり良いと思って買った。フライパン一つあれば当分なんとかなるだろう。家に帰ってマットを広げたら想像以上に派手だった。サイはマットの上に載ってけらけら笑っていた。


7月29日(日)
朝から荷造りと断捨離しまくる。捨てる時は案外迷いがないタイプなのでじゃんじゃん投げ捨てる。ゴミ袋の塊が次々と出来て、私はこんなにもたくさんのゴミと暮らしていたのかと恐ろしくなる。本も全部は持っていけないから持って行く本、売る本、捨てる本に分ける。それでも段ボール5箱以上になる。サイと夕方スーパーに行ってまたルパンエックスのプラモデルを買う。キウイくんにも挨拶した。

 

やるべきことが簡単ではなく苦しいけど苦しいと言ってる場合ではない。ひとつずつやるしかない。そんな日々。