カニ日記

息子の成長と日々の記録

オットセイは今日も暗闇のなか階段を下っているだろうか

1月13日(日)晴れ
サイと友達と三人ですみだ水族館に行った。設備は新しくて洗練されていたが思ったより小さい水族館だった。屋外の場所がなく、すべての生き物が屋内にいた。ペンギンも水族館の中心部にある陽の当らない大きな水槽にたくさん泳いでいた。太陽のもとで気持ちよさそうだった葛西臨海水族園のペンギンたちをつい思い出し、一年中LEDに照らされたこの子達は日光浴したいだろうか、とついペンギンの気持ちになってしまった。陽の光がない暗いところに長時間いると閉じ込められて二度とここから出られないような窒息感を覚え具合が悪くなる。

ぼんやり館内をまわっていたらさっき自分が下りたばかりの階段からいきなり飼育員に付き添われたオットセイがびちゃびちゃと降りて来た。暗くてよく見えなかったが下まで降りると暗闇で立ち止まりこちらをじっと見つめ、また水を滴らせながら階段を上って帰って行った。オットセイは特にスポットライトを浴びるわけでもなく飼育員による説明もさほどなかったので、いきなりオットセイが水槽を抜け出して私たち人間がいる側に現れて頭が混乱した。見ている側と見られている側の境界が曖昧に混ざり合い、これは自分だけが見ている夢なのではと思ったが周りにいた人も同じような反応をしていたしサイが怯えていたのでそうでもなさそうだった。あれが何だったのかいまだに分からない。

サイは次第に空腹で機嫌が悪くなったので昼過ぎに水族館を出てソラマチのフードコートお昼ごはんを食べた。サイのラーメンを買うのに並びながらビール飲みたいなぁと考えていたら別の店で友達が何も言わず買ってくれていて、なんとまあ気が利く。私は普段食べられない海鮮丼を食べた。美味しかった。昼食後サイがトミカプラレールショップ(隣接やめてくれ…)をはしごして長居してなかなか離れてくれなかったためだんだん気分が悪くなった。ようやく外に出ると空は晴れていて気持ちよかった。水族館のペンギンの気持ち。スカイツリー近くの公園で日が暮れる前までのんびりした後、浅草に移動しもんじゃを食べて帰った。隣の席の真面目そうな若い男の子二人組がどうやったら好きな子にモテるか、一人がもう一人にアドバイスして真剣に考えていたが2時間飲み放題の時間がきてしまい追い出されるように店を出た。その後来た若いカップルは作り方が分からないからと言って店員さんに作ってもらっていたのが微笑ましかった。「インスタで見て」とカマンベールチーズがまるごと入ったもんじゃを発注していた。もんじゃ屋さんに行く前に仲見世を通ったら提灯の明かりがきれいだった。夜の仲見世はぞくぞくする。通りがかった店で何となく買った甘酒があったかくて美味しかった。楽しい一日だった。


1月14日(月)晴れ
昨日のルパパト・ジオウを観つつ、朝から大量の洗濯を二回。昼過ぎ、昨日会った友達とまた一緒に屋上。ブリトーとビール。サイはおにぎりと蒟蒻ゼリー。我々は常日頃からチーム偏食。チームの活動主旨は食べたいものを食べたい時に食べる。それからデパートでライドウォッチ。ガイムが欲しかったが既に持っているダブルが当たり落ち込むサイ。でも二回はやらなかった。おかいものくまちゃんがいて一緒に写真を撮ったらどんぐりをくれた。友達と別れ、デパ地下のスーパーで魚でも買って帰ろうかと思ったら高すぎて辞める。ぶり一切れ1500円とか、誰が買うんや。近所の魚屋さんの方がずっと新鮮で安い。魚が買えなかったし魚屋に行く自転車もなかったので、近所のスーパーでカレーの材料を買う。

退屈そうなサイに「一緒にカレー作ってみる?」と聞くと目を輝かせてサイが乗る椅子を台所に持って来た。肉や野菜を炒めるのをやってもらう。肉の色が変わったり、野菜が柔らかくなるのが不思議だったようで「いろがかわった!」と驚いていた。ぐつぐつ煮ていたらバーモンドの箱を持ちいつルーを入れるのかと何度も聞かれていても立ってもいられない感じだった。サイがルーを入れて完成。ごはんが炊き上がったので一緒に混ぜた。私がトイレに行っている間にサイは自分でお皿を出して私の分のごはんとカレーをよそってテーブルに置いてくれていた。それから自分の分も入れようとしていた。カレーが入りそうなお皿をちゃんと選んだところとか、一生懸命盛ってくれたごはんの量が少ないところとかちょっとルーが飛び散っているところとか全部かわいくて涙がこみあげてきた。私が喜んでいるとサイも嬉しそうだった。二人でおいしいねって言い合いながら食べた。サイはおかわりしていた。やってあげるやってもらうじゃなくて、こうやって何でも一緒にすればいいのだなと思った。


1月15日(火)晴れ
昨日の残りのカレー。サイはカレーが熱いからと言って水を投入し薄まったカレーは恐ろしくまずそうだったがにこにこと残さず食べていた。「いる?」と聞かれたが断った。食後洗濯物を畳んだり昨日できなかったことをする。毎日少しずつやるしかない。


1月16日(水)晴れ時々曇り
昨日から休んでいる向かいの席の人がインフルエンザだったらしく菌が席順にまわっているので次は自分かと怯えている。お迎えに行くとサイは今日もブロックで作った作品を私に見せるために置いていてくれた。薬局で買い物して重い荷物を持っていたら階段で「(自分が遅いから)さきにいっていいよ」と言われる。いつからこんな風に気が利くようになったんだろか。三日目のカレー。目玉焼きの白いところ食べたいと言うので二つ焼いた目玉焼きの白身をサイの皿に、黄身を自分の皿に盛る。私が半熟の黄身をカレーの上で潰しているのを見て、「そういうのだったらすきだよ」と言うので黄身も一つあげる。「たまごのとろとろがカレーとまざるとおいしいね」とまた大人みたいなことを言う。そうやってどんどん成長する。

震災やその他のことを考えると不安が押し寄せて眠れなくなり、用もないのに友達に電話した。優しかった。そういえば昔付き合っていた人に「用もないのに電話しないでほしい」と言われて悲しかった。電話したいとき、大抵用なんてない。


1月17日(木)
震災から24年。サイはニュースで震災の映像を見ると悲しそうに「あーぐちゃぐちゃだ…」「なんでおうちこわれちゃってるの」と聞く。災害が人の命を奪うことを今はまだ理解できない。でも包み隠さず話すようにしている。24年も経ったなんて信じられない。あの時の小学生だった気持ちのまま何も変わってないことがたくさんある。

カレーもなくなったし作るのが面倒で安い中華屋さんで食べて帰った。そこしか空いてなかったので広い8人がけぐらいのテーブルにサイと向かい合って座ってサイはお子様ラーメンセット、私はビールと枝豆。あとサイが食べたいと言ったので唐揚げを頼んで2個ずつ食べた。向かい合っていると大人同士みたいだった。頼んだものが運ばれてくる間、以前だったら愚図ったりしていたが今では大人しく静かに待っている。そういう時私たちは今日あったことを話したり、仮面ライダーの話をしたり、ただにやにや見つめ合ったりしている。当たり前だがサイが生まれた時から一緒なので細かいことを確認し合わなくてもお互い何を考えているかだいだいわかる。サイが考えていることはもちろん、サイも私の感情をとっさに読み取る。私が疲れているから今日は良い子にしてようと感じさせている時があるなと思う時がある。「サイくんまめきらいなんだよ」と私が枝豆を食べる姿を見る度に言う。「そうだよね」と答える。ラーメンセットについてきゼリーをお姉ちゃんにあげるから持って帰ると言う。サイは最近架空の姉の話をする。お姉ちゃんは小学生らしい。寂しさから生まれたのだろうか。少し胸が痛む。帰ってサイはみかん。サイはみかんが大好き。


1月18日(金)
やっと金曜日。ドラえもんとしんちゃんだけを楽しみに一日過ごした。いつも晩御飯の時にテレビはつけないが、金曜日はピザ(スーパーで売ってる焼くだけのやつ)と冷凍パスタを食べながらテレビを観ることが習慣になっている。フライパンを使わなくていいし洗う食器も少なくて済む。お酒を飲みながらドラえもんやしんちゃんを観るのが至福。今日のドラえもんジャイアンが作った地獄のようにまずいシチューを他の三人がジャイアン家に呼ばれて食べに行くという話。ドラえもんが出してくれた「ふりかければ何でもごちそうになるパウダー」をのび太が持っていくのを忘れて届けにきたドラえもんがウィルス感染防止のような顔面マスクと防菌服という出で立ちで笑ってしまった。しんちゃんは相変わらず面白かった。前半は憎愛劇作家ねねちゃんの新作、「床暖房殺人事件」が最高だったし、後半の、秘境で出会った不思議な女の子が餅を焼く間に野原家各々の夢が膨らんでそれが混ざり合って混沌とする幻想的な話がよかった。親になってからしんちゃんの面白さが分かるようになった。大人達を斜めから見るしんちゃんや子ども達がまっとうで愛おしいし、みさえは最高の母親だ。細かいギャグや言い回しが好きだ。映画観たいな。


1月19日(土)
遅めに起きて朝ごはん、のち大量の洗濯。先日百均で買ったごはんに色をつけられるふりかけを試してみたいとお昼になる前から言うので久々に新幹線プレートを出してお子様ランチっぽいものを作ったら喜んでくれた。作っている最中にサイがにやにや覗き込んできたので「お楽しみだからまだ見ちゃだめだよ」と言うも横でにやにやしていた。黄色の粉を入れたごはんとハムで作ったひよこのおにぎりは食べてくれなくて結局私が食べた。

午後から巣鴨。元々用があり行く予定だったが知り合いがたまたま巣鴨に遊びに来ていたらしく合流した。いきなり来て突然混ざっても誰も何も言わず優しいなぁと思った。目的もなく商店街をぶらぶら歩いたり年配者が好みそうなもの(時代が止まってしまったようなものがたくさん売っていて外国みたいだった)で溢れたお店をのぞいたり、知人が赤いパンツを迷いながら買うのを横で見ていたりした。なぜか昔から人の買い物に着いて行くのが好きだ。傍観者でいられるし、自分が買い物する時の使命感みたいなものがなく気楽で自分じゃ行かないような場所に行けて楽しい。サイは初め緊張して固まっていたがふとしたきっかけで自我を開放していた。大人に対していつもそうだ。コンビニで人数分買ったチロルチョコを恥ずかしそうに配っていた。コンビニで値下げしていて買うか迷って辞めたお菓子を友達が買っていて「あ、それ私も買おうと思ったけどやめたよ」と何気なく言うと「あげるよ」と一つくれて泣きそうになった。こういうことを私はきっと一生忘れない。その優しさが必ず報われますように。

みんなと別れた後スーパーで買い物して帰る。恵方巻の顔出しパネルを見つけると自ら顔をはめに行って写真を撮るように指示される。前は恥ずかしがっていたのに最近顔出しパネルが好きらしい。撮った写真を見たら死ぬほどかわいかった。

教えてもらった美味しいケーキ屋さんで買ったケーキをサイが寝た後ワインと一緒に食べたらあまりの美味しさに感動した。また買いに行こう。ケーキを食べながら、中学時代誰も話が通じる人がいなくて、その状態が一生続くのかと思っていたが大人になったら今日みたいにちゃんと話せる人がいるんだなと考えた。あの時の自分に大丈夫って言ってあげたい。友達が誕生日なのでおめでとうの絵を描いて送ってから寝た。


1月20日(日)
朝ごはん、プリキュア、ジオウ、ルパパト。寝坊してプリキュアは後半から。ジオウはゲイツのパジャマ姿にぐっときた。話がどんどん複雑に。ルパパトはゴーシュがいなくなり寂しい。ゴーシュはボスのドグラニオから寵愛を受けていることでやや傲慢になっていたところもあるがドグラニオはゴーシュがつまらなく感じいきなり突き放しコレクションを回収。コレクションの力なしでは弱かったゴーシュは動揺し自爆して散る。泣ける。次はいよいよ最終回。

午後から面会。待ち合わせに遅れられたのになぜかこちらが責められて憂鬱が募る。サイと別れて電車に乗って美容院。気分が落ちていたので美容師さんと最初うまく話せなかった。それで最初黙っていたら切り始めて「さあ、年が明けましたね…」と独り言のようにぼそっと言われたのであぁありがとう…と思った。相変わらず優しい。話しかけてくるタイミングや間の取り方全てが心地良い。容姿もすばらしいし(すばらしいというかタイプ…痩せているのに大きめの服を着ているところとか最高…凝視できない)、この人は絶対モテるだろうなと思わせるものがある。さすがに何か感情を抱くことはないが、勝手に疑似恋愛気分に浸らせてもらっている。それで髪も切ってもらって数千円なんて安い。時間があったからかシャンプーもしてくれたが緊張するので女の人に代わってほしい。前に日記を書いている話をしたら教えてほしいと言われたがこんなことを書いているので絶対教えられない。美容師さんも毎日書いているらしい。聞いたお店の名前が覚えられないと言うと「じゃあ今もう一度言うのはやめときますね」と言い最後の最後に教えてくれたところとか、あぁもう好き…となった。おすすめしてもらった体に良さそうな薬膳スープ屋さんに行ったら美味しかったけど物足りなかった。とんかつ屋かラーメン屋行けばよかった。それから地図を頼りに美容師さんに聞いた名前が覚えられない雑貨屋に歩いて行ったがおしゃれすぎて買うものがなかった。時間がなくなり電車に乗ってサイを迎えに行く。

サイと児童館に行ってみるも閉まっていたので一旦帰宅しおやつを食べて布団でだらけた後気合いで起き上がり、サイは自転車、私は徒歩で近所のスーパーまで買い物。サイは意気揚々と自転車を漕いで買った折り紙を前かごに入れていた。大根と手羽中の煮物。肉がとろとろになって嬉しかった。大森さんのラインライブを観てから寝る。サイは画面の中の大森さんに話しかけていた。