カニ日記

息子の成長と日々の記録

放課後ミルキーウェイで待ち合わせをする人生があったならば

4月5日(金)
有休。もう残っていないと思っていたら意外にまだ残っていてよかった。ないと信じていたものがあった時はだいたい嬉しい。Fさんとひと月ぶりに会った。大阪に前泊して朝イチの新幹線に乗って来てくれたらしい。池袋で待ち合わせして、西武線に乗ってパーラー江古田へ行った。ずっと行ってみたかったパン屋さん。入口にたくさんのパンが並んだショーケースがあって店内は薄暗く古い民家のよう。資材やストーブが雑然と置かれ、何もない無機質な空間よりむしろ落ち着く気がした。店の人も親切だった。チキンと舞茸のオーブン焼きのサンドイッチがとてもおいしかった。朝からワインを飲んだ。Fさんは「草の味がします」と言われた癖のあるワイン、私は「爽やか」と言われたやつにした。平日なのにお客さんがひっきりなしにパンを買いに来ていて、早い時間なのに喫茶も埋まっていた。会計時、迷いに迷ってショーケースから持ち帰る用のパンを選んだ。店を出た瞬間、春の陽気が心地良かった。人がいなくて静かだった。小さな神社に咲いていた桜がきれいだった。ずっと地元にいて桜を見ていなかったFさんは喜んでいた。夕方別れてサイを迎えに行き、三人でファミレスで食べて帰った。いい日だった。

4月6日(土)
サイとFさんとまた代々木公園。お花見。簡単なお弁当を作り、あとはFさんにお惣菜とワインを買ってきてもらった。思いつきでオイルサーディンと紫蘇とチーズでおにぎりを作ってみたら美味しかった。唐揚げは味付けをやや失敗した。甘くなりすぎた。フライパンでやるとカラッと揚がらない。花見シーズンなので原宿駅も公園内も大混雑だった。大学生らしき人や家族連れ、たくさんの人がシートの上で飲食したり談笑していた。Fさんはサイとよく遊んでくれて、サイが買った雑誌の付録も組み立ててくれた。暗くなるまでずっと公園にいた。最後は少し寂しかった。途中駅でラーメンを食べてまた地元へ帰るFさんと別れた。駅で電車に乗る前、Fさんの姿が突然見えなくなったので別れの寂しい空気が嫌でぱっと消えてしまったのかと本気で思っていたらチャージしていただけだった。「帰ったのかと思った…」と言うと「そんなことするわけないよ」と言われた。


4月7日(日)
余韻に浸りつつ、ちょっと寂しいいつもの日曜日。


4月11日(木)
約一年ぶりに打ち合わせをしに本社へ行って、大したことをしていないのにどっと疲れた。知らない間に新しい高層ビルや橋が建設中だった。街はどんどん変わっていく。


4月13日(土)
マクドナルドでお昼を食べて(おまけがトミカでサイ喜ぶ)から、サイの希望でビックカメラに行き仮面ライダーのガンバライジングカードとブットバソウルメダル。ゲームが苦手な私も慣れてきた。なんでもやれば慣れる。今度は失くさないように気を付けた。それから屋上で二人でひとつアイスを食べてユニクロニトリと無印をはしごして生活用品やサイの洋服を買った。いつもニトリの入り口にいたペッパーくんがいなくなっていた。あの独特の大きな瞳を見開いて通る人を観察していたペッパーくんが跡形もなく消えてしまい、行く度に話しかけていたサイは悲しんでいた。歩き回って疲れたので地下の蕎麦屋で食べてから帰宅。ザ・生活という感じの一日。


4月14日(日)
サイが面会している間に池袋でAちゃんに会った。お腹は先月会った時よりもさらに大きくなっていて、当たり前だが中に人がいるのだなとしみじみした。Aちゃんとこうやってゆっくり話せるのもあと少しかもしれないと思うと一緒に歩いているだけで感慨深かった。西口のロサ会館にある洋食屋でオムライスとエビフライを半分ずつ食べて(私だけビールを飲んで)、その後なんとなく東口方面に歩いて行ったものの特に目的地もなく、通りがかったミルキーウェイで星座のパフェを半分こした。ずっと行きたかったけど入る機会を逃していたミルキーウェイ、メニューも敷かれた紙も全部かわいかった。紅茶のポットが星形だった。星のクッキーがのったパフェは甘くて若い味がした。色んな話をしてたくさん笑った。店内の騒がしさがかえって心地良かった。今度はサイも連れてきてあげたいな。

Aちゃんと別れて駅までサイを迎えに行くとサイは何か買ってもらったらしく興奮状態だった。スーパーで買い物して夕方帰宅。晩御飯を作ろうとしたら買ってもらったリュウソウジャーのミニプラを今すぐ組み立てるよう命令され、集中して作っていたら時間がなくなり晩御飯は簡単に済ます。ルパパトのミニプラは途中で部品を失くした上に壊れやすく再築不可能になってしまったので説明書をちゃんと見て慎重に組み立てた。プラモデルなんてやったことなかったから最初は苦労したが、繰り返し作るうちにコツが掴めてきたし完成したら嬉しい。サイがいなければ触れることのなかった世界。サイは完成した合体ロボットをえらく気に入ってパーツを何度も付け替えていた。

サイが寝てからrajikoで毎週楽しみにしている「前野健太のラジオ100年後」。実際のオンエアは9時だがその時間はサイが起きていて聴けないのでいつも寝る前に聴く。それがまたいい。日曜の夜の、さあ明日からまた一週間という少し憂鬱で寂しい時間。目が疲れて映像や活字を取り込む余力がない時もラジオならすっと入る。冒頭で、先月私が初めて番組に送ったメッセージを全文読んでくれて感激した。自分の書いた拙い文が一字一句読まれている恥ずかしさと長すぎることに対する申し訳なさがありつつやっぱり嬉しくてドキドキが止まらなかった。「こうやって言っていただけてありがたいですね」「歌うのは趣味なのでこれからも歌いますよ」と言ってくれて嬉しかった。ラジオネームを何回も呼んでくれた。興奮したのでその後の内容があまり頭に入ってこなかった。前野さんの声でいつも安眠できるのに今日に限っては眠れなくなってしまった。

それにしても、好きな人が自分の書いた文を声に出して読み上げるというのは相当興奮するということがわかった。これも性癖なのだろうか。頷いたり返答してくれると会話しているような気にさえなる。ずっと遠く離れた場所にいるのに秘密の交換日記を交わしている関係のような、不思議な感覚から生まれるドキドキを誰に言うでもなく一人毛布の中で噛み締めていた。また出そう。今度はハガキで。