カニ日記

日記のような記録

不確かなものの傍らには確かなものを

4月16日(月)晴れ
変な夢で目覚める。海老フライをスケッチしていたら上司が来て「全然描けていない」と言われる。よく見ると自分が手にしていたのはイカゲソのフライで海老フライではない。上司にスーパーの揚げ物コーナーに連れて行かれ、何時間も前に揚げられて冷めてギトギトになった海老フライを購入するよう促される。私が食べたいのはこんなのじゃない!と思いつつ反論できずにいたら目が覚めた。海老フライが食べたいという思い、明日から仕事かという気の滅入り、昔美術の先生にデッサンが全然ダメだと貶された思い出、などがごちゃ混ぜになって見た夢。

朝食はしらすチーズトースト。サイは半分しか食べないだろうなと思ったら一枚食べた。そして苺も食べた。月曜日のバタバタ出発。保育園に着いて玄関でなかなかサイが動こうとしてくれないが時間がなかったので「先にお部屋(教室)に行くね」と言いサイを置いて行くと着いて来ず、わんわんと大泣きする声。この世の終わりみたいに泣いていた。教室で替えの洋服など準備していたら先生が心配して廊下まで出てきたので私もサイのところへ戻る。漫画みたいに頬から大粒の涙を流していた。ごめんねと謝ったが教室に入ってもまだ泣き続けていた。自分にとってはちょっと先に行くねという感覚だったのだが、サイにとっては置いて行かれて一人ぼっちになったと思ったのだろうか。悪いことをしたと思った。いつも一緒にい過ぎるからかな。難しい。

昼。パン美人と食べる。たくさん話す。水曜日に私が有休を取るため、時間が合えばお昼どこかで一緒に食べませんかと聞いてみたら(パン美人は元々休み)、いいねと即答し夢のような提案をしてくれる。じゃ何時にここね、と約束は簡単に決まった。こういう思いつきにぱっと応じてくれる人が私は大好きだ。気分を上げるためにピンクニットにカラフルな花柄スカート、ピンク靴下という春に浮かれた人のような恰好で出勤したので言われる前に自分から「今日、私派手ですよね」と言うと「うん」と笑ってくれる。否定しないところがいい。お気に入りのビオラのネックレスを褒められて嬉しかった。しかしピンクに花柄は打ち合わせでも職場でも相当浮いていた。

夜。マルエツのNクリスピーフライドポテトに邂逅。しかも二袋!君に会えると私は元気になる。夕食後、サイはアンパンマン。お風呂で身体をつつき合う。嫌がっているのか喜んでいるのか分からないので辞めると「もっとやってよ~」とにやにや言われる。入浴後、布団で借りてきた絵本、いもとようこ『いつもいっしょに』を読む。ページ数は少なかったが子ども向けとは思えない内容で読みながら泣きそうになる。主人公のくまに感情移入した。サイは内容が分かっているのかいないのかあまり反応はなかったがじっと聞いていた。本当にいい絵本だ。サイはいつものようにすーっと眠らず、30分くらい大きな声を上げて泣き続ける。日曜日の嫌なことを思い出したのか。新しいクラスに慣れていないのか。原因は分からないが情緒不安定になっている気がした。赤ちゃん時代を思い出し抱き締めて背中をトントン叩いても泣き続け、最後に泣き疲れて寝た。私も疲れて寝た。


4月17日(火)曇り時々雨
サイはパンツで寝たため朝起きたらパジャマが漏れていた。着替え。それから朝食を食べていたら座ったまま再び漏らした。しかもじゃーっと洪水になるくらい。ふたたび着替え。ここ最近トイレがうまくいかないのは情緒と関係しているかもしれない。絶対に怒らないよう気をつけて、「洪水ぐらい余裕のよっちゃんだわ」という顔をして椅子や床を拭いてから朝食仕切り直し。私が怒らないのでサイはふざけて笑っていた。そうこうしていると時間がなくなってきた。余裕ではない。慌てて準備して出発。

昨日やり過ぎたため今日は白と黒のモノトーンにした。別に何もないが最近買って気に入っているレースのインナーをニットの下に着た。本格的な夏が来る前に可愛いインナーを集めたいと思っている。ネットで見た欲しいキャミソールが7000円もする。相場なのか。むむ。パン美人が昨日言ってた、白いインナーの上にメンズっぽいシャツを羽織ってゆるめのパンツを履く格好がしてみたい。ブルーのストライプシャツとか欲しいな。ヤエカだな。物欲。むむ。

夜。担任の先生とサイのことについて話す。去年の三人の担任のうち一人のT先生が担任で、でもこの4月からT先生一人で十何人も見なければいけないので本当に大変そう。先生はお疲れのようだったがとても優しく対応してくれて泣きそうになる。3歳児十何名に対し一人の保育士がつくのが保育の取り決め上問題ないとされていたとしても現実的には厳しいし先生への負担が半端ないと私は感じている。私は3歳児を二人相手に遊んだだけで疲労困憊だ。プロとはいえあまりにも酷すぎないか。保育士が完全に不足している。都は何とかして保育士の給与を上げて雇用人数を増やしてほしい。先生達は毎日本当に頑張っている。感謝しかない。

雨が降り始めていたがカバーがなく(まだ買ってもいない)、どうしようかなと思って取りあえず顔を覆わないよう注意してスーパーの袋をサイの頭に被せたら案外サイは気に入った様子だった。そのコックのような宇宙人のような姿を玄関で見た人誰もがすれ違いざまに笑っていた。先生も親もサイの友達もしらない子もみんな。特に子どもが「サイくんなにそれ~!!」と指差してゲラゲラ笑っていた。別に受けを狙ったわけではなかったが、冷静に見るとかなり可笑しくて私もサイも笑った。このサイの姿を見て皆の疲れが少しでも癒されたならまあいいか、と思った。外に出ると雨は小雨だったので可笑しなビニール姿は辞めて普通に帰る。でも雨が途中で降り出してやっぱり被らせておけばよかったなとも思った。私は何もないのでびしょ濡れ。いつも傘を持っていない時に雨が降り、持っている時には降らない。天気の予測が甘い。

サイにせがまれてコンビニに寄る。450円もするプリキュアのフィギア(大人向けなのか作りが細かい)を欲しがるが何とか言いくるめてチロルチョコにしてもらう。それから食べたいと言われたチルドの鮭の塩焼き、私はカレー。帰宅後ハムエッグとトマトと納豆を追加。なぞの夕食。サイはハムエッグの一番美味しい部分の黄身をいらないと言って私にくれる。夕食後、少しアンパンマンを観てから入浴。絵本を読んで就寝。私が自分で読もうと思って借りた児童向けの星座と神話の本を読んでくれと言われるも内容が難しすぎるのか苛立っていた。


4月18日(水)雨時々曇り
朝から雨。休みだったのでやや寝坊してもまあいいかと思いだらだら準備していつもより1時間半くらい遅く保育園に到着。いつも早いので園児が少ないが園児が揃った教室はさながら動物園だった。

それからずっと観たかった「ルドン―秘密の花園」を観に、丸の内の三菱一号館美術館へ。普段絵をゆっくり観るような時間が取れず、画家の企画展はほぼ毎回逃している。でもルドンはどうしても観に行きたかった。平日の朝とはいえマダムが多かった。それでも大混雑ではなかったので、一枚一枚の絵と対面してじっくり観ることができた。ルドンの絵を観たのは初めてだった。印象派の画家達と同時代に生きていたルドンが印象派と違うどんな絵を描くのか観てみたかった。主に木炭画やエッチングの白黒作品、「黒」(Noirs)(ルドンがそう呼んでいたらしい)と、油絵やパステルの色彩が遣われた作品があった。私は「黒」の絵が気に入った。なかでも、植物の先端が人の頭(たいてい年老いていて目が落ち窪んだ顔)や目玉になっている絵が面白いなと感じた。『「夢のなかで」 I. 孵化』という作品の人間の横顔が子宮みたいな丸い何かに包まれ暗闇に浮かんでいる作品がとても美しくて惹かれた。暗闇に星屑のような小さな光が散らばり宇宙のようだった。油絵やパステルの絵もとてもよかった。タイトルを失念してしまったが深海を描いた絵が好きだった。おそらくルドンが想像して描いたと思われる深海生物が描かれていた。シェイクスピアテンペスト』に出てくるキャリバンがモチーフとされる作品もよかった。大学の授業でいくつかのシェイクスピア作品を読んだが、キャリバンは「野蛮でグロテスク」という点で自分と重ね合わせていたからか一番記憶に残っている。ルドンは正体がよく分からないもの、明確でない神秘に関心があったのかもしれない。生き物と生き物でないものの境界にある見えない世界についてアプローチしようとしていたらしく、植物と生物の境界も曖昧だった。一見してそれが何なのか分からないものが多く描かれていた。「不確かなものの傍らには確かなものを置いてごらん」と若かりしルドンがコローに言われた(解説に書いてあった)通り、ほとんどの絵には木が描かれていた。明確な答えを提示しないルドンの世界が私にはとても心地よく、いつまでも眺めていられそうだった。図録は買わなかったが特に黒の画集が欲しい。あぁ好きだな、ルドン。

パン美人と待ち合わせし、神楽坂のla kaguというセレクトショップに入っているマドラグで分厚い卵焼のサンドイッチとプリンアラモード。どちらも最高に美味しかった。京都のマドラグ、いやコロナに行けず食べたいけど食べられない想いをいつからだろう、おそらく十代から長年拗らせてきたがまさか東京でこの分厚い卵サンドが食べられるとは。パン美人が教えてくれなかったら永久に拗らせていただろう。私は本当に情報に疎い。卵は分厚いのに口当たりが軽くて一瞬で平らげてしまった。パンも美味しい。また絶対来よう。パン美人にルドン展で買った「黒」のポストカードを見せたら「怖い」と言われる。感じ方は人それぞれなんだなと思った。たくさん話す。

それからパン美人と別れて某所で某相談。今日一日の楽しい空気が一変したが大事な話。最後に窓口の人に「今辛くても必ずいい結果が待っていますから、大丈夫です」と言われて泣きそうになる。大丈夫、あと少しだ。とにかく行動しようと某所に寄った後、帰宅。夕食、入浴、就寝。サイは寝る前にまた泣き、どうしたのと聞くとどうやら教室が変わって環境の変化に戸惑っているようだった。「あかちゃんぐみがサイくんのおへやとっちゃったの」と小さい声で訴えた。「そっか、それは悲しいね…でもね、サイくんが今いるお部屋はお兄ちゃん達がサイくんにどうぞしてくれたんだよ」と答えるもあまり納得していなかった。サイはサイなりに色々と感じていることがあるのだろう。


4月19日(木)晴れ 久々の青空
朝。やや寝坊。あんぱんとバナナ。実店舗に行けないので、通勤電車の中でスマホから欲しかったアルバムを発注する。大森さんの楽曲が入っているKAT-TUNのシングルも。よく考えればジャニーズのCDを生まれて初めて購入した。この長い人生でアルバムでさえ一枚も買ったことがなかった。中学の時はジャニーズJr.がクラスの女子の一番の話題だった時代で誰が好きかよく聞かれたがその度に答えられずどうして私は他の子のように好きになれないのか悩んだほどだった。KAT-TUNといえば初めてバイトした饅頭屋にいたパートのおばさんがいつも興奮気味に話していた。私は話題に入っていけず愛想笑いをしていた。あとは人におすすめしてもらった漫画を数冊。少量だとヤマトの人に申し訳ない気持ちになり一度にあれもこれも頼んでしまう。これで高いキャミソールは買えなくなった。それはそれでいい。いいのか?でも届くのが楽しみ。

夜。サイがコンビニに寄りたいと言うので寄ったらチョコベビーを買わされる。小松菜卵炒め、しらすごはん、ファミマのポテト(マルエツには劣るが美味しい)。夕食後、サイと最中アイスを一列ずつ食べる。サイは最中を先に全部剥がして中のアイスだけ舐めていた。サイとお互いの身体を触り合ってゲラゲラ笑いながら入浴。絵本を読んで就寝。


4月20日(金)晴れ 暖かい
朝。夜に控えた予定を考えて緊張して明け方まで眠れず早朝に布団に入ったら寝坊。寝る前にスイッチを入れた洗濯乾燥機が入れ過ぎだったのか全然乾いていない。濡れているものを干す。しわしわだ。悲しい。うーさんにもらったかぼちゃマフィンをサイと食べたら食べかすが机中に散らばり掃除に苦労する。などしていたら完全に間に合わないのが確定し、上司に遅刻の連絡を入れる。あーダメだな。大事な予定がある日にはいつもこうだ。

夜。丸の内コットンクラブにて道重さゆみさんの公演『SAYUMING LANDOLL~宿命~』。何かを観て鳥肌が最初から最後まで止まらないのは初めてだった。想いが溢れすぎているので別途綴りたい。最寄駅に着いたのに帰宅せずファミレスで2時間ほど余韻に浸っていた。


4月21日(土)夏のような日
朝。まだ昨日の余韻がすごいが、浸ってばかりもいられない。朝ごはん、洗濯のちサイと外出。マクドナルドでハッピーセット。おそらく男女が満足するようトミカとキティちゃんの二種類があったがサイはキティちゃんを選んだ。当たったプラスティックのかばんを嬉しそうに持ち開け閉めしていた。店内は満席だったので先週と同じ店の外のベンチに座って食べた。私は家から持ってきた缶ビールを飲んだ。サイはチキンナゲットを3/4くらい食べた残りを私にくれてまた新しいのを食べていた。このちょっと残しを最近よくやる。気持ちの良い青空で夏のように日差しがきつかった。広場に飾られたこいのぼりが風になびいていて、あぁもうそんな季節かと思った。毎年子どもの日にインスタで見かけるような気合の入ったことをできないでいる。やる人はやるのだろうが。

それからTSUTAYAに行ったりして歩いていたら(ネット配信の普及でレンタル業界が厳しいのかいつも百円なので毎週何か借りるのが習慣化してしまっている)、サイがスーパーに行きたいと言い、買うものはなかったが暑さにやられそうだったので入る。幼児雑誌を欲しがられたが断ると、サイはアイスコーナーに直行し食べたいと騒ぐ。賢い。仕方がないのでサイが選んだMOWを一つ買いレジでスプーンをもらってスーパーの外のちょっとしたスペースに腰掛けて二人で食べる。私達は外でマクドナルドやアイスを食べて周辺をうろついて、何だか夏休みの中学生みたいだなと思った。最近全然親子という感じがしない。サイはアイスを独占し私が食べようとすると怒りながら席を移動しほとんど一人で食べた。サイのアイス好きは完全に私の遺伝かもしれない。

その後、公園で2時間遊びコース。私は既にバテて帰って昼寝したかったが遊びたいと言われると付き合うしかない。暑すぎてまたビールが飲みたいと思ったが何と健全なのだろう、この公園には酒類が売っていない。サイは珍しく砂場で遊んでいた。なるべく日陰を選んで座っているとこっち来てよ!と言われる。砂を盛るのに苦労していたので、水を足すといいよとさっき飲んだビールの空き缶を洗って水を入れて渡すと嬉しそうに振りかけていた。「おかあちゃんのたんじょうびケーキつくるよ~」と一生懸命砂を盛っていた。小さい頃砂場遊びをよくしていたので、暑ささえ問題なければ私も嫌いではない。手が汚れることに抵抗がないしむしろ砂を触っていると妙に落ち着く。二人で手を土だらけにしながら遊んだ。自分の子どもと遊んでいるのに何十年前に近所の子やきょうだいと遊んでいた時と同じような不思議な心地がした。もはや中学生というより私も3歳児だ。

するとサイと同じ歳くらいの男の子が「ねぇあそぼうよ」と寄ってきたのでその子も一緒に遊ぶ。親の姿は見当たらない。なぜかいつも親に放置された子が私の元に寄ってくる。私は大人には大抵嫌われがちだが、子どもにはけっこう好かれると最近気がついた。もしかしたら大人だと思われていないのかもしれない。空き缶を見て恐々と「それおさけ?」と聞かれる。確かに酒の空き缶で遊ばせている親は見たことない。「ううん、入っているのはお水だよ」と説明した。サイは人見知りを発揮し距離を置き一緒に遊ぼうとしないので、なぜか私が知らない子どもと二人で遊ぶ形になった。「◯◯くんね、ふじさんつくりたい」と言われたので土を盛って山を作っていたら「トンネルつくりたい」と言われたのでトンネルを掘る。そしたら飽きたのか「けいきゅうつくりたい」「え、京急?」「うん◯◯くんけいきゅうすきだから」「…」ちょっと無理だなと思ったのでごまかして辞める。サイはまだ余所余所しく少し離れて何かを作っていた。すると◯◯くんがサイの使っている空き缶を使いたいと言い出し、サイはそう言われると意固地になって貸さない。サイを説得してもダメで、お互い取り合いになってどうしようもなくなった。そうしたら空き缶のプルタブが取れて危なくなったので、二人から取り上げて強制終了させた。こういう時は相手側の親がいたらお互い仲裁に入れるのだが、見まわしてもそれらしい人はいなかった。「◯◯くんのおかあさんはどこ?」と聞いても曖昧な返事だった。親が見つからないと帰るに帰れないなと思っていたらどこからか身なりが綺麗で美人のお母さんが現れて「◯◯くん」と呼びかけると、私に「ありがとうございました」と笑顔で一言だけ放ち、◯◯くんを連れてさっとどこかへ行ってしまった。他人の子と遊んでいた私とサイは土まみれで取り残されて馬鹿みたいだった。このお母さんは一体今まで何をしていたのだろう。我々も砂場を離れ、サイがやりたいと言うのでシャボン玉をしてからようやく帰宅。

くたくたで暗くなるまで昼寝。遊ぶのにも体力が要る。夕食は新たまねぎと豚の生姜焼き、ブロッコリーの卵とじなど。新たまねぎは炒めるより熱をじっくり通した方が美味しいので玉ねぎの上に下味をつけた豚肉を広げてのせ蓋をして蒸し焼きにして最後に味付けしてみたら玉ねぎがトロトロですごく美味しくできた。肉も固くならない。仕上げに入れたチーズがまた美味しかった。自画自賛。別に上手くはない時間があれば料理は好きだ。人が自宅に飲みに来て色々おつまみを作りつつ自分も飲んだりしたら楽しいだろうなとよく思うがまず呼ぶような人がいなかった。夕食後、入浴、就寝。


4月22日(日)夏のような日part 2
朝ごはん、洗濯、掃除。特に予定がないのでKくんのお母さん(過去日記参照)を誘ってみたら快諾してくれ、近所の公園で遊ぶことになる。少し早く待ち合わせの公園に着くと、サイは昼ごはんも食べていないのにセブンティーンアイスが食べたいと騒ぎ、仕方ないのでKくんの分と二つ買う。会っていきなり二人はアイスを食べる。こういうの嫌がるお母さんもいるだろうが、Kくんのお母さんは嫌な顔ひとつしなかった。それから公園で1時間ほど遊んだ。Kくんが持ってきた水鉄砲をやったり、探検隊ごっこをした。二人は仲が良いがお互い自由でバラバラに走り回ったりしていた。日差しがきつくなったので、Kくんのお母さん「近いのでお昼はうちに食べに来てください」と言ってくれた。私が交友関係が薄すぎてサイの友達の家に行くのは初めてだったので、突然で申し訳ないと思いつつ「保育園の誰かの家に行くのは初めてなので嬉しいです」と思ったことを言うと「私も保育園の誰かが家に来るのは初めてです」と恥ずかしそうに言ってくれた。

Kくん一家が住む家は元々おじいさんとおばあさんのものだったらしくとても古い家だったが明るくて風通しがよく私はとても気に入った。Kくんのお母さんは重身なのに「たくさんあるので」と餃子を焼いてくれた。豪快にフライパンのまま出てきた。Kくんは興奮して「サイくんママ(といつも呼んでくれる)、これみてよ!」と玩具の車を次々出して紹介したり落ち着きなくはしゃいでいたので、Kくんのお父さんに「ちょっとは落ち着けよ」と窘められていた。Kくんのお母さんが台所にいる間、私はほとんど挨拶くらいしかしたことがないKくんのお父さんと目を合わせることも会話することもできず気まずい感じになったのでKくんの玩具を必要以上に観察したりコメントすることに努めた。食べ始めてもKくんは落ち着かず、「サイくんママ、なっとうをごはんにかけて」と色々求めてきてまたお父さんに失笑されていた。あぁ可愛いなと思った。サイは緊張したのかあまり食べず大人しくしていたがだんだん本性を出しKくんと笑ったりはしゃいだりしていた。Kくんのお父さんは居心地が悪かったのか洗車をすると言っていなくなった。

「餃子どんどん食べて下さいね。これが終わったら第二段を焼きます。うちはみんな大食いなんです」と言われたので遠慮なく食べたがサイが食べ残した分も食べて苦しくなり結局第二段はなかった。食べ終わって二人が大人しくテレビを観ていたのでようやく私はお母さんとゆっくり話すことができた。ほうじ茶ラテを入れてくれた。お湯だしお腹にかかったら危ないなと思って台所にちらっと様子を見に行くと(入られて嫌な人もいるだろうからあんまり奥には入らない)、鍋でぐつぐつに沸騰したお湯を注いでいるところで、カップのお茶もぐつぐつと地獄のようになっていた。私はそれを見た瞬間、あぁこの人が好きだなと思った。「ほうじ茶ラテって美味しいですね」と言うと「そうなんです!前に飲んで美味しかったのでネットで探して買ったんです」と嬉しそうに言ってくれた。それから鍋敷が汚いことを気にしていた。「うちは何でもフライパンのまま出すのですぐにこうやって焦げ付いちゃうんです」と笑って話してくれた。話しやすい人なのでつい余計な話までしてしまい謝ると「いえ全然。そうやって時々誰かに話さないと辛いですよね」と言ってくれた。近所の美味しいケーキ屋さんの話になり、「綺麗なカフェでゆっくりお茶とかしたいなぁ」とKくんのお母さんは誰に言うでもなくぽつりと言った。みんな思っていることは同じだ。また遊びましょうね、あそこのケーキ食べましょうねと言って帰宅。サイは帰り際、Kくんが持っているような三輪車かバイクが欲しいとずっと言っていた。

帰宅後、それまで気を遣って我慢していたからかサイの機嫌が悪くなったので冷凍庫にあった最後のアイスを二人で分けて食べた。それから暗くなるまで昼寝。私は一足先に起きたがサイはまだ寝ていた。サイが起きて寝室に行こうとしたら慌て過ぎたため膝を強打した。痛くて蹲っていたらサイが寝室を出てやって来て私の前を素通りし冷蔵庫に向かった。いつものように何か食べ物を探しているのかと思ったら、冷凍庫から保冷剤を取り出し一生懸命ハンカチにくるんで渡してくれた。Kくんの家でKくんがテーブルの角で頭を打った時、Kくんのお母さん凍った保冷剤をハンカチに包んでさっとKくんの額に当てていた。サイはそれをちゃんと見ていて痛い人にはこの対処をすると覚えていたらしい。あぁなんて賢くて優しいんだ君は。

夕食は炊飯器でカオマンガイ風。予想外に薄味だったのでもっと濃く味付けしてもいいなと思った。でも美味しかった。サイは肉だけ食べた。夕食後、Kくんの家でたくさんあるからともらって来た水鉄砲でお互い撃ち合いながら入浴。入浴後、サイは甘えてきて「おかあちゃんだいすき、おかあちゃんかわいい、おかあちゃんいいにおい」と満面の笑みでそうプロミングされた人口知能のように褒めちぎった。いつも恥ずかしくなるくらい愛情表現してくれる。私も「大好きだよ」と返す。私たちは愉快な名コンビ(ロアルド・ダールか…)。布団の上で遊んでゲラゲラ笑い合った後、お互い疲れて就寝。

某所で「もうあとは行動するだけですよ」と言われはっとしたがいつも私はそうだった。あれこれ頭で考えたり綿密に下調べすることは好きだが実践する一歩手前で怖くなって動けなくなる。でもこれは自分との戦い。絶対に勝ちたい。そして最後は笑いたい。と、ルドンの絵や踊る道重さんを見て考えた週だった。