カニ日記

息子の成長と日々の記録

感情のええじゃないかとその後

金曜日からの出来事は書きたくなかったけど忘れないために書く。どうしても抽象的な表現になってしまう場合があるかもしれない。

6月23日(金)天気不明
リフレッシュがきいたのか、目覚めもよかった。午前中は仕事がはかどった。お昼休憩で卵サンドを頬張っていた時、小林麻央さんがお亡くなりになったことをネットニュース(何となく記事を開けなかった)で知った。それからしばらく何も手に着かなかった。フロアの人は話題にしている人はいてもさほど悲しそうにしておらず、いつもと変わらずお弁当を食べて別の話題で談笑したり、雑誌を読んだり見た感じは普段と何も変わらない昼休みの光景だった。感情の強要はしたくないし、全ての人の気持ちが顔に表れるとは決まってないとは分かっていても、この「いつもと変わらない」がどうしても理解できなかった。堪えきれずに涙も少し出てしまったし、歯磨きでもしようとトイレに行くと仲の良い人にたまたま会った。彼女にぶつけるように「みんなおかしくないですか」と聞いた。私の口ぶりにちょっと困ったような顔をしたが「私は悲しいよ。うん、おかしいよね」と落ち着いて共感してくれた。私自身の「かなしみ」は悲しいというより、麻央さんのブログに繰り返し書かれていた「生きること」への強すぎるほどの意志が最後は成就しなかったことに対して悔しさを感じていたように思う(あとから海老蔵ブログに「肉体は失われた」と書いてあるのを読み、そうだよなとまた悔しさ募った)。人と話しても気持ちを切替えられなかった。その後、どちらも仕事関連で「怒り」、「喜び」の感情を起こさせる出来事が大波のようにやってきて感情フォルダが飽和状態になった。なったかと思うと突然風船が割れるように弾け飛んで虚無のようなものが訪れた。こんな感覚は初めてで不思議だった。「怒り」が鎮まった後、「喜び」に対応するのに注力し麻央さんのことは考えないでいた。

終業少し前に仕事が落ち着き、入社以来よくしてくれている母親より年上の女性社員さんのところへお遣いに行くと、いつものように「元気?子ども最近どう?」と静かに聞いてくれた。嘘がつけないので、「いや、今日はちょっとだめで・・」「どうしたの?」「あの、麻央さんのニュースで・・」「・・・??」「お亡くなりになって」「え、うそでしょ!?」というやり取りをした。その方は社内でもちょっと特殊な仕事をされているのでネットをほとんど見ないようで、知らなかったようだ。物凄くショックを受けた顔をしていた。「ご存じでないとは知らず、言ってしまってすみません」と言うと「ううん、そうか、辛いよね、子どもまだ小さかったよね」と目に涙を溜めて言った。それを見て私も泣いた。「みんないつもと何も変わらなくて、普通に笑っているのがどうしても分からなくて」とつい言うと、「え、なにそれ、そいつら全員おかしいよ、感情がないんじゃないかな」と言ってくれ、お昼に「病院出たってことでもう分かるよね」と笑っていた人が感情がないかどうか私には分からないがどうにも理解できなかったため、その日初めて共感してくれる人に出会えたと思って救われるような思いがした。ありがとうございます、と言いその人の席から去った。

定時に退社し、お迎えに行くとサイは金曜日と分かっているのかいつもより嬉しそうだった。どの子も嬉しそうでまだ外も一向に暗くならないので園庭ではしゃいでいた。サイと仲良いYちゃんのお母さんと並んで遠くではしゃぐ子ども達を眺めながら、今日長かったなぁと考えていた。海老蔵さんのことが一瞬頭に浮かんだがサイを連れて帰ることで必死だったのでそればかり考えなくて済んだ。それからYちゃんのお母さんに話しかけ、週末Yちゃん親子と公園へ行き、初めて我が家に来てもらうお誘いをしていたのを再確認した。他のお母さんどころか他人をまだ家に招いたことがなかったが、この人なら来てくれたら嬉しいかもとお誘いした。麻央さんのことは何となく言わなかった。

サイと帰りにドラッグストアに寄り、ビール二缶とよく知らないくせにサイが欲しがった「ねるねるねるね」二つ(Yちゃん来るかなと思って)買い物カゴに入れて、あとこれもサイが欲しがった調理不要なミートボールも買った。
帰った瞬間、サイと手を洗ってからご飯の用意もせず、ビニール袋からビール缶を一つ取り出して立ったまま一気に半分ぐらい飲んだ。冷凍してあったお好み焼きとミートボールとトマトを食卓に並べサイと二人で食べた。お好み焼きを食べるサイの顔を見ていたら、それまで大丈夫だったのに突然涙が溢れてきた。麻央さんの二人のお子さん何歳だったけと考えてしまうともう止まらなくなった。サイの前では泣きたくなかったのに止まらなかった。サイが「おかあさんだいじょうぶ?」と心配したので「目にゴミはいっちゃったよー」と言ったり、「見てよこの顔~面白くない?」と顔をつぶして変顔をして取り繕った。涙が余計に出てきた。食後はなるべくサイに顔を見せたくなくて、私も考えたくなくてサイの好きな「にこにこぷん」や「あんぱんまん」を観た。お風呂でまた泣いたけどお風呂だからサイにはバレなかった。そういえば誰かが「泣く時は湯船で泣くのが一番いい」と言っていたのを思い出した。お湯で流すとすこしすっきりしてもう泣かなかった。サイといつものように歌を歌いながら寝た。また涙が出てきたが暗がりだからバレなかった。サイはすぅーっと寝て、私は全然眠れなかった。Kはまだ帰ってこない。

真っ暗で静かだった。静寂が怖くなり、サイの横で寝ながらイヤホンで好きな音楽を再生した。それから友人にメールしたり、大好きな方に超長文でただ今日何があったかをひたすら説明したDM(受け手は迷惑甚だしいと後で自省)を送った。送ったら満足して何もせず天井を見つめて音楽を聴いていた。涙がすうーと流れ出て、仰向けに横たわったまま静かに泣き続けた。涙がずっとずっと止まらなくて他人事のようにわぁすごいなと思っていたら枯れたのか急に出なくなった。頭ががんがん痛かった。だからイヤホンを外して寝た。眠れず麻央さんのことや色々なことを考えていたらいつの間にか少し寝ていた。何時か分からないがKは帰ってきて風呂場で寝ていたようだった。


6月24日(土)晴れのち曇り
少しだけ眠ったようで変な夢を見て起きたら頭が痛かった。Kは再び出勤したらしく、いなかった。目が腫れていて顔がむくんでいるのが分かったが、あれだけ涙を流したからか精神的には落ち着いていた。
朝食後、ニュースは見たくないなと思い、サイがこれ観たいと言った幼児雑誌の付録についていたDVDを流した。私がちょっと別の場所に行った時に突然、サイの今まで聞いたことないような異様な泣き声、「こわいーー!!!」という声が聞こて来たので、慌てて駆け付けた。ちょうどDVDが終わりテレビモードに切り替わって、ニュース映像を観たらしかった。すぐに消したからほとんど観ていないが、病院にいた麻央さんの姿写真だったようだ。「こわいこわい」と大泣きするサイをぎゅっと抱きしめて「こわくない、こわくないんだよ、この人可愛いんだよ、可愛い人なんだよ、おかあさんと同じなんだよ」と私も泣きながら必死で言った。朝のニュースは誰が観るか分からないのに、視聴率優先でこれでもかと心苦しくなる写真の数々を流すテレビ。嫌なら観なければよいがあのような海老蔵さんや二人のお子さん達への取材の仕方含めマスコミのやり方が残酷すぎて理解できなかった。2歳半のサイにはまだ死を理解させる必要もないと思ったし、うまい対応ができなかったため、再びDVDを再生した。

その後、DVDにも飽きたようだったので洗濯物干しがまだ途中だったが「じゅーすやさんつくって」というサイのリクエストに応えて紙にジュース屋さんを描いて、ジュースやお金を別に紙で作って動かして遊べるようにした。思いの他気に入っていたようだった。

昼食(ファミレスに行きたいと行ったから準備したら行きたくないし外に出たくないと言われて結局家で食べた)後、昼寝をさせようとするも暑くてなかなか寝てくれない。寝室とは別の部屋にサイと私の敷布団を敷くとサイは喜んで転がった。それでも「おとうさんいない」とまだずっとぐずっていた。Kにテレビ電話しても落ち着かずだんだん疲れてきたので、「お父さんは海苔巻きおじさんと戦っているんだよ」と適当なことを言った。「のりまきおじさん?」と不思議そうにしていたので、「眠ってない子がいると海苔とご飯を両手に持ったおじさんが窓から入ってきてサイくんを海苔巻きにしてしまうんだよ。高い窓でもジャンプしてくるよ。」と教えると怖がっていた。自分でもけっこう怖いなと思った。怖いだけだとあれなので、「怖いおじさんがサイくんを食べようとするのを止めるためにお父さん頑張ってるんだよ」というと納得したようだった。そうこうしていたら眠ってくれた。稲荷おじさんというのがいてもいいなと思った。

寝かしつけに時間がかかったため今からYちゃん親子の訪問に備えて片付けるのは無理だと判断してYちゃんのお母さんに断わりの連絡を入れ直接公園集合にしてもらった。サイが起きて公園へ行った。Yちゃんと遊ばせる。Yちゃんのお母さんに麻央さんのことを聞いてみたがあまり話が続かなかったので辞めた。Yちゃんはサイに比べて運動神経がよく、それはもっと小さい頃から顕著で、一人で滑り台を滑ったり高い所へ登ったりしていた。小さな子にはまだ早い遊具にも器用に登っていた。好きなんだろうなと思った。サイは私に似たのか運動音痴でYちゃんがおいでよ~と言っても登れなかったり、滑り台も上まで上がっただけで滑るのを辞めたりした。いい時間になったのでごはんを食べようとファミレスへ行った。

Kも合流して(Yちゃんのお父さんは仕事)食べたい物(私は肉とビール)を食べた。サイとYちゃんは横並びに座って楽しそうにしていた。Yちゃんがお父さんと家でよくやっているという口食べ(「わんわん物語」の要領)でポテトを咥えてサイの方を向いても、サイには何の事かさっぱり分からないようで動揺していた。Yちゃんは「なんだつまんないの、まあいいや」という感じだった。女の子の方が大人になるのが早いとはよく聞くが本当だなと実感した。サイが大人になっても同じように女性を前にして動揺している姿がつい思い浮かんでにやにやしてしまった。

帰宅してお風呂、就寝。

6月25日(日)雨
明け方起きたら朝なのに外が暗かった。湿気があって不思議な感じだった。朝食後、準備。Kにサイを見てもらい美容院。上京以来通い続けている美容院なので気が楽。店の雰囲気が可愛くて店員さんがみなおしゃれで優しいので気に入っている。美容師さんとは深い話をする分けではないが、お互いの家族の話などよくする。とても腕がいいので、実家に帰ると母に「いい髪型」でなくなぜか「うまいなぁ」と褒められる。伸びることを想定して一ミリ単位で切ってくれるのがまたすごい。老い対策について盛り上がり、プラネタリウムやこないだ観た映画についてべらべら話した。

美容院後、小学6年生以来ぶりにラフォーレのSWIMMERへ行った。地下へ降りて行く感覚が足で覚えていてぞくぞくした。時間もなかったので、とにかく可愛いと思ったものはカゴに入れ、今までありがとうの気持ちも込めて大量に買った。SWIMMERを出たらトイレに行きたかったが時間がなかったので我慢してお昼も買わずに電車で帰った。

 

帰宅するとちょうどKがサイを寝かしつけたとこだった。冷凍食品を食べていると、ごとっという鈍い音と共にサイの泣き声が聞こえた。あー、と思って見に行くとベッドから落ちていた。私なら落ちないよう周りにクッションを置いたり万全にするのに、Kはそういう所がツメが甘い。サイは眠いけど起きてしまったことで機嫌が最悪。抱っこしたり色々して再び寝かせようとしたがだめだった。もう起きると言ったのでリビングへいってもここで寝ると言い、布団を敷いたら眠れなくて泣き出したり散々だった。疲れた。サイが話したいというのでKに電話してもすぐ切られた。はぁ疲れた。みんなお母さんはすごい。

夕方、イヤイヤで行きたくないというサイをようやく宥めてスーパーへ行ってサイのお菓子と夕飯の材料を買った。入り口にある花をみて、家の花は枯れてるなぁ明日帰りにお気に入りの花屋さん行こうかなと考えていたら、サイが向日葵とバラが入った花束がほしいと言った。黄色と濃いピンクで派手な感じだった。家の中が殺伐としていたし、たまにはこういうのもいいかなと思ってカゴに入れた。手持ちが足りなくなりそうだったので最初カゴに入れていたアイスや菓子パンを辞めた。

公園に寄ってサイとおやつを食べた後帰宅。夕食、お風呂、就寝。

感情のジェットコースターのような週末だった。ジェットコースターは嫌い。乗る人がいたら座って下から眺めながらメロンソーダ飲んで待っているタイプ。

 

金曜日にたくさん泣いてから、牛乳を飲んだ後のコップのようにかなしみの膜みたいなのが胸に張られて取れない感じがする。食べたいのに食欲がない。

たまには星座をみにいこう

6月20日(月)晴、蒸暑い
朝。昨日疲れてしまったのか寝る時間は遅くなかったのにいつもの時間になっても珍しくサイは起きてこなかった。なので先に準備を済ませ、ぎりぎりまで寝かせてあげることにした。それでも朝ごはんを食べないで登園するのは可哀相だと思い、食べる時間くらいの余裕は残して起こした。寝ているサイをほとんど起こすということをしたことがないので、「もっとねたい~」と機嫌が悪かった。頼まれない限り寝てる人を起こすのはあまり好きじゃない。たまにKがいつもの時間に起きてなさそうでも特に起こしたりしない。社会人だし遅刻しても自己責任。なんで起こしてくれなかったの?と言われたこともない。余裕をみたはずなのに、サイはまだ眠そうでいつもより食べるスピードが遅かったり、途中でうんちをしたりそれでオムツを取り替えてお尻を拭いたり時間はどんどんなくなった。着替えさせてバタバタ登園した。今日はメロンパンナちゃんが同伴。

夜。会社で朝イチで嫌なことがあったのと、大勢が集まるのに冷房が全く効いてない部屋に立たされて暑さで吐きそうになったダブル悪で食欲があまりなかった。帰りながら冷蔵庫に良品週間に買った無印の冷汁の素があったことを思い出し、冷汁なら食べられそうと思った。ボウルに液と刻んだ茗荷と適当につぶした豆腐を入れておしまい。何て簡単なんだろう、火も使わないから去年の夏も一昨年前の夏もこればっかり食べてた気がする。きゅうりと紫蘇がなかったのでKに買ってきてもらって入れた。あと肉屋で鶏天も買ってきてもらった。サイは薬味が嫌かなと思ってサイの分だけ薬味を抜き代わりにカニかまを入れた。「なにこれー」とカニかまを触って珍しそうに眺めていた。カニだと言って先生や周りに「サイくん、おうちでいつもカニたべるよ」など言われてしまっても大変なので「おさかなだよ」と本当のことを言った。魚の姿と違うからか「おさかな~?」と不思議そうにしていた。食欲ない時にも食べられる冷汁なのに私はほとんど食べられなかった。帰りながらあれだけ飲みたいと思っていたビールも飲まなかった。Kがほとんど全部平らげた。

夕食後、1月に引っ越してから我が家初のGが出た。Kが発見して変な叫び声を上げていた。男気なく私に殺させようとしたので「初めに見つけた人が最後まで面倒みるのがルールでしょ」と押し付けた。Kは慣れてなさそうな手つきでGジェットを噴射。実は私はG処理に関してはかなり自信がある(気分悪くする人がいるかもしれないので理由は書かないでおく、聞きたい人がいたら聞いてほしい)のだが存在が嫌いで見たくないので関わりたくなかった。手間取っていたので食器洗用洗剤を持って応戦した。トドメにはこれが一番利く。黒々としてかなり大きいGだった。大きい方が外から来る系で安心だけど。ようやく始末したKが生気のない顔で戻ってきた。情けない。サイは遠くから見ていて気になっていたようだけど何となく殺しているところは見せなかった。「むしさんは?」と聞かれたので「外にいっちゃったよ」と言った。Kは「G-SHOCK」と急につぶやき、面白かったので私が爆笑したら力なく笑っていた。

二人が寝た後、大森さんが作ったゆるめるモ!の新アルバム収録曲「うんめー」のMVを観たら自分でも信じられないぐらい涙がぼろぼろ出てきて観終わって大森さんに感想を言おうと思っただけでまたぼろぼろ泣いてしまった。落ち着くために歌詞を紙に書き写した。とてもいい曲だった。少し大きくなったサイがもし学校やどこかで嫌なことがあった時、この曲を聴かせてあげたい。


6月21日(火)晴、蒸暑い
朝。写真を撮ろうと思って布団の上で我が家のぬいぐるみを大集合させたら並んでいる様子が最高に可愛くてサイと二人でげらげら笑った。サイは私が5年くらい前に買った嫌な思い出のつきまとうけっこうリアルな鰐のぬいぐるみを特にかわいいかわいいと言い抱きしめていた。私も鰐のぬいぐるみを気に入っているし鰐に罪は全くないので捨てたりは絶対しない。目につくところからは少し遠ざけてしまうが、こうやって時々可愛がる。サイはその鰐のぬいぐるみ、通称「わにちゃん」を抱いて登園した。好きな漫画、岡崎京子のPINKみたいでいいなと思った。わにちゃん(を動かす時)は結構がらがらした声で喋る。

私は昔からとにかくぬいぐるみが好きだ。所詮布の塊に過ぎないともちろん頭では理解しているが、どうしても生きているように接してしまう。一人で部屋にいる時に話しかけるとかは流石にしないが、子ども(もしくは人)相手だとぬいぐるみを動かしていくらでも話せる。小さい時から母はぬいぐるみを動かして私やきょうだいに話していた。もちろん普段の母とは普通に話していたが、本当に大事なことや言いにくいことはぬいぐるみに言わせていた。それぞれ声や性格を変えてぬいぐるみ達(を動かす母)は私に接してきた。関西弁、関東弁も性格に応じて使い分けられていた。どこの家庭でもそれが当たり前に行われていると思っていたものだから、人にぬいぐるみの話をしたら気味悪がられて初めて「うちの家」が特殊だと気が付いて驚いた。きょうだいも同じことを言っていた。この話は書くと長くなるので後日。

夕方。今日のお迎え担当はKだったはずが、「取引先につかまった」とLINEが入った。だから鐘と同時に退社して駅まで走ってサイを迎えに行った。サイを迎えに行くといつものように犬のように飛んできた。わにちゃんは年配の保育士に人気だった。サイは機嫌が良く校庭で飛び跳ねてなかなか帰ろうとしてくれなかった。耳鼻科へ連れて行きたかったのでなんとか自転車に乗せて園を出た。耳鼻科に行く途中、運送会社のトラックが止まっていて、車体の横か後ろから白い煙がもうもうと上がっていた。なんか様子がおかしいと思っていたら煙は更に増え、焦げたような匂いがした。あ、これ危ないかもと思い、その道を通るのを辞め反対側へ行った。付近の人は怪訝な顔をしていた。結局トラックはどうなったのか分からないが、爆破か炎上するかと思った。二人で死ぬかもと思い咄嗟に逃げた。何もなかったかもしれないがサイだけは死なせてはいけないとドキドキした。サイを産んでから危険察知センサーみたいなのがかなり敏感になってしまった。
耳鼻科で遅くなったので帰り道の食堂でサイと二人で食べて帰った。カオマンガイと一瞬迷ったけどビールも頼んだ。サイの水と乾杯した。サイはお子様ランチ的なのを食べて喜んでいた。5名くらいの真面目なおじさん集団(なんやそれ)もビールを飲んでカオマンガイを頼んでいた。「今、若い女の子に人気らしいよ」とうきうき言っていて同じものを食べてる私は「若い女の子」になった気がして嬉しくなった。「どこの国だっけマレーシアだっけ」とカオマンガイ談義は続いていた。

コンビニへ寄ってから帰宅。お風呂を入れようと思っていたらKが帰ってきてお風呂を代わってもらった。普段は私がサイと入るがたまにはいいかと思って。そしたら風呂場から鳴き声が聞こえてきてサイはすがるように出てきた。Kは多分洗い方とか慣れていないのだと思う。Kとサイが寝て、私はシャワーを浴びて部屋を最小限に暗くして静寂の中、水をお供に心の整理(部屋は汚い)をしてから寝た。思考や雑念が渦巻いている時は文字にして打ち込むことが私には合っているらしい。

6月22日(水)
朝。K休。サイはさくらんぼの種を飲み込む快感?を覚えたらしくわざと飲み込んでいた。心配していたらKは「でるんだからいいんじゃないの」と呑気だった。
昼。前は同じ場所にいて別の支店に異動になった人が仕事でこちらに来たらしく久しぶりに会った。悪い人ではないが、その人が開催する飲み会に行くと自分以外にがんがん酒を飲ませて潰した挙句、酔った人々を盗撮し自分のSNSに載せる。だから飲み会は行かないか、どうしても行く必要がある時は心を鬼にして、飲んだふりをして別の空グラスに入れたりして酔わないようにする。それはどうでも良いとして、その人(素面の時は普通にいい人)に「Iくんが少し前に辞表を出したがっていた」と聞いた。Iくんはその人の元部下で、今は違うけど同じ支店で働いている。Iくんは私より3つくらい後輩で、普段はぼーっとしてナマケモノみたいなのに仕事になると頭がキレてこちらの思うことを先読みした働き方をする。入社して間もない研修期間の頃、Iくんが仕事できすぎて私の用意した練習用業務が物足りなさそうだったのを覚えている。その支店では、よからぬ者達によって優しい人がどんどん潰されているとか辞めたとか飛ばされたとかあまりいい噂を聞かない。信じられないようなパワハラは揉み消されていた。でもIくんは強いから大丈夫かなと思っていた。様子を聞いて泣きそうになって社内メールをした。

夜。知り合いに急ぎで渡すものがあってお互い終業後待ち合わせして軽く食事をした。私の大好きな場所。ここには好きな人としか行きたくない。サイのお風呂&寝かしつけがあったので1時間くらいだったがたくさん話せて嬉しかった。そういえば土曜日にあったばかりなのに喋りたいことが山のようだった。テイクアウトしたアイスを一緒に食べながら駅に向かって別れた。家に帰るとKがサイをお風呂に入れ始めてくれていて、サイの嫌がる声が聞こえた。私が帰って来て救いを求めるように、サイはカラスの行水で風呂場から飛び出してきた。「こわかったねぇ」と言ってタオルにくるんで抱きしめた(Kには私がそうやってサイを父親嫌いになるよう洗脳しているといつも言われる)。歌いながら入眠。私は少しだけ寝て起きて大森さんの深夜ラジオを聴いてから寝た。


6月23日(木)曇り
朝起きて貧血で顔面蒼白。最近食事を十分にとってなかったのと昨日夜更かしした自分に責任はある。メンタル的には問題ないがふらふらで出社。出社したがやっぱりムリと思って一応上司に打ち明けた。帰っていいよと言われたが朝やらねばならない仕事があったので午後休を申請した。データ入力と打ち合わせをしたら即退社。

家に帰って寝たかったが、常に近所の動向をチェックしている監視おばさんに「この人子ども保育園行かせて家で休んでるわ」と思われるのが嫌で、思いついたのが好きだがサイが生まれてから行けてなかったプラネタリウムだった。映画のように必死になって観ずに何なら寝てしまってもいいかもしれないと思った。上映が始まり、もたれ具合がちょうどいい座席、貸出の気持ちいいブランケット、最新技術を駆使した半球スクリーンに投影される映像(こんなにすごいって知らなかった)、某好きな女優のぼそぼそとしたナレーションと音楽、なんか漂う癒し系の匂い(ヒーリング効果のためそういう香りを出しているらしい)で完璧最高だった。天国。開始間もなく眠くなってきて、でも予想以上にプログラムが面白かったので半分寝ながらもぼーっとして観聴きしていた。「昔の人は星を頼りに航海していました」、というどこかで聞いたはずの解説に自分でも驚くほど感動して(女優さんの声の効果絶大)、気が付いたら泣いていた。さすがに声を出して泣かないがひたすら静かに涙が流れていく感じだった。冬の空で大森靖子さんの曲にもなっている「オリオン座」が見えて、あぁーとまた涙が出てきた。なぜかこれまでの人生の良かったこと悪かったことが溢れてきて、ちょっと眠くて意識が朦朧としていたので死ぬ前ってこんな感じかなと思った。上映が終わり明るくなったら、隣の知らない人は何事もないような顔をしていた。「(映像がきれいすぎて)気持ち悪くなった」と言っている人もいた。泣いているのが自分だけなのが恥ずかしくて急いでハンカチで拭いて平気な顔で出た。

帰ろうと思ったら外でビールを飲んでいる人が見えて、吸い込まれるように入店して外の座席に座りビールを一杯だけ頼んだ。風が気持ちよかった。涙を流したからか目を休めたからか気持ちと頭がすっきりしていた。少しだけ洋服屋を覗いていつもの時間に仕事帰りのような顔をしてお迎えに行った。Kが帰宅して「ビール飲む?」と聞かれ「いや、いいよ」と答えたら驚かれ三回も確認された。別に怒らないと思うが、半休を取って出かけたことは何となく秘密にしようと思った。
夜、暑くてサイがなかなか寝付かなかった。

卒論は2万文字、一週間は8747文字

6月12日(月)曇り
朝。目覚めた瞬間、気温や外の明るさで「あ、寝坊したかも」と何となく感じた。リビングに行き時計を見るとやはり寝坊していた。慌てて朝ごはんの準備をし、サイが食べている間に着替えたりサイの洋服を準備した。いつもは側で食べる様子を見守っているが放置したばかりに戻ると牛乳をテーブルのマットにこぼし、それを手で広げて遊んでいた。こぼれた牛乳の染みを見て「ミッキーみたい~」とへらへらしていた。私が一緒に笑ってくれると思っていたらしく、叱ったら不意打ちを受けた顔をした。もうやらないようにと低い声で言ったら「うん」と反省していた。私がサイが生まれる前に買ったジンジャーブレッドのぬいぐるみ(通称ジンジャーちゃん)を抱いて登園。


帰りの自転車に乗りながらぶつぶつジンジャーちゃんに話しかけていた。夜はK不在。夕食は冷凍してあったチキンライスに焼いた卵を載せてオムライス風。人参とケチャップでアンパンマンの顔にしたらサイは喜んで、顔を壊すのが嫌なのかもったいぶって食べていた。暴食を止めるには何でもアンパンマンの顔をつけるのがいいかもしれない。夕食後、甘えてきかと思うとわんわん泣き続けてぐずっていた。体が熱かったが体温を計ると平熱だったので眠かったらしい。保育園での昼寝が短かったのかもしれない。ベッドに連れていくと案の定いつもよりすーっと入眠した。


6月13日(火)小雨 寒い
明け方喉が痛くて起きた。空気清浄器を付け忘れていた。布団に入りながらラジオを聴いて会社の美人にもらったパンを2個食べた。サイはいつも起きる時間を過ぎてもまだ寝ていた。やはり昨日の昼寝が短かったのだろう。キウイを切って全部サイのお皿に入れたら一切れだけ私に分けてくれた。「たべてね」と大人みたいな顔で言われた。今まで全部独占していたのが最近少しずつ自分の分を「分け与える」ということを覚えてきたらしい。ぬいぐるみ二三人(体?)に見えない「エアお菓子」を分け与える姿も時々見られる。今日もジンジャーちゃんと登園。教室に入ると「ジンジャーブレッドだ」と先生が言い、それを聞いて他の子も物珍しそうに集まってきた。他の子に奪われると思ったのか素直に私に預けた。

夜。サイは昨日と同様機嫌が悪い。コンロに立って焼きそばを作っていたらくっついてきて危なかったのでKに代わってもらった。先週の懇談会でどの子も家でイヤイヤが酷いのに保育園で泣くことはなかったり、家で何も食べない子が保育園では好き嫌いなく食べるという話が多く、聞いたお母さんは皆驚いていた。「園では我慢しているのですが家では甘えたくてぐずることがあると思います」と言われてからあまのじゃくに納得し少し可哀相に思っている。甘やかしてはいけないけど家がサイにとって自然でいられる場所でありたい。食後もぐずっていたのでKはテレビをつけたらいいと言ったが何となくテレビに頼りたくなく、ソファから滑り落ちるふりをしてサイに助けてもらう遊びをしたり、空き箱をテレビに見立ててぬいぐるみを動かしたりしたら泣き止んで嬉しかった。あとは「大きなかぶ」の蕪役になってサイに引っ張ってもらって床をずるずる這っていた。Kは失笑していた。書くと阿呆みたいだが必死。親は子に受けてなんぼだと思っているし子どもの前で恥なんて一切存在しないので新人芸人並にいつも体当たりで何でもやりますの精神でいる。途中から失笑していたKに代わってもらい、テレビ禁止を条件にしたら箱でテレビごっこをして結構頑張っていた。サイの機嫌もよかった。


6月14日(水)
朝。Kがいたのでわりと余裕があった。Kがいつ休みなのかよく把握していないが時間になっても起きなければそうなのだと理解している。私が嫌いなさくらんぼを二人分器に入れたらサイが全部食べた。器用に種も取って食べていた。今日もジンジャーちゃんを抱いて登園。

夜。K不在。冷蔵庫に茹でたとうもろこしとブロッコリーが入っていたので助かった。あとハムエッグと納豆。朝ごはんみたいな夕食。夕食後、サイと二人で大森靖子さんやビートルズの曲をかけてひたすら全力で踊るという遊びをした。サイは大森さんの「ピンクメトセラ」を気に入ったようで私がティッシュの空き箱を切って子どもの日の帽子に張り付けたなんちゃって猫耳帽を被り、ペンライトを振りながら踊り狂っていた。私が踊りながら移動するとサイも着いてきて、二人で笑いながら色んな場所で足を踏み鳴らしたり手を振ったりして楽しかった。サイは勢い余りすぎて時々よろめいていた。いい運動になった。お風呂に入れて布団に寝かせると「おとうさんは?おとうさんは?」と言って泣き出し30分以上寝付かなかった。普段はこんなことないので驚いた。


6月15日(木)
朝。サイが寝ている間にラジオを聴こうと思ったものの、タイムフリーで聴き始めてすぐにサイが起きてしまい仕方なくそのまま流していた。「ピンクメトセラ」が流れて、サイはイントロですぐに「きのうのやつ!」と言った。そして踊ろうと思ったのか、猫耳を探し回って見つからないと機嫌が悪くなった。え、今!?と思ったけど落ちていた帽子を拾って渡すとペンライトを持って再び踊っていた。朝は時間がないから勘弁してほしいけど可愛かった。

夜。サイは帰宅すると空腹を我慢できなくてグミなど小さなお菓子を一つ食べる。今週は日曜日に買ったアンパンマンチーズがそれになっている。「おかあさんもたべる?」と言って私の分も出し、いらないと言っても口の中に入れてくる。半年ぐらい前にチーズを買った時も同じように夕食の前に欲しがり、椅子に座って食べるように促していたのだが、それを今も覚えているようでチーズを一個食べるために椅子に座りに行く。先週コンビニで買ったプリンも食べたがったが、「お父さん帰って来てからみんなで食べようね」と言うと大人しく従った。整骨院帰りのKが帰宅したら「肩いたいの?」「ぷりんたべよう」と大人みたいな口調で言っていた。夕食はささみに冷蔵庫にあったキャベツを千切りにしたものとチーズを入れたら不思議な味がした。Kは一口食べて「面白いね」と言った。面白い夕食。夕食後、三人で奪う合うようにサイが振り回してぐちゃぐちゃに混ざったプリンを食べた。空になってもサイはKと交互にもうないプリンを急いで食べるふりをして可笑しそうに笑っていた。


6月16日(金)曇り
朝。サイがいつもより早く起きて私が起きられないでいるとアンパンマンチーズを食べたいと言われダメだと分かっていたが残り2個しか入っていなかったので袋ごと渡しまた布団に入った。サイは2個とも食べていた。それでもぐずっていたので「今日サイくんとお母さんが着る服見てきてよ」と言ったら部屋を出てしばらくして戻ってきて、サイは引き出しから自分のTシャツを出し低い位置にかけてあった私のブラウスと一緒に持ってきてくれた。感心している場合でないが偉いなぁ。サイが選んでもってきてくれたブラウスを着て出勤した。

昼。虐待で娘を殺した母親に懲役13年の判決が下ったとニュースで見た。サイが生まれてから虐待のニュースがどうしても気になる。母親はどんな人なのか、Facebookの写真や子どもと写っているプリクラなどが公開されていると食い入るように見つめてしまう。皆育児に疲れたというより、私より綺麗で化粧をちゃんとしているし活発そうな感じがする。それでも子どもは殺された。記事を読むと虐待内容は信じられないぐらい惨いものだった。亡くなる直前の衰弱した娘を見て夫とLINEで笑いあっていたらしい。いつもそうとは限らないが虐待する母親は父親と共犯関係にあるというか我が子より夫を愛している感じがする。私にはそれが信じられない。こんなこと言ったら怒られるが、もしサイとKが同時に崖から落ちそうになって一人しか助けられないとすると迷わずサイを助けるだろう。など言っている場合ではなく、判決を受けた母親は今何を考えているのだろう。考えたところで亡くなった女の子は戻って来ない。

午後、仕事関連でセミナーというか勉強会に参加していつもより少し早めに直帰した。話が難しくてついていけなかったけど勉強になった。まだ明るいのが嬉しいと思っていたら空模様が怪しくてベランダの洗濯物が一瞬頭によぎったが、行く所があったので家に一度帰る選択肢は捨てた。セミナーで頭が疲れたので電車に乗る前に駅前のスタバに行った。「チョコレートブラウニーなんたら抹茶ショット」というのが看板に描かれていて、テイクアウトしてお店から出て一口食べた(飲んだ?)大学生らしき女の子達が「超おいしー♡」と声を上げていた。女の子達が手に持っているカップを見たらチョコレートケーキがどかんと丸ごと乗っていて何これ最高と思って迷わずそれを頼んだ。前の人も前の前の人も同じものを頼んでいた。店員の女の子は三回続けて慣れた手つきでケーキをフラッペに載せたり生クリームを絞っていた。一口食べたらブラウニー、生クリーム、抹茶の相性が最高でこれぞ幸せの極みと思った。食べ進めるとブラウニーが崩れフラッペと混ざってしっとりするのがまた美味しかった。1/3ほど食べたところで突然この味がキツく感じて胃が重くなってきた。美味しいのに苦しかった。え、そんなはずないと焦って周りを見渡したら若い子は嬉しそうに皆完食して一緒に別のケーキまで食べている人もいた。その瞬間、自分がこの子達とひとまわりくらい離れていてもう若くないという事実に気が付いた。自分がおばさんなのは分かっているはずなのに時々それを忘れてしまう。キラキラした大学生と同じ感覚に浸れるなんてとんだ勘違いだった。何とか食べ終わると急いで店を出て電車に飛び乗り原宿に向かった。

原宿へ行ったのは「さいあくななちゃん」の展示を観るためだ。時々ネットで見かけて気になっていたけれどネット上の画像ではよく分からず、実際見てもないのに好きか嫌いか判断したくなかった。自分の目で作品を観てみたかった。土日は予定が詰まっていたので、「どうしてもみたい絵がある」と言ってKにお迎えを代わってもらい行かせてもらった。駅に着いてギャラリーまでの道のりをグーグルマップで見ると竹下通りを抜けた方が早そうだったのでそうした。平日夕刻なのに竹下通りは人でごった返していて通り抜けるのが大変だったから後悔した。お台場かどこかで購入したのかタカ&トシのトシがいつも着てるライオンがプリントされた赤いTシャツを着ているアジア人観光客のおばさんがいた。おばさんは堂々としていてそれを昔から着ていたみたいによく似合っていた。パステルカラーの巨大な綿あめを持った外国人、自分の時代からは信じられないくらい大人びて見える高校生、よく分からない人、色んな人がいた。小学生の時、家族旅行で初めて東京に来て竹下通りを怯えながら歩いたことを思い出した。

ギャラリーに着くと展示室には先客がいてななちゃんと思わしき方に大きな声で一方的に話していた。「売れている草間彌生奈良美智でも必ずバックにサポーターがついていて何ちゃら」と言っていた。広くはないスペースだったので入口で待機し、その男性が話し終えて出るとようやく入ることができた。初めて作品と対面した。どう感じたかなどの感想は別途記述するとして(というか感想なんて野暮な気がする)辞めておく。誰も来ないのを良いことに長い時間展示室にいた。ななちゃんともたくさんお話しできた。人が来たので後ずさりしながらお礼を行って出た。ギャラリーを出ると外は真っ暗だった。本当に観てよかったなと思いながら、うっかり忘れていた父の日に父と義父に色サイズデザイン全てお揃いのTシャツを買って急いで帰宅した。サイはチラシをみて「なにこれー、おおもりさん?」と言っていた。髪型が似ているからそう思ったのかもしれない。ななちゃんの作品、サイにもいつか見せてあげたいな。


6月17日(土)晴れ
朝ごはん、洗濯。私が洗濯を干している土曜日の朝、サイはいつも前日放送分のアンパンマンを観る。やきそばパンマンが美味しそうだった。美味しそうだねぇと言ったらサイも「やきそばあんパンマン(ちょっと間違っている)かいにいきたい~」と言った。なので二人で自転車に乗ってここならあった気がするという美味しいパン屋さんに買いに行った。
期待してるんるんで入店したらやきそばパンは売ってなかった。サイと二人で気が狂ったみたいに「やきそばパンやきそばやきそば」とぶつぶつ言って店内をきょろきょろした。店員さんに聞いたら「そういうのはないです」と言われた。「え、今日だけないんですか?それともいつも作ってないんですか?」とやきそばパンがないと生きられない人みたいな感じで聞いたら若い店員さんはもうちょっと上の人に確認して戻ってきた。「そうですね、お作りしていないですね」と言われた。残念だったが仕方がないのでコロッケサンドとカツサンドと可愛い犬とうさぎのパンを買った。飲み物の冷蔵庫に行くと「サイくんこれね」と飲んだこともない豆乳を選んだ。私には「おかあさんこれね」とよく分からないオーガニックな珈琲牛乳を選んでくれた。豆乳大丈夫かなと思ったけどそれがいいと言うので買った。パッケージを眺めて「きのこのジュース」と勘違いしていた。

父の日の荷物をコンビニで送った後、いつもの公園へ行った。適当な日陰にピクニックシートを広げてサイと買ったパンを食べていると、目の端に保育園でサイが好きな◎ちゃんと◎ちゃんのお母さんが友達親子といるのが見えてげっと思った。いい人だけど◎ちゃんのお母さんが実はちょっと苦手。その友達のお母さんはもっと苦手。もしこちらに気付かれたら嫌だなと思って知らぬふりをしてサイと食べ続けて、そろりと後ろを振り返って見たら◎ちゃんのお母さんと思った人は全くの別人で友達親子も全然知らない人だった。先週もそうだったけど、私は保育園のお母さんに会うことを極度に恐れすぎている。食べ終わった後しばらくそのまま公園でサイと遊んでいた。1時間ぐらい遊んでいたら暑さで私が気持ち悪くなってきたので家に帰って二人でシャワーを浴びて昼寝。昼寝後、楽しい宴へ向けて出発。

以前みんなで築地に行った時にまぐろ料理の店の前を通りがかり、一同気になって改めてそのお店で会を開こうということになっていた。ここよさそう、となっても結局行かないで終わることが大半なのでちゃんと実現して嬉しい。きめ細やかで仕事のできる幹事様と優しい方々のおかげだ。Kは夜不在だったのでサイも連れて行った。最初は固まっていたサイも優しくて可愛いお姉さん方やぬいぐるみ、ある方がiphoneで流してくれた童謡やアンパンマンの歌のおかげで徐々に打ち解け、途中から飛び跳ねたり私のiphoneでめちゃくちゃな写真を撮ったり、「サイくんとってよ」と壁の前に立ち撮影の指示までしてきてテンションマックスだった。ぬいぐるみも童謡もあり可愛いお姉さん達にチヤホヤされながら美味しい料理に舌鼓を打つなんて幼児向け超高級ラウンジみたい。盛り上がる中、あまり遅いとよくないと思い先に失礼した。それまで笑って奇声を上げていたくせに、別れ際「サイくんバイバイ♡」とお姉さん達に言われてもズボンの両ポケットに手を突っこんでそっけない態度を取る塩対応には笑ってしまった。どこでそんなスマートなモテる男の技みたいなのを身に付けたんだろう。
せっかく機嫌が良かったのに出際に挨拶をした店主にいきなり抱きかかえられたのと飼っている犬が大きな声で吠えてきて、嫌がってるのに店主が無理矢理犬をサイに近づけようとしたのでサイは怖い嫌だと言ってわんわん大泣きした。好意のつもりだろうが、こう距離感なく寄ってくる人は勘弁してほしい。おかげで帰りは大変だった。帰宅後、超特急でお風呂に入れて就寝準備をした。いつもより一時間遅くなってしまった。布団の上で「おさかなおいしかったね。おなかとおしり、どっちがおいしいんだろうね。おもしろいね」と言ってからパタンと寝た。

私は何だか眠れず楽しかった思い出を反芻したり、この人のここが好きだなと考えたりしていた。


6月18日(日)曇り時々雨
眠れず遅くまで起きていたせいで寝坊した。今日はアンパンマンの握手会なのに。Kはこのために丸一日休みを取った。なぜ早起きの必要があるかというと、握手会に参加するには早朝から配る整理券(一グループにつき代表者一名がもらえばOK)が必要だからだ。知り合い家族と行く予定だったが、電話すると知り合いも寝坊したらしい。本気が足りない私達。父親達はそれぞれ急いで朝ごはんを食べて整理券配布場所に向かったが、着いた時には整理券は終わっていたらしい。それでもショー観覧の整理券はもらえた。みんな日曜なのに早起きしてすごい。子どもの夢の後ろには親の必死さが不可欠なのかもしれない。
11時すぎに知り合い家族と合流して一緒にお昼を食べた。空間を重視してバイキングにしたら落ち着かなかった。サイは黒いジュース飲みたいと紅茶をほしがって騒いだ。おまけにジュースのコップをひっくり返すし散々だった。知り合いの子はサイと生まれた日が半月違いで予定日は4日違いだった。何度か仲良く遊んだのにサイは忘れたのか固まっていた。実はKとは知り合い夫婦の結婚式二次会で出会った。そういう縁もありずっと仲良くしてくれている。家族ぐるみで付き合いがある人は稀なので大事にしなきゃなと思う。奥さんは二人目を妊娠中で来月予定日。もうすぐ生まれる赤ちゃんを大きなお腹越しに撫でさせてもらった。食後それぞれ別行動をして、整理券に書いてある時間に合わせてショーが開催される場所に向かった。

握手会の整理券を勝ち取った家族はステージに近い優先エリアにいた。子どもにアンパンマンのコスプレをさせたりしていて我々とは本気度合いが違った。間もなくお姉さんが登場して説明があった後アンパンマンバイキンマンの着ぐるみが子ども達の掛け声と共に飛び出してきて始まった。今出るぞという瞬間、サイはそわそわしていた。大森さんを待つ私と一緒だ。私より年上であろうお姉さんの甲高い声と語尾をやたらと伸ばした話し方が気になってショーに集中できなかった。Kはどう思っているかなと思って横を見たら寝ていた。サイがどんな顔をしていたかよく見えなかったが、一緒に踊ろうよのコーナーになってもサイは固まったままステージを見つめていた。ショーはあっという間に終わり、握手会の前にアンパンマン達はさっさと捌けてしまった。
会場を離れ「握手会、残念でしたね」などと言いながらエレベーターを待っていたらいきなり係のお姉さんが来て道を空けて下さいと言った。えっと思って顔をあげたら目の前の業務用扉が少し開いていた。ああ、これチャンスやんと思ったら予想通りアンパンマンバイキンマンが二度目の会場の掛け声でどわっと飛び出してきて、扉の真ん前にいたサイと知り合いの子をちらっと見て手を振ってから去っていた。思わぬ形で出待ちになりラッキーだった。

みんな疲れてその後すぐ解散した。サイは帰りの電車で相当機嫌が悪く、途中で欲しがったセブンティーンアイスを与えたが食べ終えるとまた機嫌が悪くなった。何してもぐずって車内でわぁわぁ騒ぐので何かないかなとiphoneを出しメモ帳のお絵かき機能を触らせたらようやく落ち着いた。サイの向かいに座っている男の人を描けと命令されたので描いた。なのでメモ帳には知らない人が難しい顔で俯いて音楽を聴いている謎のスケッチが残っている。何とか家に辿り着いたらどっと疲れがきて私もKも放心していた。あんなにぐずっていたサイは家に入った途端、急に機嫌が良くなりショーの再現をしたりアンパンマンの台詞を絶叫したりテンションが高かった。顔を交換する時の効果音を歌わされてタイミングが遅れると怒られた。

ふと父の日なのにKに何も用意していないことに気が付いた。自分の父親でいっぱいいっぱいだった。どうしようもないので正直に謝って晩御飯好きなもの作るから言ってよとリクエストを促した。「からあげ」と返ってきたが揚げ物なんて勘弁と思ったので「お好み焼きとかどう?好きでしょ」と冷蔵庫にあったキャベツを使うために強制的にお好み焼きになった。じゃあ聞くなよという感じ。まあまあ美味しくできたお好み焼きとKが買ってきた刺身を食べた。食後、サイがショーの内容を記憶していて話し出したので、ショーのお姉さんの台詞をモノマネしたらげらげら笑って大受けした。調子に乗って2回目をしたら更にツボにはまったようで、終わる度に「もういっかい!」と言われ計50回ぐらいやらされた。お風呂でもやらされてまだ笑っていた。
サイが寝た後、何だか眠れず「父の日やし私が洗濯とか掃除するから寝ていいよ」とKに提案すると「なにそれ怖い」と言われた。家事をやると言って怖いと言われる妻って一体と思った。日中たくさんの人といたので一人になりたかったのもある。のそのそ家事をしながらお礼をしたり返事をしたりしていた。

芸術から始まる濃くて甘美な週末だった。
父のTシャツは母の方が「変なTシャツ(オタT)しかなかったから助かる」と喜んでいた。

それにしてもこの日記長すぎる。8747文字。論文か。

何でも分かってるような顔しないでよ

6月5日(月)
お迎えに行くと空は暗く今にも雨が降り出しそうだったので、どの親御さん達も蜘蛛の子を散らすように大慌てで帰って行き、私も世界が破滅するぞという気持ちで自転車を全力で漕いで帰宅した。「雷さん来ちゃうとおへそ取られるからね、急いで帰るよ」と帰りながら話していたからか、家に着いてから空がゴロゴロ鳴り始めるとサイは雷をものすごく怖がって怯えた表情で私にぴったりくっついて離れなかった。私が夕食を作るためにサイから離れると同じ表情でネコの巨大ぬいぐるみをずっと抱きしめていた。まもなく雷は落ち着いた。

夕食後、妹におめでとうを伝えるために実家にテレビ電話をした。妹が帰宅する前は練習で母相手にハッピバースデーの歌を自信あり気に歌っていたのだが、妹本人が帰宅していざ歌うとなると恥ずかしがって声は小さいし私の膝に顔を埋めて最後まで歌いきらなかった。人見知りとも違う、「恥ずかしい、照れ臭い」という感情が芽生えたようで微笑ましい。
保育園で誕生日の子がいる日は偽のケーキ(知り合いの子が通っている資金がある園ではちゃんと本物が出てくるらしい)を囲んで歌を歌い、偽のろうそくを吹き消して毎回お祝いしているものだから、誕生日=ケーキという図式が頭の中にあるらしく、「サイくんもケーキたべたいー!」と騒いでいた。「サイくんの誕生日はまだだよ」と言っても誕生日が生まれた日であることすら知らない彼に誕生日が一年に一回しかないのを理解させるのは難しく、不服そうだった。いっそのこと『不思議の国のアリス』に出てくる「何でもない日おめでとう」の歌でも歌おうか。英国BBCミュージカル版のアリスが大好きで小さい頃VHSが擦り切れるほど観た。DVDに変換したくて実家から持って来てはいる。最高に面白いのでサイに観せてみよう。

6月6日(火)
朝。少し肌寒い。アンパンマンのTシャツを着たいと騒いだが半袖だったので、長袖を着るよう説得するのが大変だった。キャラものの洋服には手を出さないと決めていたが、やなせ先生の絵ならいいかと思って買ったらサイは予想以上に気に入っている。あとは父がめちゃくちゃ趣味の悪いアンパンマンの派手なTシャツを送ってきて「げっ」と思ったがサイは相当気に入っている。そうやって着せるものはだんだんどうでもよくなる。

夜。町田康さんの新著サイン会。サイと同じくらいの子どもを連れた人もいた。優しさとこちらの内面を見通すような力強さを併せ持つ眼差しにいつも卒倒しそうになる。男の人に対して「この人カッコいい!きゃー」などと思うことはあまりないのだが、この方だけは例外で兎に角格好良い。ベテランになってもずっと変わらない態度。町田さんの書く字が好きなので見惚れるように筆の運びを眺めていた。新刊の『ホサナ』は分厚くてまだ読み始めたところなので感想が言えなかった。(子育てと関係ない話をつい長々書いてしまった)

帰宅するとサイはちょうどお風呂から上がったところで、機嫌がよかった。髪を乾かしていつものようにベッドで一緒に歌いながら寝た。「さくらんぼパイ」の歌が最近お気に入りらしい。

6月7日(水)
朝。久々に休みのKがいたので助かった。サイを任せていつもより10分ぐらい長く寝てから起きて台所へ行くとKは私のお弁当を作ってくれていた。家が汚なすぎると言われた。蕎麦屋の出前のように「今日片付けるからさ」と言い訳した。私が昨日買った可愛い兵隊の形をしたパンを箱から出すとサイは大喜びだった。口がなかったので「おくちがないねぇ」と覗き込んで言っていた。私が目を離した隙に人形の頭は鮫に喰いちぎられたようになっていた。サイはそれからお土産の鮎焼きもKと半分ずつ食べた。「お魚だよ~」と言っても形に興味を示さず食らいついていた。中に入った求肥餅を勘違いして、「チーズがはいっているねぇ」と嬉しそうにしていた。Kがいるとサイは出かける前もぐずることなく機嫌がいい。アンパンマンを歌いながら踊っていた。最近はお気に入りのメロンパンナのぬいぐるみを必ず連れて登園する。いつもクラスの入り口で別れ際に私とハイタッチをするが、今日は(私が動かした)メロンパンナともしていた。
夜。帰ったら余りの汚さを見兼ねてKが掃除してくれたらしく部屋がきれいになっていた。サイはいつも以上の食欲であっという間に自分の分を食べ終えるとKの皿から素手で鷲掴みにしていた。私の皿からはしなかった。炒め物にサイの大好物のソーセージが入っていて、それをもっと欲しがるのを分かっていたので私は危機を感じ、自分の皿のソーセージだけ先に急いで食べたから私の皿はサイの関心対象から外れていたのだと思う。サイはソーセージをなぜか「ポッテト」と呼ぶ。「ポテットほしいーー!」と絶叫していた。ポテトのことも「ポテット」と呼ぶ。

6月8日(木)
午後から保育園の懇談会だったが半休では開始時間に間に合あわないので一日休みを取った。朝いつもの時間にサイを保育園に送ってから急いで電車に飛び乗り映画館に向かった。数時間一人になる時間ができたら映画や美術館に行くことが多い。そんな時しか行けないから。BABEL展と迷って、BEAMSでチラシをもらって気になっていたマイク・ミルズの「20センチュリー・ウーマン」という映画を観た。マイク・ミルズだし(偏見)、BEAMSが映画とコラボしてTシャツやバッグを販売していたので絵になるおしゃれ系映画かなと最初は感じていたのだが、チラシを読んだら俄然興味が湧き、調べたら朝の上映があるのを知ってこれは行くしかないと思った。
平日朝イチの映画館はほとんど人がおらず貸切状態だった。14歳の少年と母親含む彼を取り巻く三人の女性を中心としたひと夏の物語。確かに映像は綺麗で光の取り入れ方とかうっとりするぐらい美しかったが、何より出てくる俳優が全員魅力的で素晴らしかった。特に主人公ドロシアが息子に「何でも分かってるような顔しないでよ」と言われた時の顔が好きだ。母子が互いに距離感を計ろうとする姿に無意識のうちにサイと自分を重ね合せて観ていた。アメリカの時代背景もきちんと描かれていて音楽の使われ方もよかった。はっきりとした結論や分かり易い主張があるわけではないのに観終わった後、自分の中に蟠っていたどろどろした感情がすぅーと溶けていき、胸がストンとした。今何かに対してモヤモヤしている人は何も考えずこの映画を観てほしい、そんな映画だった。後から見たレビューで「ドラマ性に乏しい、退屈」と低く評価している人がいたがドラマ性がないのがいいところなのになと思った。あと、エル・ファニングが何から何まで可愛すぎて惚れた。好きなシーンや台詞がいっぱいあったのでDVDが出たら何度も観てみたい。「この世界の片隅に」と全然話は違うのに、あの映画を観た時と似たような感情が湧いた。自分が今まで生きてきたことについて、これから死ぬまでの人生について考えてしまった。
映画の世界にひきずられながらラーメンを食べて保育園に向かった。

懇談会では、冒頭に子ども不在の中、親だけで「きゃべつのなかから青虫でったよ~」を振りつけ付で繰り返し歌わされた(最初はうっと思ったけど途中からどうでもよくなり同調した)後、園での普段の様子をスライドショーで見せてもらった。数々の遊びや運動に勤しむサイの姿を観て、家にいる時よりも充実している感じがした。サイくんは男子用トイレで立ったままトイレができると先生から褒められ、知らなかったので驚いた。保育園ってすごい。自己紹介を経てそれぞれ自分の子の悩みを発表し先生や他のお母さんがそれにコメントした。トイレトレーニングとイヤイヤ期の話が多かった。他のお母さんの話を聞いているとサイはまだ大人しい方なのかもしれないと思った。終了後、サイが仲の良い男の子Uくんと一緒に近所の公園に行き、ビスコを食べたり(その前に保育園でもおやつを食べていた)鳩を追いかけて走り回ったり落ち葉でお店屋さんごっこをした。二人は生後半年頃から同じクラスで玩具を奪い合ったりしていたのでそれを思い出すとしみじみした。保育園のお母さん達は皆忙しそうなので今まで遊びやお出かけに誘ったことがなく、Uくんとも初めて遊んだけどサイが本当に楽しそうだったのでまた遊んでくれたらいいなと思った。帰りにスーパーに行くと二人が試食を勝手に食べたり走り回ったりして大変だった。
Uくんに会って触発されたのか、夜は久々にあまのじゃく先生登場。

6月9日(金)
朝。サイはヨーグルトを容器のまま食べたがるが1個だと多いので、半分私のお皿に移してから渡すと減らされたことに怒って「もうたべない!」と言い始めた。あー、またかと思って「じゃ、お母さん先に食べるね」と一人で食べていたら「ちょっとだけたべるよ」とやって来て、座らせると普通に食べ始めた。前にもこんなことがあったけど可笑しい。

夜。K不在。支払があったのでコンビニに寄ったらいつも買うアンパンマングミが売っておらず、ゼリーを欲しがって、でもやっぱりプリンにするとゴタゴタして帰りが遅くなった。冷凍していたパスタがあったので助かった。実家にテレビ電話。サイが実家の家族と話している間に洗い物・お風呂の準備など。いつものように歌を歌いながら入眠。数日前から「あんまり冷たくしないでね、サイダ~」という謎の歌を振りつけ歌をよく歌っている。親バカだがそれを歌う時のサイはめちゃくちゃ可愛い。

6月10日(土)
朝。すてきな人と一緒に出掛けた。私の周りには子どものいない知り合いしかほとんどいないので、気が付くと子ども連れでも嫌な顔をしない人とばかり遊んでいる。この人、あまり子ども好きそうじゃないなと思うと悪いような気がして疎遠になってしまう。かくいう私も自分や友人の子はもちろん可愛いと思うが元々子ども自体あまり好きではなかった。
友人がいて興奮状態だったらしく、レストランで椅子を蹴ったり大声を出して落ち着きがなかった。こういう時の叱り方がまだ分からない。怒ると余計に泣いて絶叫する。サイの大好物である海老が入ったメニューを頼んだら案の定海老ばかり欲しがった。いつもこのレストランでは出際に籠を持ったお姉さんが来て籠から好きな玩具を一つくれるのでサイはそれを覚えていて出口に向かいながら大声で「おもちゃもらえる」などと言って恥ずかしかった。声を聴いたのかお姉さんが出口で籠を持って待っていた。サイはいつも欲しい玩具を即決するのに欲しいものがなかったのか迷いに迷っておもちゃのカメラを選んだ。それを予想以上に気に入り、その後行ったデパートの屋上で「はいちーず!かしゃ!」とカメラの音声まで自分で言いながらずっと私と友人を撮影していた。どこかでカメラをなくしてから眠気も伴い機嫌が悪くなった。サイが昼寝している間にアイスを食べようと思ったら店に着いた途端タイミングよく起きたのでサイと争うようにアイスを食べた。サイはアイスが大好きで見ると目の色が変わる。私もサイと同じくらいの頃、アイスが大好物だったと母親から聞いた。帰宅後、カメラは私のカバンから見つかった。一緒に探してくれた友人に申し訳ないことをしたと思っている。
夜はバジルが大量にあったのでガパオライス。サイはバジル抜き薄味。まあまあ美味しくできた。


6月11日(日)
朝。Kにサイを外に連れて行ってもらい、その間に私は掃除洗濯等済ませて後から公園で合流して皆でピクニックする予定だった。ピクニックに持って行く弁当が暑さで傷むと困るからと途中で一回Kとサイが帰宅した。サイは新しいホームセンターに連れて行ってもらったらしく、風船をもらって機嫌がよかった。再び二人は公園へ出かけて行った。Kから「公園に◎◎ちゃんとお母さんがいたよ」とLINEが来た。◎◎ちゃんは同じクラスの女の子ですごくしっかりして可愛らしい。保育園で会う度に「あ、サイくんのおかあさんだ!」と言ってくれる。お母さんも美人で服装もきっちりした方で◎◎ちゃんに教育や躾がきちんと行き届いている感じがする。優しくて感じの良い方なのに私はいつも無意識のうちにこの親子と距離を置こうとしてしまう。この親子がいると聞いただけでろくに化粧もせずに外出しようとしていた私は会うのが億劫になり出かける準備ができなくなってしまった。ピクニック辞めて家で食べないかと提案するとサイがこんなに楽しみにしているのに、とKに怒られたので最低限の化粧をして弁当とシートを持って出かけた。Kは私に気を遣ったのか人がいつもと違うほとんどいない場所にシートを敷いた。周りに人が少なかったので鳩が集まってきた。私はKが買ってきた弁当を食べる気がせず公園の売店で買ったたこ焼きをつまんだら後でお腹を壊した。◎◎ちゃん親子には会わなかった。帰宅後昼寝。Kは仕事。

昼寝後、サイと二人でスーパーに行った。アンパンマングミが欲しいというので持たせたら「いらない(別のお菓子がいい)」と泣き喚いた。別のお菓子はサイにはまだ早いお菓子だったのでこれはダメと言うとわんわん泣いた。冷凍コーナーのアンパンマンポテトの前を素通りしたら更に火がついたように泣き喚いた。店内の人が皆こちらを見ていたが、こういう時はどうしようもないので何もせずとにかくレジを済ませて出ようと思っていたらおばあさんが寄ってきてサイに向かって「どうしたの?なんで泣いてるの?お店の中では泣いちゃダメなんだよ」とやや怒りながら言った。サイは一瞬静かになり怯えた顔でおばあさんを見て更に泣いた。おばあさんは煩い子を親が放置している、私が何とかせねばと思ったのだろう。私の方は一切見ていなかった。それが私はすごい嫌だった。悪いのは分かっているし申し訳ないと思っている、でもこちらにも理由があるから直接サイに言うのは辞めて欲しい。これ以上騒がれては困るとすがるような思いで陳列棚を見るとアンパンマンのチーズがあり、買いたくなかったがこれで泣き止むならと咄嗟に掴んで持たせたらあんなに何をしても泣き続けていたサイは嘘のようにぴたっと泣き止んだ。笑ってさえいた。子どもの感情は単純で複雑だ。おばあさんの一言で自分の子育てが全否定された気がして減った鬱がまた一気に元に戻った。
帰りに暗くなるまでサイと走り回って遊んだ後帰宅して夕飯を作り始めたら、Kに最近夕食が遅いと文句を言われた。お腹の調子はまだ悪い。

ずっと一緒にいよう

5月29日(月)晴れ
朝。月曜日の朝はとにかく持ち物が多すぎる。着替え、オムツ、コップ、エプロン、連絡帳という毎日の持ち物に加え週末に持ち帰ったシーツ、防水マット、タオルケット、帽子・靴が加わりそれらを準備するのも保育園に着いてから各所配置するのも一苦労である。(と言いつつ靴と帽子を洗い忘れて持ち帰ったものをそのまま持って行った。)保育園に着いてからは障害物競争やゲームのように一つ一つクリアしていかなければならない。最後の難関が布団にシーツをつけるステージで、他の親御さんも皆殺気立った表情で黙々と我が子のシーツを取りつけている(ように見える)。これは私だけかもしれないが、次のステージに移る時は廊下を走るし一瞬たりとも手を休めたり「○○先生今日も可愛いな」などと余計な事を考えてはならない。邪念が入ると電車に間に合わず会社に遅刻する。後から来た親御さんが私より早くシーツをつけ終わり去って行くと負けた!とか勝手に悔しがる。そんなにギリギリなら早く家を出ればよいのだが、最近トイレトレーニングをしていることもありなぜか何時に起きても余裕を持って家を出ることができない。いっそのこと家の時計を実際よりも10分くらい進めておくのが一番いい解決策かもしれない。

夜。日曜日に買っておいた材料でKが焼きそばを作った。私はその間にサイと遊びながら洗濯物を畳んだ。「てをつないでおどろうよ!」とサイはおもちゃでアンパンマンの音楽を鳴らして提案してきたが、私が生返事で畳むのを辞めなかったので、「てをつないでよ!おどろうよ!」と怒られた。なので洗濯物を畳みながらもう片方の手をサイとつないで踊った。大道芸みたい。食後も窓ガラスに映った姿を見ながら二人で前後に並びサイの考案した「きらきらおどり(きっら!きっら!と言いながら狂ったように顔と両手両足を動かしながら踊る踊り)」を踊った。どうやら自分の姿を見ながら踊るのが好きらしい。

5月30日(火)
朝。休日に買った三色のきれいな食パンを食べた。冷凍庫から冷凍したパンを取り出してラップをはがしトースターに入れダイヤルをまわすその一連の作業が最近サイの仕事となっている。この日も「サイくんやるよ!」と張り切ってやっていた。あとはパンを冷凍する時に冷凍庫に入れるのもやってくれる。何か使命を与えられるのが生きがいのようだ。食器を運んだり最近手伝いもしてくれるようになったし、その調子だワトソン君。夜は大事な日。珍しく何の連絡もなかった。帰宅したら二人はすやすや寝ていた。

5月31日(水)
朝。バタバタして家を出るのがいつもより遅れる。自分で着替えられるようになってきたものの、やる気がない時が多く急いでる時ほどやってくれない。「くつしたはいてね」と靴下を渡して「うん」と答えるが次に見た時もまだ裸足で渡した靴下はどこかへ消えてテレビを観てへらへらしている。完璧ではないが自分で履くことはできるし保育園でもしているらしいが、テレビに気を取られてなかなか家では難しい。それでいつも私が履かせてしまうので益々やらなくなる。かと言って朝サイがテレビを観ている間にするべきことがたくさんあり、テレビを消すこともできない。他の家庭はどうしているのだろか。

夜。傷がないのに手にアンパンマンの絆創膏を貼りたがった。日曜日に転んだ時、肘を擦りむいたのでアンパンマンミュージアムで買った絆創膏をつけたら喜んでいた。その傷はもう瘡蓋になっているし、「ちがでてる」と差し出した指も何も問題なかった。このような事は初めてではなく、去年あたりから保育園のクラスで絆創膏が一種のファッションアイテムとして流行していたらしく、一時期どこも怪我していないのに張ってくれとせがまれたのを覚えている。特にサイが好きだった(?)女の子がそれをしていたので真似したかったらしい。その女の子に熱を上げていた頃、ストーカーのように執着し姿が見えないと名前を叫びながら探し回り、まだ物の名前もよく覚えてない頃、駐輪スペースにとめてある自転車を見て「○○ちゃんの!」と特定していた。女の子の方が精神年齢が高いというが○○ちゃんはそんなサイをうまくあしらっている感じだった。別れた(?)のか最近は○○ちゃんのことも絆創膏のこともあまり言わなくなった。と思っていたが久しぶりに買い与えた可愛い絆創膏に再び興奮を覚えたらしい。とは言え、何もないところに貼っても肌に良くないのでとっさに「なんかいいの作ってあげるからそれはやめとこう」と言うと大人しく納得した。代わりに手芸用に100均で買ったビーズ(前Tシャツを装飾した時の余り)を繋げてブレスレットを作り始めたら思いの他食いついて「サイくんやるよ!」と専用の紐にビーズを通すのをやりたがった。うまくできると満足そうだった。ビーズの間にアンパンマンの紙(絆創膏の箱を切り抜いたもの)を入れてくれと言われ、穴をあけて通した。出来上がると満足そうに腕につけてくれた。


6月1日(木)
ほとんど記憶がない。何を食べたかも覚えていない。サイがぬいぐるみにたくさん絆創膏を貼っていた。もったいないけれど叱る気力が湧かなかった。


6月2日(金)
夜。仙台に行きたいなぁ牛タンを食べたいなぁと思いながらその念でおりゃーと野菜をざくざく刻んでパスタを作った。セロリを入れたら美味しかった。サイはセロリが嫌いなので避けていた。セロリは癖があるし私も最近まで食べられなかったので別に食べなくていいかなと思う。食後、また「きらきら踊り」をした。部屋が全然片付かない。片付けないから散らかっていく一方で恐ろしい。Kは家事を何でもやってくれるが物を所定の場所にしまったりするのだけは一切やらない(というかできない)ので私がやらない限り部屋は荒廃していく。床にサイの玩具、いつか使ったかばん、チラシ、サイが嫌がって履かなかった靴下、ハンガー等多く転がっている。私はそこまで嫌いではないが、スイッチが入らないとできない。今週は体がしんどくてなかなかやる気スイッチが入らない。


6月3日(土)
早朝から明日の夜までKは出張で不在。土曜の夜、日曜の朝しか家族でゆっくり過ごせないので土曜はなるべく出張を入れないようにと言っているが仕事上避けられないらしい。起きてから体がしんどかったので、一日辛いだろうなと思うと朝から憂鬱になった。数少ない知り合い何人かに連絡をしたが断られ続け、最後の一人が優しくOKしてくれて午後一緒に遊んでくれることになった。神様。それだけで活力になる。大量の洗濯物を干していたらお昼の時間が近づき、サイはテレビにも飽きて退屈そうにしていたのでおにぎりとフルーツを用意して近くの公園でピクニックした。おにぎりが足りなかったため、私はお湯を持って行ってカップラーメンを食べた。他のお母さんがチラチラと見ていたが構わず麺を啜った。先日シャボン玉を使い切ったので売店に売っていたクマがついたスティック状のシャボン玉を買ったら喜んでやっていた。私が吹いたシャボン玉を声をあげて笑いながら追いかけていた。
家に戻り昼寝。その間に出かける準備。起きて出発。デパートの屋上で遊ばせる。初めて行ったところだが直射日光も当たらず自然がいっぱいでいい所だった。そのまま同じ階で夕飯を食べた。デパートは遊ぶところも食べるところもオムツを替えるところもあって本当に便利だ。サイが生まれてからデパートばかり行っている。せっかくの機会なので奮発して高いメニューを頼んだ。肉を食べたら元気になった。サイはいつものようにお子様ランチをあっという間に食べ終えて物足りなさそうにしていた。帰りに駅構内で可愛いと思った洋服を試着せずに買い、サイが寝た後に着てみたらイメージと全然違って悲しい気持ちになった。まあまあの値段だったので割り切って着るのもなぁと暗くなった。


6月4日(日)
朝。昨日のデジャブのように洗濯をして干した。昨日の夜元気になったが朝起きたらまたしんどかった。公園へ行こうかなと思ったところでKがいきなり帰って来た。私がしんどいしんどいと言っていたので出張先から会社に戻る前に荷物を置きに一度家へ寄ったらしい。サイと遊んでいないことを悪いと思ったのか、少しも休まずにそのままサイを公園へ連れて行ってくれたので私は少し休まった。準備して私も後を追い、三人でまた公園でお昼を食べた。帰宅してサイを寝かしつけている間にKはもういなくなっていた。サイが寝たので二回目の洗濯を待ちながら昨日買った美味しそうなパンにアイスを挟んで食べた。とにかく部屋を片付けなきゃなぁとパンを食べながら思っていたらサイが起きた。いつもより大分短い昼寝だった。洗濯物はまだ干していない。鼻水を治す抗生物質の影響でサイが何度も下痢をしてトイレと風呂場を何度も往復した。その合間に洗濯を干したりしていたので公園に連れて行ってあげられなかった。サイの機嫌が悪くなった。妹の誕生日が近かったので、気分転換も兼ねてサイに絵を描いてもらった。人間の顔らしいのが描けるようになっていて驚いた。「これはじいじ、これはばあば、これはAちゃん(妹)」と実家のメンバーを順番に描いていた。絵にも途中から飽きて再びぐずり出した。機嫌の悪さがピークになった頃Kが帰宅した。二人が薬局に行っている間に何とか気力を起こして晩御飯を作った。フライパンを使いたくなくて、ごはんも鶏肉も野菜も炊飯器にぶち込んで一気に炊いた。サイの分はそれを更に煮て雑炊にした。


今週は精神的に嫌なことがあったり身体の調子もよくなく、コンディション最悪だったのでサイにも満足いくように接してあげられなかった。家も片付かなかった。相変わらず荒れ果てている。何をするにせよ健康でいなければならないなと改めて思った。

何曜日だったか忘れたが、サイが私を抱きしめて「ずっとはなれないよ」と男前なことを言ってくれたのが嬉しかった。サイが成人して本当に離れない分けはないと思うし実際そうだったら気持ち悪いがただただ嬉しかった。先の事は置いておいて「ありがとう、ずっと一緒にいようね」と返した。

猫もきっとぶどうが好き

5月22日(月)晴れ
朝。今日もまたサイが房からぶどうを外してくれた。皮も全部飲み込んでいるようで、お腹に悪いかなと思ったので皮を剥いたら所々きれいに剥ききれていないところがあり、それは嫌がるだろうなと思って私のお皿に入れた。すると自分のぶどうを食べ終えたサイが「ここ、くろいからサイくんたべてあげるね」と私の分も食べたがった。私がパンが焦げた時にサイに言う台詞とそっくりで真似しているのが面白かった。しかも実はぶどうを食べたいがためにそう言っているのがまた面白かった。

昼。高校生が線路に飛び込んで跳ねられたニュースを見た。亡くなった高校生の親の立場になって考えた。もしもこれがサイだったら。自分が高校生の親だったら。もしこの子が人でも音楽でも何でもいい、最後に飛び込むのを引き止められる存在に出会えていたらと思うと胸が苦しくなった。サイには将来、生きがいとなるような何かを持っていてほしい。

夜。大学時代のゼミの恩師と数年ぶりに会った。サイの写真を見せたら「旦那さん似だね」と言われた。私は「相変わらず君はおかしいね」と言われた。長年の付き合いだしそういう人なので特に嫌な気はしなかったが何度も繰り返し言われたので私は本当におかしいのかなと思った。最近、サイといる時や話している時が一番心地いい。意味のない言葉を突然発したり、何も面白いことがないのに突然笑い出す遊びが好きでサイと二人でよくやる。そういうのばかり毎日やっているから傍目から見たらおかしいのかもしれない。
途中、「サイがおしりを掻きすぎておしりから血が出た」とKからLINEと電話があった。

5月23日(火)晴れ
朝。暑くて目が覚めた。夜中は涼しいので窓を閉めているが朝になると暑い。でも窓を開けて外の音でまだ寝ているサイが起きたらそれも大変なので開けたいのを我慢した。寝ている時のサイはセイウチの赤ちゃんみたいだなと最近よく思う。よく食べるのでどっしりしていて、おまけに毎日外で遊んでいるからか日焼けして肌が黒い。
暑い暑いと思っていたらサイが起き、寝起きでいきなり「おとうさん、ぶたにくかいにいったね」と言った。そういえば数日前に晩御飯前にKに頼んで豚肉を買って来てもらった。その時のことかもしれない。過去の記憶が唐突に言語化したり、サイの頭の中は一体どうなっているのだろう。サイといると本当に飽きない。
スイカを食べた。今年もスイカの季節がやってきた。サイの大好物スイカ。サイの分は種を取って小さく切って、自分は皮ごと持って食べていたら「ついてるよ、とってね」と私のスイカの種を指さして心配した。
おしりの傷を確認するのをすっかり忘れていた。

夜。K不在。赤ちゃんの頃は一人だととにかく大変だったけど、2歳すぎたあたりからサイと二人に慣れてきて、夜は二人の方が楽だなと思ってきた。Kは大食漢で普通に作ると足りないと言われるのでいつもかなりの量を作らないといけないし、翌日分や弁当分が余らない。サイと二人だと私もサイとほとんど同じ量(ビール飲むとちょうどいい)しか食べないので作るのも楽。二人の時は洗い物を減らしたくてチャーハンというか、焼き飯が多い。冷蔵庫の中から適当に選んだ具をごはんと一緒に薄味で炒めるワンプレート飯。サイの分を取った後に自分の分にだけ塩胡椒やごま油、茗荷など薬味を追加する。今日はほうれん草と卵とマッシュルーム。肉がなかったのでチーズを入れた。後片付けも簡単でサイとの時間が増えるから機嫌もいい。三人の時の方がぐずるかもと最近気づき始めた。

5月24日(水)曇り
朝。目が覚めた時、サイはまだ寝ていたので一人でこっそりお気に入りのパン屋で買ったピスタチオのクロワッサンを食べようと企んでいたら、サイもすぐ起きた。がーん。私が先に起きると空気で感じ取るのか何なのかわりとすぐにばれる。サイに朝ごはんを食べさせるのは時間が早い(早く食べさせすぎると後でお腹が空く)と思ったので、いつもの時間までしばらく一緒にままごとをした。玩具の箱をテーブルにして、水を入れたコップだけ本物であとは偽物。お皿に果物や野菜を入れてくれた。「にんじんもたべてよ」とまた私の口調を真似て言われた。美味しい美味しいと言って二人で食べた(ふりをした)。その後、本当の朝食を食べた。スイカを切っていたら一切れ皮つきのまま盗んで去って行ったので椅子に座らせたら上手に種を取って食べていた。サイは予想通りピスタチオのクロワッサンを欲しがったが、子どもにはやや高カロリーだったので「これピーマンのってるよ、苦いよ」と嘘をついた。ごめんね。それでも「しろいところをたべるよ」と言ってきたのでスイカの種取りに夢中になっている間に急いで食べた。

今日であの子が殺されてからちょうど20年が経ったことをニュースで知った。一生忘れられないあの恐ろしい事件。記事で読んだ「『生きていれば何歳』とか、そういう考えは浮かばない」という遺族の言葉が忘れられない。ある子どもが殺された事件から今日で何年が経ちましたというニュースを見る度に「生きていれば成人か」などと考えてしまうけれど、遺族にとって「生きていれば」なんてなく、ただ、ある日突然我が子の命が奪われて目の前からいなくなったという事実だけが永久に残り続けるのだなと考えて心苦しくなった。当時中学生だった元犯人は我々と同じように年齢を重ねどこかで暮らしている。美味しい物を食べてテレビを見て笑っているかもしれない。サイが生まれてから、サイがもし誰かに殺されたら、逆に誰かを殺めたら、とよく考える。その時、親である私は何をするのだろうか。生き続けられるだろうか。

夜。みんなまあまあ機嫌がよかった。朝のままごとが楽しかったのか、夜も箱を小さなテーブルに見立てて遊んだ。前から思っていたが、サイは食べる真似が本当に上手い。ままごとの野菜や卵を美味しそうな表情でもぐもぐと咀嚼する(ふりをする)。もしそれだけが求められる仕事があれば即採用されるであろう。口の中に食べ物が入っている感じとかリアリティがあり、本当に食べているように見える。これだけは親の過大評価ではない。あまりにも面白いのでビデオカメラで撮影したらちょっと照れて演技力が落ちた。
寝る前の歌が定番となりつつある。最近はサイが作ったオリジナルの歌を即興で歌ってくれる。毎日の記憶や感情が歌になっているのだろうけど、「おとうさん、スーパーへいったよー」など突拍子もない歌詞だったりするので面白い。でも本来歌ってこういう、日常の延長で生まれたのかもしれないと思った。


5月25日(木)曇り
朝。スイカの種を器用に自分で取って食べていた。2切れも食べた。私が探し物をしていたら時間がなくなりバタバタした。
昼。嫌なことが色々あった。サイは迎えに行くといつも保育園に迎えに行くといつも楽しそうにしているがもう帰りたいと思うぐらい嫌な日もあるのだろうか。

夜。こういう日は肉を食べるに限ると思ってKに提案すると三人で近所の焼肉屋に行くことになった。サイは人生三度目の焼肉だが、二回目までほとんど食べられるものはなかったし忘れているだろうから実質初めてである。肉が運ばれて来る前、サイは燃える炭を見て喜んでいた。網の上で焼かれていく肉をみて「おさかなたべたいーおさかなたべたいー」とずっと言っていた。焼けた肉を冷まし小さくしてお皿に入れると手品みたいにあっという間に食べてしまい、きりなく欲しがった。いつもの外食よりやや高くついたけど肉をお腹いっぱい食べたら満足した。心持ちか心身ともに元気になった気がする。


5月26日(金)雨
朝。寝起き直後、サイはベッドの上で電車ごっこをして遊んでいた。ぬいぐるみを乗客に、布団を車体に見立て「ドアがしまりまーす、ごちゅういくださいー」と言っていた。この台詞は多分、駅でよくエレベーターに乗る時に聞いて覚えたのだろう。朝ごはんの用意をしていたら、時間がないのにパンにアンパンマンを描いてと要求され、「今日はできない、ごめんね。でも明日可愛いの描くからね」と言った。泣いてぐずるかと思いきや納得したようだった。少しずつこちらの気持ちを汲み取れるようになってきたのかもしれない。雨だったので二人ともフル装備で家を出た。送迎タイムの雨は本当に勘弁してほしい。

夜。K不在。サイは適当につくったごはんでも「おいしいね」と言って食べてくれた。救われる。

サイは最近、毎日保育園の校庭に落ちている謎の実(サイはぶどうと呼んでいる)をせっせと拾い集め、近所の「にゃーにゃー」と呼んでいるネコ(おそらく放し飼い)にあげるために手に握りしめたまま持って帰る。もちろんネコは食べないが翌日通ると(多分風で飛ばされて置いた実がなくなっているので)ネコが食べてくれたと思っている。いつも同じ草陰で丸くなっているネコに「にゃーにゃー、ごはんたべたの?」「だいじょうぶ?」などと話しかけているがネコは煩い子どもだなぁという顔で無言でこちらを見ている。一時期犬を見て怖いと逃げていたので、動物に愛着を持つのはいいことだと思う。鳩は好きらしくよく追いかけている。虫を異様に怖がって体に止まろうものなら全身に力を入れて棒立ちになり悲鳴を上げる。正に都会っ子。

5月27日(土)晴れ
朝ごはん食べてサイが録画のアンパンマンを観ている間に洗濯物を畳んだり干したりして、終わったら耳鼻科へ連れて行ってといういつもの土曜日の過ごし方。本当は八丈島へ行きたかったが予算の問題で断念した。とても悔しかったけれど、サイも私も連休からずっと出かけっぱなしの週末だったので体を休ませるという意味ではよかったのかもしれない。耳鼻科に行っていたらお昼の時間が近づいてどうしようかな冷蔵庫に何があったかな、と帰りながら考えていたらサイが「こうえんでたべたい」と言ったので、パン屋とカフェをはしごして美味しそうなパンやサンドイッチを買って帰り道にある公園のベンチで食べた。嬉しそうにしていたが、寄ってきた鳩に怖がって「わるいぴっぴ!」「サイくんのぎゅうにゅうとられるー」と言っていた。牛乳はとらないと思うが確かに寄ってきた鳩は太っていて邪悪な目をしていた。遠くにいてこちらに寄ってこない鳩は痩せていて可愛らしかった。だから私もこの貪欲な鳩にはあげたくないと思って急いで食べた。
美味しかったけど落ち着かないピクニックだった。サイはパン屋で買いたいと言ったミニアンドーナツを嬉しそうに何個も食べ、食べ過ぎるといけないから「あとはお父さんのお土産にする?」と聞くとそうすると大人しく従った。食べた後に公園で走り回って帰宅。

帰宅後、昼寝。外の工事がうるさくていつもより短い昼寝だった。昼寝後、おやつを食べスーパーへ行き帰りに公園へ寄った。サイが生まれる前は公園なんて見向きもしなかったが、何も予定がなく晴れた休みの日は有り余る体力を消耗させるために一日中公園ばかり行っている。なので最近はどこへ行っても公園が気になり、「ここはいい滑り台があるが車道が近くて危ない40点」などと無意識に評価している。公園では最近サイが好きなシャボン玉をした。飽きずにずっとやっていて、上手にできると満足そうだった。シャボン玉の液がなくなると二人で走り回ったり全力でアンパンマンたいそうを踊った(踊らされた)。
晩御飯は春巻きリベンジ。前よりまあまあ美味しくできた。

5月28日(日)晴れ
家族写真を撮りに横浜に出かけた。写真を撮った時、サイはお腹が空いていたのかあまり機嫌がよくなかった。食後の方がよかったかもしれない。
お昼を食べてからアンパンマンミュージアムへ行った。あまり時間がなかったが約束してしまったためチケットは買わず屋外の無料エリアでショーを観覧した。それでも「あんぱんまーん!」と他の子どもと一緒に叫んだり、歌ったり踊ったりして満足したようだった。前も思ったがアンパンマンショーは子どもにとって大人が好きなアーティストのライブに行くようなものなのかもしれない。歓声やどよめき、盛り上がりがライブと変わらない。サイはショーの間ずっと機嫌よくステージを見つめていた。アンパンマンのお店(=物販)で前より欲しがらなくなったのでグッズよりライブ派なのかもしれない。

Kが仕事に行ったので帰りはサイと二人だったがお向かいに座ったマダムと笑い合ったりして機嫌がよかった。最寄駅から家までの道のりも歩いてくれて助かった。「にゃーにゃー」に挨拶して帰宅した。日光に当たり過ぎたからか、家に着くとどっと疲れが押し寄せたのでしばらくサイと一緒に「Mr. BEAN」を観た。サイは「Mr. BEAN」が気に入ったようでものすごい集中して観ていた。台詞がないので子どもにも面白いらしい。色んなものが置いてある部屋が魅力的だったのか「おじさんのおへやにいきたい!」と騒いでいた。ごめん、それは叶えられない。
晩御飯はスーパーで買ってきた焼き鳥と冷蔵庫の野菜で済ませた。アスパラに載せた温泉卵だけ欲しがって目を離した隙に素手で掴んで食べていた。ふざけてフォークとスプーンでビーンの真似をし始めたので悪影響だったかもしれない。

逃げたら悪いか

子どもがいながらにして何のために働いているのか。育休後復帰してからずっと考えている。

第一は金銭のためである。それが7割ぐらい。金銭というのは子どもにかかるお金、家族の生活費、自分が楽しむお金、全部含まれる。サイにかかるお金と生活費、これは夫の給料だけでやりくりすることもできなくもないが、正直ぎりぎりで貯金はほとんどできなくなる。そうすると近い将来サイが「こうしたい、これをやりたい」と言ってそれがお金が原因で我慢させることになるのが辛い。できるだけ生きる選択肢を多く残してあげたい。それにぎりぎりの生活で、毎日もやしを食べて電卓を睨んで切り詰める事が私にはできない。一人暮らしの時はしていたが家族を持ってできなくなってしまった。我儘かもしれないが、ぎりぎりであらゆることを我慢すると精神的にきつくなり家庭全体が暗くなるのが目に見えている。また、私は好きなことや欲しいものが他人と比べて多いと自覚していて、自分で働いていないのに好きなものにお金を費やすのが嫌なので好きなものがこの世からなくならない限り働き続けなければいけない。残念ながらなくならない。美味しいパンやお菓子を食べたいし、好きな人のライブに行きたいし、可愛い服がほしいし、サイに絵本を買いたい。もちろんこれには様々な意見がある。いわゆる専業主婦の方も家事・子育てというそれより大変なことがないくらいの労働をしているのだから好きに遣えるお金を持って当然だと思う。ただ私自身、それを家族ではあるが他人である夫に与えられるのが耐えられず、自分で働いて得たお金を費やしたいというだけの問題。あくまで個人的な問題。

残り3割は何かというと、自分の居場所や属性の問題。お金に十分な余裕があれば仕事をすぐに辞めるかと問われると難しい。母親になってから、それだけが自分の名刺・居場所になるのが耐えられない(あくまで個人的な感情)。じゃあ子どもを持つなと言われそうだが、母親たるもの働くなという人に会う度、なぜ母親は母親と会社員という二つの名刺を持ってはいけないのか。父親はよいのに、といつも思う。サイがもちろん好きだけど四六時中サイといるのが辛い。それに反対する男性は今すぐ仕事を辞めて専業主夫になればよい。サイ自体の問題でなく、子どもと二人だけの閉じられた世界に居続けることで周囲から取り残されたような、母親である以外のお前はもういらないと言われているような気持ちになる。子どもとずっといるのが好きな人も苦痛でない人もいるだろうからあくまで私の気持ち。我儘というとそうかもしれないが私は何に対しても容量がすぐいっぱいになり溢れると対処しきれなくなるので、逃げ場がないと生きていけない。家庭からの逃げ場は仕事であり、仕事からの逃げ場が家庭になる。大森靖子さんもそのようなことを言われていた気がする。

だから私はサイが重い病にかかるなど避けられない要因や強制的に辞めさせられることがない限り、定年まで働き続けたいと思っている。今の仕事がベストかどうかはまた別の問題だが逃げられる場所がほしい。


以上、主張や意見などではなくあくまで個人的な気持ち。他の人は何を考えているのだろう。