カニ日記

息子の成長と日々の記録

生き抜いても愛には鈍感

8月28日(月)
朝。サイとメロンパンを半分ずつ食べた。メロンパンナちゃんを抱いて登園。
夕方。Kがお迎えに行ってくれているものだと思い普通に帰ろうとしたが、いつもある終わったの連絡もなかったので不安に思い保育園の最寄駅で降りると駐輪場に自転車がまだあった。やれやれと思った。あとから「今日は飲み会」と連絡が来た。聞いていない。夕食はツナと人参と小松菜のオムレツ、ミートボール、トマト。入浴後、就寝。
Kが深夜にガタガタと帰宅。サイが起きて水が飲みたいというので居間に行くとKが半裸で寝ておりその姿にぞっとした。「接待」と称しいつも夕方早い時間から何時間も飲み、必ず泥酔して帰宅する。これが週3日程。私だったらそんな仕事即辞める。結婚後はもちろん、産前も出産直後もずっとそうだった。酔ったKは相当に面倒臭い。しかも翌朝何も覚えていない。いつからか酔ったKに顔を合わせるのが怖くなり深夜まで起きていても鍵の開く音と同時に寝室に逃げるようになった。


8月29日(火)
朝。サイと蒸しパンを半分ずつ食べようとして二切れずつお皿に乗せたらサイに一切れ奪われ、私は1/4になった。「お母さんにもちょうだいよ~」「アンパンマンはみんなに自分の顔をあげてるでしょ」などと言っても動じなかった。代官様に年貢を徴収される農民のような気持ちになった。
夕方、お迎え。今日も「うーぱーちゃん」の様子を確認した。自転車を漕ぎながら空を見上げたらオレンジと青が混ざったような色で美しかった。サイに「空がきれいだね~何色に見える?」と聞いたら「あか!」と返ってきた。夕食はしらすと小松菜のチャーハン。サイは味付けご飯が苦手なのであまり進んでいなかった。そもそも帰宅直後にお菓子を食べさせるのがいけないのかもしれない。でも二人とも帰宅直後はお腹が空いているので、私はビールと簡単なつまみ、サイは水とグミやトマトを食べるのが最近定着している。そうしなければ二人ともイライラしてしまうということにある時気づいた。食前食?をするようになってからは夕食準備中にサイの機嫌が悪くなることが少なくなったし夕食もほとんど残さず食べているので何をするにも空腹状態を回避するのはいいことだと思う。

食後、サイと一緒にめばえを見た後、サイは一人でパズルをやり始めた。集中していたようだったから私も横で川原泉の漫画を読んでいた。こういう過ごし方もいいなと思った。途中パズルがうまく嵌らず癇癪を起している場面も見られたが少しだけ手助けしてそっと見守っていると最後までできていた。入浴。アンパンマンの人形とお湯を混ぜた謎の「おみずのかるぴ(カルピス)」なる飲料を売りつけられたので飲む真似をした。サイはカルピス屋さんになりきって機嫌が良かった。入浴後、就寝。夜中に酔ったKが帰宅したらしく、途中で起きて居間に行くと昨日とほんとど変わらないだらしない格好で寝ていた。


8月30日(水)曇り時々雨
朝。パンがなかったので慌てて冷凍庫にあるパンダの食パンを解凍した。サイは喜んでいた。
夕方。お迎えをKに頼んでCD屋に寄り大森さんの新曲を買って帰宅。遅くなったのでラーメン。麺がのびたら嫌だとKは口うるさく言ってきた。うるさいので先にKとサイだけ食べ始めるように言い、私はのびた麺も好きなのでゆっくり温泉卵を作ってから食べた。サイは海苔を気に入り海苔ばかり食べていた。汁を少な目にしていたら汁を飲みたがったので水で割ってお椀に入れた。入浴後、少し粘土遊び。エビフライ、トマト、ハンバーグを作った。布団でゴロゴロしつつ就寝。いつもサイが寝てからアイスを食べたいと思っているのに寝かしつけで力尽きて寝てしまう。


8月31日(木)雨 涼しい
朝。早朝に目が覚めた。何かしようと思ったら間隔を空けずサイも起きた。いつもより1時間以上早い。二人で大森さんの新曲に付属していたDVDを観る。率先してディスクを入れたがる。いつもそうしてベタベタ裏側も触られるので大体のディスクはダメになる。これは余り触られたくないなと思ってヒヤヒヤした。その後粘土遊び。青と赤の粘土でうさぎを作る。型に粘土を入れたり型から取り出したりするのが前よりも上手になった。口を開けて集中していた。お腹が空いたが朝ごはんを食べてくれる気配がなかったので、メロンパンナちゃんを動かして「お腹空いちゃったよ~朝ごはん食べようよ~」と言うと止めてくれた。パンダの食パン。細かく千切った後、その一辺を牛乳につけた。零しそうだったので「あぁー」と言うと「ぎゅうにゅうにつけてるだけだよ、わるいことしてないよ」と大人みたいな顔で弁明していた。見たら零している訳でもなさそうだったのでそのままやらせた。雨なのに雨カバーがないので大人用ポンチョをサイの乗った前かごに被せて出発。私は何も被るものがなくびしょ濡れ。早くカバーを買わなくては。
夕方、お迎え。夕食を作る気力がなくチラシが入っていたピザを頼んだ。ラーメン、ピザとジャンクが続いてしまった。サイはピザに喜んでいたが、上に乗ったソーセージだけ食べていた。入浴、就寝。


9月1日(金)
今日から9月。ぼーっとしてたらあっという間に夏が終わり秋が来て気が付いた時には凍えるぐらい寒くなっているのかもしれない。朝、いつものようにバタバタと家を出る。サイは大量の玩具、靴下ハンカチをいつかコドモエの付録でついてきた「ねないこだれだ」のプールバックにぱんぱんに詰めて登園。無駄に大荷物なので先生に笑われる。
夕方お迎え。冷蔵庫にかぼちゃが転がっていたので、かぼちゃのスープを作ったらサイは思いの他喜んで飲んでくれた。それから帰りにスーパーで買った「魚岸揚げ」も食べた。自分の分だけチーズを乗せた。サイと一人1個ずつにしたら美味しかったらしくサイはもっとくれと言い、私ももっと食べたかったので結局一人2個、4個全部二人で平らげた。カロリーが気になるが「魚岸揚げ」は美味しい。入浴後、就寝。Kは飲み会で不在。ああやっと週末が来る。


9月2日(土)
朝。梨とパン。外は雨だったのでサイを室内で遊ばせる。床にマスキングテープを張り線路に見立ててぬいぐるみを走らせる謎の遊びを開催したり、画用紙に絵を描いたりした。サイは形あるものを描く時もあるが黒で力任せに塗り潰すことが多く病んでいるのかと気になる。お絵かきにも飽きてきたようだったので、色画用紙を適当に切ってアンデルセンの犬とカエルのパン風なのと、中に挟むハムとかレタスとか具材を作ったところ、喜んでサンドイッチ屋さんをしていた。昼食はラーメン。サイはあまり食べず白いご飯がいいと言われる。昼寝。晴れてきたので洗濯。洗濯物を干すのが嫌で渋っていたらサイが昼寝から起きてしまったため、のろのろとサイの横で干す。大量の洗濯物。夕方、K帰宅。サイとKは公園と買い物へ。夕食は鶏肉と野菜のオーブン焼き、パン。サイはパンばかり食べてあまり野菜を食べなかった。久しぶりにワインを飲んだ。ビールばかり飲んでいたけど少し寒くなるとワインが飲みたくなる。夕食後、サイの機嫌はよかった。入浴後、就寝。


9月3日(日)
朝からしんどい。Kとサイは公園へ。後から追いかけて三人で公園でお昼。パンでも買って食べようかと言うとKが「朝も食べたのに嫌だ」と言って弁当屋に買いに行った。おにぎりとからあげを食べたがあまりすすまなかった。帰って昼寝。昼寝したら体調少し回復。夕方、さして買うものもなかったが散歩を兼ねてサイと近くのコンビニに行く。急ぐこともなかったので手をつないでゆっくり歩いた。サイは信号の横にある歩行者用押しボタンを何度も必死に押していた。実は昼間は押さなくても信号は変わるけど。それからいつもいる近所の猫達を観察して帰宅した。Kは野球を観に行って昼に出てから帰って来なかった。明日も食べられるよう挽肉と野菜でカレーを作った。サイはあまり好きでなさそうだった。入浴後、就寝。


一週間かけて楳図かずおの「漂流教室」全巻を読んだ。楳図先生が大好きで「わたしは慎吾」や「おろち」は読んだのに肝心の「漂流教室」を実はまだ読んだことがなかった。通勤電車やサイが寝た後読み進めたが本当に面白かった。楳図先生の漫画は怖い。怖いけどそれは人間の欲や狂気から来る怖さでお化けや心霊の怖さとは違う気がする。子ども達だけで盲腸の手術をするくだりとか、お母さんが未来にいる息子へ託すために死体の中に薬を埋めに行く所とか、冷静に考えたらかなりぶっ飛んでいる設定なのにあの画力で押し通してしまうから凄い。怖くて壮絶、絶望的で悲惨なのだけど可笑しい。可笑しいけれど大真面目。楳図かずお作品を読むとこんな私でも生きていていいんだなと少し思うことができる。いつかサイにも読ませたいなぁと思うけど絵を見てトラウマになったら困るので今は隠している。

瑞々しくて甘いから秋

8月21日(月)曇り 蒸し暑い
朝。起きたら食卓にKの出張土産が置かれていた。空港の免税店で買ったらしい大量の化粧品(頼んだのは二つなのに)と月餅と出張先に住む友達にいただいたという派手な子ども服一式。自分では絶対買わない感じの服だったので戸惑った。多すぎる化粧品にも違和感を感じた。喜ぶべきだろうが喜べなかった。一緒に入っていたレシートを見たら6万円分も買っていて本気でひいた。朝ごはんはパンとぶどう。傷み始めていたので美味しくなかった。サイもあまり手をつけない。子どもは正直。久しぶりの出勤&送迎。月曜日なので荷物が多くバタバタと家を出る。

夕方。買いたいものがありKにお迎えに行ってもらいデパートに寄る。駅構内の好きなビアスタンドで一杯だけ立ち飲みして帰宅。私と同じように何も食べず一杯だけ立ったまま飲んでいる女の人がいた。我がオアシス。ここがなくなったら困る。帰宅して挽肉と野菜を炒めて適当に味付けして、ごはんに載せた。自分だけ温泉卵も載せたらサイも欲しがったのでサイの分も作った。サイは卵がとにかく好きだ。あとソーセージ。美味しくできたのにサイは味が気に入らないのかほとんど残した。

Kに化粧品買い過ぎ、普段使わないものまで買わなくていいのにと言ったら「いくつあってもいいじゃん」とドヤ顔だった。お店の人に言われるがまま全部買ったらしい。「俺が買ってやった」感が顔ににじみ出ていて全然嬉しくなかった。私が一週間の食費をいくらまでにしようと考えていつもスーパーで買い物しているのが馬鹿みたい。Kは出張先で久しぶりに再会した友達がセレブになっていた、お手伝いさんがいる家に住んで家事は一切したことがないらしい、ポルシェに乗っていたと羨ましげに言っていた。その友達に影響されて感覚が麻痺して浪費したに違いないと思った。Kはいつも後先考えず行動する。こうしたらどうなるかとか何も考えない。全てその時の気分で行動する。帰省中、私が実家で大事な話をしてくると言ってあったのに出張後で舞い上がっているのかそのことについて一切聞かれなかった。呑気にも程がある。もし聞かれなかったら話さないと決めていたので話さない。入浴、就寝。サイはいただいた恐竜や火山がプリントされた主張が激しい感じのTシャツを気に入ったらしく、それを着て寝た。

8月22日(火)曇り 暑い 
朝。パン美人にもらった梨。瑞々しくて甘い。今年初めての梨。サイは去年あまり梨が好きじゃなさそうだったが今年は好きなよう。フォークで上手に刺して食べていた。メロンパンナちゃん(彼女)を抱いて登園。暑さで思考が停止してOLって感じの全く好きじゃないけど涼しいポリエステルのトップスにパンツで出社した。

夕方お迎え。玄関に行くと、休み前からあったメダカの水槽の横に新たにもう一つ水槽が置かれていた。覗くと体長15㎝ほどのウーパールーパーがいた。よく分からないが「リューシスティック おとうさん」というネームプレートがついていた。ピンクのひらひらしたエラがついた真白な「おとうさん」は水槽の中で動かずじっとしていた。水槽にそっと手を当ててみても微動だにしない。サイは初めて観るウーパールーパーをわりと長い時間不思議そうに眺めていた。めだかも赤ちゃんだったのが成長して大きくなっていた。共食いしたのか死んだのか数が休み前に比べると圧倒的に減っていた。サイになぜ少なくなったか聞かれ「たべられちゃったのかなー」と答えた。ふーんという感じだった。兄弟がいないから何か生き物を飼うのはサイにとっていいかもしれない。ウーパールーパー、飼いたくなってきた。

帰宅。K不在。夕食はイシイのミートボール、トマト、しらすと野菜のオムレツ。ピーマンを細かくしてオムレツに混入させたがバレて食べてくれなかった。夕食後、保育園で最近やっているというお医者さんごっこをした。めばえの付録の音が鳴る聴診器をつけたサイは私やメロンパンナを診察する。サイの診察によると私は病気らしく薬を処方してくれた。入浴、就寝。復活するはずが起きれなかった。眠気に勝てる強さが欲しい。

8月23日(水)曇り ありえないくらい暑い
朝。K午前休み。保育園送りを代わってもらう。不服そうだったが休みなのに行かないなんてずるいと思い行かせた。持ち物や設置する場所で何度も連絡がくる。何度もやっているのだから、しっかりしてほしい。連絡帳に何を書いたらいいか聞いてくる始末。そんなこと自分で考えろ。

夕方。お迎え。いつものようにこっそり窓ガラス越しに覗く遊びをしていたらサイは珍しく私に気が付いた。それから絵本を勢いよく棚にしまって飛んできた。機嫌がいい。今日もウーパールーパーの「おとうさん」を観察する。置物みたいに全然動かない。帰宅即シャワー。K不在。冷蔵庫にある野菜とウィンナーで焼き飯を作ったら混ぜご飯が嫌いなサイは白ご飯がいいと言ってウインナーだけ食べた。でもKの出張土産の月餅を見つけるとそれ食べたさに半ばやけのように完食した。月餅を半分個ずつ食べた。寝かせようとすると遊びたいと言われたため、「お布団の上で遊ぼうよ」と説得したらサイは最近玩具入れにしているヴィドフランスのパン屋の袋に色々詰めて寝室に持って行った。就寝。

8月24日(木)曇り
朝。サイがなかなか起きずぎりぎりまで寝かせていると全てがぎりぎりになった。パン美人にもらった桃。まだ早いかもと言われていたのに剥いてしまった。やはりまだ固く酸っぱかった。サイはそれでもほぼ1個全て食べた。時間がない時に限り、出際におもちゃを持って行きたいだの騒ぎ出す。無理矢理自転車に乗せて出発しても絵本持って来たかったのに~と泣き叫んでいた。これに乗らなきゃ確実に遅刻するという電車のドアが目の前で閉まったが運よく再び開いて飛び乗った。いい歳して恥ずかしい。
鬼怒川温泉で2歳の息子を河に落としてしまい探しに行った父親が死体で見つかったとのニュース。2歳の子は落下途中クッション的な何かに当たり無事だったらしい。でも無事かどうかは結果論で、落ちた時は助かるなんて考える前に飛び込んでしまうのだと思う。私でもそうしてしまいそう。夏はこういう水場関係のニュースが多く、子を助けようとした親が亡くなっていることが多いからその度に心が痛む。

夜。月一の大森靖子さん実験室。久しぶりに人がたくさんいるところへ行った。人とうまく話せる気がせずずっと下を向いていた。帰り際、階段にモルモットかと思うほど丸々太ったねずみがいた。齧歯類が本当に苦手。Gより苦手。居合わせた知らない女の子と一緒に気持ち悪がっていたら呼びこみ風の別のフロアのお兄さんがエレベーター使って下さいと親切に言ってくれた。地上に出て歩くと方向が分からなくなり迷子になった。歌舞伎町はどっちを向いても眩しくてにぎやかで文字だらけで何かのSF映画でそういう街あったなぁとぼんやり考えた。地図アプリをみても所在地がよく分からず、とにかく人が歩いている方向に歩いていったら新宿駅に辿り着いた。色々食べたのに急にお腹が空き最寄駅のコンビニでチキンと「秋味」というビールを買った。この時間は絶対太るし明日顔がむくみそうという罪悪感を感じつつ胃に収めた。


8月25日(金)曇り 呪いたくなる暑さ
朝。起きたら汗だくだった。クーラーがついておらず窓は閉め切られていた。やや寝坊。急いで朝ごはんの用意をするもサイは食べたくないと言うのでパンの横にグミとトーマスのクッキーをのせたら急に食べたがった。朝からお菓子を食べさせてしまった。「おやつ食べたことはお母さんとサイくんの秘密だからね」と言うと約束をする時のように小指を差し出してきた。「約束じゃないよ、秘密だよ」と言い口に人差し指を当てると分かっているのかいないのか嬉しそうにサイも真似した。それから目を細めて「いっこのめでみてるのー」と言った。数日前に私がウィンクの仕方を教えたのを覚えていたらしい。全然ウィンクになっていないのが可愛かった。
保育園に行くと「サイくん鼻血だいじょうぶでしたか」と聞かれる。連絡帳に鼻血が出たと書いてあった。私も火曜日の朝鼻血が出て一時間ぐらい止まらなかった。親子で同じ時期に鼻血が出るなんて不思議だ。気圧の問題か。

夕方、お迎え。ウーパールーパーが今日はいつもよりやや立ち上がっていて躍動感ある感じだった。サイに教えると興味深げに眺めていた。「うーぱーちゃん」と私が名づけたらサイもそう呼んでいた。帰り道、自転車に乗りながらサイとうーぱーちゃん可愛かったねという話をしていたら「うーぱーちゃんのかさほしい!」と言った。最近他の子が持っているのを見て傘を欲しがっている。あらゆる物が溢れる今の資本主義社会でもウーパールーパー柄の子ども用傘はないだろうなと思った。もう作るしか。「売ってるかなぁ」と聞くと「うってるよ!」と強気だったのでどこに売ってるか聞いたら「こんびににうってるよ」と教えてくれたので笑った。子どもの発言は何の根拠もないから面白い。

夕食は外で食べた。私は昼に中華を食べたから中華以外がいいと言ったのに中華が食べたいとKは聞く耳持たなかった。初めて入った中華料理屋は煙草臭く、料理は全てが塩辛かった。Kはがつがつ食べていたが私とサイはすすまなかった。Kだけ足りないもっと食べたいと言っていた。料理の感想以外に家族の会話はない。帰り際、広場で盆踊りをやっていたので立ち寄るとちょうどアンパンマン音頭が始まった。「小さい子は舞台に上がってください」と言う声と共にわらわら集まる子ども達。サイはあまり乗り気そうでなかったがKと一緒に舞台に上がったものの、あまり楽しそうでなかった。ご褒美として配られたおやつをもらって帰宅。入浴、就寝。


8月26日(土)曇り
朝。パン、トマト。朝食後、洗濯。昼、出発。Aちゃんとムーミンカフェに行った。サイはムーミンを知っているのか知らないのかよく分からなかったがムーミンスナフキンの巨大なぬいぐるみが巡回して来る(お店のお姉さんが定期的に動かして座らせる)ので喜んでハイタッチなどしていた。サイにはムーミンの顔型ごはんやにょろにょろのソーセージ、ハンバーグ、海老フライがついた豪華なお子様ランチを頼んだが、勢いよくソーセージを食べた後は止まってしまい好物のハンバーグにもあまり手をつけなかった。以前なら全部鷲掴みにしてがっついていたのに最近食欲が落ちた。落ちたというか普通になった。サイの大食漢を知っているAちゃんも驚いていた。食後、サイはベビーカーで眠った。Aちゃんとクレアーズに行き懐かしがったり、二人とも好きな感じの洋服屋をみたり、本屋に行ったりしているとサイが起きた。三人で楽しくお茶をしていたらKから「(まだ帰っていなくて)晩御飯どうする(つもりな)の?」という連絡が来たので帰ることにした。

ベビーカーを押したままサイとエレベーターに乗ろうとしたら(混んでいたのでAちゃんは階段で降りた)サイはエレベーターに一人で乗り込んだ後勝手に閉まるボタンを押してしまい、一人で入ったままエレベーターは行ってしまった。大変なことになったと思い、必死に階下に行くもエレベーターは上に行ったらしくサイはいない。慌ててまた上に戻ると知らない大人に付き添われ頬に涙の跡をつけたサイがエレベーターから降りてきた。私と目が合っても怯えたような顔をしていた。ああ、よかった。ごめんね、ごめんねと言い抱き締めた。ちゃんと手を繋がなかったから。サイを先に乗せるべきでなかった。猛省した。子どもといるとちょっと歯車の狂いでも大惨事につながる。例えばおもちゃの紐を首から下げたまま一人で乗ってしまい紐が扉に挟まって首が締ったら、とか考え始めると背筋が凍る。何事もなくてよかった。

Kに「今から帰る」と連絡したら「分かった」「今仕事終わった」などと連絡がきたのに会社を出た途端に急に気が変わったらしく、「1杯だけ飲んできたい」と言われた。飲みたいなら家で飲めばいいし、今まで1杯で済んだことがない。サイも会いたがっていたし許可しなかったらその後ぷっつりと連絡が途絶え、夕食が要るか要らないか分からないままご飯の時間になっても帰って来なかった。挽肉を味噌で炒めてそうめんにかけてジャージャー麺風にした。先にサイと食べていたら帰って来て悪びれる事もなく「ごはんはどこかな~」と言い、冷蔵庫にあると言うと喜んでご飯を食べ始めた。呆れた。なぜそういうことをするのかと聞いたら「自分がされても嫌だと思わないから」と言った。洗濯は朝やればよいからと言っても聞かず、洗濯していた。


8月27日(日)曇り
朝から機嫌の悪いK。冷蔵庫が汚いと言われた。賞味期限の切れたヨーグルトと数日前のごはんを入れていたためだ。来月大森さんのライブに行くと言ったら「祝日?はぁ?」とキレられた。大丈夫か確認してからチケット取ったのにどうしよう。一年に一回しかない誕生日のライブだと訴えても「そんなのどうでもいい」と言われる。好きな人の名前を出すだけで機嫌が悪くなるので普段は名前を口に出さないし曲をかけることさえしない。楽しみにしていたばかりに落ち込んだ。昨日洗濯したからしなくていいねと言うとこれ洗いたい、あれも洗いたいと洗濯狂は許さなかった。洗濯の前に天気を確認したいとKがテレビをつけたら、サイは主電源を消した。消すのには理由があるかもしれないのに、大人気ない態度でサイにキレるK。泣きそうな顔のサイ。八つ当たりされて可哀相。Kに謝らせサイを公園へ連れて行ってもらう。洗濯、片付けなど。

お昼にサイと二人で実家から届いたアンデルセンのどうぶつパンにハムや卵を挟んでサンドイッチにして食べた。カエルと犬のパン。可愛くて美味しい。二人で楽しく食べた後、昼寝。私も少し眠った。起きて、何となく食べ足りなかったからカップラーメンでも食べようかなとお湯を沸かしていると大森さんのライブがインスタにて中継されると知る。観ている途中でサイが起きたので中断し最後の方を一緒に観た。おやつにゼリーを食べた後、サイと二人で大森さんのライブ映像を流しながらペンライトを振りつつ歌って踊るという遊びをした。サイは帰省時に買ってもらったおもちゃのマイクとくまのぬいぐるみを持ち出して必死に大森さんの真似をしていた。

夕食はアボガド鮪しらす丼。サイ用に漬けた鮪を焼いた。ちょっと食べたら美味しくサイも美味しかったようで一気に食べていた。Kはごはんと具をぐちゃぐちゃに混ぜて食べていてうんざりした。いつもどんなものでもぐちゃぐちゃに混ぜ、色んなものを口の周りにつけ、ついていると指摘すると舌で舐め取る。食べ終えた皿はサイより汚い。いつもできる限り見ないようにしているがぞっとする。どんなタイプの人でもまあまあ我慢できる方だと思うが、食べ方が度を越して汚い人は本気で気分が悪くなる。入浴後、就寝。


どこかで人生の選択を間違えたような気がしてずっとそのことばかり考えている。そうしているうちに秋が終わって冬になりまた春が来るのだろう。

泳げないけど

8月14日(月)曇り
朝ごはん。サイのオムツを替えようとしたら先に朝ごはんにしろとKがイライラ。はぁ一人の方がやり易い。洗濯。

Kとサイに留守番してもらい帰省土産やサイの下着、化粧品を買いに行く。サイと一緒が当たり前すぎて、急に一人になると驚くほど早く用事が終わる。予定していたより早すぎるし、今戻ってもサイは昼寝していると思ったのでデパートの屋上に行ったら(お昼も別の屋上で食べたから屋上のハシゴをした)、ちょうどビール祭りのようなのが開催されていたのでよく分からない一杯700円(高い…)の外国のビールとポテトを注文する。小さな男の子を連れたお父さんが溶けそうなアイスと格闘していた。外国人観光客の家族が食事していた。その外国人達がカウンターに置いてある共用のケチャップを勝手に席まで持って行った、ちゃんとここに置いとかないからだと店員が別の若い店員にキレていた。暑すぎず吹いてくる風が心地よくて、細長いグラスに入った外国の味がするビールをすぐに飲み干してしまった。二杯目を頼みたかったが飲んだことがバレたくなかったので我慢した。天井のない場所で飲むのがとにかく好きだ。アルコールが飲める屋上が東京から消えてなくなったら私は生きていけない気がする。下まで降りて電車に乗り帰宅。

サイはまだ寝ていた。手荷物を最小限にするため、お土産や必要なものを詰めて実家に送る。夕方、Kとスーパーに行ったサイは花火を買ってもらったらしく嬉しそうに手に持って帰ってきた。Kが今日花火をやりたい、夕食後に近くの公園へ行こうと騒いだが、サイが火を見て興奮して眠れなくて明日起きれないと大変だと思い今日はやめておこうと言った。Kは不服そうだった。入浴、就寝。


8月15日(火)帰省1日目 曇り
二人での帰省。朝バタバタと準備して電車に乗りモノレールに乗り飛行機に乗る。ここまではスムーズにいった。飛行機は3歳まではチケット不要で親の膝上OKだが体重的にも体格的にもそろそろ限界かもと思った。格安エアーだしとにかく窮屈だった。絵本や窓の外の景色でごまかしながら時間をもたせる。サイは雲を見て「くもがへん~」と悲壮な感じで叫んでいた。耳鳴りなどを経て無事到着。遠く離れたお見送りスペースのガラスの向こう側でじいじばあば(私の両親)が立って手を振っているのを発見しダッシュ。そこからサイのテンションは爆上げで空港でも走り回って両親は既に参っていた。父は私の荷物など持って帰り、母と三人で街に出てお昼を食べた。サイはデパートのおもちゃ売り場でひとしきり遊んだ後昼寝。その間に少しお茶をした。家の近くの駅まで車で父が迎えに来て母とサイは帰宅。
大学時代の友達が駅まで来てくれて食事した。お茶をする予定だったが時間がずれ込んだため飲むことになった。店を調べてなかったので二人で話しながらだらだらと小さな街を散策した。久しぶりに歩いたが小さい時と何も変わっていなかったり所々新しい店ができていた。9歳から通っていた矯正歯科や高校時代に行っていた塾、昔家族でよく食事した変な喫茶店はまだあった。友達は地元ではないのでノスタルジーが次々に溢れ出し阿呆みたいに懐かしいと連呼していたのは私だけだった。家族は外で飲まないし家の近所で飲むということがまずなかったので店が分からない。昔バイトの同僚と一度だけ行った薄暗い商店街(ディープすぎてもはや異次元)にあるアジア料理屋に行こうとしたらなくなっていた。なので適当に見つけた店に入店した。ほとんど客はいなかった。それぞれが好きなものを頼もうということになり、私はたこぶつと出し巻卵を、友達はトマトとチヂミを頼んだ。全てが惜しみなく提供され量が多かった。何も気を遣わなくて私の言ったことに大笑いしてくれる友達と、幼少期から高校生までのあらゆる思い出が付き纏う地元で飲んでいるのが不思議だった。お互いの近況や仕事の話をした。早めに切り上げて店を出たが会計がびっくりするくらい安かった。東京の一人分だった。出る頃店は満員だった。帰宅したらサイはお風呂に入れてもらったようでさっぱりしていた。布団でゴロゴロして就寝。


8月16日(水)帰省2日目 晴れ
午前中、父と母は仕事だったため、仕事が休みの妹と私、サイの三人で公園を通って遠回りして駅に歩いて行きまた家に戻るという散歩をした。が、この炎天下の中、幼児の速度(唐突にしゃがんだり道草しまくり)に合わせて歩くのは拷問だった。暑さに弱い妹は歩き始めて早々にバテていた。公園を通ると夏休みにラジオ体操や蝉取りをした思い出や暗くなるまで遊んで背中を毛虫だらけにした思い出が一気に蘇った。サイは妹と一緒に一回だけ滑り台をした。公園を出て駅まで行くと海が見えた。太陽がキラキラと反射していた。穏やかで眩しい夏の海だった。海で泳ぐのは嫌いだけど海を眺めるのが好きで、この道路から見える海が一番きれいだと私は今も信じている。海沿いの道路を歩きながらとりあえずスーパーを目指した。「アイス買ってあげるよ」という言葉で何とか歩かせた感じ。もうサイがアイスを欲しいのか自分が欲しいのか分からなかった。何しろ暑かったので涼しい所しかもう頭になかった。スーパーに着くと三人で涼んでアイスやサイの欲しがったお菓子やお昼ごはんの材料を買って、汗がひいてから再び家を目指して出発した。サイは暑さに参りながらもとぼとぼと自分の足で最後まで歩いていた。帰宅して即三人共シャワーを浴び放心していた。暑い中散歩は危険だ。サイのお昼ごはんを作り食べさせている間に洗濯をした。妹は余ったごはんをサイと食べていた。

父と母が順に帰宅したのでサイをお願いし、妹と出かけた。二人で出かけるのなんて何年ぶりだろう。前回の記憶がない。妹と私が好きな(お互いに好きだということをこの日に知った)ハンバーガーを食べようということで、検索して出てきたバーガー屋さんに行った。人気店のようだったがお盆だったためか並ばず入れた。店の前でインスタに載せるのか何枚も写真を撮り合っている若い女の子三人組がいて、びびっていたら妹は一瞥したあと彼女達を無視してずかずかと店の中に入って行った。妹は仕事の影響か、就職後昔に比べてはきはきするようになった気がする。店の人が驚くほど親切だったので分厚いベーコンが挟まったベーコンチーズバーガーの他にハートランドの中瓶2本とオニオンリングも調子に乗って頼んでしまった。さっそく運ばれてきたハートランドをぐびぐび飲みながら妹と飲むのなんて何年ぶりだろうとまた考えた。妹は「ハートランドって水みたいやな」と言った。確かに水みたいですいすい飲める感じだった。ほどなくして巨大なバーガーと山盛りのオニオンリングが運ばれてきてその量に二人で笑った。苦しかったが残すと悪いと思い頑張って完食した。その後、妹の好きな古着屋に行った。お互いに試着して正直な感想を言い合ったりした。
古着屋を出て近くの雑貨屋を散策し、最終目的地の映画館へ。元々私は「バベル展」に行きたかったのだがなぜか映画になった。妹は映画好きで二日に一回は映画を観ている。妹は前方、私は最後尾の席というそれぞれ好きな席を選び『少女ファニーと運命の旅』という映画を観た。ナチスドイツ軍に支配されたフランスで隠れ家を追われたユダヤ人の子ども達が自分達だけでスイス国境を目指して逃げ続けるという終始緊迫した内容だった。子どもが子どもだけの世界を作って戦争が生んだ迫害や弾劾から逃げていた。次々と味方だった大人が姿を消し信じられなくなっても、自分達は絶対にスイスに辿り着くんだという信念だけで生かされている感じだった。主人公の少女ファニーや他の子ども達の表情がとてもよかったのに構成に変化がなく、実話なのにうまくリアリティが薄い場面もあり残念だった。でも色々と考えさせられる映画だった。「ユダヤ人がそんなにいけないことならやめたらいいんじゃない?」という幼い少女に対して少し年上の少年が「やめられないんだよ」と返した会話が印象に残っている。

観終った後、妹とあれやこれや感想を言い合いながら帰宅。夕食。出かけて帰って夕食が用意されているってそんな素晴らしいことはない。サイとまたゴロゴロしながら就寝。


8月17日(木)帰省3日目 晴れ
朝からアンパンマンミュージアムへ出発。AM。超課金現場。サイは駅に着いた瞬間から感情のボルテージが上がってきて、AMに着くまでの道に配置してある銅像や地面のイラストにいちいち激しく反応して跳ねたり走ったりして体力を無駄に消耗していた。AMの中に入ってからもやなせたかし劇場や人形劇、工作、滑り台など全てを休みなく体感し、外のショーも観てアイスも食べた。何度も昼寝をさせようとしたが興奮していたのと環境的に不可能でしてくれなかった。
AMを出て遅くなったので夕食を食べて帰ることにした。量が多かったので私がサイのお皿からご飯を取った瞬間突然スイッチが入りブチ切れてしまった。それから自ら食器を落として落ちたと騒いだり、自らハンバーグを握りつぶしてぐちゃぐちゃになったと泣き叫び、どうでもいいことで店の中でぎゃーぎゃーと奇声を発し続け、何を言っても状況は変わらずひどくなるばかりだった。サイの手を触ると熱く、眠さのあまり分けが分からなくなっている感じだった。せっかく楽しかったのに一緒に来た友人親子を驚かせてしまった。店を出ようにも「まだたべたいたべたい」と騒ぎベビーカーに乗せようにもものすごい力で仰け反って無理だった。他のお客さんが白い眼でこちらを見ていた。友人にも手伝ってもらい何とか力づくでベビーカーに乗せ、店を出てもまだ騒いでいたが5分くらいして電池が切れたようにぱたっと眠った。帰りもずっと寝ていた。友人親子には申し訳ないことをしたと思っている。外出して昼寝をさせなかったのはそういえば初めてだった。全責任は私にある。楽しい時でも親が調整してあげないと子どもは体力も気持ちも限界を迎える。反省。

最寄駅まで父に車で迎えに来てもらう。帰宅するなり母に怒られた。食事が不要との連絡がうまく父に伝わらず父が張り切って夕食を用意して食べずにずっと待っていたらしい。母に連絡したが母は仕事だったため父に伝わっていなかった。父は迎えに来た時点で心底キレていたがサイの手前上我慢していたらしい。家に入るなりサイに見えないところでキレた様子を見せた。あー、やってしまったと思った。起きたサイは不穏な空気にびびって「いまからびょういんにいく」と意味不明なことを言い靴を履いて実家から出ようとした。怖かったのだろう。
それでも二人はサイが寝るまで怒りを我慢し、寝た後、妹も参加し家族会議が開かれた。他の家庭はどうか分からないが我が家は小さい時から何かあるとこうやって会議を開催する。今日のことを散々叱られた。言い訳しつつ謝った。

それから話題を変え会議は続いた。両親は私が好きな人のライブで夜出かけることを責めた(4月にみてもらった時にサイが寝る時私を探していたその様子があまりにも悲惨だったのに、また秋に同じことをしようとしているから)。父に、母親たる者が夜に外出することがまずあり得ないと言われた。私はライブへ行くことがいかに必要か説明したがうまく伝わらず宗教みたいと言われた。うう、そうじゃない。サイが一番大事なんて痛いほど分かっている。サイを犠牲にしてまで必要なものは何もないことも分かっている。
深夜まで話し続けた後、疲れ果ててシャワーも浴びず就寝。帰省する度に家族、特に父と衝突している気がする。東京でも居場所がないが結局実家でもこうなる。どこへ行ってもうまくやれない。


8月18日(金)帰省4日目 晴れ
父と妹は仕事。母と三人で遠出する予定だったがサイの体力を考慮して近所に行った。三人でイートインができるパン屋でパンを食べた。サイはウインナーパンを気に入って食べていた。その後ショッピングモールに行った。サイがおもちゃ売り場で遊ぶのをぼんやり眺めたり、人の少ないお店をゆっくりと見てまわったりした。色々見たがあまり欲しい物はなかった。スタバで休憩した後駅に戻り、めばえを買って帰宅した。父と妹も帰宅し、夜は全員でビールを飲んでごはんを食べた。
夕食後、家族全員でクレヨンしんちゃんとMステを観た。Mステを観てサイは母に買ってもらったばかりのおもちゃのマイクを持って全力で歌ったり踊ったりしていた。時々壁に激突しながらアイドルの動きを真似てくるくるまわったりポーズを決めていた。その姿に皆げらげら笑って大受けしていた。サイははしゃぎすぎて大汗を掻いていた。誰も昨日の会議の内容に触れなかったし怒っていなかった。サイのおかげで温かく明るい空気が生まれていたが、ふともうここから離れて帰りたいなと思った。とはいいつつ東京が好きな分けでもない。


8月19日(土)帰省5日目 東京はゲリラ豪雨
朝、父がサイとめばえの付録(今月はピザ屋さん)で遊んでいる間に荷物をまとめた。父はめばえの付録について「こども向けとは思えないぐらいよく考えられて設計されている」と何度も関心していた。確かにめばえの付録の設計はすごい。自分でイチから紙で作るなんて絶対できないからそう考えればあの値段は安いのかもしれない。妹は映画を観に行くと言って朝早くいなくなった。
父と母とサイと四人でパン屋でパンを食べた。サイはまたウインナーパン。たまごサンドが有名なお店らしかったが、サイはマヨネーズとキュウリが嫌だったらしく一口食べてやめた。たまごサンドは本当に美味しかった。その後、ゆっくりと空港に向かった。空港でお土産を調達し、母とお茶を飲んで私はKの異常な潔癖さについて話していたら搭乗手続きをしてくださいとのアナウンスが鳴り焦った。バタバタと母と別れ飛行機に乗った。
サイは私が機内対策に持ち込んだめばえのシールを貼ろうとしたが1ミリでもずれると「はみでた~」と泣きそうな声を上げ、騒ぎそうになって冷や冷やした。サイの性格上シール系は機内には向いていない。もう無理だなと思ったらお菓子が配られてほっとした。しかしチョコレートだった。案の定サイは握りしめてなかなか食べず手はべとべとになった。ウェットティッシュが手元になくぐぬぬとなったが、騒がなければ何でもいいやと投げやりに思った。その後、別のお菓子や来た時と同じように窓の外の風景でごまかして何とか羽田に到着した。

飛行機を降りてオムツを替えたら疲労困憊。モノレールの改札に向かおうとしたらサイが「いまからアンパンマンにいきたい」とぐずり出したため、ここで無視しては後が大変と思い、アンパンマンが売っていそうなお店に行った。残念ながらアンパンマンは売っていなかったがトーマスの動く玩具があり、「これいいんじゃない?買う?」と言うと喜んだので安心した。こういう大して欲しくもない物を買い与えてしまってダメだなと思うけど長距離移動の前とか平和を保つために時々やってしまう。サイは約束通り(買ったらベビーカーに乗ると約束していた)大人しくベビーカーに乗り、買ったばかりの玩具をパッケージから出して満足そうに眺めていた。電池が要る玩具だったので動かなかった。悲しんでいたが「家に帰って電池入れてあげるからね」と言うと納得したようだった。その後、動かない玩具にも飽きてめばえの付録のピザを箱から出したりしまったりしていた。そうやって家に着くまでぐずらなかったのでほっとした。途中から空の色が怪しくなり激しい雨が降り出した。サイは雷に怯えていた。最寄駅に着いたら最初は小雨だったのに急に大雨になりサイも私もびしょ濡れになった。

家に何とか辿り着いた時には何もする気がおきないぐらい疲れ果てていた。でもまだやることがある。Kは長期出張中なので家には誰もおらず全ての窓が締め切られていてむっとしていた。Kが出張に行く直前に食べて捨てたと思わしき納豆の容器の匂いが充満していて吐きそうになった。袋に残った一切れのパンにはびっしりカビが生えていた。潔癖のわりにこういう所がいい加減で潔癖なのかどうか怪しい。喉が渇いていたので冷蔵庫から金麦を出して無心で飲んだ。サイも疲れたかなと思うとトーマスに電池を入れようとどこからか自分で電池を持ってきていた。なかなか賢い。冷凍庫を開けるとごはんがなかったのでそうめんを茹でてコンビニで買った冷凍食品とトマトで晩御飯にした。食後、両親に家に着いた連絡をし、トーマスの電池を入れて遊んだ。トーマスにつながったリモコンのボタンを押すと前進したり後退したりする仕組みだった。ボタンが堅くて押しにくかったらしく、ひとしきり遊んだ後は飽きたようだった。肩が凝っていたので湯を張ってサイと入った。その後就寝。サイはやはり疲れていたようでいつもより早く寝た。私も朝まで起きずに眠った。


8月19日(日)曇り
サイも私もいつもより長く寝ていた。今日は本当はYちゃんとアンパンマンの映画に行く約束をしていたが早起き(アンパンマンの上映は朝が早い)するのが無理そうと思って帰省する直前に断っていた。でも悪かったなと思い朝、夕方公園で遊ぶ約束をした。洗濯物は実家でしてくれていたので少なかった。買い物に行こうかなと思ったら実家から送った荷物とアマゾンで頼んだサイのパンツが着いた。パンツをサイに履かせてみるも、サイは結局パンツの中でしてしまい濡れていた。濡れていても気持ち悪がらずそのままでいた。シールがずれることは気にするのにお尻が濡れることには無頓着なのが不思議だった。荷物を片付けるのが面倒でとりあえず出かけた。スーパーで買い物をすると通りがかったサイゼリヤで食べたいとサイが言い、ごはんを炊くのを忘れていたことを思い出し入店した。サイがリゾットとフォカッチャを食べたいと言うので頼んだら後から見たお子様ランチがいいと急に騒ぎ、また今度と言っても聞かなかったため結局お子様ランチも頼んだ。リゾットは私が全部食べた。サイは先にフォカッチャを二つも食べていたため、お子様ランチが運ばれてきた段階で満腹そうだった。なので半分食べていいか聞いた。怒るかと思ったら怒らなかった。サイゼリヤはとにかく安くて美味しいし多少煩くしても気にならないのがいい。子どもには塩分が気になるがたまにはいいかなと思う。

帰宅して昼寝。サイは疲れているのかいつもより長く寝た。私も途中まで一緒に寝た。起きてから、夕方Yちゃんに会った。家から少し遠い、蚊の少なそうな公園に行った(家の近くの水辺がある公園に前行ったらサイの足が蚊に噛まれまくって大変なことになった。今も痛々しい感じ)。サイはYちゃんにアンパンマングミとジュースをあげた。Yちゃんはバナナチップスをくれた。二人で並んで座っていた。私達も横に座ろうとしたら「ママはきちゃだめ、ふたりですわるの!」とYちゃんは怒っていた。Yちゃんは「たべて」とバナナチップスを直接サイの口に入れていた。サイはまた戸惑っていた。滑り台で滑った後サイの手が汚れているとYちゃんが払ってくれた。Yちゃんはサイと同級生だけどサイよりずっと大人だ。Yちゃんのお母さんは「何でも面倒みたいんです」と言っていた。サイはYちゃんといるといつもリードされている。それを私はにやにやして眺めていた。
暗くなったので帰宅し急いでご飯を炊いて晩御飯。しらすとピーマンの卵焼き、トマト、ご飯。ピーマンをこまかーくして入れてもやはり嫌だったようで卵焼きをあまり食べてくれなかった。入浴、就寝。

夜中にKが出張から帰宅し、買ってきたお土産を見ろとうるさかったが眠くて起きられず寝ていたらそれから何度も「ねえ、お土産みてよ!」と揺すり起こされた。でも起きれなかった。寝てる人を無理矢理起こす心理が私には分からない。そんな風にして私のお盆休みは幕を閉じた。

たこ焼き選手権でオリンピックに出たい

8月7日(月)晴れのち曇りのち雨
朝。寝起きでサイはメロンパンナ(彼女?)とうーたんのぬいぐるみに「こわかった?あれおばけじゃないんだよ」と、私のパック姿がお化けではないことについて自分は真実を知っているけど君は知らんだろという得意顔で説明していた。だから私はぬいぐるみを動かして「えぇ~、お化けじゃないの」と言った。今日もデラウェアを剥いてからスプーンで食べていた。出際になかなか腰を上げてくれず、ぐずっていたので抱き上げて玄関に連れて行ったら暴れて機嫌が最悪になった。自転車に乗ってもぎゃーぎゃー泣いていた。この時が一人だと一番大変。

夕方。お迎え。雨が降りそうな空模様だったので「今日は急いで帰るよ、雨降るからね」と廊下をふらふらしていたサイを急かした。あまり伝わっていないようだったので「早く帰らないと雷のお化けが来るよ」と適当なことを言ってとにかく園を出て自転車に乗せた。いつも園庭で走り回っている子どもが今日はいなかった。いつもサイと一緒に悪がきコンビを組んではしゃぐAくんもお父さんに急かされていた。皆さーっと帰った。親達の本気という感じだった。

雨がぱらぱら降ってきたがどうしてもGキャップを買う必要があり薬局に寄る。昨晩、洗面所で小さな黒い虫を数匹見かけた。見たことない虫だったが直観でもしやと思って検索したらやはりGの初期だった。Gに関してはぼろアパート時代に地獄を味わったので専門家だと自覚している。そんなことしか専門家だと胸を張って言えるものがなくて悲しい。Kは髪の毛が落ちているからだと私のせいにした。今まで見なかったので台風の影響な気もする。レジに並んでいたらサイは「なにそれ~?」と興味津々に聞いてきた。他に言いようがなく「悪い虫さんがいるからやっつけるんだよ」と説明した。急いでいるのにグミが欲しいと言われたが列を抜けている時間もなかったので「自分で取っておいで」とサイ一人で行かせた。初めてのことだったからどうかなと思ったら走って行ってすぐ戻って来てその手には仮面ライダーグミ(知りもしないのに「こわいのグミ」と喜んで買いたがる)。欲しいものになると行動力がすごい。家に着くまで「わるいむしさんいたらトリプルパンチでやっつけるからね」と言っていた。トリプルパンチというのはアンパンしょくぱんカレーパンがここぞという時に三人一緒に繰り出す技。

急いで帰ったので汗だくになった。先にどうしてもシャワーを浴びたかったがサイは乗り気でなかった。無理矢理風呂場に連れて行くとサイは機嫌を悪くした。風呂場に入っても何で風呂なんか俺がという感じで「おかあさんきらい」と怒りながらげんこつでがんがん叩いてきた。痛い。振りかざした拳を手に取って「叩いちゃだめだよ、サイくんが叩いてもお母さんは叩かないよ、こうするんだよ」と言いぎゅーっと裸で抱きしめた。が、ふんという顔をされ全然効果なし。「お風呂から出たらグミたべようよ」と言ってもだめ。ぎゃーぎゃー嫌がるからとにかく髪と身体をさっと洗って外に出した。騒ぐから連れて来たぬいぐるみで話しかけてもダメで、苦肉の策で擦りガラスにぬいぐるみをくっつけて風呂場にいるサイから薄っら見えるようにしてふざけると急にげらげら笑って機嫌が直った。子どもはポイントがあると機嫌が一変するがそれを探すのが難しい。「おかあさんすきだよ、グミたべていいよ」と急に言われた。おおう。

約束通りグミをくれたがサイは一番大きいサイズのを急いで自分の口に入れた後、私には一番小さいサイズのをくれた。いつもそうだけど欲があからさま過ぎて笑ってしまう。剥き出しの感情。昔付き合っていた人で、お土産で買ってきたずんだ餅をにこにこと取り出して見せ、一緒に食べるのかと横で待っていたら一心不乱で一人で食べ始め、何事もなかったかのように残りを彼の自宅の冷蔵庫に入れた人がいたことを思い出した。その時の表情が怖すぎて好きだった気持ちが急に冷めた。別にずんだ餅が食べたいわけではなかったけど何というか。

夕食の準備をしているとサイが突然「いたー!」と声をあげた。見るとあの虫が1匹いた。サイは敏感なので小さくても違和感あるものにすぐ気づく。「ありがとうね、またいたら教えてね」というと「わるいむしさんにトリプルパンチするからね、だいじょぶだよ」と急に男らしい顔をした後「いたよ!」と糸くずを拾ったり何もない壁に向かって言っていた。他の虫と区別するために「何でも食べてしまうから悪い虫さんなんだよ」と言うと「グミも?」「うん」「てんとうむしくん(乗り物)も?」「うん」「粘土も?」「うん」と家の中のものを一つ一つ聞いた。1歳の誕生日にあげた車輪がついた犬の人形に「わんわん、たべられちゃったの?こわかったね」と話していた。何だかすごい恐ろしい生き物みたいになってしまったし「これが悪」と教え込むのはどうかと思った。でも実際恐ろしいから。シャワーを浴びていたのでゆったりと就寝準備。大雨が降ってきたが窓が開けっぱなしになっていたので水浸しになった。夜中、Kが帰って来た音で目が覚め、Kが寝室に来たら私は居間に行きアイスを食べて部屋の片づけをしてKが起きて来たらまた寝た。あれ以来虫はいない。


8月8日(火)晴れ
朝。私の真似をして口に入れてデラウェアの皮を取っていた。また出際にバタバタした。今日の登園おこだわりグッズは赤ちゃんの時に遊んでいた馬の人形、うーたんのぬいぐるみ、中身のないパディントンのDVDのケース。そんなに持って大丈夫?と聞いても全部持って行くと言って聞かない。「うまのくちがないね」と自転車に乗りながら聞かれた。玩具懐古主義はまだ続きそう。顔がけっこうタイプの若い男の子と道で3秒ぐらいすれ違った。そういうのは朝から気分が良くなる。でも最近男の子をみるとどうしても母親目線というか親戚の子を見る感じというか「まぁあなたカッコいいわねぇ」という感じで見てしまう。サイはどんな風になるんだろう。

夕方。スーパーに寄ってから帰宅。空が晴れているのに雨が降っていた。れんこんがまだ冷蔵庫にあるので豚肉と翌日分の食料を買う。戻るとサイとKは帰宅していて、サイが小さな花束をくれた。そういえば最近我が家の花はずっと枯れていた。花はいい。もらうのもあげるのも好きだ。れんこんに片栗粉をまぶして焼いた後、醤油砂糖お酢とゴマを絡めたら美味しかった。クックパッド様様。サイが食べやすい味にしたのにれんこん自体が嫌いらしく、全然食べてくれなかった。Kが商店街で買って来た味の濃い焼売ばかり欲しがって悲しい。サイはKとシャワーを浴びていたので一人でゆっくりお風呂に入った。眠気MAXのKが9時頃もう寝たいというのでそれならサイを寝かしつけてと頼んだ。サイが寝室ではしゃぐ声が聞こえてきたがやがて静かになりおお寝たのかなと思ったらサイに呼ばれた。Kが先に寝てしまったらしい。仕方なく私も寝室へ行ったがこれが全然寝てくれない。はしゃいだり泣いたり寝る場所がないと騒いだり何度も水を飲みたいと言ったり結局1時間半くらい寝なかった。Kは横で起きる気配がなかった。疲れた。深夜に起きてラジオを聴きながら洗濯物を干し、昨日も食べたハーゲンのキャラメルなんとか(これ美味しい)を食べてKが起きてきたら寝た。虫はいない。


8月9日(水)晴れのちゲリラ豪雨のち曇り
朝。寝起きで「ちょっとりんごじゅーすのみたいんだけど、もってきてくれる?」と喫茶店で新聞読んでるおっさんみたいな感じで言われた。だんだんと言い方が大人みたいになってきた。朝ごはん。デラウェアとパン。出際、靴下を履かせようとすると「これいやだ」と騒いだ。ちょうどかけていたCDが終わると「おーもりさんのうたがおわっちゃった~!ぎゃー!」と世界の終わりが来たみたいに騒ぎ出した。それから探している玩具がないと騒ぐ。ちょっと待ってくれ。今日も昨日と同じ三種の玩具を携えて登園した。私が教室の入り口で先生と話していると、俺は教室にこういうの持って入ったらダメなことぐらい分かってるからさという感じで持ってきた玩具を保育園バッグに押し込んできた。
夕方。お迎え。教室の窓ガラス越しに覗いてサイを見つめ続けいつこちらに気づくかという遊びをいつもやっている。けっこう不審者。普通のお母さんは「迎えに来ました~」とか言いながら勢いよく教室に入って行くのでそんなことをしている人はいない。今日はサイより早くYちゃんに気付かれた。何か言いたそうにこちらを見ていた。サイは絵本を読んでいて全然気づかず、横に座っていた先生に「あんたのかあちゃんきたで」(そんな関西弁じゃないと思うけど)と言われて私に気付き飛んできた。玄関で担任の先生に会い、「サイくん最近本当にお利口なんですよね、全然ぐずらなくて。他のお友達とも楽しそうにしてて」と言われた。えっと思ったが、先生がサイに「ね、サイくん」と言うと無言でこくりと頷いていた。

玄関を出る際、同じクラスのSくんがアンパンマンのぬいぐるみを持っていて、サイは目ざとく見つけて私に報告してきた。「Sくんあんぱんまんもってる」「そうだね」「サイくんにみせてあげる」「見せてもらいたいの?」「うん」「じゃあSくん見せてって言おうよ」とか話している間にサイみたいに玄関でぐずぐずしないSくんはさっさと帰ってしまい姿が見えなくなった。園庭に出てSくんがいないものだからサイの機嫌は一気に悪くなり「Sくんのあんぱんまんみせてあげたかった」(「~してあげる」「~してもらう」などの言葉を混同しているらしくまだ上手く遣えない)と怒りながら私の服をひっぱったりげんこつでがんがん叩いてきた。帰って行く先生たちが「あらあらどうしたのサイくん~」と宥めてもぷんぷん怒っていた。何とか宥めて自転車に乗せる。日中はお利口って先生言ってたけど、我慢してるから園を出た瞬間感情が溢れだすんだろうなと思った。

グミを買いたいという意見を無視したため、帰りは更に怒っていた。保育園でもらったチラシを自分でぐしゃぐしゃに丸めて、「ぐしゃぐしゃになった~」と泣き叫んでいた。今から電車乗りたいと急に言ったので「電車に乗ってどこ行くの?」と聞くと少し考えた後「あかちゃん(こないだ遊んだ友人の子)にあいにいく」と言った。それからYちゃんとごはんを食べたいと言ったり頭に浮かんだことを何でも言っている感じ。大人も色々某脳が浮かぶがそれを外に表さず内側に留めておくというだけで結局同じような気がする。家に帰ってもサイの機嫌は悪かった。私は汗だくなのでどうしてもシャワーを浴びたかったがサイは一緒に入ろうとしなかったので脱衣所で待たせて私だけ入った。Kが帰宅したら急に「おかあさんとおふろはいりたい」と言ったらしく結局サイも一緒にシャワーを浴びた。夕食は焼きそば。けっこう美味しくできた。サイは全然食べなかったので、朝食用のロールパンにはさんで、「ほら、やきそばパンマンだよ」と言うと喜んで食べ始めた。洗濯物がゲリラ豪雨でびしょびしょになったのでもう一度全部洗濯し直した。昨日頑張って干したのをまた干すかと思うとゲンナリした。しかもまた雨降るって。げげ。Eテレばかり観てあまり天気予報を見ないのでいつもこうなる。今日もサイはなかなか寝付かなかった。虫はいない。


8月10日(木)曇り
朝。寝かしつけてそのまま寝落ちして3時に目覚めた。窓を開けたら涼しい風。これよこれ。エアコンはもう嫌だ。早く秋が来てほしい。友人がくれた手紙に返事を書いた。そうしたら空が白み始め起きたサイの声がした。いつもより大分早かったし私はひと眠りしたいと思ったので「まだ夜だよ」と適当なことを言い二人でまた寝た。次に起きたら家を出る30分前だった。げっ。サイはすやすや寝ている。身支度してサイを起こし簡単な朝食を食べさせている間に化粧。食べ終えたサイは呑気にアルバムの歌詞カードを眺めていた。字は読めないのに「『あいするきもち』どこかな~」と自分の好きな歌(サイは勝手にタイトルをつける)を探していた。「これだれがかいたの?」と聞くから「大森さんだよ」と言うと納得していた。あらゆる物について誰が作ったか聞くのが今ブームらしく、自転車のヘルメットとか玩具とか何でも聞かれる。よく分からない時は適当に「おじさんだよ」と答える。どこのおっさんや。世の事象や物の起源について関心を持つことはいいことだ。私も小さい頃同じように「これはどこからきたの?」と親に尋ねていた。

今日で連休前最後の勤務。なぜか仲が良い荷物を仕分ける親より年上のおじさんに悪気なく「会社でワンピース着てる人珍しいよね」と言われる。遊びに行くような柄でやる気のない感じだったからかもしれない。寝坊した時や週末は大体このワンピース。週末が近い程どんどん服装が仕事らしくなくなる傾向がある気がする。午前中に仕事を片付けて午後は健康診断。思ったほどは痩せていなかった。最近ビールの飲み過ぎかもしれない。健康診断の前にデパートに寄ったら可愛いビニールポーチに入った鳩サブレーが売っていて陳列していたお姉さんに「鳩の日(8/10)限定なんです」と言われる。豊島屋好きだし、そういうのに弱いからつい買ってしまった。

 夕方お迎え。サイは今日もぐずり続け、みんなが帰って行く中全然帰ろうとしてくれなかった。私が先に帰るよと言い玄関から出たふりをしたら余計怒って俺は動かんぞという態度。Yちゃんはご両親の地元の地名を泣きながら連呼していた。Yちゃんのお母さんにどうしたんですかと聞くと明日から帰省するらしく今すぐ行きたいと泣き喚いているとのこと。あるよね、あるよねと思った。子どもには明日にならないと無理とか帰省先が遠いとかそんなことは関係ない。条件とか状況を超えたところに欲や夢がある。成長して大人になるにつれ、やがてそれが簡単には叶わなかったり折り合いをつけなければいけないことを学習していく。良くも悪くも。

 ミートボール、納豆、トマトという超手抜晩ごはん。言い訳だがなかなか帰ってくれないと時間が遅くなるし家に着いた時点で疲れ果てている。明日から休みだしお湯をためて入浴、就寝。

 

8月11日(金)雨時々曇り

朝。洗濯など。昼ごはん、ウィンナーとオクラの卵焼き、トマト、ごはん。またしても手抜き。サイはオクラだけ器用に取り除いていた。離乳食時代は好き嫌いなく食べていたのに最近緑の野菜や歯応えのある野菜を残すようになってきた。でも保育園の保健師さんが懇談の時に「私は小さい頃は卵焼きしか食べなかったのにこうやって大人になりましたから別に好き嫌いあって大丈夫です」と言っていたのが忘れられなくて、無理なものは強制的に食べさせなくてもいいかなと思っている。まあ野菜は食べた方がいいけど。保健師さん、いつ会っても不機嫌で愛想が悪いからあんまり好きじゃなかったけど食べ物に関してもやさぐれてる感じでこれ聞いた時はもはや可愛いとさえ思った。え?卵焼き…可愛い…って思った記憶。

昼食後サイとスーパー、公園。動物の置物に一つずつ話しかけていた。帰って昼寝。なかなか寝てくれない。いつの間にか私も一緒に寝てしまい起きたら夕方だった。慌てて夕食作り。トマト缶があったのでハヤシライスみたいなものとタコと胡瓜のマリネを作った。サイ起床。帰宅したKと交代してもらい友達に会う。煩い場所も好きだが静かな場所も好きだ。連休初日ということで駅にいる人達は皆嬉しそうに見えた。休みじゃない人ももちろんいるだろうが仕事がないって単純にいいことだ。仕事しないで好きなことだけして生きていけたらいいがそうしたら収入がないと好きなことはできない。 

明日は我が家初めてのお客さんが来るので部屋を片付けたいと思ったが帰ったらやる気がなくなったので明日早起きしてやろうと決めて寝た。掃除は明るい時間に窓を開け放ってやりたい。気持ち的にも空気的にもその方がいい、気がする。

 

8月12日(土)晴れ
明け方に早起きするつもりが起きたら普通に朝だった。朝ごはんを食べて掃除。大好きなSちゃんがやって来る。家族を除けば初めてのお客さん。別に順番なんてないが初めてのお客さんはSちゃんがいいと決めていた。サイは生まれてから何度もSちゃんに会っている。サイも大好きだけど間隔が空くと忘れてしまうようで「今日Sちゃん来るよ」と言うと「うん」と嬉しそうにしていたがちゃんと分かっていない感じもした。掃除機をかけているとサイが邪魔をしてきた。途中から私の真似をしてサイも玩具をめちゃくちゃに引き出しにしまったりしていた。え、そこに入れるのと思ったけど構ってられないので放って置く。
Sちゃんが駅まで来たのでサイと自転車で迎えに行った。駅から少し歩いて私が気に入っているカフェでサンドイッチやキッシュをテイクアウトした。本当はSちゃんが来るまでに買っておきたかったが時間切れでSちゃんに暑い中歩かせてしまった。サイは最初Sちゃんに話かけられて反抗期の中学生みたいに無愛想な態度を取っていた。2歳のくせに大人みたいで笑ってしまう。しかしSちゃんがにこやかに話しかけてくれたので次第に打ち解けていった。サイは可愛くて自分を構ってくれる女の人が大好き。将来面倒臭い男になりそうだ。
家に着き、Sちゃんが買って来てくれたカツサンドやカフェで買ったのをお皿に並べて三人で食べた。サイは私が準備している間にほとんどのカツサンドを勢いよく食べてしまった。とんでもない男だ。食べ終えて、みんなで村山知義「三びきのこぐまさん」のDVDを観た。サイは玩具を散かしながら遊んだ(みるみる汚くなる部屋)。それから三人で昼寝した。サイが興奮してなかなか寝付かなかったので私とSちゃんは長い間寝たふりをした。サイが寝たらSちゃんとゆっくり話をした。静かで穏やかな午後だった。Sちゃんは初めて会った時から好きなものとか信念がはっきりしていて、時代とか世の中に溢れる何かに流されたりしてなくて、でもそれを強くは表さず、いつ何を聞いても素敵だなぁと憧れる。こんな私と付き合ってくれてありがとうといつも思っている。ケーキを食べようとしたらサイが起きてきた。いいタイミング。だから三人でアイスを添えたケーキを食べた。ケーキに横にあるアイスが好きであるととんでもなく嬉しい。と言いいつ普段はバタバタしてそんな優雅なことはできないからせめてお客さんが来た時くらいはと思う。

三人で公園に行きサイを少し遊ばせた後Sちゃんを駅まで見送りに行った。Sちゃんと別れた後サイは公衆電話を見つけて「でんわしたい」と騒ぐので体験料と思って100円入れてKの携帯番号をダイヤルした。サイは電話に出たKと何か話していたが忙しいからと途中でKが切ってしまったようで音が聴こえなくなり悲しそうにしていた。受話器を耳に充てて電話するという行為は私には当たり前だけどよく考えたらサイには初めてのことだった。
Kが帰宅して夕食。昨日作ったハヤシライスもどきに牛乳を足したら衝撃的に美味しくなった。私は温泉卵ものせた。入浴後、就寝。


8月13日(日)晴れ
朝から上野動物園。久しぶりに家族が揃う日だったのでサイの好きなところへ出かけようと決めていた。色々考えたが本人に何がいいか聞いたら「ぞうさんときりんさんがみたい」とリクエストがあったので動物園になった。私は「深海展」が観たかったのだけど。キリンがいるエリアが近い不忍池の方から入ったら巨大な蓮が生い茂っていて異様で不思議な光景だった。春にチャランポのライブで来た時はこんな風になってなかったので驚いた。遠くまでひたすら蓮が咲いていて天国ってこんな感じかもしれないと思った。サイも「おおきなはっぱ~」と不思議そうにしていた。不忍池側の動物園は改装されていて綺麗になっていた。道も広くて歩き易かった。ガラス越しにうさぎやネズミなどの小動物が観られるこども向けの部屋も新たにできていた。そこは冷房が利いていたのでできることならずっとそこにいたかった。部屋を出て歩いているとだんだん暑くなってきた。じっとりと体中から汗が出てきて動物とかもうどうでもよくなり頭の中はビールでいっぱいになった。タイミングよく売店がありビールの写真が見えたので反射的に「ビールのみたい」とKに提案した。生ビールとから揚げやポテトを注文し、蓮の生い茂る池沿いに設けられたテラスに座ってお昼には早すぎる食事をした。私は外席がとにかく好きで、それが水辺の近くだと尚更好きで、そこでビールが飲めるなら最高だ。ということでこのテラスは自分の中で最高の場所として認定された次第。600円の入園料を払ってでもここへビールを飲みに来たいと思った。

ほろ酔いで動物を見て回る。キリン、今日はいた。前回行った時は部屋に入っていたのか見られなかった。私はキリンが一番好きだ。いつだったか友達にキリンに似てるねと言われたのが嬉しかった。幼稚園の頃通っていた絵画教室の遠足で初めて外での写生をしに動物園に行った時もキリンを描いた。描き終えてこの絵の題名は何かと聞かれた時、題名の意味が全然分からなくてキリンを描いたのだからそれ以外ないだろうと「きりん」と答えたのを今でも覚えている。サイは目を見開いて大きなキリンを興味深けに眺めていた。図鑑や絵本とは違うその大きな体に驚いていたようだった。その後、鳥やサイ、カバを見て回り、暗い夜行生物館に行った。夜行生物館も好きだ。夜型の巨大な野生ネコが可愛かった。暗闇からサイの方を見ていてサイは怖がっていた。モノレールに乗り(サイが乗りたがった)、本園に移動し象を見たらサイは眠ったので動物園を出た。

上野公園のスタバで休憩した。何かの催しをやっていて食べ物の露店がたくさん出ていて騒々しい感じだった。近くで若い女の子が歌っているような声がした。Kはアイドルに全く興味がないので嫌そうにしていた。私はむしろ気になったのでKを置いて音の鳴る方へ行ってみた。舞台には着物のような衣装を着た若い女の子が5,6人伴奏に合わせて踊りながら歌っていた。見たことないグループだった。ファンと思わしき同じタオルを首から下げたおじさんが前の方にいた。こんなに暑い中けっして涼しそうではない衣装を着て笑顔で全力で踊って歌っているなんて、と思うと感動して曲が終わるごとに拍手した。何曲か歌い終えた後、告知などして女の子達は去って行った。物販が何とかと言っていたのでCD買おうかなと舞台の裏にまわってふらついていたら人だかりがあり、さっきの女の子達もいて、それぞれがオタクとチェキを撮ったり親しげに話していたので入れる雰囲気じゃなかった。なので退散した。

暑さにやられたので家に帰りたかったがKがホットプレートとたこ焼き器がどうしても今日中に欲しいと騒いだため電器屋さんへ行った。私のiPhone画面が割れてひどい状況だったのですぐ済むならと機種変更した。予想に反し、混んでいたのと通信状況が悪く結局2時間くらいかかった。そうするうちにサイが昼寝から起き、Kは待ちきれなくてイライラした。「ホットプレート買いたいのに」とむすっとしていた。Kはなぜホットプレートなんか欲しいのだろうか。一体何を焼きたいのか聞いてもはっきりしない。ネットで買う方が安いよと真新しいiPhoneで検索し画面を見せたら納得したようだったがイライラしていた。あー、機種変更しなきゃよかったなと思った。
遅くなったので晩御飯を食べてから帰宅。ホットプレートなんてお好み焼きくらいしか思う浮かばないけどお好み屋焼きは半年に一度くらいしか食べない。たこ焼きの腕には自信がある。自分がなかなか上手いということに気付いたのは東京に来てからだ。

 

上手くないけど手品が好き

7月31日(月)夏を恨むような暑さ
朝。寝坊したかと思ったらちょうどよい時間だった。サイはアンパンマンのスティックパン(通称:おいしいぱんこ)。とりわけ美味しいものでないのにスーパーに行く度に買わされる。恐るべしアンパンマンの力。やたら高い「めばえ」だって、アンパンマンをメイン付録にしときゃ売れるだろって企画されてそう。実際買ってしまうのだけど。「おいしいぱんこ」はフ○パンで、何となく体に悪そうだから気休めに野菜味を買っている。

そういえばフ○パンのパンって昔、パッケージの裏におっさんみたいな妖精のイラストと横に電話番号が書かれていて、電話したら民話が聞けるヨって妙に明るい感じで書いてあったの今も続いているのだろうか。謎の「民話」がずっと気になっていたけど有料(確かけっこう高い) だったから親には絶対に電話するなと言われた。電話したら即課金っていうのが何か怖くてでも電話してみたくてたまらなかった。小学生の時、誰かが拾って持ってたピンクダイヤル(死語?)が書かれた紙みたいなぞくぞく感。大人になったことだし、もしまだあったら勇気を出して「民話」を聞いてみたい。

夕方お迎え。最後組が集められた教室に迎えに行くといつもすっ飛んで来るのに今日は窓越しに目が合っても素っ気なく「あ、来やがったな。しゃーない、帰るか」という態度でゆっくりとこちらに向かって来る。珍しい。着替えストックの確認をしようとサイの教室に入ろうとしたら閉まっていた。サイが壁に飾ってある作品観たいと言うので抱き上げて二人でにやにや窓から覗くと困ったような顔をした園長先生と若い先生が数人いて、真ん中に女の人が倒れていた。先生と目が合って気まずかった。見てはいけないものを見てしまった感じ。廊下にいた先生に聞くと保護者のお母さんが倒れたらしい。園長先生が忙しそうに電話をかけていた。無事だといいけど。サイのためにも自分が倒れないようにしなきゃなと強く思った。

サイがプリンを買いたいと騒いだためコンビニに寄る。プリンを欲しがっていたのにアンパンマンチョコレートを買おうとする。ごはん前に食べさせたくないので溶けちゃうよなど適当な理由をつけて辞めさせると10円カルパスを選んだ。帰宅したらKがいた。サイとKがシャワーを浴びている間に台所で立ったままファミチキとビール。最近ほぼ毎日食べているから店員に顔を覚えられていそう。冷蔵庫にあった材料がピザの具のようだったのでそれらを炒めて適当に味付けして卵でとじてごはんに乗せた。けっこう美味しくできたがピーマンが入っていたためサイはあまり進んでいなかった。

シャワーの後サイは自ら「お兄さんパンツ」(トレパン)を履きたいと言ったので履かせていた。自分から履きたいと言ってくれたのが嬉しかった。すると夕食後にうんちをした。別になんてことない事なのにその後をKに頼んだのが間違いだった。普段の朝いないKはほとんどサイのオムツを替えることがない。だからたまにはやってほしいなと思い頼んだが私が呼んだ時点でKの機嫌は「なんで俺が」と最悪で、替えている途中でサイがまた排泄し出したらしく「たすけて!」と大声で叫んだ。私は全然平気なので、「ほい」と出たのを紙でつかんでトイレに流したがKは手についたのを気持ち悪がったりしてイライラしていた。「なんでするって分かってたのにパンツなんか履かせるの?」だの「パンツは捨てよう」だのサイのいる前でサイを傷付けるような発言をした。「洗えば汚れはすぐ落ちるし私が洗うから」と言うと「どうせ朝までやらないで置いとく癖に」とか「なんで替えのトイレットペーパーこんなに並べてんの?」(私が出し過ぎた)とか今関係ないことまで暴言を吐いて攻撃してきた。Kは潔癖な上、自分が決めた配置や法則が少しでも変わるとキレる。ここで私までキレたらサイが可哀相だと思い堪えて黙っていたら、続けて、今は何も関係ない私の行動を批判して追撃してきた。なんでこの人、いつもイライラしてるんだろう。子どものうんこぐらい「わー、でちゃった」って笑えばいいのに。サイに向けたくない嫌な感情のミサイルは内臓にずんずん撃ち込まれた。


8月1日(火)曇り時々雨
今日からもう8月か。サイは「おいしいぱんこ」とメロン。義実家から届いたメロン。切るのを面倒臭がって朝食べないでいるとKが夜冷蔵庫をチェックして「たべなかったのメロン?たべてよ」と言ってくるから今日は食べた。切り分けるの大変なんだよ。家を出る間際、サイは「本日の玩具」をかばんに詰め出し、急に「じんじゃーちゃんがいない!」と騒ぐので時間がないのに寝室までぬいぐるみを取りに戻った。サイの登園おこわだりに応じなければ家を出られなくなり余計遅れるので「もういいから早く!」とは言えない。

半期が終わったので朝礼。最初は真面目に聞いていたが途中から嫌いなおっさんが話し出したのでミュートして並んでいる人の顔を眺めていた。順に眺めながら、この人は好きやなぁ、あぁこの人嫌い、「好き」「嫌い」「嫌い」「好き」と心の中でつぶやいていたらけっこう自分は人に対して好き嫌いがはっきりしていることに気付いた。そういうの怖いな。

退社したら大雨。今日はKがお迎え。自転車カバーを忘れたのでサイが濡れないか心配だった。帰宅すると玄関にずぶ濡れの二人がいた。濡れているのが気持ち悪かったようでサイは目で訴えてきた。保育園バッグもびしょびしょだった。私だったらゴミ袋で覆うのに。二人がシャワーを浴びている間に缶ビールとアメリカンドック(店員にファミチキBBAと認識されるのを回避するため)を一気に食べた。缶は急いで捨てた。それからレトルトのカレーを温めて(サイは+牛乳)、足りない具を炒めた。目玉焼きも焼いた。二人が風呂から上がり夕食。レトルトなのにカレーだったからかKの機嫌がよかった。サイは味付きのご飯があまり好きじゃないので進んでいなかったが最後は全部平らげた。

夕食後サイは木琴を叩いたりタイガーで買ったおもちゃのギターをかき鳴らした。お風呂に入ろうと思ったらKはコンビニへ行った。だから大森さんのCDをかけて二人で踊って歌ったら楽しかった。サイの寝かしつけを自然な感じで(動画観たいと言うとどうせ文句言われるから)Kに頼んで、よしいい感じだと生中継ラインライブを観始めた。3分くらいして「○○ちゃーーん」とサイが叫ぶ声がして視聴中断。あー無念。サイは都合のよい時だけ私を「ちゃん」付けで呼ぶ。恋人か。すぐ寝かせてまた観ようと思ったら結局1時間半くらい寝てくれなくて、寝た時には当然終わっていた。しかもあると思っていた再放送がなかった。がーん、がーん。

悔しいから大量の洗濯物を部屋に干しながら先週の大森さんのラジオを聴いた。恥ずかしい内容の投稿をしてしまって聴いていられないくらいだったが、好きな人が好きな人の話をするっていいなと思った。大森さんの声を聞いたら元気になったしやっぱり好きだなぁ会いたいなぁ聴きたいなぁと思った。干し終わったらKが起きてきたので寝た。


8月2日(水)涼しい 秋
能面みたいな顔の女が死んでも追いかけて来る恐ろしい夢を見て全身汗びっしょりで起きた。やや寝坊。サイはすやすや寝ている。あー起きなきゃと思っていたらけっこう大きな地震があった。夜中にもあった。さっとサイに手を添えたがサイは揺れでも起きずまだ寝ていた。急いで朝ごはん。私が食べようと思っていたファミマで買ったバナナのパンケーキを欲しがった。クリームが挟まっていたがまあいいかと思ってあげた。食べた後、サイはギターを鳴らしながら謎の自作の歌を歌っていた。「あるとこ(ろ)に~なにもありませんでした~」とやや哲学的な歌詞だった。その後は「たこの足~しょくぱんまんの足~カレーパンマンの足~…」と足の歌(?)を歌っていた。歌の最後はいつも「ちゃんちゃん!」で終わる。「あるとこに」ってもしかして「ドグマ・マグマ」かなと思ってCDをかけたら大喜びで踊ったり歌っていた。「非国民的ヒーロー」を最後まで聴き終らないうちにもう家を出る時間になったのでCDを止めたら「もっとうたいたかったのに~!」と叫ばれた。「お母さんだってもっと聴きたいよ、でも行かなきゃ」と宥めて出発。自転車に乗せた時、かばんの中に玩具を入れ忘れたと騒いだが時間がないので出発。

夕方お迎え。座って「はじめてのおつかい」を読んでいた。家ではテレビばかりでほとんど絵本を読まなくなったが園では読んでるんだなぁと思った。その反動で家ではテレビを観たがるのかもしれない。雨が降りそうだったので急かして帰宅したら最高記録が出た。缶ビールを飲みつつ、日曜日に買っておいたイシイのミートボールを温めて、自分の分は肉ときのこを炒めた。帰宅して少しぐずっていたが「今日ミートボール食べようよ、サイくん好きでしょ」と言ったら「みーとろーぶ!みーとろーぶ!」と急に元気になり自ら冷蔵庫を漁っていた。こんなもので喜ばせてごめんよ。仮にサイが「みーとろーぶたべたよ」などと先生に言って「へぇ、サイくんの家はミートローフなんて手の込んだ料理を、すごいわねぇ」となったら大恥だ。

夕食後、7月に買った絵が届いた。待ちに待ったあの絵。サイは「ななちゃんのえ、はやくみたい!」と騒いでいた。ミートボールのたれや納豆で汚れたら大変だと思い二人でいつもより念入りに手を洗ってから開けた。開ける前に「触ったらダメだよ」と私が何度も言ったらサイはちゃんと守ってくれた。「すこしだけ、ちょんってさわっていい?」と聞かれたからいいよというと指先で絵に触れた。絵はギャラリーで観た時よりもっともっと美しく見えた。なんというか生活感溢れる家庭に突如きらめく宝石が降ってきた、という感じで異質な光を放っていた。わぁーーーと言い二人で眺めた。ただ一つ残念なことに、絵が真ん中辺りで真横に折れ曲がっていてくっきり折れ目がついていた。ギャラリーで観た時はなかったから梱包の厚紙が薄く、外からの圧力で梱包ごと折れてしまったらしい。届いた瞬間、嫌な予感がした。普通の商品ならクレームとかあまりしないが、本当に気に入った作品だったし、作家が命を絞って生まれた芸術作品が第三者のミスで傷付けられたのがどうしても耐えられなかったため、できるだけ怒りを表さないよう送付元のギャラリーに状況を説明するメールをした。すると謝罪と共に「返金しますので着払いで送って下さい」とすぐ返事がきた。えっそうじゃない。運命的に恋をして買った作品だから返品なんかする分けない。そんなことしたらななちゃんに失礼だ。なんとか元に戻してほしいだけなのに。嬉しさと悲しさが混ざったまま、絵を補強して元の梱包に戻した。サイは自分の絵を壁に貼る感覚で、絵をどこに貼るか考えていたらしく「ななちゃんのえ、どこいっちゃったの~?」と残念そうにしていた。「額がまだないから待ってね」と言うと「ピンポンくるかな~」と返ってきた。何でも欲しい物は玄関から自然に届くと信じているらしい。

テレビを少し観て入浴。アンパンマンの映画を観たいからと言ってお風呂に入りたがらなかったので、床に落ちていた「オーボール」をつかんで「これ、お風呂に持っていったら面白そうじゃない?水に浮かべて遊ぼうよ」と適当に言うと乗り気になってくれた。オーボールはサイが生後半年くらいで物をつかむのに興味を示し出した頃に買った穴の開いたボール。そんなのがなぜ転がっているかというと、最近サイは懐古主義なのか段ボールに入れてある赤ちゃん時代の玩具を引っ張り出して遊んだり保育園に持って行ったりする。赤ちゃんの玩具を手にサイが登園すると先生はぎょっとするけど。浴槽につかってオーボールをキャッチボールみたいにお互い投げ合ったらよく分からないけどめちゃくちゃ楽しくて二人でげらげら笑った。笑い過ぎて口が疲れた。

子どもと接する時は、「意味不明でも子どもの世界観に合わせて楽しむプレイ」ができるかどうかにかかっている気がする。意味やルールなんて考える必要はない。例えば、サイと外で食事をしていてどこにもないのに「いすのしたにあんぱんがあるよ」と発言したことがあったが、一瞬ん?と思っても否定せず「えぇ!あんぱんあるの?どこだろ~」って一緒に椅子の下を探すプレイが求められる。私は普段からぶっ飛んだ事ばかり妄想しがちなのでそういうのは楽しい。意味不明な行動でも全肯定してノリを合わせ、ダメと言うのは人を殴ったり食べものを投げ捨てたりした時に取って置く。

入浴後、約束通り映画を観て髪を乾かして布団へ。「ぴかくんめをまわす」の挿絵にサイが適当に台詞をつけて読み聞かせしてくれた。布団の上で上げた両足を勢いよく布団に急降下させたり(親バカだけどサイがやると足が短くてパンダみたいでめちゃくちゃ可愛い)、抱き合ったり(急に要求してくる)、ぶつかり合ったり(痛い)、一通り二人ではしゃいだ後各々就寝。


8月3日(木)曇り 涼しい
明け方、目が覚めて居間にいくとKが帰宅している気配がしたが音はしない。いつものように酔っ払って脱衣所で半裸で寝ていた。目覚めて居間に入ってきたKはまだ酔っている様子でうんざりした(しょうがないなぁとかでなく本気で嫌悪感)。そのまま出社した模様。今日も飲み会らしい。私は二度寝

朝起きたらサイもちょうど起きた。ベットに転がっていたら「はやくおきようよ」と催促された。メロンを切ると嬉しそうにお皿を運んでくれた。メロンを食べ終えていきなり、「おかあさんはにんきある?」と唐突に聞かれた。サイから質問されることってあまりないから驚いた。「人気」なんて言葉いつの間に覚えたのだろう。「え、お母さんはね~人気ないよ。サイくんは?」「にんきあるよ!(即答)」「へぇ~人気あるの?」「うん」「どうして?」「だいじょうぶ?ってするから」「え、お友達に大丈夫?って聞いてあげるの?」「うん」「それは人気あるかもねぇ」「へへへ~」という会話をした。「人に優しいのはいいことだよ。みんなに優しくしてあげてね」と言うと「うん」と笑顔だった。私の幼少期とはタイプが違うのかもしれない。いいことだ。私はいつも「人気者」と呼ばれる人達のことを羨望と嫉妬が混ざった眼で陰から見ていた。

60代後半の祖母が3歳の孫を車内に5時間放置して熱中症で亡くなったニュース。幼稚園送迎を忘れて別の用事を済ませ、そのまま孫を車内に残したのを帰宅したと書いてあった。過去にも似た事故(事件?)があったのを何度か覚えている。ニュースを見る度に何時間も灼熱の車内でチャイルドシートに固定されたまま動くこともできず叫んでも誰にも助けられず衰弱していく幼い子のことを想像してしまい心が締め付けられる。そしてどうしてもサイに置き換えて考えてしまう。3歳だと自意識があるので、どうして自分が置き去りにされたのか考えただろう。苦しい。

夕方、お迎え。今日はぐずらず園から出てくれた。最近他のお母さんはビーサンを履いている人が多い。一体何の仕事なんだろう。お互いの職業は余程親密でなければ聞かないし誰が何とか変な噂もない。我が子を帰らせるのが大変なので皆それどころでない。園庭に出るとサイはボール置き場からボールを勝手に出して転がして遊んだ。それを見て他の子も次々に真似した。こういうのはよくあるがサイが原因なのでボールを戻すよう注意して他のお母さんに「すみません、うちが出したせいで」と謝った。みんな「そういうことあるよね」という顔をしていた。薬局に寄る。カニカマを買わされる。焼き飯でも作ろうかと思ってハムも買う。

帰宅して目を離した隙にサイはハムを勝手に開けて食べていた。多分カニカマが開かなかったからだろう。「勝手にだめでしょ、一枚だけだよ」というと「うん」と頷き、悪戯が見つかった猿みたいな顔をしていた。その後、やはりカニカマが食べたかったらしくパッケージを持って来て開けるよう急かされた。開けると自分の分を一本取り出し私の分も渡されたのでビールも開けてつまみにした。焼き飯は嫌だというのでハムエッグにした。自分のだけ半熟にした。自分はごはんにハムエッグを乗せてKが買ったらしい「辛くないラー油」をちょっとかけて食べた。サイはあと、とうもろこしとトマト。また朝ごはんみたい。

夕食後、入浴。また今日もオーボール合戦をした。入浴後、就寝。なかなか一緒に来なかったので、私が居間の電気を消して「いくよ~」と先に寝室に行くと泣き出して、あぁ失敗したと思った。それから30分くらいぐずっていた。ぬいぐるみ作戦もだめだったので、「あ、面白いお話してあげるね」と「サイくんとズボンちゃん」という適当に思いついたタイトルを言ったものの、何も中身がないので話しながら先のストーリーを決めた。面白くないし意味不明だなと思ったがサイはけっこう喜んでくれた。そしたら「サイくんとパンダちゃん」がいいと言われたのでそれも適当に考えながら話した。パンダちゃんのお母さんはおにぎり屋さんで働いているという設定にした。話しているうちに先に自分が眠くなり話がいい加減になってきたらサイは怒り出した。それから30分ほどぐずって最後はトントンと背中を叩いてあげるとぐずりつつも眠った。私も力尽きて眠った。


8月4日(金)曇り
明け方、がたがたという音と眩しい光(Kはいつも人が寝てるとか時間とか一切気にせず煌々と電気をつけ音を立てる。母が泊まりに来た時あまりに異様だから泥棒かと思ったと言われた)で目が覚めた。3時。寝る前に洗濯機のスイッチを押したことを思い出しぞっとする。放っておくわけにもいかないので音楽を聴きながらのそのそと干す。みうらじゅんいとうせいこうのラジオを聴こうと思ったがいつの間にか番組は終了していた。がーん。干し終わったら一瞬見かけたKはまた仕事に行ったらしくいなかった。

スマホの画面が割れて、割れたところが剥がれて中身の電子部品?みたいなのが見えてきたからいよいよ新しいのに替えなければならない。でも過去に一度だけやったアップデートが面倒でずっとやれていない。iCloudというやつを一度登録したら次回以降は自動で更新されているのだろうか。分からない。アップデートする前にとにかく写真を整理しようと思って、サイの赤ちゃん時代の写真とか可愛い女の子の写真とか一枚一枚眺めていたらあっという間に朝になった。

サイが起きたので寝室に行き二人でごろごろ遊んでいたら思いのほか時間がなくなった。時間がないのにサイはテレビを観ていたから「サイくん、早く!」といつもよりキツめに言い放ったら敏感に感じ取って「ままいやだ」と言われた。ごめん。いつもの倍速で自転車を漕いだら小道から出てきた人に衝突しそうになった。謝って急ぐ。保育園でも超特急でサイを教室に入れる。こういうの嫌だなぁ、みっともないし恥ずかしい。ギリギリ電車に間に合ったけど化粧もしてないし髪もボサボサ。格好も変。嗚呼。

夜。Kにお迎え他を頼んで楽しみにしていた予定。金曜日の夜に出かけるのは久しぶり。こういう日に限って沼から上がりたてみたいな顔をしている。好きな人と会って話すのは楽しいが顔を見られるのが物凄く嫌なので本当はいつだってお面をつけたい。予期せぬこともあったがとにかく終始楽しかった。「モンマルトルの焼き鳥屋(何それ)が舞台の男女をテーマにしたフランス映画がもしあったら」という話をしたが店内が騒がしすぎて何も伝わらなかった。それがまた楽しかった。

百均で買った手品を見せたら喜ばれたからいつでも持ち歩きたいなと思った。自分が笑ってしまって真剣にできなかったけど手品って成功すると驚いてもらえるし、失敗してもげらげら笑ってもらえて何にせよ人を喜ばせるから好きだ。子どもの頃、その不思議さに魅了されデパートの実演コーナー(長いこと居て最後買わなかったら機嫌悪くさせるやつ)に通い詰め、大きくなったら手品師になりたいと思っていた。友達もあまりいなかったから一人部屋に籠って手品の練習をしていた。練習した成果を家族に見せたが下手すぎてすぐにタネがバレて笑われた。大人用のものを使っていたから難しかった。何年か没頭したが、やがて手品は摩訶不思議な現象なんかじゃなく手先の器用さと技術に全てかかっていて、不器用な自分には観る方が楽しいと確信し夢を諦めた。サイは保育園の何かの会で手品を観て目を丸くしてたらしいからサイにもみせてあげたいなぁ。また練習しよう。


8月5日(土)晴れ 水風呂に飛び込みたい暑さ
友人が嬉しいお誘いをしてくれたので朝から池袋へ行った(別ブログのとおり)。催事の後は屋上でお昼を食べた。サイは汗を掻きつつ好きな遊具に興じていた。風もあるし思ったほど暑くないと最初は思ったが時間が経つとじりじりと暑くなり建物内に入った。デパートは空調もよいし遊べる屋上もあるしオムツ替えの場所もあるし玩具売り場もあるし自分の買い物もして帰れるから子連れには最高の場所だと思う。小さい頃、母親はたまに私ときょうだいを連れてデパートに出かけた(特別だから「おでかけ」と呼んでいた)が、そういう訳だったのかもしれない。昔よくあったデパート最上階にある大食堂を最近見かけなくなってきてちょっと寂しい。色んなメニューがあって私達はお子様ランチ、母は蕎麦や和食など食べていた記憶。その後サンリオでお菓子買ってもらって。

友人はKと違って混雑した場所を歩いたり私の要領が悪いせいで予定がうまくいかなくてもイライラした様子を一切見せなかった。だからずっと心地良かった。身体は疲れても精神的には疲れなかった。本当に素晴らしい人だ。Kなら今絶対にぶちギレポイントだっただろうなと何度も考えた。キレられる度に耐えるのが日常になっていたがそれって異常かもしれない。

夕方友人と別れた後、パン美人が池袋までパンを届けに来てくれた。地元に帰省して戻ってきた彼女は、私が好きな造形パンをそこでしか買えないからと買って帰ってくれた。すごい可愛いパンだった。しかも山盛りたくさん。「たくさんありがとう」と言うと「一種類だけ売り切れてて買えなかったんだよね」と残念そうにしていた。パン美人は顔も美人だが性格も美人だ。こんな人と結婚したいといつも思う。サイもパン美人が大好きなのでにやにやしていた。

帰宅して、夕食。れんこんが大量にあるので、切ったレンコンに味付けした挽肉を挟んで他の野菜と一緒に焼いた。毎年夏は火を使いたくなくてオーブン料理ばっかりになる。料理というより切って突っ込むだけというか。肉を練るのが面倒で適当にしたら荒い感じで美味しかった。サイは一緒に焼いたアンパンマンソーセージを食べていた。入浴、就寝。


8月6日(日)晴れ じりじり焼けるような暑さ
パン美人にもらったパンをサイに見せたら喜んでいた。でもサイはデラウェアの皮を剥くことに夢中になっていた。一房分を全部剥いてからスプーンで掬って食べていた。少しちょうだいよと言うとダメッと言い全部食べていた。私はパンを食べた。


家族で美容院。Kまで同じ所で切っているのがちょっと嫌だが、担当者が違う。サイの髪は私が二度ほど切ったら虐待だと母に言われる程の酷い出来で、それ以来自分が行く時に連れて行くようにしている。私が切ってもらっている間、サイは美容院にインテリアとして置いてある玩具で遊ばせてもらっていた。美容院はシャンプーとか最高だし数少ない癒しスポットなので家族で行くのはあまり好きでないがたまには仕方がない。サイは前回私がKに頼んだせいで奇抜な髪型にされていたので、今回は普通でいいですと強調した。そうしたら美容師さんは「じゃあ星野源みたいな感じにしますね」と答えた。星野源って普通の髪型なのか。それにしても2歳で星野源ってどうなのよと思った。サイは前髪もだが後ろ髪が相当伸びていたので前髪だけ先に切ると既視感があった。こういう髪型できっと余った親のヘアカラーで茶色く染めてる子どもたまにいますよねと美容師さんに言うとげらげら笑って「子どもは絶対染めない方がいい」と言っていた。確かに染められて幼い子の髪や頭皮が傷むのは可哀相だし親のエゴの犠牲のような気がする。子どもの髪は本当に美しいから。
私はこの人の髪型可愛いなと思って画像を集めていた髪型が某若者に人気の歌手と同じだと最近知った。「もしかしてあの髪型って流行っているんですか?」と美容師さんに聞いたら「もうそりゃあ」大流行らしい。それを聞いて辞めた。私はいつも何も知らない。

昼食後(入ろうと思った美容師さんお薦めのお店は列になっていて即諦めた)、サイはベビーカーに乗るとすぐ昼寝し始めたので、家に帰らず家の近くの駅で降り、ベビーカーでも入り易く空いているスタバに行った。家に帰ると帰宅した段階でベビーカーから下ろす時にどうしても起こすことになり機嫌が悪くなり大変だから帰りに寝た時はいつもこうする。気になっていた新しい何とかライムフラペチーノを頼むか迷って、以前抹茶のを食べきれなかった時のことを思い出し辞めて夏に好きなクールライムにした。フラペチーノを頼むか迷って店員さんに「これって量多いですよね」と聞き困らせてしまった。知るかよ老人かよ、と後で自分で思った。クールライムを飲んで少し休んでいたらサイが起きたので牛乳を買った。高いけどちゃんと蓋もつけてくれるしサイも私と同じ容器で嬉しそうだった。サイはマンゴープリンも食べたいと言ったので私はあまり好きでなかったがそれも買った。二つスプーンをもらって二人で分けて食べた。なんかデートみたいだなと思った。いつまでもこうはできないから今ぐらいは。

自宅付近に戻り、夏休みだけやっている室内で遊べる涼しいスペースで絵を描いて遊んだ。サイは私にも塗り絵の紙をくれて、面白かったので夢中でやっていたらサイは私の真似をして塗りたがった。でも使い慣れていない色鉛筆はサイには持ち方と力加減が難しかったようで、うまく塗れずに癇癪を起していた。面白くなかったようで途中で飽きて絵本を読んでいた。
遅くまでそこにいたので帰宅してシャワーを浴びたら買い物に行く時間がなくなった。冷蔵庫にはレンコン、かぼちゃ、玉ねぎがあったので火を使いたくないはずなのに天ぷらしか思いつかなかった。天ぷら粉を作ろうと思って袋入の小麦粉を出して少し離れて戻ったらサイが小麦粉を袋ごとひっくり返して大惨事だった。奥の方に置いたはずなのに手が届く身長になったんだなぁ。などと感心している場合じゃない。サイは床にぶちまけた大量の小麦粉の側に立ち竦み、こちらの顔色を窺っていた。パディントン並の事故なのでさすがにヤバいと思ったのかもしれない。ここでキツく叱ったらダメだと思ったから「うわー大変。勝手に触ったらだめだよ~」と嘆くとサイは「うん」と言い、ごめんなさいは?と聞くと普段なら絶対謝らない男なのに小さな声で「ごめんなさい」と言った。その後、悪いという意識があったのかいじけて寝室に行った。見に行くと拗ねた様子で寝転がっていた。が、少し経ったらいつもの様子で居間に戻って来た。

Kが帰宅して天ぷらだと言うと機嫌がよかった。揚げているとサイが周りをちょろちょろして怖いし暑くて死にそうだったけど美味しかったからたまにはいいかもしれない。Kは食べ過ぎて気持ち悪いと言っていた。私は無理矢理食べないでお腹いっぱいになるとすぐ食べるのを止める、そうすると休んでいる間にKが残りを全部食べるという図式。サイはあまり好きでなかったらしく、衣をはがして食べていた。

今日も陽を浴びて顔がひりひりしていたのでお風呂上りに即パックをした。パック姿のまま声をかけるとサイは私に気付き、一瞬え、誰?という顔をした後怯えて「ええーん、こわい~!!!」と本気で泣き出した。「ほらお母さんだよ、怖くないよ」と必死に弁明したら泣き止んで「おかあさんなの?おばけじゃない?」と何度も何度も聞かれた。そのまま布団に行くと「おばけじゃない?」とまだ聞かれた。今までで一番怖がらせてしまった。確かに怖い。

いつでも笑っていたいよね

7月24日(月)
朝。サイは週末からアンパンマンの映画(一作年の魔法のランプのやつ)を繰り返し観ることにはまっている。きっと私が週末映画に連れて行かなかったから「俺はこんなに映画好きなんだぜ」というアピールかもしれない。家を出る時間になってもなかなかテレビから離れてくれず困った。時間がないので無理矢理連れて行く。自転車に乗りながら「おかあさんおしごといかないで~」とまた言われた。これ言われたら本当に辛い。教室の前でも泣いてぐずりにぐずり一生の別れみたいになった。自営業でもしようかなもう。起業しようかな。~でもしようかなという軽い気持ちでできる訳ないが今の会社からいつ戦力外通告受けるか分からないし(私の入社前にひどいリストラがあったそう)、一度真剣に調べてみたいなとは思っている。何にせよお金が要る。「おしごといかないで」の一言でそういうところまで考えてしまった。

夕方。家の冷蔵庫がすっからかんなのでスーパーに寄った。Kの気分に何でも対応できるよう、何日か分の食料を買い込む。帰ってきたKに「きょうはなに?」と何よりも食が大事みたいに聞かれてムカついた。「別に決まってないよ」と選択肢を与えたら何故か冷凍餃子になった。私は冷やし中華が食べたかった。

サイには餃子は味濃いと思いハムエッグを焼いた。そういえば小さい頃、自営業で料理が苦手な祖母の家に夏休み一人で泊りに行った時、ハムエッグと納豆が夕食に出てきたのを突然思い出した。でもけっこう美味しくて家ではそんなの晩御飯に出て来なかったから嬉しかった。ちなみに祖父は一応和菓子職人だった。父が跡を継いでちゃんとしてたら私もその道へ行ったのか行かなかったのか。サイは黄身を残して私にくれた。けど絶対後から欲しがるなと思って食べずに皿の端に置いておいたら案の定欲しがった。そういう予測、Kにはきっとできない。入浴後、またアンパンマンの映画を観てから就寝。粘土はどうした君。

サイと少し寝て深夜に起きて作業。


7月25日(火)曇り じっとりする暑さ
朝。サイは今朝もアンパンマンの映画。今日も入口で「おかあさんおしごといかないで」と泣いた。ごめんねと思いながら先生に日中の様子を尋ねたら「え、教室では笑ってますけどねぇ」と言われその姿を想像すると余計辛くなった。

昼休み。延命治療を断念し尊厳死が決まったイギリスの赤ちゃんのニュースを読んで苦しくなる。人の死って自由だけど不自由だ。

夕方お迎え。いつものように教室の前でサイを抱きしめる。Aくん(イケメン、サイと悪ガキコンビになりがち、Aくんのお父さんは甘い)がお父さんに抱っこしてもらい廊下に天井から下げてある動物の紙風船を触っていたのを見て、サイもやりたがる。抱っこして紙風船に触れると満足そうだった。その後Aくんが抱っこしてもらって帰ってるのをみて「サイくんもだっこー!」とねだられた。

コンビニに寄る。カニかまとファミチキと明日のパン。帰宅後、夕食準備。冷やし中華。サイはカニかまが異常に好きらしく(また一瞬のブームか)、帰宅した瞬間5本くらい食べた。どれも同じなのに「サイくんがえらべるー!」と自分で選びたがった。冷やし中華の麺があまり好きでなかったようで手で掴んで握り潰していた。夕食後、日曜日に愚図って買っためばえの付録で遊ぶ。入浴、就寝。


7月26日(水)雨
朝。寝坊。身体に違和感。急いで準備して保育園に行き最寄駅に着いた時にはぎりぎり間に合う電車の時間を過ぎていた。遅刻するのが嫌で体調も変な感じだったので午前休の連絡をした。家に帰って熱を測ると38度もあった。普段意識していないけどわりと熱や痛みにはわりと強い方らしく、なんか気のせいかもしれないけど変だなぁと思うと大体熱が出ている。しんどいなと思ったら39度超とか。帰宅したら安心して、雨だから洗濯もせずソファに寝転がっていた。昼になっても熱が下がらず一日休みの連絡をする。少し食べて寝る。何時間も寝ていたらしく起きたら陽が暮れかかっていた。慌てて散乱した部屋を掃除する。まもなく二人が帰ってきた。

夕食の用意ができなかったのでKに買って来てと頼んだ。なぜかKは私の食べられない唐辛子たっぷりの激辛棒棒鶏や苦手なレバーを買って来た。よくみるとKの好物(で私の嫌いなもの)ばかりだったので、おまえそれ自分が食べたいもんやろって心の中でキレたが顔には出さず、ただ食べずにいると「なんで食べないの!?」とむっとして聞かれた。辛いもの全般無理なの知ってて嫌がらせかなと思った。「食べなきゃ治らないよ」と言われたので内心で呆れながら一口だけ食べたら辛くて泣きそうだった。Kは冷蔵庫の中に昨日飲みきれなかったビールが入っているのを見つけて「なんでビールなんか飲んでるわけ?」って口調を強め怖い顔をして聞いてきた。体調不良で飲むわけない。何をしていてもわざと怒らせようとしているのかと思う行動ばかり。

夕食後、私が布団で寝ていてお願いしたはずなのにKはサイの相手をしてくれなかったため、サイは寂しかったのか私のところに一人で来て抱きついたり突撃したり(2歳児の力はこんなに強いのかと思うくらい痛い)大きな声で騒いだりして今日だけは勘弁してほしかった。体当たりを避けるべく、ねぇ絵本読んでよ、と言うとサイは使命感に駆られたのか絵本を探してきて枕元でアンパンマンの絵本を読んでくれた。Kは一体何をしているのだろうか。叫ぶこともできないので色々を諦めたが限界がきて家の中なのに電話した。夜中起きると嘘みたいに熱は下がっていた。知恵熱だったのか。


7月27日(木)曇り
朝起きたらKがいたので驚いた。休みらしい。私は朝友人に渡したい物があるから朝マックの約束をしていて、サイも連れて行かなきゃいけないのは楽しそうだけど大変だなと思っていたからおおラッキーと思ってKに保育園を頼んだ。一人だとなんて身軽なんだろう。テラス席で待っていたら友人がやって来て、30分もない短い時間ながら色々と話した。私達以外はビジネスマンの二人組や男性お一人様が座っていた。短いのにけっこう濃い話をした。あー、やっぱり私この人が好きだなぁと思った。駅の入り口(ああ優しい)まで一緒に来てくれて別れた。朝から人に会って話すのっていいなと思った。朝活に嵌る人がいるわけだ。

お腹も気持ちもいっぱいで電車に乗っていつも通り仕事。

夕方。休みなのでKに買い物とお迎えを頼む。晩御飯はKの独断でチャプチェ。あまり食欲が湧かず、もずく酢と豆腐を食べた。もずく酢はいつでも味方。サイの機嫌よかった。Kが海苔を持って来たのを見て、サイは私にお茶碗に残ったごはんで「さんかくおにぎり」と「まるのおにぎり」を作るよう要求してきた。げっ面倒臭いなと思ったがラップを持ってきて小さい△と○のおにぎりを作って海苔を巻いて渡したら満足そうにしていた。
明日から小旅行。旅行の準備をしておいて欲しいと頼んだのに全くされている気配がなかった。聞いたら何もしていないとのこと。夕食後、サイはまたアンパンマンの映画。


7月28日(金)雨時々曇り
軽井沢1日目。朝起きて準備していないことに気づき慌てて準備する。Kがスーツケースを拒否したので大きい布鞄に何でも詰めたら恐ろしいほど重くなった。新幹線。いつもはもったいないから膝の上だが最近暴れがちなので、サイの席も一席取ったら広さが全然違って本当に取ってよかったと思った。軽井沢駅着。サイは改札を出たところにある軽井沢と何の関係もない300円もするガチャガチャを目ざとく見つけてやりたがる。過去に同じシリーズを義父が勝手に二回もやらせたが中身の玩具にはすぐに飽きて投げ捨てていたから絶対にやりたくなかった。「やらないよ、高いしね」とスルーしたら「たかいのやりたい~」と騒ぎ出し、それから30分くらいガチャガチャのところへ走って行ったり泣いて騒いでぐずり続けた。

何とか駅前のレンタサイクルのお店まで辿り着く。子連れだと何でもない工程にものすごいパワーと時間を要する。レンタサイクル屋で子ども乗せ付電動と普通のママチャリを借りた。私は電動を選んだらいつも乗っているのと違い過ぎてなかなかうまく進めなかった。その姿を見てKがイライラして文句を言った。そういう時に笑ってほしい。何とか目的の駐輪場まで辿り着いたが行く予定のレストランはそこから10分歩いて行く必要があった。サイが走り回るのと空腹でKの機嫌は最悪だった。空腹でキレるのはいつもだから分かっていたがまだ11時代だ。
レストランに着いたらKは仕事の電話をし始めたので、私が適当に選んでオーダーした。料理は丁寧で美味しかった。サラダが美味しかったので中に入っていた食材をメモした。Kは酒を飲んで美味しいものを食べたら一気に上機嫌になった。サイは運動していないからかいつも程食欲がなかったがパンが来たら目を輝かせていた。食事に飽きたサイが店内で走り回ろうとして大変だったので退散した。

食後、歩き出したら昔のキャラクターものを扱うリサイクルショップとアンティークショップの中間みたいな面白そうなお店があった。古いアンパンマンがたくさんあったので、おお入ろうと思ったらサイを連れたKは遠く先にいた(歩くのが早すぎる)。これを逃すと次いつ来るか分からないと思って入店し、お店の中を少し見てにこにこぷんのコップとアンパンマンの人形を買って出たらKから着信が2回もあった。合流して謝ると怒られた。サイに買ったアンパンマンの指人形を渡すと喜んでいた。その後、最初から行くと予告していたレースのお店に入って5分くらい見ているとKが我慢できなくなり、「まだなの!?」「早くして!!」と苛ついて何度も聞かれた。旅行に来てまでイライラされるのが悲しかった。
その後ジェラート屋さんがあったので美味しそうだから食べようよと言って買って三人で食べた。サイは嬉しそうに食べていた。食べ終わってKは「珈琲ソフトが食べたかったのに」と吐き捨てるように言った。サイは珈琲無理だし、別に両方食べたっていいやんかと心の中で思った。あー、もう本当に嫌。楽しくない。珈琲ソフトで有名なお店へ向かった。食べたかったものを食べたらKの機嫌は少し直った。その後「夜飲むワインが買いたい」と言い出したため、ワインが売っている店に入ったら買いたいものがなかったらしくまた機嫌が悪くなった。

雨が降りそうだったので駐輪場に戻り、自転車に乗り「旧三笠ホテル」まで行った。木々の緑が綺麗だったのに、のぼりの坂道と凸凹道が辛くサイクリングを楽しむ余裕はなかった。後ろ乗せをしたのは今回の旅行が初めてで姿が見えないのが不安だったので、何度もサイに「だいじょうぶ?」と声をかけた。眠いのかあまり返事はなかった。しかし漕いでも漕いでも着かない。途中、目の端に別荘が何軒も建っているのが見えた。まさに「カルテット」の世界やなぁとぼんやり思った。しかしあの人達、週末ごとに東京の職場と別荘を行き来していたけど、それって結構大変だなと思った。まあドラマやけど。「旧三笠ホテル」にようやく辿り着くとサイはパタンと寝た。サイが寝たから交代で見ようと提案するとKはむっとして、建物に入らずサイを抱いてベンチで座っていると言い張った。せっかく来たのに。まあいいかと思って一人で中に入った。想像以上に見ごたえがあった。部屋の中や廊下に配置された家具や装飾品の子細を観察したり、写真を撮ったりした。建物内の塗装にメインで使われているくすんだピンク色と窓の外の鮮やかな緑色のコントラストが美しかった。これがピンクじゃなくて寒色系だったら緑とぶつかり合うから設計した人はよく考えたもんだなと感心した。感心していると昼寝から起きた(起こされた?)サイとKが階段を上ってやって来た。交代しようと思っていたのに。サイは部屋がたくさんあるのが面白かったのか興奮状態で部屋を出入りした。高そうな調度品を破壊しないかドキドキした。

旧三笠ホテルを出た後は疲れていたので予定を変更し宿に戻ることにした。途中で地元の牛乳と珈琲牛乳の自販機があり、美味しそうだったので自転車を停めて寄った。珈琲牛乳を買って牛乳も買おうとしたら何度お金を入れても戻って来て買えなかった。諦めて珈琲牛乳を2本持って戻ったら、Kは「え、なんで珈琲牛乳買ってんの?俺は牛乳が飲みたいって言ったでしょ」と私が酷い悪事を働いているかのような感じで物凄く怒り出した。機械がおかしくて牛乳が買えなかったことを言い訳してもむすっとしていた。この瞬間、単純でつまらない原因だけど何かがかっちり決まった気がした。パズルの最後のピースが嵌るように。「あはは、珈琲ばっかりだね」って笑ってくれる人はここにはいない。

Kが手配した宿は2階建ての小さなログハウスで1階が畳で2階にベッドが3台あった。陰気な感じで照明も暗かったが清潔だった。カップルにはいいかもしれない。どっと疲れたので珈琲牛乳を一気飲みした後一人で2階に上がりしばらく寝させてもらった。サイとKは1階にいた。1時間ほど経ってKが晩御飯来たよ!と何度も呼ぶので階下に降りた。小さなテラスにBBQセットが設置されていた。外の席に食器や途中で買った野菜を運び、Kは肉を焼き始めた。焼けた肉を小さく切ってサイのお皿に入れたがサイは食べずにミニトマトと付いてきた焼きおにぎりばかり口に入れていた。信州牛らしい。美味しいけれどお腹いっぱいになり箸を休めていたらKに「食べないの?食べないの?」としつこく聞かれた。Kはご機嫌で肉を焼き続け食べ続けた。ルームサービスのワインを2本も頼んでいた。サイが寝たら話したいことがあると行く前から言っていたからえっと思い「話したいことがあるからあんまり飲まないで」と言うと「わかったわかった」と返ってきた。その返事で、ああもう今日は話せないなと感じた。案の定、食べ終わって少しテレビを観て(ドラえもんとMステを久々に観た)、サイとお風呂から出た直後、Kはサイをほったらかしにして私が二人がお風呂に入っている間に敷いた布団に大の字になって寝た。起こしても起きなかった。話したいのにいつもこうやって話せない。私も急いでお風呂に入りサイと自分の髪を乾かしてサイを寝かした。サイは昼間私が買った指人形のうちおむすびまんが見つからないと騒いでなかなか寝てくれなかった。明日絶対探すからと何とか言い聞かせて寝かせる。Kは起きる気配がないし、私も疲れたので寝た。


7月29日(土)おもに雨
軽井沢2日目。明け方目が覚めた。二人はまだ寝ている。2階に上がってチケットを取ったりした後、昨日自分が起きたままになっていたベッドに再び潜り込んで寝た。少し寝たら朝ごはんが運ばれてきた音がして起きた。フードコートで呼ばれる時と同じ音だった。自家製らしいパンと卵と昨日買ったケーキなどを外のテーブルに並べる。サイはご機嫌だったが途中でアンパンマンが観たいと騒ぎ出した。あれは録画だからここでは観れないよと言ってもよく分かってもらえなかった。サイが部屋の中でテレビを観ていたのでテラスでKに思っていることなど少し話す。部屋に入ると相手にしてもらえなかったからかサイがぐずった。ごめん。
チェックアウトした瞬間、大雨が降ってきた。呼んでもらったタクシーに乗るだけでびしょびしょに濡れた。目的の「ペイネ美術館」があるタリアセンという施設に辿り着いた時には雨は更に強くなっていた。タクシーの運転手は降りる際、濡れている私達を憐れむこともなく、前を見て一切手伝ってくれなかった。雨に濡れたことでKの機嫌は最悪になった。雨に濡れても家族で笑い合いたいな、と心の中で思ったがすごいイラついているのが分かった。イラついてベビーカーのカバーもちゃんとつけてくれなかったから荷物も全部濡れた。「ていねいにていねいに」というアンパンマンに出てくる鉄火のマキちゃんの弟子、こまきちゃんの言葉が浮かんだ。施設に着いて私が傘を閉じるタイミングが遅いと「なにやってるの!」とキレられた。チケット売り場で複数施設が巡れるお得なチケットがあると言われたため、「わたしは軽井沢高原文庫にも行きたいけど(Kは一切興味ないと最初から言っていたので)、その間二人でどこかで待っててもいいよ」と言うと「はあ?どこで待つわけ?」と言われた。もう嫌だ。帰りたい。

施設の敷地内に入ってもずっと機嫌が悪かったため、もう限界だと思い、「帰るね」と言って出口に向かった。「はぁ?」という声が背中から聞こえてきた。歩きながら、そうだサイを連れて帰らなきゃと思って引き返した。引き返したらまた何か言ってきて、もうこれ以上やり合うのが馬鹿馬鹿しくなりKを無視してベビーカーを押した。結局、帰らずにペイネ美術館に行った。Kは美術館内でもサイが落ち着かないので「人に迷惑だ」とずっとイラついていた。

ペイネの絵が好きだ。結婚式にも使った。しかし険悪な空気の中、愛に満ちた絵を観るなんてこんな皮肉はない。それでもペイネの絵は素晴らしかった。幸せそうな男女の絵とか添えらえたポエムとか、一見目を瞑りたくなるほどの甘ったるい愛を描いているようだが、色合いや彼の描くモチーフはどこか影があってシニカル。そういう所が好きだ。初めて観た「ノアの方舟」というタイトルがついた絵が素晴らしかった。方舟に乗っている動物たちが全員地獄へ行くみたいな表情をしていた。パネルにはペイネと奥さんの出会いのエピソードも書いてあった。踊っていてペイネが奥さんの足を踏んでしまったのが仲良くなったきっかけらしい。いいなぁ。

Kはサイがじっとしていないのに耐えられなくなったから(サイは楽しそうだったのに)と言って、雨も止んだしサイと池のボートに乗ってくると言い出て行った。それはいい。物販でポストカードを買い外に出てペイネの絵をモチーフにした銅像を眺めていたらKから電話がかかってきた。「ボートに乗ってる姿を撮ってくれ」と言われた。なので池まで近づいて撮った。もっとこっちから撮れとボートの中から指示された。サイははしゃいでいるという程ではないがまあまあ嬉しそうだった。二人がまだボートに乗っていたので先に食堂に行くからと電話して、人がまばらな広い食堂で珈琲を飲みながら二人を待った。もっとゆっくりでいいのに10分ぐらいして二人はすぐにやってきた。

昼食後、サイと少し遊んでからタリアセン敷地内にある「睡鳩荘」(別称:旧朝吹山荘)に向かった。ヴォリーズの建築。この別荘の持ち主、朝吹氏の娘は文学者の朝吹登美子で、朝吹登美子は芥川賞作家の朝吹真理子の叔母にあたるらしい。だから色んな関連書籍が売っていた。幼少期のものから年頃ものまで登美子の写真が飾ってあって、何というか何も困ったことないような伸び伸びとした表情をしていた。こんな別荘もあるし、お金があるっていいことなんだなとしみじみ感じ、私がこの家系に生まれていたらどうなったかなと想像した。お金があるからと言って、太宰みたいになる場合もある。
睡鳩荘の帰り道、サイと陸上に上がっていたカモを眺めて話しかけた。大人しくて全然逃げなかった。

軽井沢高原文庫。結局全員で行った(が途中でKはサイといなくなった)。野上弥生子展をしていた。恥ずかしながら野上弥生子を初めて知った。夏目漱石の門下生と結婚したり、漱石と縁があるらしかった。執筆メモや手紙を見ていたら面白くて作品を読んでみたいと思った。が、売店には売っていなかった。

タクシーに乗り、今回高すぎて泊まれなかったからお茶だけでもしようと万平ホテルへ。着いたらサイは寝始めたので、喫茶室に入ってからKと話をした。今までで一番思っていることを真剣に話した。伝わったか分からないが、前よりも100歩くらい前進した。でも簡単に越えられない新たな壁を作ってきた。卑怯だ。アップルパイとフレンチトーストを食べたが話をした後だったからか何も美味しく感じなかった。Kは「(食べる前に)写真を撮らなくていいのか」と聞いてきた。結局一つも分かっていないのかもしれない。サイが起きたのでホテル内を見て回った。泊まったら素敵なんだろうなと思った。ミュージアムに展示されていたすずらんがデザインされた昔のティーカップが売店で復刻版として売っていて欲しかったが我慢した。

受付でタクシーを呼んでもらい軽井沢駅に向かった。新幹線に乗り東京へ戻る。サイはKが買ったさけるチーズを細く割くのにはまってそれで時間が持った。帰宅。入浴。入浴後また嫌な態度を取られた。二度とイライラしないって約束したばかりなのに。約束と違い過ぎて笑いが込み上げてきた。笑っていたらKは一層キレた。サイが困って泣き出したのでごめんね、と謝って抱きしめた。サイは小さな声で「おとうさんがおこってこわい」と言った。ごめんね、サイ。

7月30日(日)雨時々曇り
普通の生活に戻る。朝ごはん、洗濯、Kとサイが出かけている間に掃除、昼食作り。お昼ご飯を作っている途中でコンビニに行きたいと言うと「やることやってから行ってよ」と言われた。Kが昼からビールを飲んでいいか聞いてきたので「じゃあ寝かしつけやってよ~」と軽い感じで言うと「仕事いかなきゃいけないの!」と逆切れされた。ムカついたから私もビールを飲んだ。サイを寝かしつけるもなかなか大変。途中で水が飲みたいというので台所へ行くとKはまだいた。仕事行くんちゃうんかい。ようやくサイは寝た。疲れて私も少し寝た。途中で起きて作業をしたらサイもすぐに起きた。二人でスーパー。魚が食べたかったので魚が安いちょっと遠いスーパーに行った。ポイントカードを作ろうとサービスカウンターに行ったら対応してくれた女の人は丁寧だった。よかったなぁと思って帰ろうとした瞬間、「さて」と図太い声が聞こえてきて、え、誰と思ったら同じ人だった。どこからこんな声が。隣で怯えて立つ新人バイトさんと思わしき女の子に対しての声だった。さっきの声と全然違うやん。私が見ているのに気付かず女性は「○○さんは、・・」と図太い声で女の子に説教を始めた。それが表情含めてすごい嫌な態度だったのでウンザリした。あそこまで態度の違う人は初めて見た。人間って怖いなって思った。私は初バイトの和菓子屋で根性の曲がった悪魔みたいなおばさんに毎日虐められて辛かったから(なぜか一年も働いた)、自分が下の子に何か教えたりする時、絶対に高圧的な空気を作らないよう心掛けてきた。女の子に幸ありますように。人には優しくありたい。

遅くなったがKは帰って来ていなかった。7時頃今から帰ると電話があった。Kが帰宅して晩御飯。買い物(別に今日買わなくていい物)をしたから遅くなったらしい。そんなことで私は怒らないぞ、という気持ちでへぇと言った。入浴。風呂に入りながら「東京タラレバ娘」最終巻を読む。最終巻と知らずに読んでいたら急に終わりに向かっている感じがして驚いた。やや無理矢理感があったが、「人の幸せを願いたい」とはいい終わり方だと思った。サイと布団の上で転がったりして楽しく遊びながら就寝。さて明日からまた一週間。

 

 

耐え切れないことがあった翌日、SNSにうんざりしツイッターのアカウントを消した。アプリも消したら正直寂しいが不思議と清々しい気持ちになった。最近、会いたい人に会って食事したり時間を共有するうちに、好きな人と(ビール飲んで)同じテーブルで同じ皿の料理を突っついてどうでもいいことや真面目なことを話したり、ゲラゲラ笑い合ったりすること以上に尊くて美しいことはないと気が付いた。

同じ時代に生きている限り、意思さえ合えば本当に会いたい人にはどこかで必ず会える(はず)。

絵をみにいくためだけに今日があってもいい

7月18日(火)晴れ時々豪雨
寝起きでサイの機嫌は最悪だった。連休明けで嫌だなぁという私の気持ちを察したのかもしれない。保育園に着いて預ける時も教室の前で泣き喚き、Mちゃんをはじめ他の子どもは「サイくんないてるなぁ」という感じでぽかーんとした顔で傍観していた。さすがにこの年齢で別れ際に泣いている子は少ないし、サイも普段は名残惜しそうにはしても泣くまではしない。たまらなくなって抱きしめたりしても様子は変わらず先生が困ったような顔をしていた。こんな日はもう仕事なんか行きたくない、だからと言って連休明けに休むわけにも行かないので先生に抱き上げられて泣き続けるサイに後ろ髪を引かれつつ保育園を出た。辛いが割り切りも必要。

夕方。お迎えに行こうと駐輪場から出たらアスファルトが見えないほど地面が緑の葉っぱで埋め尽くされていた。幻想的で異様で葉っぱの青々しい匂いが鼻についた。ジブリの何かで見た光景のようだった。すごいなぁと思いながらいつも通る割と急な坂道を下っていたら濡れた葉にタイヤがとられてブレーキが全く利かず激しく転倒。あっと思った瞬間にはもう地面にぶっ倒れていた。体中痛くて、ああ、やってしまったと思いながらしばらく横たわっていたら通りがかった親切な方が自転車を起こしてくれたり立ち上がるのを手伝ってくれた。笑う場面じゃないのに、すみませんすみませんとへらへら力なく笑っていた。優しそうな青年が「これ」と私のものじゃない濡れた靴下まで差し出してくれたので、また力なく笑って「あ、これは違います、すみません」と断ったり、とにかくどこのから来たのか分からない洗濯物やら植物が落ちていて地面は大変なことになっていた。葉っぱが両腕に纏わりついたまま立ち上がってズボンを見ると膝に修復不能なくらいの大穴が空いていて、空いた穴からべっとりとした血が覗き見えた。肘からも血が。ひー。とにかくお迎えに行きゃなきゃとそのまま保育園に向かった。先生や他のお母さんに同情された。

私の肘の血を見てサイは「アンパンマンばんそうこうあげようか~?」と心配してくれた。気持ちは嬉しいがそんなものでは間に合わないので薬局に寄り「絆創膏はどこですか!?」と必死の形相で店員に尋ねてキズパワーパッド大を購入。サイは必死な私を置いてお菓子に心奪われていた。とにかく早く帰りたかったので普段なら辞めさせるどうでもいい菓子も買ってしまった。帰宅後、サイがお菓子に気を取られている間に消毒して処置。縫う必要はなさそうでよかった。しかし膝から変な液が溢れてきて覆いきれなかった。とにかくご飯食べさせなきゃと思ってカレーを温めて食べさせた。お風呂がまた大変だったが何とか済ませてどっと疲れてサイと就寝した。こういう時に限ってKはいない。

夜中に起きて、とんでもなく嬉しいニュースを知った。妄想が現実になっていた。嬉しくて嬉しくて泣いた。しーんと静まり返りエアコンの低い音だけする暗い居間でiphoneを手にし、そこに一際明るく示された美しい事象が今この世界で本当に起こっている事だと信じられず何度も画面を見て泣いた。いやいやこれは現実だという実感がじわじわと湧いてくると、世の中捨てたものじゃないなぁ、いい事があるなぁと小学生のように思った。転んで血を流して痛がっている場合ではない。


7月19日(水)
仕事帰りに伊勢丹に寄る。解放区に好きな人達が一緒に作り上げた商品が美しく並んでる光景やポップの文字は夢で見たそのままだった。人がそれらの商品を買い物する様子を見たくて、知ってる人誰か来るかなと思ったが誰にも会わなかった。地下に降りて夕飯用の惣菜を調達。Kの誕生日。喜ばせたくないし誕生日なんか絶対祝いたくないと思っていたので何もせずスルーするか迷って、でもサイとケーキを食べる約束をしていたからケーキと小さなお花だけ買った。お花をサイからKに渡してもらった。Kはサイに誕生日の歌を歌わせていた。でも私はおめでとうと言わなかった。サイはスーパーのお惣菜の春巻きが大好物なのに、高い春巻きを散々いじくった挙句食べずに皿に放置していた。「ごちそうさま」と言われたが、捨てるのは悔しいしもったなく思い水を吸ってべちゃべちゃになった海老春巻きを私は必死で食べた。


7月20日(木)晴れ きれいな青空
Zepp Diver Cityにて大森靖子さんツアーファイナル。半休にするか迷って午前中に済ませたい用事もあったので一日休みを取った。朝から干しても干しても全然減らない大量の洗濯物を干し終え、服はあるのに着たい服がなくて泣きそうになって、伊勢丹で購入した大森靖子さん×縷縷夢兎コラボキャップ(それ自体は死ぬほど可愛い)を自分の頭に被ったら20年ぶりのキャップ姿を人に見られるのが怖くなってきて、でも人と約束していたし銀行に行かなきゃいけなかったから予定より大幅に遅れて銀行に向かった。銀行での用事は窓口のお姉さんが優しくて思っていたより早く済んだ。でも友人との約束をダメにした。

自己嫌悪に苛まれながらも進まなきゃ動かなきゃととりあえず電車に乗った。乗り換えのために新橋駅で降りた途端、猛烈にお腹が空いたので新橋駅前ビル1階にある喫茶店「ポンヌフ」で瓶ビールとナポリタンを頼んでゆっくり胃に収めた。ずっとずっと来たかったけど定休日などでタイミングが合わずようやく来れた。「ポンヌフ」は夏休みに親戚の家に泊まりに来て涼しい部屋で花柄のグラスで出された麦茶を飲んでいるかのような居心地の良さだった。実際に飲んでいるのはビールだが。ランチタイムを外したからか、店内は静かで穏やかで誰の目線も気にならなかった。大きな窓から明るい光が差し込んでいた。従業員のおばさま達が集まって置き忘れられた名刺入れの主を探していた。おばさまの一人が名刺に書いてあった何かの番号に電話したがつながらず、別の、おそらく職場の番号にかけていた。「ポンヌフって言うんですけど」「パピプペポのポです」その電話しているおばさまを他のおばさまが囲んで心配そうに見つめていた。素晴らしいお店だと思った。レジのおじいちゃんがスローモーションみたいで、お金を受け取るのもお釣りを数えるのもコマ送りのようで愛おしくなった。

再びゆりかもめに乗って台場駅へ。物販を済ませTシャツに着替えてからライブまで同行者を待って時間を過ごす。同行者が到着してライブ会場入り。ライブ開始。史上最高のライブだった。涙が止まらなかったり口を開けたまま茫然としたり酷い顔をしていたと思う。音楽というより、自分の人生を劇やミュージカルにしたものを走馬灯みたいに次々と目の前で観せられているような感じだった。誕生、怒り、喪失、再生を経て、未来への希望を残してライブは終了した。記憶が消えないうちに感想をまとめておきたいが余韻に浸りすぎてまだそれすら出来ずにいる。大森さんってとにかく歌が上手いなと思った。あとは何でこんなに可愛くて綺麗なんだろうって思った。そういう当たり前の、別に今気づいたことでないことばかり小学生の感想文みたいに考えていた。人前で泣いた姿を最近は観客に見せなかった大森さんがMCで泣かれていた。あの姿は一生忘れないだろう。

終演後打ち上げ。夢みたいに楽しかった。みんな若くて可愛いのに自分みたいなおばさんにも親切だった。愛おしかった。人に終電を調べてもらって(いつも終電を確認するのが本当に苦手)帰路が同じ人達と途中まで一緒に帰った。いい歳して大学生みたいに駅まで走ったりしてそれも楽しかった。嘘みたいに楽しくて幸せでずっと笑っていた。


7月21日(金)晴れ
腑抜け。サイは昨日の夜Kと二人で相当寂しい思いをしたのか、保育園の教室に入る直前に突然「おかあさんきょうおしごといかないで」と小さな声で言い泣いた。そんな風に言われたのは初めてだったので胸にずんとしたものが降りてきて苦しくなった。一人で楽しい思いをして笑っててごめんねごめんねと心の中で謝って抱きしめた。泣いているサイを先生は抱き上げて、それでもサイは泣いていて私は保育園を出た。好きでもない仕事をしに何のために職場に行くのかもはや分からない。


夕方迎えに行くとサイは機嫌はよかった。保護者達が出す金曜日の空気を感じ取っているようだった。他の人でしている人はあまり見かけなし、先生はまたやってるなって感じで笑っているが、私は送迎時毎日必ずサイを抱きしめる。それで償いになる分けではないけどサイの体温に触れたら自分が救われるから。いつまでやらせてくれるか分からないけど。サイと帰りに気になっていた和菓子屋に寄る約束を朝していたので、約束通り初めて入る和菓子屋に寄り、豆大福とすあまと赤飯のおむすびを1個ずつ買った。そしたら豆大福を一つおまけしてくれた。

帰宅してサイがそれを食べたいと騒いだのでそれらを晩御飯にした。Kがいたら絶対に怒られるやつ。私は豆大福でビールを飲んだ。豆大福は半分個したので一つ残して「これは明日食べようね」と言うと納得していた。入浴、就寝。

サイが寝た後、ツイッターで嫌なことがあった。所詮SNSだけど思い当たる原因が自分だから一気に自己嫌悪の大波が押し寄せた。謝るべき人には一人ずつ謝った。SNSごときに惑わされる自分も嫌だし、人に迷惑かけるのも嫌だし、ほんとにSNSなんかクソだ消え失せろと思った。そんなもの存在しない時代に戻りたい。


7月22日(土)晴れ
いつものように朝ごはん、洗濯、サイと遊ぶ、昼ごはん。お昼に買い物に行けず、冷凍庫を漁ったら義母から送られてきた高級な肉があったので何も考えずフライパンで焼いて解凍した白米にどんと乗せてサイと食べた。サイは肉巻おむすびにした。おむすびはすぐ解体された。

昼食後、布団の上で二人でごろごろ遊びながら昼寝。サイは機嫌よく大きな声で何か話したり歌ったりして転がったり私に激突したりしていたが突然静かになりぱたりと寝た。その寝顔が死ぬほど可愛かった。

 

サイが昼寝から起きたらサイをベビーカーに乗せ、浅草橋までさいあくななちゃんの合同展示を観に行った。サイがなかなか起きなくて出発がぎりぎりになった。私も嫌なことを引きずって準備が進まなかった。でもななちゃんが閉館までいますから、子連れでも大丈夫と言ってくださったので、間に合わず観れなくてもとにかく浅草橋まで行こうと思った。駅に着いてからも道を正反対に進んだりして、閉館時間をとっくに過ぎた。なんとか会場まで辿り着くと、入口のビニールの暖簾越しにななちゃんが立っていた。全身汗だくでお土産も買えず「遅くなってすみません」とただ言い訳する私に優しく微笑んで「来てくれてありがとう」と言ってくださった。もうそれだけで泣きそうだった。私のせいで遅れたのにななちゃんはギャラリーの方に聞いてくださり時間は大丈夫だからゆっくり観ていいと言ってくださった。他にも数人いた。サイと二人でギャラリー内を眺めた。サイは初めての絵のある空間に興奮して色んな部屋を出入りしたり絵を指さしたり、ななちゃんの作品を観て「うわー」「かわいいね」「きれいだね」と言っていた。サイはななちゃんに会った瞬間人見知りしていたが、優しく接してくださったのですぐに壁をなくし、私がびっくりするくらいななちゃんに懐いていた。二人がソファに座って話してる光景を私はただただ嬉しくてぼんやり眺めていた。
二つの作品で迷ってサイがこれがいいと言った絵を買った。そういえば生まれて初めて絵を買った。値段がついてないものだったのに、いいですよとつけてくださった。自分が作品買うことで自分以外の人の眼に触れることがなくなるのはとても残念だが、あの絵を毎日眺めたいと思った。ななちゃんにお礼を言いギャラリーを出たら陽が暮れかかっていた。サイは余程楽しかったらしく、「ななちゃんはどこ~?」と泣きそうな声で叫んでいた。

夜。遅くなったので外食を提案したら受け入れられた。近所の個人経営の焼肉屋に行った。ちょっと高いけど美味しかったし親切だった。昼も夜も肉ばかり食べた。サイは帰り上機嫌すぎて連れて帰るのが大変だった。胃が重い。


7月23日(日) 曇り
前から決まっていた出かける予定があった。行きたいけれどまた人に迷惑かけたらと思うと無理かもしれないと昨日の夕方まで考えていた。でも夕方出かけて芸術に触れて私は救われた。サイも喜んでいた。だから今日も力を振り絞って出かけた。出かける前Kに部屋が汚いけどいつ片付けるんだと言われたが無視した。結果としては本当に楽しかった。サイも心の底からはしゃいでいた。でもまた好きな人に嫌な思いをさせていたらどうしようという思いも浮かんだ。今後一切どこにも出かけず誰にも会わずにひっそりと死んでいった方がいいのではないかと思い始めた。いや、それだとサイが可哀相だ。だめだだめだ。サイのために出かけて毎日生き続けなければ私もサイも廃人になってしまう。
帰宅してどっと疲れて買い物に行けず、また冷凍庫の肉を焼いた。肉ばかり食べて何になるんだろう。胃もたれした。ビールを飲んだ空き缶1缶をKが帰宅するまでに捨てるのを忘れて見つかった。どうしよう怒られると思ったが怒られなかった。でも夕食をあまり食べないでいると「ビールのんだからでしょ」と嫌な感じで言われた。そういうところが嫌いだ。いちいち言わなくていい。

サイと入浴後、貧血でしんどくてサイの就寝準備は全部Kに任せた。貧血をすぐ起こすからお風呂も温泉も実は苦手。

濡れた髪も乾かさず布団に転がった。Kの下手な歯磨きを嫌がるサイの断末魔の叫びが聞こえてきた。ごめんねサイごめんね。サイが寝室にきてそのまま深夜まで一緒に寝た。深夜に起きてまた嫌なことを考えた。

実生活でも逃げ場でも何もかも崩壊し腐敗していて、そもそも全ての原因が自分にある、自業自得だと考えると自分の存在がゴキブリが這い回るゴミ屋敷みたいに思えてきて、何にも可笑しくないのにゴミ屋敷の中に入れないニュースを思い出して可笑しくなった。好きなものまで壊してしまってこの先もうどうしたらよいか分からない。今一番救いが欲しいのに自ら救いを破壊して拒否している。

買った絵が早く届いてほしい。救いがほしい。